妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2006年09月02日(土) |
『比類なきジーヴス』(小) |
【著:P・G・ウッドハウス 訳:藤村たまき 国書刊行会】
ダメっこ若旦那と、有能執事のラブコメディー。
あ、違った違った。 久しぶりに大文字にしたと思ったらこんな発言だものな。 気を取り直して、若旦那バーティと、それを取り巻くおかしな人々が巻き起こす騒動、そしてそれをまるく治める執事のジーヴス、という話しです。 こう書きますと、ジーヴスが忠義者のように思えますが、そこはそれ、イギリス小説ですので(まあ私のイメージですが)、事態を治めるのはご主人様のためでは全くなく、しっかりと自分の利益を確保する執事ジーヴス。 なにしろジーヴス、確実にご主人様ことバーティのことを、バカだと思ってる。 思ってるだろうけれど、直接的にはそういう態度は見せないのですが。 唯一、バーティが立ち聞きしてしまったシーンで、 「とにかくまったく知的ではない。精神的にはあの方は取るに足らない、まったく取るに足らないお方ですから」 と言っていたくらいのものです。
そうは言うのですが、バーティはそこまでおバカキャラではなく、まあ、少々ぐうたらではあるのですが、どうしようもない、とまでは行かない。 バーティの一人称で進む小説なわけですから、本当におバカだったら全く話しが進まないわけです。 どうしようもないのは、むしろ周りの人々であり、いつもおかしな騒動を持ち込んでくるのも周囲の人々。
ちょっぴりのび太とドラえもんっぽい、バーティとジーヴス。 なにしろ 「僕はジーヴスなしじゃ一日だってやっていけないよ」 とか言ってしまうのですから。
連作小説形式ですので、つながっていますが毎回毎回、ビンゴが誰かに恋をした、とか、伯母さんが乗り込んできた、とかいう話しなので、だいたい同じなのですがやっぱり可笑しい。 ジーヴスとバーティの趣味の悪い服に関してのやり取りも毎回可笑しい。 なぜ今まで翻訳されてなかったの?(全くされてなかったわけではないのですが)と思うくらい、親しみやすい本だと思います。
「大団円」のラスト、バーティが可哀相でもあるのですが、なんだか微笑ましかったです。 微笑ましかったと言うか、可愛いな。最後のやり取り。 やっぱり執事はよいですねぇ。しみじみ。
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