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■ アレとコレとビデオデッキ
ジー、ガシャ。 機械がソレを飲み込んで、さぁ動かすぞという承認の音が鳴る。どちらかと言うと割にぐずる方で、聞き分けの悪いしょうのない子、という認識をされているやつである。それでも捨てられないのは、他に代わりがないから。何もないよりは、動きの悪いものがある方がいい。普通そうだろう。 あの人がこれを持ち込んだのは、十年ほど前。まだお互い十代だった。今では性能のいいものがいくらでも出回っているが、当時はまだまだ都会の裕福な家庭にあるぐらいで、乾いた土に囲まれた、辺り一面見渡せてしまうほど家のない田舎にぽつんと立つ掘っ立て小屋にはなかなか似合わない代物だった。はっきり言って浮いていた。拾ってきたと言ってはいたが、拾える方がどうかしてる。金持ちの家のゴミ捨て場に張っていて、捨てたところをすかさず広いでもしなきゃ、こんな高いものをわざわざ捨てる人には巡り会えそうもない。真相は知らないが、訳のわからないあの人のことだ、どこでどう入手したとしても驚くまい。そう思って、聞いたこともなかった。 初めて繋いだ時のことはいまだに覚えている。勝手に人の部屋に押しかけて、勝手に全員に集合かけて上映会を開いた。接続調整その他は、高田が担当した。どうもあの人、意外と機械オンチらしい。ビデオの録画もできないタイプと見た。 「で、なんで私の部屋なんだ?」 「だって、広いし」 「アンタの部屋のが絶対広いだろう」 悪びれることなく、堂々とベッドの上に陣取り体育座りをしている。部屋の隅ではやたらたくさんのコードを握っている高田の姿。 「そんなもの、本当に動くのか」 テレビの裏側から医者の声がした。小さくて丸っきり隠れてしまっているらしい。私はというと、突然の侵入者たちに部屋を占拠されて落ち着かなくなっていた。 よし、と低い声がして、高田がこちらを振り返る。待ってました、と明るい声音であの人はスイッチを押した。再生。 ザーー、という一際やかましい砂嵐音が響いた。
2003年07月23日(水)
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