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■ プレブス
足りなくなっていたオイルを充填した。 昨日の晩、オイル切れの警告がついたのだ。前に一度、不精なのが災いして切らしたまま走らせ、あげくエンジンを悪くしてしまっている。自分のならいいのだ。直すの自分だし。問題はこれがほぼ四人の共有の乗り物だってことで。 「お、ちゃんと整備してんだ。珍しいな」 エンジンから真っ黒な煙が吹いた時に、真っ先に後頭部を強打してくれた人物がにこやかに現れた。 「また誰かに頭はたかれちゃたまんないからね。大事な脳が調子悪くなっちゃうよ」 「大丈夫。社長は少し叩いた方がまともになる」 「おい」 彼女はきれいに拭き終わったシートをなでた。どちらかというと、これに一番愛情を懸けているのは彼女だった。もっと大型のバイクはあるのに、一番小さいこいつは別枠で気に入っているようだ。 「明日、行くんだっけ」 「そうそう」 「目一杯ふかすなよ。チビなんだから」 前カゴに入れっぱなしになっていたスティックシュガーをつまみ出しながら言った。 「これ、何」 「あぁ。こないだパン屋でもらってさぁ。出すの忘れてた」 半分黒ずんでいる。 「変なもん入れていくなよ……仕事なんだから」 薄暗い電球の光でも、とってもいやそうな顔をしているのがわかった。 裸電球には蛾がたかっている。 「あの辺、風強いから、気ぃつけて」 明日行く村は強風の中にある。よほどの用事がなければ部外者が訪れることはない村。この白いスクーターは、部外者ではない。 「飛ばされないようにするよ」 「あぁ、人一倍気をつけてよ。社長も乗り物も両方小さめなんだから」 気づかないうちに、前に貼りつけたステッカーを指でなぞっていた。鈍い光の下で、DSの文字が輝いていた。
2003年06月03日(火)
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