池ポエム
ハンス



 ヒノエウマ

 「千歳」
 「何?三鞍さん」
 珍しく恩師に呼ばれた。ずっと望んでいたのに、なんとなく不慣れで困る。それでも相手に向いたこの顔は、ご主人に呼ばれた犬みたいなんだろう。
 「ちょっと」
 手でも招かれる。側に来るなとは言わないが、おいでともあまり言わないこの人が。くすぐったい。素直に寄って行く。尻尾があれば振っている。
 「珍しいね」
 「何が?」
 相変わらず見えない目元。薄くだけど笑ってる口元。心から楽しそうに見えないのはどうしてか。愛弟子が側にいるのに。
 彼女は黙って背中に手を回した。おとなしく伸びてきた腕に巻かれる。気づかれないように息をする。どんな静かな呼吸も、背に沿った両手で感じ取られると思うけど。
 「大きくなったなぁ」
 「……久しぶりに再会した父と息子じゃないんだから」
 身体に取り込まれそうな抱擁だ。
 何か、目的を失いそうなくらいだ。熱い。この人に何がして欲しかったのか、忘れてしまった。離れて見ていた時は確かにぶつけきれない程たくさん何かがあった。
 たまにはいいだろ、と軽く言うと彼女は簡単に離れた。


2003年05月26日(月)



 青い女の子二人

 blueを見に行ってきた。別名、名古屋シネマテーク探訪。予想以上にわかりにくい、あの場所は。シネマスコーレを上回るわかりづらさ。スコーレは魚屋の隣にあって、発泡スチロールの箱と隣り合わせな感じが緊張感も何もない明るさを醸している。が、ここは周りもあやしかった。ブスっ子クラブが印象に残る。
 思ったより混んでいた。ここがこんなに混むのは日常なんだろうか。それとも作品が作品なのか。名古屋市の映画館は木曜女性千円デーをやってるとこが多い。新聞の映画館案内にも載っている。ここは木曜千円で入れるのに、新聞には明記してない。隠す理由が気になる。隠すというかわざわざ言わないだけのような気もする。
 この映画をカップルで見にきていたそこの二人、目的はなんだ?五十字以内で述べてください。だってこの時期、あずみでもなんでもいいじゃん。イオンシネマにいたカップルはシカゴだったよ。よりによってこれを。しかしなぁ、これって誰と見るのがふさわしい映画なんだろう。あんまり人と見たい作品じゃない。
 びっくりするほど何も起こらない話だった。進んでほしくない方向には絶対進まず、保ったままラストまで行ったのはすばらしい。気ぃ抜く暇がなかったけど。前半で三四回、逃げたくなった。

2003年05月15日(木)
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