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■ 真夏の夜の悪夢2
「あー、聞いた聞いた」 同じ場所に複数の人間がうろうろしていると、大抵同じ噂を耳にするもんらしい。 翌朝、トラックのエンジンをかけながら昨夜の話をしてみると、残りの二人は即座にうなづいた。 「どこで?」 三鞍と社長は確かに宿の一階にいたが、医者と高田は姿が見えなかったはず。 「あぁ……二軒隣の店だ」 なんとなく医者は顔色が悪い。 「?なんかあったのか」 「なんかも何もあるか。あいつと一緒にいると寝る暇もないわ」 小さな白衣の人物は、この大陸の真ん中に位置するという、小さな国の一地方の独特なアクセントで苦情を申し立てる。 「寝る暇って、あんた高田と一緒だったんだろ」 その高田は、現在積荷の確認を荷台で行っている。朝ちらっと見た限りでは、いたって健康そうな様子だった。と言っても、高田は早朝のジョギングを毎朝欠かさないとでもコメントしそうなランニングの抜群に似合う健康体である。 「まさか高田があんたに手ぇ出すとは思えないし」 「当たり前だ、アホかお前は!……イタ」 こめかみを押さえてうずくまる。 一見口が悪そうだが、アホというのはいわゆるバカよりもきつくない突っ込みの言葉であって云々、と医者はいつだか言っていた。よって愛情表現込みの口癖である。 「深酒という言葉はあっても、長酒という言葉はないな」 なぜか体育座りをする。落ち着きを取り戻したようだ。 「まさか、高田に付き合ってたのか?ずっと」 「離さんのだ、あいつが」 それは文字通りかつ物理的に離さないという意味だった。1m80はあるでかい図体と、1m50の小柄である。抱きしめてもう離さない、というとなんかロマンチックなセリフだが、よく考えると苦しく暑い。拘束である。 「それは、なんというか、ご苦労さまでした」 ついでに言うと、医者は割合下戸に近い。 「社長と高田組ませればよかったんだよね」 いつもの組み分け通りだと、そうなる。三鞍と医者でもでこぼこコンビだが、二人は同郷ゆえに息が合う。 「それで、社長が幽霊を見に行くとか言い出しとるんだろ」 「当たり」 荷台の方でバタンと大きな音がした。こっちはOKだ、とハスキーな声が響く。 「そんな時間あるんか?」 丈の高い運転席へさっと乗り込む。隣には医者が座った。 「偶然一緒だから」 「は」 医者は地図を広げた。昨日つけた赤ペンの道を走行中指示するのが役目だからだ。国道1○○号にぐるぐると幾重にも丸がつけてある。 「予定通りに進むと、夜12時頃にちょうど通るはめになるんだ」 「そういうことなら、別に、構わんが」 助手席の日差し避けに挟んである、交通安全のお守りをなんとなく目で追ってみた。 「魔除けにしとけばよかったか」 「車乗る時に魔除けつける人は珍しいでしょ。霊媒体質じゃあるまいし」
2003年06月16日(月)
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