妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2005年02月09日(水) |
『薬指の標本』(小) |
【小川洋子 新潮文庫】
『博士の愛した数式』が有名な、小川洋子ですが、初読みです。 博士の〜から入らない辺りがへそ曲がり、と取られそうです。
「薬指の標本」 フランスで映画化決定と、帯に書いてあります。 確かにフランス映画っぽいかも。日本じゃ無理かな。 ただ、この危ういバランスの小説はうまくやらないと、意味のわからない映画になってしまいそう。 私は、この人の小説はやわらかくてあたたかい感じだというイメージを持っていたのですが、実際に読んだら全然逆でびっくり。 上品で残酷、冷たい話でした。 冷たいっていうのは、純粋に温度の話です。人間の性質の冷たいじゃなくて。 冷たいけど無機質な感じではないんですよね。冬の木の肌みたいな感じですか。 そういう抽象的なことを言ってもわかりにくいでしょうけれど。 「私」と弟子丸氏の恋のようなものは、フェティシズムに溢れ、小物使いがエロティックです。 ついでに、嗜虐被虐趣味も入っているかと。 弟子丸氏のような冷たいんだか優しいんだか、突き放されているのかかわいがられているのかわからないような人が好きな人には、たまらないものがあるのでしょうけれど、私には弟子丸氏が怖すぎます・・・。 だからといって「私」の気持ちがまったくわからない、というわけではないのですけれど。
「六角形の部屋」 薬指〜より印象が薄く、感想を述べにくいタイプの話。 最後に「私」がユズルさんとミドリさんのところで、眠りに落ちる場面が、不思議と一番あたたかい印象。 たとえ、この後この二人がいなくなるんだろうな、ということがわかっていても。
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