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■ お取り扱い注意
「今度こそ大丈夫だから」 ニコニコと上機嫌で、黒色の機械を両手で抱えて持ってくる。別に頼んだ訳じゃない。この間、延々砂嵐を4分間眺め続けた後、彼女が言った。「どっか間違ってるなー」 これを聞いて、コードおよびその他諸々設置係らしい高田は、繋いでいた色々な部分を引っこ抜いた。そして無言で作業を続け、やおら二人は立ち上がり玄関から出て行った。すぐに彼女の頭だけがひょっこり顔を出し、直したらまた来るから、と言った。 もうこれっきりでも全然構わなかったのだけど。 「三鞍、びっくりするよ。ついに技術もここまで来たかって感じ」 この前と同じように人のベッドに勝手に座って、テープを振り回す。中によほどいいものが入ってるらしい。 「ついたぞ。テープ」 テレビと対面したまま、高田が手だけ後ろに突き出した。なんと、彼女はベッドから一歩も立ち上がることなく、それを渡した。要するに、投げた。 部屋の端から反対の端に置いてあるテレビの位置まで少し距離があるってのに。精密ゆえに取り扱いは丁寧に、なはずの黒い四角いそれは部屋を縦断し、高田の手に収まった。この動作の間、高田は一回もこっちを見ていない。 「投げるなよ」 「え?」 「落ちたら壊れるだろ。ああいうもんは、もっと丁寧に」 「大丈夫だよ。もう何回もああしてるけど、落ちたことないから」 「そう、なのか?」 「うん。間違って短めに投げちゃってもさ、高田が床滑るみたいに移動して絶対取ってくれるんだ」 遺跡探検家とか秘宝発掘人になっても無事長生きできそうなぐらいの、軍人風味の人間であった、高田というやつは。 「そういえば、なんだって毎回高田を連れてくるんだ?」 「暇だから」 「嘘つけ。アンタじゃあるまいし」 高田はここにいる四人の変人たちの中では、最も姿が見えないことが多い。どこで何してるのか、誰も知らない。 「なんなら私がやってもいいんだよ」 デッキを繋ぐぐらい、いつも砂の詰まったエンジンを掃除してる三鞍にはたやすい。それでも、彼女は首を振った。 「ダメダメ。あれさ、なんか知らないけど、高田が繋がなきゃ動かないの」 古い、無愛想な黒い箱は、それこそ黒髪の、無愛想な高田でなければ扱えない。拾ってきて最初に持ち込んだ鉄屋の親父も、眉をしかめて諦めなと言った代物だった。 「高田、手に磁石でも入ってんじゃないのか」 そのせいで手品がうまい人間というのを、昔村に来たサーカスで見たことがある。 「いや、入ってない」 作業に没頭してる風に見えた高田が、真面目に返答する。聞いていたらしい。
2003年07月26日(土)
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