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■ 続・間取りの手帖
「そんなこともあったっけねぇ」 今、清磁の部屋のベッドの上には、豪勢な桃色混じりの茶色の髪をした少女が寝っ転がっている。 「大体さぁ、紛らわしいんだって、ロクちゃんが」 「わざとだよ。あの人、前から千明からかっておもしろがってるとこあるから」 相変わらず柱は部屋の真ん中に居座っていて、清磁の部屋は人を呼びにくい家具配置のままで。だけど今はさほど気にならなかった。 「子供相手にひどい冗談だよ。ったく」 少し昔の三人で集まった時の話を、ふと思い出した。数年越しの真相に、聞かされた相手は怒りつつ呆れている。なぜあの時、すぐに事情を説明しなかったのか忘れてしまった。説明したのかも知れないが、なかなかうまく説得できなかったのかも知れない。そのぐらいとっくの昔のどうでもいい記憶だ。 なぜか今日、急に思い出した。 今、ベッドの上にいる、少し大人になった彼女を見てだろうか。 「子供相手?子供ならあんな勘違いはしないだろ」 「うるさいなぁ。子供っていうのは、そういう小学校低学年までじゃなくって、高学年以上の子供ってことだよ」 「あれって、二三年前だったかな」 「そんぐらいじゃない?」 小学生と、中学生と、怪しい短大生が一つ部屋に集まって何をしたんだったか。どう考えてもちぐはぐな組み合わせだっていうのに、あの三人に限ってはしっくりいっている。 「清磁とロクちゃんが幼なじみだってこと、完璧に忘れてた。おかげでだまされた」 うつぶせになってまだぶつぶつ文句を言っている。 「いいじゃない、昔のこと」 「思い出させたのは清磁でしょうが」 騙すのは大好きだが騙されたら十年は忘れない、らしい。 うつぶせというのは、どうも苦手な体勢だ。呼吸がしにくい。隣で平気でうつぶせになっている彼女は、寝る時は常にうつぶせだと、日頃から豪語している。 仰向けの方がずっとマシだ。 「思い出したんだよ」 「なんで?」 「さぁ」 「今、一緒に寝てるから?」 彼女の目が笑いを含んでいた。起き上がって、正面からこっちを見つめる。長い髪が首元にかかってくすぐったい。 「そうかも」 軽く触れて、また定位置に戻る。眠たいらしい。 「ロクちゃんは、最近来ないの?」 「今いないよ」 「またどっか行ってるの?あの人、職業旅人なんじゃないの」 「最近、アンケートの職業欄には本気でそう書いてるらしい」 「うわ」 返事は棒読みだった。しばらくすると静かな寝息だけが部屋に響いた。
2003年09月19日(金)
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