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■ 旅の二人
草原を二人の旅人が行く。 前を歩くのは、紺の布で頭をすっぽりと覆った背の高い女性。頭髪を隠すのは宗教家の証であった。胸元からわずかに覗いている木で彫られた独特の形のペンダントが、彼女がこの大陸で最も信者を獲得している神の従僕であることを示している。 後ろからついていくのは、真っ黒な髪をした、中背の東洋人の若者である。あちらこちらキョロキョロと眺めながら、落ち着きなくフラフラと歩いていく。 二人は二日前に港町を発っている。 数年前に別れた一人の仲間のことがきっかけだった。 その日、宿の二階から降りてきたばかりの尼僧は、頼れる小さな相棒が食堂の隅で見知らぬ女と話しているのを目撃した。 なんとなく小走りで、しかし足音を立てずに背後から近寄って聞いてみると、相手はどうやら占い士のようだった。 占い士と言えば、過去と未来を知る者としてこの地域には数多く存在する。彼らは皆同じ村の出身で、そこで生まれた者は全員占いの能力を持つ、と言い伝えられている。 「ラムレスさん」 しばらくして席に戻ってきた相棒に呼びかける。 「トットニール。見てたんだ?」 「はい」 なんとも言えない表情を作って、ラムレスは席についた。 それから黙って二人は食事をした。 ラムレスとトットニール、若者と尼僧はもう長いこと二人でいる。少し前、彼女たちは四人だった。陽気で繊細な彼女である彼と、寡黙で冷静な占い士である彼と。二人は色々あって、別々の道を歩き出した。まだ旅を続けているなら、歩き続けているだろう。ラムレスたちには終わりはまだ見えない。 「さっきの人、占い士なんだ」 「聞きました」 ラムレスは何か言いたそうにしたが、やめて別の言葉を次いだ。 「占い士って言うとさ、トマス」 占い士であるところの、緑の髪をした、メガネをかけた、彼。そんな知り合いが二人にはいた。 「えぇ。トマスさん。占い士にも、男女両方いらっしゃるんですね」 トマスは青年だった。当時、沈鬱な表情と控えめな行動から、ずっと大人だと思っていたのに、実はまだ少年といっていい年齢だった。 「今頃、どうしてるかな」 同じ職業の人に会って、ふいにラムレスの中に懐かしむ気持ちが生じたらしい。それまで、別れてからしみじみと仲間のことを思い返したりはしなかった。先のことを思う方が優先事項だったから。 部屋に戻って靴紐をほどく。トットニールは、日中決して外れることのなかった紺の頭巾を脱ぐ。人前で頭髪を見せてはならない尼僧の彼女が髪を見せるのは、この瞬間だけだ。これはラムレスだけの特権。 「会いに行きませんか」 彼女は金色の髪を伸ばす。 「誰に?」 「トマスさんですよ。占い士の村を探して、そこに行けば会えるんじゃないでしょうか」 「それは、トマスが故郷に帰ってるってこと?」 「もしいなかったとしても、一度は向かったはずですから、どこへ行ったか教えていただけると思います」 「そっか」 確かに別れ際、久しぶりに故郷へ戻ると言っていた。もう何年も前のことだというのに、トットニールはよく覚えている。ラムレスはすっかり忘れていた。
港町から山深い占い士の村へは一週間はかかる。 「あのさぁ、トットニール」 「はい」 先頭に立って(といっても二人だけど)地図片手に突き進むトットニールの頼もしげな背中に声をかけた。 「占い士の村って、場所は秘密にされてるんじゃなかったっけ」 「そうです」 風が強い。トットニールの指は紙にしわが寄るほど地図にしがみついている。 「場所、知ってるの?」 「大体しか、わかりません」 「大体は、わかるんだ……」 風に攫われて、きれいにしまわれていた金髪が舞う。 「ならいいか」 ラムレスは腕を頭の後ろに組んだ。 トットニールのナビでいつまでも草原を抜け出せないままでも、さほどいやではない。
2003年10月03日(金)
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