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■ 髪ふさ、その他一篇
「(ふさふさしている)……」 「あさぎぃ〜、まだー?」 「もう少し」 「もう少しって、何がもう少しなんだろうね。人の頭触って、なんか楽しいの?」 「うるさいな。楽しくなかったらわざわざ触らない」 「あ、そう」 「(ふさふさ)」 「先代がさ」 「何?」 「先代の社長が、髪の毛触んの好きだったなぁって、今思い出した」 「へぇ」 「子供の時の話だけどね」
「いたっ!」 「ん、針でも落ちてた?」 「いえ、針じゃなさそうです……」 「髪の毛だ」 「これって、アレですよね。鬼太郎の毛針」 「はははっ、ほんとだ」 「笑い事じゃないですよ。先輩の髪の毛、固すぎです」 「昔はそうでもなかったんだけどねぇ。後ろんとこ短くしてるからどうしても鋭くなるんだよね」 「そういえば、なんで後ろだけ短くて前は立ててるんですか?」 「え?」 「あ、聞いちゃダメでしたか」 「ううん、そうじゃないけど、出会って一年ぐらい経つのにさ、今更聞かれるとは思わなかった」 「今初めて気になったんです」 「それまで気にならなかったことの方がすごいなぁ。まぁいいや。大した理由じゃないんだけどさ。14歳ぐらいの頃に、ちょっと髪形変えたくて。んで、思いっきり他にないかっこいいのにしてやろうと思って考えてたんだ」 「で、それですか」 「たまたま見かけた雑誌にこういう頭のヒーローがいたんだよ」 「はやってたんですか」 「さぁ。雑誌に取り上げられるぐらいだからはやってたんかもね。よく知らない」 「……また別のに変えようと思わなかったんですよ、ね」 「ん、それがさぁ。2年ぐらいしてそろそろやめよっかなぁと思って、前みたいなただのショートに戻したんだ。そしたら配達に行った時にさ、よく一緒に遊ぶ町の小さい子たちが『誰?』って言うんだ。ったく、髪形変えたぐらいでわかんなくなるなよなって思ったんだけど、子供には小さな違いが大きな違いだよね」 「その子たちに初めて会った時からずっと髪形同じだったんなら、仕方ないですよ」 「そう。でも、めんどくさいじゃん。いちいち、他の町にも顔なじみの子供がいるからさ、髪形変わったけど私だよって言うの。ほんで、戻した。もういいやって。これ、トレードマークにすることにした」 「はぁ。てっきりあえてトレードマークにしてるんだと思ってました」 「なりゆきなりゆき」 「確かに、ちょっと他では見ない形だから、インパクトありますよ」 「でしょ」 「遠くからでも見つけやすいし」 「そうか!佑もさ、人混みでも見つけやすいような髪形にする?」 「た、例えばどんなんですか」 「モヒカン」 「いやです」 「東洋の島国だけに伝わる謎の風習チョンマゲなんてのはどう?」 「目立ちすぎますよ。それにあれは男の人しかしないでしょ」 「んー、佑のイメージに似合うのにしないとな」 「そうですそうです」 「……犬耳でもつけてみる?」 「すでに髪形じゃないですね、それ」
2003年07月16日(水)
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