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◇◇サイ・セイ◇◇
りえ



 ふたたび。

お久しぶりでしたみなさん。



ゆうさんとは、相変わらずの暮らしです。



過去のことにはもうあまり触れないかもしれませんが
ぽつぽつと、また日常のことを書いていきたくなりました。



不定期、きままな更新になると思います。

よろしければ、またお付き合いください。

2005年05月16日(月)



 復活のわけ。

といっても、終了のときと理由はあまり変わらないのですが。



エンピツで書くわたしのスタイルが、自分の中でわりと定着していて
雰囲気的に書きやすいんですよね。



ふだん、日常的に誰かとリアルに会話をするときなど
面白く話そうとか、柄にもなく気を遣ったりもしていて
ここはそういうことを一切しなくていいので、楽なんですね。



それに、これまで読んでくださってた方には
今までの事情なんかももう知られてしまっているので、
ここでは肩肘張る必要もないし。








最近あったことといえば、
小吉の次の子どもを妊娠したのですが 流れてしまいました。

先週、手術してきました。

このことは、また書くことがあるでしょう。

2005年05月17日(火)



 流産で感じたことなどを、ぽつりと。

小吉が1才半を過ぎたころから
ずっと続いていた懸案事項。



次の子どもをどうするか?



ゆうさんは、はじめから小吉に兄弟を作ることを希望していて
わたしは、本音をいえば面倒だと思っていた。



自分の年齢のことや、通信で学んでいる学校のこと、
その先にあってほしい就職の夢。



30も数年すぎると、ひとつひとつ選び取っていくのがとても難しい。



それでも。
積極的に子作りしたわけではないのに
わたしは妊娠した。



妊娠すると不思議なもので
それまでの迷いが一気に消えて、わたしの心はすぐ“母”になった。
数ヶ月後に起こるであろう色々なシーンを想像したり
便器に顔を向けて吐きながら、お腹の中にいる命に助けを求めたりした。



いったいいつ、その命は成長をやめてしまったのだろう。
確かに大きくなって、その姿はハッキリ見えるのに
わたしは、その命が鼓動を打つのを ついに一度も見なかった。



医師が「心拍が見えない」と診断を下すとき
それが覆ることは、ほぼ100%ないのだという。
手術までに5日の猶予をもらって帰宅し、その話を彼にして
そのまま彼の実家にも話してもらった。



感傷的になることは、極力避けるようにした。
誰を責めても仕方がないから。



胎児は生きていない。
それでもつわりは続くのだ。
肉体の馬鹿正直さに、ちょっと笑ってしまう。


2005年05月20日(金)



 その後姿を追いかける。

ゆうさんがバイクに乗って帰ってくる。

今夜は、わたし一人なので 明日の朝。



わたしたちがくっついていると、小吉が必ず割り込んでくる。



「原付の練習する?」
きっと彼は明日、そう言い わたしはうなずくだろう。



「バイク見に行く?」
きっと明日彼はそうも言い わたしはまたうなずくのだろう。



年を取って、ひとつでも ふたつでも 一緒にできることがあるといい。
もし 若くしてゆうさんが先に死んでしまうことがあっても
バイクに乗りながら、彼が感じた風を
この髪に乗せることができるかもしれないから。



バイクに乗れるとカッコイイよね、なんていう ふざけた理由を言ったけど
わたしは昔と少しも変わらず ゆうさんに憧れていて
ただ真似して追いかけてみたい
それだけなんです。

2005年05月25日(水)



 不器用なので。

「りえは、セックスした次の日はやけに素直だね」

と彼が言う。

「それに、優しい」とも。



普段は素直じゃないし、優しくもないってことかい。



ちっ。



彼はわかっていないのだ。

セックスがよかったから優しくなるなんて、そんなわけないのに。



友達期間の長かったわたしたちは、

まるで男同士のように付き合ってきた。

話し合いも、いつだって真剣にした。

わたしは彼に対し、対等であろうと努め

そのためには女のスイッチを切らなければならない。



彼を男として見ると ついドキドキしてしまうから。



いつの間にか、そんな癖が身に付き それは今だに続いている。



抱き合うときは、そんな努力は 当然に必要ない。むしろ邪魔だ。

そして少し無理やりに 女 に戻ってしまうともうだめだ。

立て直しに、ちょっと時間がかかる。



甘えるわたしに彼は笑っていうのだ。

「毎日こうならいいのに」と。

それはだめよ。と言うと すぐさま「なんで?」ときくので



正直に、あなたと対等に渡り合えないから と言ったのに

彼はまるでわかっていないようなのだ。

「りえは誰と闘っているの?」と笑って

また、わたしの努力を泡にしてしまうのだ。

2005年05月27日(金)



 それはごくたまのことだけど。

ものすごくささいなことで
彼が酷く愚鈍に見えてしまうことがある。



それは、彼自身が愚鈍なわけではなく
わたし自身の中に、そう思われたくない強い気持ちがあるせいだろう。



火傷を負っている皮膚が
ほんの少しの刺激にとびあがるように
わたしは 自分の心のいびつさゆえに
彼のした、その小さな失敗に 強く反応したのだ。



言葉では3割程度に抑えていても
心の中では、言ってしまったらおしまいが来ること間違いなしの
あらゆる罵詈雑言がいったりきたりしていた。



そしてそれらが外に出ないように必死になって
わたしは彼と決して目をあわさず その横を素通りする。



彼に怒っているんじゃないけど
彼は わたしがまだ怒っていると思ったに違いなく
おやすみも言わないまま 二階へ消えた。



それでもいい。
黒い 汚い言葉が 薄い膜から沁みだしてしまうよりは。

2005年06月05日(日)



 ライダー。

自分がバイクに乗るなんて、考えたこともなかった。



ゆうさんは、リッターバイクに乗っている。
鮮やかにシフトを切り替え、大きな車体を操りながら、走る。



流産のおかげで、思ったより多額の保険金がおりて
現実味のなかった教習所にいける資金が出来た。



不器用なわたしは予想通り数時間オーバーして
ようやく小型限定二輪免許を取ることができた。



来週から、限定解除の教習をまた受けてこようと思う。



ゆうさんとツーリング、できるだろうか。
わたしも彼のように、スムーズなハンドリングが、いつかできるだろうか。



七夕の夜、彼はわたしに ビール買いに行くから付き合ってよ、と言った。
リッターバイクの後ろに乗るのは初めてだったけど
とても気持ちよかった。
有無を言わさない力強さは、大きな安心感をもたらし
まったく怖さを感じなかった。



やさしく、強く、しなやかに走る様は
まるで彼だ。



わたしは彼に、どうしても追いつけない。

2005年07月09日(土)
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