池ポエム
ハンス



 たまには仕事中

 「うー、重い」
 「何言ってんの。そんくらい、いつもの調子でやれば……」
 「いつもっていつの話だよ」
 「去年やったじゃん。ほら、あれ。南の大陸のそのまた果ての奥地に住むというボレボレ族の村に滞在している研究家のおじさんに小包届けに行ったやつ」
 「あれは奇跡、マグレ」
 「マグレでもなんでも、無事生還するとは思わなかったぞ」
 「の割には出かける時見送りもなくて、ものすっごいいつも通りだったんすけど」
 「え?私は行ったよ」
 「千歳さんは半笑いだったのが印象的です」
 「だってさ、まさか今生の別れとは思えないもの」
 「さっき言ったのと矛盾してるよ、それ」
 「いいや。確かに、生きて帰るのは難しい場所だけどさ、あそこは。でも配達人は誰あろう陸ちゃんじゃない。戻ってくるって」
 「あっそ」
 「本当だよ。本当に信じてるから。いつもはぐうたらしてて寄生虫とか言われても、その配達の腕は確かだって私は信じてる」
 「……」
 「じゃ、そういうことでいってらっしゃい」
 「いってきます……」


2003年05月06日(火)



 

 今年もまた、花束を買う季節が来た。

 空を見ると白い粉がパラパラと落ちてくる。顔はともかく、レンズにつくのはいやだったから外してシャツでぬぐった。
 灰は北の方から流れて来ていた。北には、魔女が住むという山がある。そこからこの灰は舞ってくる。一人の人の命が尽きるごとに。
 もう五年は経つか。懐かしい。灰を見に行った。目の前で灰が噴き出しているのを、黙って見ていた。たくさんの人と見た。何も言わずに。
 見ていな。魂が灰に変わるよ。
 傍らで年配の社員がそうささやいた。


2003年05月02日(金)
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