池ポエム
ハンス



 アレとコレとビデオデッキ

 ジー、ガシャ。
 機械がソレを飲み込んで、さぁ動かすぞという承認の音が鳴る。どちらかと言うと割にぐずる方で、聞き分けの悪いしょうのない子、という認識をされているやつである。それでも捨てられないのは、他に代わりがないから。何もないよりは、動きの悪いものがある方がいい。普通そうだろう。
 あの人がこれを持ち込んだのは、十年ほど前。まだお互い十代だった。今では性能のいいものがいくらでも出回っているが、当時はまだまだ都会の裕福な家庭にあるぐらいで、乾いた土に囲まれた、辺り一面見渡せてしまうほど家のない田舎にぽつんと立つ掘っ立て小屋にはなかなか似合わない代物だった。はっきり言って浮いていた。拾ってきたと言ってはいたが、拾える方がどうかしてる。金持ちの家のゴミ捨て場に張っていて、捨てたところをすかさず広いでもしなきゃ、こんな高いものをわざわざ捨てる人には巡り会えそうもない。真相は知らないが、訳のわからないあの人のことだ、どこでどう入手したとしても驚くまい。そう思って、聞いたこともなかった。
 初めて繋いだ時のことはいまだに覚えている。勝手に人の部屋に押しかけて、勝手に全員に集合かけて上映会を開いた。接続調整その他は、高田が担当した。どうもあの人、意外と機械オンチらしい。ビデオの録画もできないタイプと見た。
 「で、なんで私の部屋なんだ?」
 「だって、広いし」
 「アンタの部屋のが絶対広いだろう」
 悪びれることなく、堂々とベッドの上に陣取り体育座りをしている。部屋の隅ではやたらたくさんのコードを握っている高田の姿。
 「そんなもの、本当に動くのか」
 テレビの裏側から医者の声がした。小さくて丸っきり隠れてしまっているらしい。私はというと、突然の侵入者たちに部屋を占拠されて落ち着かなくなっていた。
 よし、と低い声がして、高田がこちらを振り返る。待ってました、と明るい声音であの人はスイッチを押した。再生。
 ザーー、という一際やかましい砂嵐音が響いた。


2003年07月23日(水)



 あなただけが知ってるあの人

 「え?私だけが知ってる浅葱ってこと?そりゃ色々あるけど……究極なのはまだロングだった頃の浅葱かなぁ」
 「それなら私だって知ってんだけど」
 「ちっちっちっ、甘いな千歳さん」
 「甘さで言ったら陸ちゃんのが甘いよ」
 「そうじゃなくて、ただのロングの浅葱じゃないぜ」
 「と、いうと?」
 「キミは見たことがあるか!浅葱の長い髪から覗く素肌の背中を!!」
 「ォオ!!」
 「髪の間から見える白い肌とか、軽く浮いた背骨とかが最高でさー」
 「へぇ〜。なるほど、それは確かに陸ちゃんしか知らないよ。見たい人はたくさんいても、あの浅葱だからな。直後に殴り倒されるに決まってる」
 「話した奴も同罪だな」
 「え?」
 「り、陸ちゃん後ろ後ろ!」
 「何そんなドリフみたいなこと言ってん……(硬いものが当たった音)」
 「ココナツは痛いよ、ココナツは」
 「お前も天国という名の南国を目指すか?」
 「え、遠慮しまっす。寒いとこの方が好きなんで」


2003年07月18日(金)
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