妄言読書日記
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2008年07月11日(金) 『犬身』(小)

【松浦理栄子 朝日新聞社】

かなり変な小説でそしておもしろかった。
主人公の房恵は犬化願望を持っており、あるとき出会った愛犬家で陶芸家の女性の犬になりたいと望み、謎めいたバーのマスターに魂と引き換えの契約を結んで犬になる。そして、望み通り陶芸家の梓の飼い犬になるのだけれど、そこで梓とその兄の彬との近親相姦の関係を知ってしまう、という話し。
説明すると荒唐無稽な印象ですが、『ファウスト』みたいだなぁと思いつつ、先が読めない話しでした。

犬になった房恵=フサの視線で終始語られるのですが、フサは頭の中身は人間のままではあるものの、元々犬化願望があったので房恵が犬であることに違和感は無く、分別のある犬の視点で読むような、なんとも不思議な感覚。
不思議といえば、フサが梓に抱く感情も犬ならば確かに飼い主にこういう感情を抱くのかもしれない、というような、人間同士ではありえない愛情のような友情のような信頼関係があり今まで読んだことのない印象。

私は犬好きなので、梓や房恵が考える犬と人間の関係に大いに納得する部分があるのですが、犬好きじゃない人はこの小説読んでどう思うのかなぁと気になりました。

重くどろどろしそうな内容ですが、意外とすっきり読みやすいのは、フサと朱尾のやり取りがどこかユーモラスであることと、やはりフサが人間ではないという点につきるのではないでしょうか。彬を追い返したいばかりにゲロを吐くとか。
梓の母や兄のキャラクターは強烈で、強烈なだけではなく確かにいそうだ、というところがまた不愉快。
ラストは思いがけないハッピーエンドで、犬の献身的愛情に感心するばかりです。



蒼子 |MAILHomePage

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