池ポエム
ハンス



 真夏の夜の悪夢5

 転げている社長は、それでも何事もなかったかのように起き上がった。しばらく地べたに座ったまま、やっぱり動かない傍らの老婆を眺めている。
 「どうすると思う?」
 ちょっとわくわくした声で三鞍が言った。仮にも仲間が幽霊に対面してるという危機的状況下において、楽しそうでいいのか。
 「さすがに気付くんと違うか」
 医者の声も明らかに好奇心で満ちていた。楽しくていいらしい。
 「何に気づくんだ?」
 一人だけ、普段とまったく変わらない調子で高田が怪訝な顔をする。
 「何って、あのばあさんの正体だけど」
 「正体?ばあさんはばあさんじゃないのか」
 運転席という、この場合の特等席で高田は目を凝らした。
 この人は一人だけ気付いてない。視力は2,0なのに、夜でもよく目が見えるという特技を持っているというのに。
 「高田?念のために聞いておくが、国道1○○号に幽霊が出るって話は知ってるんだよな」
 「ああ、そんなような話を聞いたな」
 高田はあの晩、医者と一緒にいたのだ。
 「周りに街や村がない、この道のど真ん中で、夜、老人が一人。加えて幽霊の噂。さぁ、どうでしょう」
 一つ一つ指を立てながら三鞍がにやりと笑った。
 「どうって、それがどうかしたのか」
 「思いっきりしとるだろうが」
 助手席から医者がツッコんだ。
 「?」
 「あのばあさんは幽霊なんだよ」
 後部座席から静かな声がした。言ってしまってから、我ながらぞっとしないセリフだと思った。まだ盆には早いというのに。いや、そもそも生涯で霊体験をするなど、三鞍の予定にはなかった。多分、医者の予定にもない。高田と社長は知らない。限りなく白紙に近いから、何が起きても予定内で予定外という可能性がある。
 「それなら、早く乗ってもらった方がいいんじゃないか」
 「はぁ?」
 「乗せるんだろ」
 そのために今、幽霊相手にナンパを繰り広げている人間が目の前にいるのだが。
 「乗せるって、幽霊乗せてどうする。体がないなら意味ないだろう」


2003年06月22日(日)



 気持ちよさの単位

 ヒノエウマ
 ■説明
 気持ちよさを表す単位。
 ■定義
 ヒノエウマに1時間マッサージをされた時の気持ちよさの総量を1ヒノエウマとする。やっとでたくしゃみ=600ミリヒノエウマ。

 「でもさー、気持ちよくって何が悪いのさ」
 「まぁ、な」
 「三鞍は賛成だよね、ヒノエウマに」
 「……」
 「どうしたの?」
 「いや、社長は1000ヒノエウマだよな、ほんとに」
 「そう?自分じゃよくわからないけど」
 「そうだな」
 「三鞍が言うんならそうなんじゃない?」
 「(軽く赤面)人前では言うなよ、それ」
 「??」


 「いたたたたたっ!」
 「うるさいな。少し静かにしとれ」
 「だって、痛いよドクター」
 「お前が最近左肩が痛いというから中国四千年のマッサージ技術を披露しとるんじゃないか」
 「それはわかるけど……ドクター、ほんとにうまいのか?」
 「下手そうだよね」
 「社長。何を根拠に?わしはこう見えてもじいさんから直伝の……」
 「いやぁさ、ドクター、うまそうに見えないもん。せいぜい100ヒノエウマぐらい」
 「だからプロだって言っとろうが」
 「え〜?1000ヒノエウマライセンスの持ち主である私からすれば、まだまだだね」
 「それ、意味が違うぞ、社長」
 「おんなじようなもんじゃないの?どっちも、体に触って気持ちよくすればいいんでしょ。同じじゃん」
 「全然違う。体をよくするのが目的だ」
 「んじゃあちょっと代わってよ。三鞍を気持ちよくすることぐらい簡単だって」
 「ちょ、ちょっと待て!……ん」
 「ほら、三鞍ってすぐ反応するからさぁ」
 「……わしは向こうへ行っとるわ」

 単位認定委員会?だっけ。キーワード入れてボタン押すと何かしらの単位を作ってくれます。皆さんもぜひどうぞ。


2003年06月21日(土)
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