妄言読書日記
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2005年02月10日(木) 『野ブタ。をプロデュース』(小)

【白岩玄 河出書房新社】

借りなきゃ読むこともなかっただろうなぁという本。
なんでって、タイトルからして嫌いなんだもの。

そんなわけで、マイナスイメージからスタートしたわけですが、読み終わる頃にはプラスマイナスゼロくらいにはなりました。
Yoshiの後だとたいていの人には寛大になれるように思います。

主人公・桐谷くんは、上手にキャラをかぶってクラスの人気者を貫いているわけですが、まずこのキャラかぶりというのが、あまりに普通なんじゃないのかと。
こういう自分を完璧に演出して、クラスのみんなを欺いていますというネタはすでに、『彼氏彼女の事情』で強烈なのが出ているので、それくらいの猫かぶりはみんなしていることで、たいしたことじゃないと思ってしまいます。

この小説のなにがしっくりこないかといえば、文学を目指したのか娯楽を目指したのかよくわからないところです。
楽しませたいのか、訴えたいのかどっちなんだよ、白岩くん。
どっちつかずなんですねぇ。

まったく駄目な小説ではないですが、作者自身が桐谷くんなんです。
着ぐるみ着たまま小説書いてる感じ。
もっと、人の嫌なところまで掘り下げられるようになったらよいです。娯楽でも文学でも、どちらを目指すにしろそれは必要だと思うなぁ。
人物同士の対決を徹底的に避けている感じがして、物足りないです。
野ブタくん、マリ子、森川、と桐谷はもっとつっこんで書けばよかったのに。ラストの辺りは特に。
それをしないなら、桐谷をもっと開き直らせたらよいと思うし、そうじゃないと、ラストの再デビューというシーンがどうも受け入れがたい。
おいおい、結局転校したのかよ!
必ずしも桐谷を改心させる必要もないと思うけれど、あまりにもご都合主義な終わり方ではないですか。

で、選評に「野ブタ。」を読んで笑いなさい、ってあるんですけれど、これしきでは笑えない。
でも一箇所だけ噴出したところがあるから、そこは正直に言っておきます。

ええええ!?一回謝っただろおまえ!

素の方がおもしろいよ、桐谷くん。

にしても、会話文の中に(笑)が出てくるたびに、白岩くんの首を絞めたくなるので、それやめてくれませんか?



蒼子 |MAILHomePage

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