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■ 共に在るように
雷雨の中、一目散に駆ける。 旧くからの友と別れて来た。いつかはこうなると思っていた。それが、偶々今だっただけ。どちらが正しいのか。そのことばかりが頭を占めて、気づいたら飛び出していた。もう戻ることはできない。この先お互いが無事でいられるかどうか。その保障はどこにもない。いや、むしろ。 新八の歩みは止まらない。思えば、あの人を尊敬していた。しかしそれは、多分己と同様に誇り高く生きる人物だったから。あの人と自分が、共に同じ道を歩いてゆけると信じていたから。こうなった以上、自分にできることはあの人と歩みたいと思い描いていた理想を自らの手で実現するしかない。あの人に、抱いていた理想の姿を見てほしい。自分は貴方とこうありたかったのだ、と。願わくば……。 何度目かの雷光が天を引き裂く。雨足は一層強くなる。驚いて少し追いかけてきた仲間たちも、もうついてこなくなった。泥が膝辺りまで撥ねる。
選択肢は最初から一つしかなかった。 自分をご指名だというのだから、行かないわけがないだろう。雨の中を一人で。飛び出して行って、放っておけるはずがない。もちろん、一人でもしっかりやっていける奴だ。だけど、ついて来てほしいと、暗に言っている。一人でもしっかり立っていられるのに、傍らに誰かがいないと物足りない。欲張りな男だ。 本当は、たった今、意見が衝突して仲違いした男にそれを望んでいたことも知っている。それでも全然構わないのは、自分の性分のせいだろうか。 口からは思ったままの言葉が出てきた。いつもそうだ。細かい理屈ではない。感情が自分を動かして、生かしてくれている。正義も正解も真実も知らない。関係ないとすら思う。自分にはこれしかない。 槍を掲げて、全力で追いかけた。大柄な奴の体が雨の中を突き進んでいくのが想像できて、少し笑いそうになる。長年共に過ごした仲間達と別れてきたばかりだというのに、これ以上ないぐらいずぶ濡れになって走るうちに、気がすっとしてきた。高揚ついでに、名前を叫ぶ。気づいて立ち止まってくれたら、また肩を並べて行けるのだ。 名を呼ぶごとに、雷が重なるようになって、邪魔をした。
雷鳴と共に、名が呼ばれる。新八はごちゃごちゃした頭の中を打ち捨てた。その声が聞こえる度、頭ではなくもっと別の箇所がくすぐられる気がした。歩みは自然と緩くなる。軽い早足程度になり、そのうちゆっくりした散歩になった。雨が顔をつたう。 「新八」 男のたくましい腕が背中を強くぶった。
2004年12月11日(土)
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