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■ 崇拝と友情
大量の写真を整頓しながら、ふと手を止める。様々な表情のあの人。いずれも全て隠し撮りだ。冷静に考えればどうかと思うが、今更そのことについてあれこれ考えるのはやめておこう。考えたって、どうしようもない。変えられないところまで来ている。自分と……刃友である彼女は。 写真整理は進んで申し出たものだから苦ではなかった。妙な策を画策したり、メンバーの前に立って演説するのは得意な彼女だけど、こういう細かい仕事はどうも向いていない。愛好、というかほとんど崇拝に近い対象が写っているのに、うっかり写真を紛失することが度々あった。以来、一身の信頼を受けて自分が引き受けている。 今頃、どこで何しているだろう。彼女が、崇拝とは別に格別慕っている従姉妹のところだろうか。 「あの人……」 幼い頃から慕っている年上の従姉妹である、あの氷室という先輩。吉川が話しているところを遠くから見たことしかないが、玲様とは全然似ていない。玲様のことでは意気投合したが、吉川の好みが全て自分にも共通しているとは思えない。 一枚の写真に目を落とす。トレーニングを終えた玲様が、タオルで顔を拭きながら歩いている。見ていると嬉しくなる。心が弾む。吉川と多分、玲様を見る時は同じ気持ちだ。二人、同じものを同じ気持ちで見ている。だから刃友になった。 盗撮やら粛清やら、妙な団結力が生まれてしまって逃れようがない。吉川の隣にいられるなら、それでもいいと思う。ただ。 写真の中で眩しいくらいの笑顔を見せる、玲様。この笑顔が、自分のものだったら――。 「私が、玲様だったら……」 焦がれるほどの二つの瞳を、こちらに向けられたら。浮かんだ不埒な考えを、二三度首を振って打ち消した。そんな大それたこと、考えてはいけない。 「朋ちゃん? 何してるの」 首の体操?と言いながら、吉川がドアから顔を覗かせた。 「あ、うん。ちょっと肩が凝って」 「あ、そっか。ご苦労様」 ここはAチームのメンバーだけが知っている秘密の会議室。普段は人影のまったくない、使われていない教室だ。こんな風に気軽に足を踏み入れる人間は限られている。チームの会合の時は少し気負った雰囲気がある吉川なのに、今は肩の力が抜けているように見えた。 呼び名も、下の名で呼んだし。最近は、二人きりの時以外ではめったに呼ばれなくなった。 「うわ、ほんとだ。堅いね」 「き、ききき吉川!?」 不器用な手つきで、首筋を押される。ギュッと、剣待生にしては細くて頼りない指が、無理矢理肩に立ち向かおうとしている。気持ちいいというより、くすぐったい。高1にしては肩が凝ってる方だけど、吉川の揉み方では、どうにも効きそうにない。 「あー、その。そ、そっちはどうだった?」 最近、妙に玲様と親しくしているという中1の生徒がいる。目下、その対策に吉川は張り切っている。 「うん、やっぱり、アレね」 「そうか……アレか」 全然よくない吉川のマッサージを受けながら、ため息を飲み込む。 「司」 「ん?」 何をしても、何が起こっても、絶対側を離れることはないんだろう。 「あんまり無理するなよ」 「うん。大丈夫」 傷つく時は、一緒だ。
2007年11月10日(土)
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