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■ ある晴れた
「アーサー」 少女は男に呼びかける。秋深い山の色が青年の肩にのしかかる。 「聞こえてんだろう。返事くらいしな」 「うるさいな」 「それでいい」 青年の顔にはいつもと違って色が無く、隠すように不似合いな深緑のフードで覆っている。派手に彩った髪も、陽気な笑みも、一晩で消すには十分なものを、二人は見た。 青年は悲しみ、少女は平然として朝を迎えた。 「知らなきゃよかったと思うかい」 枯れた葉から順に次々と舞い落ちる。 「うるさい。一人にしてくれよ」 降る速度と同じくらい、実はあっけないものなのだと知っていたはずなのに。強がって、甘くみていたと言うのか。天賦の才を持つ占い士といっても、あまりに普通の青年らしい甘さに、愛嬌すら感じた。 「アーサー」 「これはオレの未来だ」 「そうだね」 「あんたには関係ない」 「ここまで一緒に来ておいて?」 少女の見せた幻の意味を、青年は一瞬にして理解した。そして自分の間違いを悟った。おぼろげに見えることと、その内容を正しく知ることは、イコールではないのだ。 「帰ろう」 見上げて、随分高いところにある肩に、シワひとつないつるつるした白い手を置く。 青年の目には涙があふれていた。 少女は一緒に泣くことはできなかった。
2003年11月15日(土)
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