冒険記録日誌
DiaryINDEXpast


2017年02月18日(土) ラビリンス・オブ・スクワット その1

 ラビリンス・オブ・スクワットのルールですが、ミニゲームブックにしては難しいものの、ドラゴンファンタジーシリーズを簡略化したような感じです。
 能力値として生命点があり、100点からスタート。戦闘も存在します。
 いつでも任意に体の治療を試みることのできるシステムがあり、サイコロ2個振って8以上ならその値が回復、7以下ならその値を減らすというもので、ドラゴンファンタジーシリーズでいう夢時間みたいなものですね。
 それではやってみます。最初は武器も何も持っていません。


(ネタバレ注意。プレイ予定の人は読まないでください。)

 ゲームが始めると、寒々しく薄暗い地下迷宮の中で目を覚ました。
 東西南北に扉のある部屋で、この迷宮のボスであるスクワットというカエルみたいな彫像が中央に飾られている。
 どうしてこうなったかわからないけど、とにかくこの迷宮にいたままでは、凍え死ぬか飢え死ぬしかない。一刻も早く脱出しなければいけない。
 うん、実に単純明快な目的だ。
 部屋の壁に設置されていた松明を手に取ると、最初の選択肢を考える。

 ここでは4つの扉のどれかを開けるか?彫像を調べるか?
 まずは彫像を調べると、ナレーションが「たいていの彫像ってやつは、近寄ると動き出したり、罠が作動したりするものだが、そんな決まりきった退屈なことは、このラビリンス・オブ・スクワットでは起こらない。ただの彫像だ」と説明してくれた。脱出のヒントになるようなものもないようだ。
 立ち去ろうとすると、偶然石像が倒れてきて、生命点20点マイナス。おいおい、実質これは罠じゃないのか?

 仕方なく、北の扉を開けると何もない通路とつきあたりに次の扉が見える。
 進んでもいいが、双方向システムなので、広間にもどって他の扉も見てみよう。
 西の扉を開けると、こちらも通路だが、奥にローブをきて通せんぼする人物が見える。こちらに反応しないが、あまり友好的にも見えない。きっとモンスターか死体だろう。そっと広間に戻る。
 南の扉を開けようとすると、ナレーションが「鍵がかかっている!ドアに鍵がかかっている!」とわめき出した。二度もいうから大事なことなのだろう。鍵穴にはイリノイ州ピッツバークのアクメ真鍮制作会社制の鍵のみ対応と書いている。イリノイ州ピッツバーク?アメリカ人ならわかる何かのギャグだろうか?
 最後の東の扉は開けるのはひとまずとりやめる。行き先のパラグラフ番号が14だし。

 さて、どこから行くか?
 謎の人影がいた、西の扉を開けて踏みいってみた。
 人影の正体は、鎌を持った骸骨(死神?)で近づくと襲ってきた。生命点は50点もあって、おまけに合気道の練習もしてきた為に強敵らしい。合気道する骸骨ってシュールだな!
 サイコロ運が良かったので、軽く蹴散らす。鎌を武器として入手して、今後の戦闘が少し有利になった。
 ここでは「殺されたらパラグラフ13へ」と書いてあった。ラビリンス・オブ・スクワットでは「14へ行け」は、ないらしい。
 それなら14恐れるるに足らず!先に進むこともできたが、ここは最初の広間に戻って、さっき調べなかった東の扉を開けてみよう。

 カクーン!

 東の扉を開けた途端、仕掛けてあった矢が飛んできて、生命点8減らす。
 先程の彫像と戦闘のダメージと合わせて、残り生命点が心配になってきた。
 さらに先には扉があって、そこには「やっぱり罠が仕掛けてあるよ」と書いてある。
 ちくしょう、ブレナンにからかわれているようにしか思えないぜ。


続く


2017年02月14日(火) モンスターホラーショウ(J.H.ブレナン/社会思想社)

 ブレナンといえばドラゴンファンタジー(現グレイルクエスト)シリーズでお馴染みの方で、ジャクソン、リビングストン、鈴木直人に並ぶ人気ゲームブック作家です。
 ブレナンのゲームブック作品はその独特のユーモアが特徴で、特にパラグラフ14番がゲームオーバーになっている「14に行け」は有名。
 ファンサイトも存在するし、藤浪智之さんや、はやみねかおるさんのゲームブックでパラグラフ14がゲームオーバーになっているなど、現在でもブレナン作品をオマージュしている方が沢山います。
 昨年、電子書籍化された「悪夢のマンダラ郷」の阿弥陀様なんか、絶対ドラゴンファンタジーに登場するマーリンの影響を受けてますよね。

 しかし、この冒険記録日誌では、ハービーブレナンデーを祝うとかすることもなく、今まであんまりブレナンの話題は取り上げていません。
 冒険記録日誌はどちらかというとマイナー作品を積極的に紹介しているので、すでに熱狂的ファンが大勢いるブレナン作品は一歩引いて扱ってしまうのですよ。人気すぎて、ジブリやディズニー映画を、捻くれて斜にかまえて見てしまう感覚に近いですな。
 ゲームブックブーム当時はドラゴンファンタジーシリーズを遊んでいなかった分、自分の思い入れが弱いのも理由かもしれません。それでも街でロッカーを利用するとき、よく14番を選んだりとかしてますけど。
 別にブレナンは嫌いじゃないのです。むしろ小説やTVゲームじゃ代替の効かない、ゲームブックでしか成り立たない面白さを作り出した稀有な作家だと思っています。「ドラキュラ城の血闘」(2003年10月27日の冒険記録日誌を参照)は間違いなく傑作ですし、「ゾンビ塔の秘宝」で亡霊達が昇天するシーンは数あるゲームブックの中で一番爆笑しました。
 作風がいつものブレナンらしくないという理由で、あまり人気のない「悪魔族の叛乱」(2002年3月10日の冒険記録日誌を参照)も、格調高いハイファンタジーの世界観で(ゲームバランスは問題あったけど)私は逆に気にいっていたけどね。

 さて、本作はそんなブレナン氏の作ったTRPGルールブックです。
 いったいどんなTRPGなのかと読んでみますと、初心者向けというだけあって、とても簡潔な内容で、プレイヤーとしてならゲームブックレベルしか覚えるルールがありません。
 ルール説明の構成も、戦闘ルールと、行動の成否を判定するなんでも表ルール、わずかな職業設定が紹介された後は、魔法とアイテムとモンスター一覧の紹介のみです。
 キャラメイキングも、プレイヤーが現実に身に着けているものが、そのままゲームキャラの初期装備という、実に簡単かつ風変わりなものになっています。たとえば自転車をゲーム世界に持っていきたいという人がいたら、首から自転車をぶら下げてプレイすれば認めても良いそうです。(笑)
 モンスターリストの中には、身長2メートル以上でキッチリ巻いた雨傘で攻撃してくる‟闇のちっちゃなしわくちゃ婆さん"とか、変なものも交じっていますし、ルールを読むだけで笑えるところがあるのはさすがブレナン。

 しかし、簡単なルールで背景設定もすべて遊び手におまかせというのは、逆に言うとゲームマスターの裁量が大きすぎて、面白いプレイを成立させるのは初心者だけのセッションでは難しい気がしました。
 本書には、設定の凝ったサンプルシナリオが一つ用意されており、これが人狼をテーマにしたシナリオなのです。現在でも人気のある人狼ですが、これもプレイヤー側が、ある程度TRPGに慣れていないとゲームが成立しにくい気がします。
 たぶん発売当時で初心者向けの簡単なTRPGということなら「ファイティングファンタジー」(2002年12月25日の冒険記録日誌を参照)の方がお勧めだと思います。「モンスターホラーショウ」は普通のTRPGに飽きた中級者以上のプレイヤーが、息抜きに遊ぶTRPGと考える方が良い感じではないでしょうか。

 と、冒険記録日誌では珍しくTRPGの本の紹介をなぜするのかと言うと、実は本書には冒頭に「ラビリンス・オブ・スクワット」というミニゲームブックが収録されているからです。
 これ、やったことがないので、ブレナン初心者?の山口プリンが挑戦してみます。
 総パラグラフ数はわずか36ですが、そこは一筋縄ではいかないブレナンです。それに以前「奥義大全書特別篇 キム皇のファミコン神拳110番」のミニゲームブックに挑戦してひどい目(2016年1月1日の冒険記録日誌を参照)にあっていますからね。まったく油断はしていません。

続く


2017年02月12日(日) バニラのお菓子配達便!2〜スイーツ女王と秘密のドレス〜(藤浪智之/角川つばさ文庫)

 バニラのお菓子配達便!〜スイーツデリバリー〜の続編です。(前作の感想は2013年9月2日の冒険記録日誌に書いています。)
 主人公は小学5年生の元気な女の子、天馬ばにら。ばにらは3姉妹の末っ子で、2人の姉さんと一緒に街のケーキ屋を営んでいて、ケーキの配達をまかされているのでした。
 前作同様、3つの短編ゲームブックによる連作ですが、前作以上にひとつながりになったようなストーリー構成です。雰囲気は変わらないので、前作を気に入った人なら問題なく楽しめるでしょう。私は楽しみましたよ。

 今回からツンデレで主人公にライバル意識を燃やす女の子、豪紗須メル(ゴウジャスメル)が新登場。ほーほっほっほっ、とかベタに笑ってくれます。
 有名スィーツチェーン店の社長の娘で、ばにらの町内に出店してきたのです。メルが挑戦的に、内容はおまかせでケーキを注文してきたので、どんなケーキを作って配達するか思案するのが第一話。
 グッドエンドは2種類ですが、メルがケーキのお返しをするエピソードはなんとなく予想はついていたけど、やっぱりいいですね。

 第二・三話は前編後編でスイーツクイーン・コンテストに出場して優勝を目指すという内容。ケーキと調和する衣装も用意する、ファッションショーとスイーツコンテストを合わせたような企画だそうです。上のお姉さんが思い付きに出場を申し込んだおかげで、パテシェの下のお姉さんとモデル役のばにらの2人が出場する羽目になったというお話し。

 第二話はコンテストに出す、ケーキと衣装のアイデアを出すようにお姉さんたちに言われて、ばにらが悩む内容。町内のいろんなところを歩いて、人と話したり小さな事件を解決しながら、アイデアを貯めていくのですが、発見できるアイデアは沢山用意されている中から、1つ2つ見つければ十分なのでクリアは簡単。前作をクリアした人だけが進める特典ルートなんかもあります。
 面白いのは読者が実際に、紙に衣装とケーキを描いてデザイン候補にすることも可能という仕掛け。本当に書かせるとか、ブレナン作品の影響かな?絵を描いた後で色合いとか、デザインの傾向とか質問があって、部類分けされていました。

 第三話はいよいよスイーツクイーン・コンテスト。この回は今まであったような、町の地図の絵を中心に自由に探索していくタイプの双方向システムとは違い、予選から勝ち抜いていく一方向システムです。
 見どころはやっぱり決勝のシーン。選んだ衣装に関係する第二話の登場人物が、決勝直前に激励してくれる演出があったうえ、イラスト担当の佐々木亮先生が素晴らしい仕事をして、登場するアイデアの数々のどれを選んでも、ちゃんとその衣装を着たばにらのステージイラストを見ることができます。どの衣装でも笑顔のばにらに、物語が華やかに盛り上がってましたよ。
 ちなみにシークレットドレスを選ぶと、少しだけゲーム的に有利になるけど、このドレスは用意されたものなので、衣装製作担当の上のお姉さんがちょっと可哀そうな気がしました。(笑)
 読者自身が考えたドレスで出場した場合は、さすがにイラストはなかったです。矛盾しないよう文章もあたりさわりのない感じになっているので、このパターンだとちょっと展開が地味目です。ただ、ゲーム的にはこちらの方が優勝に有利になるのですけどね。あと、考案した衣装とケーキが‟ユニーク”なデザインに分類されたパターンでの、観客の驚き具合がなんともいえず。軟体動物がばにらに取り付いてウネウネしているところをモザイクがかかったような、怪しげな映像が脳内に浮かんでしまった。(汗)

 さて、本作は読む前に他のサイトで、「スイーツクイーン・コンテストは運がないと優勝できない作りなのが問題」といった事を書いている方がいたので、実際はどんな風なのかと、今回は興味深々で遊んでいました。
 確かにランダム要素がある作品なので、優勝は運がからんでいます。でも、良い選択を選んでいけば、アイテムが増えて優勝の可能性はあがる作りだったので、逆にゲーム性を高めていて良かった点だと思いますね。
 ただ、このシリーズは角川つばさ文庫から出ていますからね。「火吹き山の魔法使い」を遊んでいる私みたいな人には良くても、読者層的にはそういったゲーム性を求めていない人もいるという可能性はあります。ゲーム性を出すにしても、SCRAPの脱出ゲームブックみたいに、パズル中心にした方がウケるのかもしれない。
 もっとも、私は逆に本格パズル系は苦手なんで、仮に続編が出ても是非この路線のままでお願いしたところです。正直、自分が楽しめなきゃ意味ないし。うん。
 もし続編が出たとしたら、上のお姉さんが、ばにらの優勝特大パネル写真を店内に飾っていると思う。そして、いい加減止めてほしいと、ばにらが恥ずかしがってぼやいている冒頭が目に浮かぶな。


2017年02月11日(土) まほう☆もののけ☆夏まつり

 藤浪智之先生の同人ゲームブックを遊びました。
 総パラグラフ50の短編作品で、もののけと会話できる小学生の女の子が主人公のお話し。
 町内の夏祭りに使う、太鼓や提灯が行方不明になったので、それを探すのが目的。町内地図に書かれたパラグラフ番号を選んでいくタイプの双方向システムで、ルールは簡単ですが、謎解きによるパラグラフジャンプの仕掛けがあり、ただ読んでいるだけではクリアできません。佐々木亮先生のイラストも含めて藤浪作品らしいほんわかメルヘンな雰囲気の作品でした。
 一見、児童向けな内容ですが、ギスギスしたニュースが多い今だから大人が遊ぶと癒されるね。
 ラストは2パターンあって、どっちもやさしい気持ちになります。個人的には49のエンディングの方は気づきにくい隠しルートっぽくした方が良かった気がしたかな。
 謎解きは、ゲームブック世代なら小学生頃に一度は見たことがある暗号で、めちゃ懐かしい感じ。でもトイレの花子さんのなぞなぞは解けずじまいでちょいとモヤモヤ。



(追記)
 このゲームブックは通信販売で買えますよ。短編一話分の本だから薄いですけどね。一応紹介しておきます。

こかげ書店
http://shop.cokage.net/othersbooks/.html


2017年02月05日(日) ドラゴンロック 浮遊要塞の死闘(井上尚美/双葉文庫)

 双葉ゲームブックの一作です。昔、古本屋で発掘した当初は、ファミコンでは聞かないゲーム名だから原作はPCエンジンあたりかな?と思っていましたが、オリジナル作品でした。
 井上尚美さんのオリジナルゲームブックといえば、少年魔術師インディが有名ですが、こんな作品もあったのですね。

 ストーリーは幼いころに辺境伯なる侵略者にファルコン公国を滅ぼされたお姫様レミーが、国を奪還するために戦うというもの。
 表紙イラストはややリアル系に描かれた、剣を構えて敵を見据える凛々しいレミーの姿で、少年魔術師インディよりは若干高めの年齢層向けに書かれている雰囲気。典型的な剣と魔法の世界を舞台にしていながら、冒険は探索や相手との交渉が主で、むやみと襲ってくるモンスターと戦うといったシーンは皆無というのも珍しい気がします。
 ちなみに主人公はレミーではなく、父親がファルコン公国の近衛隊長だったロムという少年で、幼馴染でもあるレミーに戦士としてお供するという設定です。
 勝気な性格で戦闘でも宝剣を振り回して戦うようなレミーを中心に話は進むうえ、イラストでもハイレグ水着鎧を装備しているレミーがさらに目立っていますので、もうレミーが主人公と言っていいんじゃないかという気もしますけどね。
 ファルコン公国が滅ぼされて年月がたち、かつての公国の支持者勢力も自然解散していったとのことで、今でも残っている他の仲間は、宮廷魔術師の血を引くガーディという名前のリザド族(要するにリザードマン)の魔法使いだけ。つまりたった3人の戦力で国を取り戻そうという、戦国シュミレーションゲームならもう無理ゲーというスタートです。

 ルールは3人それぞれのCP(キャララクターポイント)の管理とアルファベットのフラグチェックくらいでシンプルです。
 パラパラとページをめくって、ページの端にあるマークを引くというランダム要素はありますが、これはガーディの魔法の成功判定のみに使用が限定されているうえ、ガーディが魔法を覚えるのは中盤以降です。体感的には前回感想を書いた「イース 戦慄の魔塔」と同じく、フラグの多い分岐小説といった印象でした。
 序盤から終盤手前までの展開は、ファルコン公国復興への協力者を探して、ネメス大陸の各地を船や街道を旅してまわるというもので、世界の広大さはそれなりに感じられます。一方向システムですが、フラグ処理によってよく管理されているので、割と自由に次の行き先を選択できるのも好み。
 ただ、クリアに至るルートはある程度限定されるようです。一応、少年魔術師インディでいう魔術の書にあたる「ファルコン公国ことわざ辞典」が存在し、辞典内に書かれている各種ことわざが攻略のヒントになっているのですが、それでも裏切り者のところで捕まったり、精霊に力を吸い取られたりと、何度もゲームオーバーになりました。
 そういったルート選択の難しさもあり、さすがに社会思想社や創元推理文庫あたりのゲームブックよりは楽とはいえ、双葉ゲームブックの中ではクリアは難しい方かもしれません。
 特に中盤に遭遇する「塩の迷宮」は問題。三角形の部屋が延々とつならる迷路で、各部屋に散らばるアイテムのほとんどを回収して回らないと、迷路は脱出できても終盤で必ず手詰まりになるのでマッピング&繰り返しプレイが必須です。

 終盤はタイトルにある辺境伯の新しい兵器である、浮遊要塞ドラゴンロックに潜入して、動力源を断ち切って墜落させるというなかなか派手な展開をみせます。仇敵である辺境伯は、最後まで直接登場することはなく、今回はその腹心の魔術師を倒したに過ぎず、壮大な物語の序章みたいな終わり方でした。
 巻末には「ドラゴンロック2 近日発売」と宣伝があったので、持っていないけど入手できそうなら買ってみようかな、と調べたのですが、続編は結局発売されなかったようです。 
 残念なのですが、エピローグの最後の一文が

ぼくたちの戦いはこれからだ。(原文まま)

という時点で、嫌な予感がしていたんですよねぇ。


2017年02月04日(土) イース 戦慄の魔塔(塩田信之・大出光貴/双葉文庫)

 双葉のファミコン冒険ゲームブックということで、原作はファミコンRPGなのですが、イースというと、私の中では黎明期の和製パソコンゲームのイメージですね。
 ファミコンにせよパソコンにせよ、私は原作の方を全然やったことないので、原作と比較しての内容は語れません。ここでは純粋にゲームブックとしての感想を書いてみます。
 主人公は現代の男の子、名前はヒロユキ。ある朝、学校を遅刻しそうになり、パンを口にくわえて走って登校していたところを車に跳ねられて……気が付くと、剣と魔法が支配する異世界のエステリアにきてしまったというプロローグ。いやぁ、設定がベタベタです。
 ゲーム開始早々、ラスボスとなるダルク=ファクトなる魔王が登場して、「下等生物の分際で」とか、挑発的なことを言って去っていき、なんとなく世界を救う冒険にでるわけですね。
 ちなみにこの魔王は、美形、ロン毛、頭にヤギのような角、漆黒のマントで身を包み、人を見下した態度という、今ならBLなどで出てきそうな魔王のイメージを全て兼ね備えているキャラだったりします。幸いセクシーゲームブックシリーズではないので、このゲームブックでは主人公とそんな展開になったりはしませんけど。
 主人公達を下等生物と蔑む割に、世界をどうこうしようという魔王が、いちいち登場しては主人公達に何度もちょっかいをかけてくるのが謎と言えば謎です。

 一方の主人公側ですが、異世界にやってきたとはいえ、移動したのは精神だけで、肉体は本来のイースの主人公であるアドルという青年のものです。
 しかし、アドル本人の意識も残っていて、主人公の頭の中で怒ったり助言をしたりと、いろいろ脳内で会話してくれます。アドルの性格はしっかりめの同級生な感じ。アドルからすれば自分の肉体ですから、主人公のやることが心配で大変でしょうね。
 もっとも作中に描写はないものの、ヒロユキの方も現代で車にはねられた自分の肉体が気になって仕方がないんじゃないかと思いますね。冒険をやりとげて元の世界に戻ったら、肉体は火葬されていたじゃ笑えませんよ。

 ルール的には、勇気ポイント、熟練ポイントという2つの能力値の他に、剣などの装備品を含むアイテム管理、アルファベットによるフラグチェックです。
 経験値や所持金の管理はなし。サイコロやバトルポイント表といったランダム要素もなく、その分戦闘はしっかり描写されているので、遊んでいてRPGというよりはフラグの多い分岐小説という印象でした。
 イラストは悪くなく、特にヒロインを始めとする女性キャラが可愛くて申し分なし。ただ、国の命運がかかっている冒険の割に、総登場人物は10人程度と少なめで、物語の壮大さはあまり感じなかったかな。
 難易度はやや簡単なくらいか?重要アイテムが入手できるかが、ヒントのない分岐で決まってしまう事もよくあり、初回プレイだと運がよくないとクリアは難しいものの、基本は一方向システムで謎解きやランダム要素がないゲーム性なので、繰り返しプレイすれば必ず先に進めるようになります。
 自分のプレイでは鏡の迷路にちょっと苦戦したほか、序盤で入手できる薬を取らなかったせいで最終バトルに負けたりもしましたが、手詰まりになった感覚はなく、3回目のプレイでクリアできました。
 魔王との最終バトルは多くのパラグラフ数を使って、戦闘が繰り広げられています。自分のプレイでは最強装備をキチンと揃えてのクリアでしたが、クリア後の楽しみに他の分岐を追いかけると、意外にも装備が貧弱でも魔王を倒せる可能性があるようです。
 特に、店売りの普通のロングソードを構える主人公に「ふっ、そんなおもちゃで私を傷つけられるものか」と嘲る魔王。ここで勇気ポイントがかなり高いと気合で強引に叩き切きることができ、「な…なぜだ……斬れぬはずの剣が……」と魔王が絶命する展開は好き。理屈より根性ある方が勝つという少年漫画的内容が熱いですよ。

 このように本作は、細かい事を考えずに王道ファンタジーなライトノベルゲームブックと思えば楽しい作品です。
 ただ、魔王は倒せたものの、仲間たちとロクにお別れも言わないまま、すぐに主人公は現代に強制送還されたところで終了という、尻切れトンボ気味なラストがちょっと不満。あと1ページでもいいから、アドルと主人公のその後をエピローグに書いて余韻に浸らせてほしかった。
 双葉文庫からはイースゲームブックシリーズは3巻まで発売されているので、このラストも続編で仲間との再会を喜ぶための演出かなと、期待してイース2を見てみると、イース2とイース3は作者が竹田明さんで、1とは話しが全然つながっていないんですね。これは残念すぎてガッカリしました。
 別に竹田明さんの書くゲームブックが悪いというわけではないのですが、同一レーベルでシリーズものを出すなら、設定はつなげてほしかったなぁ。


山口プリン |HomePage

My追加