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■ 君のとこまではたどりつけないさ
ちょっと連絡したいことがあった。ポケットから携帯を出して、登録してある番号を選んで、発信ボタンを押すだけ。番号すらいちいち押さなくていいもんね。文明の利器は便利だ。 電話帳を開く度、ああそうか、と呟く。 マ行、もしくはア行。いるはずの君はいない。 「そりゃ、あたしのために、とは言わないけどさ」 君のこと好きな人は、君が思ってるより大勢いるんだから。いくら言っても信じてくれないけど。君と話したい、ちょっと声が聞きたいなんて人は、この世の中に結構存在してるんだよ。無愛想で、暴力的で、引きこもりがちで。でも優しくて真っ直ぐな君のこと、好きな人は。 寮にかけて、取り次いでもらえばそれで済むことではあった。それをするには、明確な用事が必要になるけど。 「綾那の声、聞きたい」 これ以上、重要で重大で切羽詰った用事が他にあるだろうか。 いくら探してもいるはずのない名前。あきらめて携帯を閉じる。出先で思い出してしまった時は、こうするしかない。早く帰って直接伝えよう。待っててくれるだろうか。いや、同居人のことなんか忘却の彼方でゲームに興じているだろうな。 それでもいい。帰ったら一番に伝えたいことがあるんだから。ドアを開ければ、そこに君がいるんだから。
2007年12月01日(土)
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