池ポエム
ハンス



 間取りの手帖

 清磁家二階一番奥の部屋。戸を開けると、中ではベッドを挟んで千明と六時が向かい合っていた。言いたいことは少し思い浮かんだが、この二人に告げる気力もなかったので黙って中に入って戸を厳重に締める。持っていた盆を慎重に机に置いた。
 改めてじーっとにらめっこをしている二人を観察する。もう一度確認するが、ここは清磁家の一人娘、守の自室。
 「あの」
 張り詰めた空気に小さな隙間を空けてみる。
 「何?清磁(守)」
 呼び名は異なるが、とにかくハモって返事された。なんだか続けにくい。
 「何っていうか、にらめっこしてるの、それ」
 清磁の部屋は少しレイアウトが変わっていて、部屋の真ん中に柱がある。誰に言っても邪魔だろうと応えを返されるその邪魔な柱を頭に、窓の方に向かってパイプベッドをぽんと置いていた。朝日が差すとまぶしくてたまらないから、窓側には足を向けて寝ている。
 ベッドを挟んで押しいれがある側には、三つ下の友人千明が座っていた。
 「だってさ、清磁。ロクちゃんが」
 ベッドを挟んで清磁の机が置いてある側には、五つ上の友人六時が座っている。
 「むっちゃん」
 また少し呼び名は異なるが、六の付く年上の友人は頭を掻く。
 「いや〜、別に何もしてないよ、私は」
 「じゃあ、とりあえずベッド挟んで向かい合う配置はやめにしてよ」
 真ん中に置いてる自分が悪いのかも知れないが、長年の伝統は今更どうしようもない。六時はにこやかな顔で千明を呼び寄せた。
 「ほら千明ちゃん、こっち側に集合だってさ」
 「片側に三人寄ったら狭いよ」
 「なら向こうに二人が押しかけるかい?」
 ちらっとまだ膨れてる千明を見ると、
 「でかい二人に押しつぶされるのはヤだ」
 と両腕でバッテンを作った。
 「じゃあ……」
 「その話をしてたんだけどね」
 「何が?」
 「ベッドの上に座れば案外広いよって話してて。千明ちゃんが、ここに座ったことあるのかって聞くから」
 「うん?」
 清磁はなんとなくお盆を手に取り直した。
 「座るっつーか寝たことあるよって言っちゃってさ。そしたらみぞおちに」
 今度は六時の頭に木製お盆(使用年数3年半)が叩き込まれた。



 今、カウンターがぴったり1000でした。やったー。

2003年09月13日(土)



 蛙の子たち

 「むー」
 「なんか機嫌悪いっすね」
 「別に」
 「先に佑が来てたと思うけど、なんかありましたか?」
 「なら言わせてもらうけど」
 「あ、なんかあったんだ」
 「お前の愛弟子は背がでかいぞ」
 「はぁ?」
 「年は大体同じくらいなのに、こんなに背が違うなんて……正直予想以上だった」
 「予想ではどんくらい?」
 「3、4センチは向こうのが高いかなーって」
 「実際は?」
 「……」
 「佑は164ぐらいだって前言ってたから、社長とはだいぶ違うでしょ。だって社長昔150越えたって喜んでたぐらいだから」
 「うるさい!」
 「……はい」
 「そういえば千歳も背、大きいけど」
 「おかげさまで」
 「何かコツでもあるの?君たち師弟は」
 「ないですよ。大体、佑は初めて会った時からあのぐらいだったし」
 「もっと遡ればさ」
 「はいはい」
 「三鞍も背高かったよね。うろ覚えだけど」
 「あっはっは、そりゃよちよち歩きの社長からすれば三鞍さんはチョモランマみたいなもんだったでしょう」
 「遺伝かなぁ」
 「血は繋がってないっす。あ、でも社長の背丈は遺伝かも」
 「母さんてどんなぐらいの背だった?」
 「先代は……こっちも子供だったからよくわかんないすけど、あんまり大きくはなかったような。私が13ぐらいの頃にはもう抜いてたかな」
 「遺伝かぁ」
 「似てきましたよ、最近」
 「そうかな」
 「こういうのって、そうだ、生き写し」
 「それは言いすぎだよ」
 「いやいや。たまにね、社長がふらっと歩いてるの見ると、あれって思うんですよ。昔に戻ったみたいで」
 「医者と高田の前には行かない方がいいかもな」
 「なんでですか」
 「間違えて熱烈な歓迎されたらヤだから」
 「じゃあ、主任の熊をも絞め殺す抱擁と、先生の世紀のプレミアもんの泣き顔とどっちがいいですか」
 「できればどっちも回避したいよ」


2003年09月09日(火)
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