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■ 魔女たちの家
それを見つけた時は、二人して顔が強張っていたに違いない。 師は弟子の方を目の端に入れて、確認した。弟子は師の方を見ることもできずに固まっている。何か声を出すべきだと思った。 歓喜の叫びでも上げればよかったか。しかし、なぜかこの場にふさわしくないことにすぐ気づいた。弟子は、訳されてバラバラに散った言葉の意味を追っている。 主に訳していたのは師であった。師はとうに意味を理解していた。 そして、安易に二人が喜びだけに浸れるような内容ではないことを、すでに知っていた。
暖炉の側で弟子が眠っている。 真っ白な毛布に包まる姿は、愛らしいとは言いがたい年齢になったが、同年の人間に比べてずば抜けて美しい容貌のせいでなかなか様になっていた。 あれからよく考えた。弟子は少し師の顔を伺った後、簡単に答えが出せることじゃないと言った。 もっともだと思う。この人間に答えが出せる日が来ることは多分ないだろう。あったとしても、不幸な事故に遭遇して人間を辞めてしまった時だけだろう。 師は弟子が好きだった。 長い間、様々な人に会い、親友も仲間も子供さえも持ち、恋人と呼べはしなかったがそれに近い気持ちを知った相手もいた。弟子はその中ではかなり後の方に登場した。 長い杖を持ち立ち上がる。 深緑色のコートを着、顔を隠し続けてきたマントを外して椅子の背にかける。100年前と変わらぬ眼差しで真っ直ぐ前を見た。 台所では、だいぶ前から煮込んであったリンゴが匂いを漂わせている。ここまで届いて弟子が起きてしまうことを少し期待してもいた。 しかし弟子の瞼は少しの揺れも見せない。頭を使って考えすぎたのか、深く眠ってしまっている。 人間、人生の全てを賭けて考え事をしていても、眠くなれば眠るし腹が空けば食べる。魔女は、だから生きるのは楽しいことだと思う。 飽きたなんて決して言わない。 北の山の魔女は、住みなれた家の戸をくぐり、雪に足跡をつけてどこかへ出かけていった。
魔女たちの生活・おわり
2004年02月11日(水)
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