冒険記録日誌
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2014年01月20日(月) もしもソーサリーがライトノベルだったら その8

 あなたと少女は洞窟の奥へと歩き続けた。
 時々訪れる別れ道は少女の言うとおりに進む。岩や段差など道には起伏に飛んできたが、歩けないことはない。こんな暗闇の中で気がめいりそうな行程ではあるが、自信があるのか少女の足取りはしっかりしている。
 足が止まったのは、前方にあきらかに人工的な空間が見えたからだ。あなたは念のため少女に岩陰に隠れるようにいい、松明をかかげて一人近づいていった。

 そこは粗野ではあったが、材木をより集めて作った祭壇のように見えた。少女を誘拐した一味が鬼神を称えるために設置したものかもしれない。
 もっとよく見ようと目をこらすと、祭壇の中央にうずくまる小さな人影が見えた。剣を抜いてゆっくりと近づき、あなたは驚愕に目を見開く。
 手足をしばられて転がされている娘だ。意識はある。口も塞がれているようだが、剣を抜いたあなたを見て恐怖に怯えている。そして彼女は、黒髪といい、あなたに依頼をしたプロテウスに似ていた。
 どうゆうことだ?今まで一緒にいた女の子は誰だ?急いで振り返ったが、さっきまで一緒だった少女の姿は消えていた。
 混乱はしたが、ひとまず新たに発見した娘を縛っている縄を斬ってやる。プロテウスに頼まれてきたんだというと、娘は泣きながらあなたにしがみついた。相当な恐怖があったのだろう、呻くような声ばかりで一言もでてこない。しかし、この子が本当の酋長の娘であろうことは間違いないと思えた。
 あなたは剣をしまい、片手で優しく抱きかかえながらも、もう一度さきほどまでのつれを探しまわったが、見つからなかった。

 仕方なく戻ろうと一歩踏み出したとき、空間に響く恐ろしい咆哮が聞こえた。祭壇がゆれている。急いで酋長の娘を岩陰に押し込むと、剣を再び抜く。
 祭壇が破壊され、中から老人の顔をもつライオンが飛び出した。あなたはその化け物の尻尾がサソリのものであることにすぐに気づいた。
 こいつはマンティコアだ。戦士でないあなたが剣で勝てる相手ではない。
 化け物はまっすぐあなたに爪を立てて、飛び込んできた。間一髪で間に合ったあなたの呪文により、その爪は見えない障壁に弾き飛ばされる。
 背後で鈍い音が響く。爪攻撃をおとりに背後から襲ってきた毒針をも障壁が弾き飛ばしたのだ。
 だが、このままでは攻撃もできない。それに無防備な酋長の娘を化け物が発見したらどうにもできなくなる。化け物が攻撃をはじかれて怯んでいるスキに、魔法の障壁を解除し、次の呪文を唱え始めた。

 マンティコアもあなたが単なる生贄ではないことに気がついたようだ。身構えるように身を低くしてうなる。しかし、すぐに次の攻撃がこないことはあなたに幸いした。唱えていた呪文が完成、見えない魔法の幕がマンティコアを包み込む感覚。相手の意思を支配する強力な呪文が発動したのだ。
 マンティコアに目立った変化はない。だが、あなたがその場から動かないように念じると、マンティコアはうなるのをやめ、静かにうずくまった。
 さすがに安心のあまりに力が抜ける、いや精神的な問題だけではなく、さきほどの障壁の魔法といい強力な魔法を2回も続けて使ったので、体力を消耗したのもある。今はこれ以上魔法が使えるかどうか。
 いかに火や雷の魔法でもマンティコアを一撃で仕留める自信がなかったので、精神魔法を選んだのだがうまくいったようだ。
 魔法の効能がきれないうちに、早くこの場から抜け出さなくてはならない。

 マンティコアから目を離さず、酋長の娘のところへ後退する。恐怖に身動きできない彼女に安心するように声をかけたところで、マインティコアの飛び出してきた祭壇からかすかに物音がした。
 最初に会った謎の少女かもしれない。薄暗闇でよくわからないので、そちらに松明を掲げて目をこらしたが何もない。おそらく壊れた祭壇の破片が崩れたのだろう。そう確認して視線をマンティコアの方角に戻すと、怪物の姿はなかった。
 驚いて周囲を見渡そうとして、突進するマンティコアの巨体に跳ね飛ばされ、体が地面に叩きつけられた。同時に毒針を突き出したマンティコアの尻尾があなたのふとももに突き刺さる。
「おろかなアナランド人よ。あのような魔法で我を縛れると思ったか」
 マンティコアの頭部から老人のしわがれた声がした。想像していた以上に知能が高いようだ。そうと知っていれば違う魔法を使ったものをしくじった!
 毒が体に入ったようだ。傷口を中心に悪寒が走る。それに酋長の娘が危ない。
 あなたが娘をかばうように身を起こそうとすると、マンティコアが踏みつけた。
「あわれな半オークの娘などどうでもよい。全ては貴様の息の根を止めるために企てたこと。王たちの冠は魔王様のものだ」
 マンティコアの言葉がうつろに響く。こいつもマンパンの魔王の手下なのか?しかし、あなたの使命はまだ相手には知られていないはずだが。
「いいだろう、死ぬ前に教えてやる。密偵からの情報だ。一度は直接貴様を殺めんとして、しくじったようだがな」
 マンティコアは答えると、かすかに身をゆすって笑う。
 絶対絶命の状況だ。もはや正義の女神リーブラ様に祈るくらいしか
「死ね」
 もう一度尻尾の毒針が振り下ろされあなたの冒険は終わった・・・・・・。

「こんなところで終わっちゃ駄目じゃない、お兄ちゃん。そう何度も助けられないのよ」
 一瞬、輝く太陽ようなの髪をもつ少女が視界にあらわれ、いたずらっぽく片目をつぶった気がした。

 あなたは目を覚ましたかのように身をよじって尻尾をかわす。奇跡の力に身が震える。体を回っている毒が消えているのだ。消耗した体力も戻っている。
 マンティコアも突然力を取り戻したあなたに戸惑っているようだ。急いで呪文を唱えて両手を突き出すと巨大な火の球が飛び出し、あなたに覆いかぶさっていたマンティコアを弾き飛ばした。絶叫をあげて岩の上を横倒しに転がった化け物が体を整えないうちに、その体に向かって糊の入った小瓶を叩きつけ、接着の呪文を唱えるとマンティコアは瞬時に地面の岩と密着して動けなくなった。
「なんという屈辱!こんな若造の前でこのような無様な格好を」
 わめき声とともに毒針の尻尾が横に薙ぎ、あやうく身をかわす。
 気合いをこめ、老人の頭部に向かって剣を撃ち込むと、さしものマンティコアも完全に動かなくなった。

 酋長の娘を連れて外に出たあなたは、村人の熱烈な歓声をあびた。
 村人が準備した即席の歓迎の宴にあなたは主賓として招待される。酒も入っており、しばらくすると村人が陽気に踊りだした。酋長の娘は疲労で寝込んでいるらしいが、怪我はなかったのでしばらくすれば元通りになるだろう。
 今日一日はここで休んで体力を蓄え、明日の朝には城塞都市カーレに向かうことにしよう。
しっかりあなたの隣の席に座り、宴会を楽しんでいるアリアンナにそのことを伝え、ついでにマンティコアの言った言葉を教えてみた。するとアリアンナは呆れながらも、
「じゃ、あんたの助けた追剥が原因ってわけかい?お人好しの結果がこれってわけだ。あたいの言うことを聞いていればこんな苦労をしなくて良かったんだよ」
 と、得意そうに言う。なにか機嫌がよさそうだ。傍でジャンがひどいめにあったと絶えずブツクサ言ってるが、まるで聞いていない。
「まあ、どちらにしても上手くいったんだから、もっと喜んで酒でも飲みなよ。あたいへの感謝の気持ちを込めて一気飲みしなよ」
 ニヤニヤ笑って、あなたに大きな杯を渡し、壺から酒を注いでくれる。
 確かにジャンに関することでは、助かったことは確かだ。あなたはアリアンナに礼を言うと、彼女についでもらった酒を飲みほして、あまりの味に飛び上がる!ゴキブリ数匹を胃袋に放り込んだような気分だ!
「オークの酒、グアーシュだよ。ここは半オークの村だからね!いい酒だったろう」
 アリアンナは可笑しくてたまらないという風に大声で笑い転がっている。あなたは口を押さえ草木の茂みに向かって走りながら、今度はアリアンナを抑える方法がないものかと本気で考え始めていた。


第1部完





 まだアナランドからそう離れていないシャムタンティの丘の一つに、黒いフードに身を包み、座り込む7つの人影があった。
 もしもそこを通り過ぎる旅人がいれば、その者たちが放つあまりに怪しく重苦しい空気に魂を危険にさらしながらも、シュウシュウと囁くような奇妙な会話を聴くことができたであろう。
「あの者(マンティコア)がやられたようだな」
「しゅーーー・・・・・・、まあよい。奴は我ら魔王様の直属の中でも最弱・・・・・・」
「もとよりその程度の実力。混沌の面汚しよ」
「だが、そのアナランド人の存在は捨ておけぬ。魔王様にご報告せねば」
「そうさな。我らもマンパンへ引き返そう」
「途中、アナランド人を見かければ報告までもない。われが倒してみせよう」
「くくっ、そう慌てるな。しょせん、我ら七匹の大蛇の敵ではない・・・・・・」


2014年01月19日(日) もしもソーサリーがライトノベルだったら その7

 仲間をあとにしてあなたは一人で洞窟の奥へと進んだ。
 洞窟の中は案外と乾燥していて、地面にこそやや湿り気が感じられたものの、ブーツの汚れさえ考えなければ快適に歩くことができた。
 今のところ怪しいものは何も見当たらない。音にも注意をはらうが、何も聞こえない。ただ真っ暗な空間にあなたの松明が放つ光が浮いて見えるだけだ。
 穴は奥深くまで続いており、途中で何度か枝分かれしていたが、特に判断材料がなかったので広い穴を選んで進んでいく。
 しばらく歩き続けると、どこまでこの洞窟が延びているのかわからないことに不安を覚え始めてきた。選ばなかった枝道に村長の娘が捕らわれているのかもしれないと考えると、このまま進んでいいのか心配になってくる。
 また新たな分岐点に差し掛かったところで、唐突にあることに気がついて立ち止まる。あまり使ったことはないが、道に迷ったとき、答えを教えてくれる呪文があったのではないか?休憩をかねて適当な大きさの岩に座り込み、松明を立てかけると、記憶の中を必死にさぐり始めた。試みるのはいいが、魔法というのは危険なもので、仮に唱えた呪文が間違ったものであったら体力を著しく消耗するのだ。記憶に自信がない魔法の扱いは慎重にならざるえない。

「あなたは誰?」
 いきなりの声にあなたは飛び上がった。見ると、洞窟の少し先にまだ幼げな少女が立ってこちらを不安げに見つめている。気づかなかったとは迂闊としかいいようがない。
 それにしても予想外だ。誘拐された少女が縛られもせずに自ら歩いてやってくるとは。あなたは驚きながらも優しく声をかけた。
 少女は笑顔になってあなたに飛びついてきた。
 女の子特有の甘ったるい香りがわずかに感じられ、思わずマジマジと少女を見てしまう。粗末な服を着ているし、まだ子どもといっても差し支えない気もしたが、こうして近くでみるとあの酋長とは似ても似つかないほど可愛らしいのだ。
 あの村の住民はオークの血をいくらかひいているように見えたが、この子の顔だちはむしろエルフの血を引いているかと思うほど整っていた。第一村人の住民の髪は暗い色あいの者が多かったのに、この子の髪の毛は明るく太陽のように輝いて見える。登場の仕方といい何か辻褄があっていないように思えた。
 だが、今はそんなことを気にしても仕方がない。少女の手を引いて引き返そうとするが、少女は首をふった。
「駄目なの。まだ入口には戻れない。生贄がいなくなったら鬼神は怒って村を襲うかもしれない。お兄ちゃんは強いんでしょ?いっしょに奥に来て」
 この洞窟に詳しいのかと少女に問う。
「ううん。鬼神が住む洞窟だから、ここには誰もこない。でも言い伝えを聞いたことがあるから、正しい道はわかると思うわ。ここから先は岩がごろごろして明かりがなくちゃ進めないし、奥に行っても私一人じゃどうにもならなくて…。困っていたの」
 年の割りにはしっかりした言動にあなたはますます妙な気分になった。それにしても次はどうすればいいのか。鬼神はあなたが戦えるような相手なのだろうか。
 悩んでいると、少女はあなたの松明を拾い上げて奥へと進もうとした。
「こっち。言い伝えではこっちの道を選んでいけば安全なはずよ」
 危険だから勝手に動かないように言い含め、あなたは先頭にたった。
 松明の明かりはいつまでも持たないし時間が惜しい。考えるのをやめ、奥に向って歩き始める。
 少女は不思議なほど落ち着いているように見えたが、さすがに内心では今まで一人で怖かったのかもしれない。あなたの腕を、小さな両手でしっかりとつかんで寄り添うようについてきた。


続く


2014年01月18日(土) もしもソーサリーがライトノベルだったら その6

 さらわれた村長の娘を救出すべく、村人たちの案内であなたたち一行は鬼神の洞窟へと向かった。鬼神の洞窟への出入りは縦穴から籠を使って降りる必要があるらしい。
 あなたたちは用意された籠に乗り込み、ロープを握った村人たちの手によって、鬼神の住むという洞窟へ続く縦穴の中をゆっくりと降ろされていく。ジャンがそのあとを羽ばたいて降りてこようとする。
 籠が地面に触れると飛び降りる。空になった籠は引き上げられ、アナタは鬼神の洞窟に立っていた。あなたはほくち箱で火を起こし、松明で明かりを確保すると、洞窟を奥へと歩き始める。

 ジャンがすぐ傍で羽ばたきながら、あなたの顔を覗き込む。
「がんばって。僕がついてるから!」
 正直お前は引き返してくれた方が助かる、と率直に答える。
「何いってんだよ!君には僕が必要なんだから。そのうちわかるって!」
 ジャンは胸をそらして言いきった。そのまま、梃子でも動かない、といった態度であなたの傍を羽ばたいている。いったい、この自信はどこからくるのだろう。
 どちらにしてもジャンのいる限り魔法は使えない。このままではジャンが言う、”そのうち”とやらが来る前に鬼神に殺されかねない。戦士でないあなたにとって、かなり困難な状態になってしまったのは間違いないようだ。
 あなたはアリアンナにも入口付近で待っているようにいった。
 今回の冒険に無関係な彼女を危険な目にあわす理由はない。それにどのみちジャンがついてくるのだから、アリアンナの魔法の力は期待できない。
 そう説明するあなたをアリアンナはジトリとした眼で見ていたが。
 「ちっ、そんなお人好しぶりで鬼神とやらを相手にしようなんて笑わせるね。鬼神にしゃぶられて骨だけになったら、その丸みきった精神も少しは尖るだろ。あたいはあたいの好きにさせてもらうよ」
 ぶつぶつと言いながらついてくる。どうあっても文句は言われるらしい。

 いくつかの洞窟の枝分かれを通り過ぎると、いきなり足元に地割れができる。たちまち、地面がくずれて新たに発生した斜面をアリアンナとあなたはすべりおちる。
 火も消えしまったのか、滑りきった先は真っ暗な空間だった。見上げると少し高い位置に、光が明滅する。さっきまでいた場所に落としてきた松明の明かりだろう。
 何やら妙な気配がする。
 徐々に目が慣れてくると、奥の方から無数のヘビがこちらを見ているのに気づく。何匹化は這いよってくるところだ。
 アリアンナは無事かと見てみると、怪我はないようだが、ヘビたちの方を見て硬直している。
 もしかして爬虫類が苦手なのだろうか?
「ば、ばかいえ!あたいに苦手なもんなんかあるものか。きゃ!」
 アリアンナが意外にかわいい声をあげて、近づいてくるヘビから後すざった。
 あなたは剣を振りかざし、アリアンナに近づくヘビに猛然と斬りつける。そのヘビが真っ二つになると、次々に彼女に近づくヘビに斬りつける。
 少しの間、ヘビとの薄気味悪い戦いが続いた。やがて、なんとか目につく全てのヘビを退治すると、あなたは荒い息を吐きながら座り込んだ。
「毒蛇もいたかもしれないのに。幸運の女神が3度くらい微笑んだみたいだね」
 さしものアリアンナも、言葉にいつもの強気が消え、あきらかに緊張感が解けたようすで座り込んだ。

「おーい、ここにいるのー?大丈夫かーい」
 上の方から声がジャンの声が聞こえる。状況を知らないジャンが羽ばたきながらゆっくり降りてきた。
「ずいぶん真っ暗だね。2人ともどこ?」
「つかまえたっ」
 アリアンナがまだ闇が目になれないジャンをすかさず掴み、握りしめた。ジャンが悲鳴をあげて必死でもがいていたが、アリアンナの手はしっかりと捕まえて離さない。
「放せー」
「うるせぇ!こっちはずっと捕まえるスキを狙ってたんだ。お前のキーキー声にあたいはイライラしてたんだよ」
 あなたが仲裁しようとすると、アリアンナが一喝した。
「お人よしもいい加減にしろ!別に捻りつぶしたりしないから安心しな。あたいがここでこいつを押さえているから、とっとと鬼神だかなんだかを倒してこい!」
 あなたは、なんとか登れそうな斜面を見つけ出すと、後で必ず迎えに来るとアリアンナに約束して這い上がり始めた。背中からアリアンナの声がかかる。
「わかってる。お人よしだかんな。……それとさっきはありがとな」
 いつもと声の調子が違う気がして一瞬気になったが、すぐに背後からジャンとアリアンナの罵り合いが聞こえてきた。


続く


2014年01月12日(日) もしもソーサリーがライトノベルだったら その5

 シムタンティの山々ももうすぐ終わる。半オークの住む、ここスヴィン族の村で一晩過ごした後、翌日にはカーレの街にたどり着けるだろう。
 できることならこの村で、危険とされるカーレの街の情報を収集しておきたかったが、村人たちは広場でなにやら寄り合って話しをしている。彼らの輪に入りこむことも出来なくはないが、なにやら深刻そうな表情を見ると首を突っ込むのが躊躇われた。
 結局、今日はおとなしく宿で体を休めようと判断し、濃厚な獣肉のスープと黒パンの食事をとると、今夜をすごす部屋をとる。アリアンナと相部屋だが、ベットは2つあるし、かまわないだろう。実際、あなたが部屋に入ったときは、アリアンナはとっくにベットにもぐりこんで毛布を頭からすっぽりかぶって寝ていた。
 そのまま夜になった。

「起きてよ。なにか様子がおかしい」
 ジャンがあなたに呼びかけてきた。その声を聞くまでもなく、扉の外で数人の人の気配がするを感じてあなたは目を覚ましていた。自分の使命が、ここから遥か遠いマンパン砦まで届いているとは考えにくいから、刺客の類ではないだろう。だとすれば物取りか?
 剣を握り締め、脱出口の確認に窓側へ近づくと、窓越しに遠くからこちらを覗いている男たちと目が合った。なんてこった。
 あなたは急いでいまだ毛布に包まっているアリアンナの背中をゆすって起こす。
 アリアンナはむくりと体を起こすと、目が据わったようなまだ寝ぼけているような半端な目つきであなたを睨み、続いて目線を下に向けた。
 なんとあなたの手は薄い毛布ごしにアリアンナの胸に触っていたではないか。アリアンナは細身の体つきなのでうっかり気がつかなかった。こんな状況ではあったが、あなたは慌てて反射的に謝った。
「い、いや。すまん、背中と間違えたんだ…」
 ピシッ!
 心底気のせいだろうが、空気が凍った音が聞こえてきた。あなたは致命的なミスを犯したのだ。ジャンは悲鳴をあげると部屋の隅に逃げ込んだ。
 アリアンナが顔を下に向けて、「なかなか正直だな」とボソリとつぶやいた。そしてあなたの手を軽く払うと立ち上がり、鉄鋼製の小さな輪がつながったものをゆっくり各指にはめ始める。拳闘士は堅い革ひもを手に巻きつけて戦うというが、それに近いものに見える。
「拳術熟達の腕輪だ。あのくそいまいましいミニマイトのせいで魔法が使えないからな」
「アリアンナ。こんな話をしている暇はないんだ。早く逃げないと危険だ!」
 あなたが説明しようとしつつも半ばに逃げるように扉へ足を向けた瞬間、アリアンナの右フックが見事に顔面に決まって、あなたは薄っぺらな扉ごと廊下まで吹き飛ばされた。
 意識を失う寸前に視界に扉の外で構えていた男たちが見えたが、彼らも異様な雰囲気を察したのか、気絶したあなたと、仁王立ちになっているアリアンナをただ呆然と見つめていた。

 翌朝になると、あなたの前に村の酋長がやってきてプロセウスと名乗った。
 彼はまず昨夜の非礼を詫び、召し使いにパンとミルクの朝食を運び込ませた。食事をするあなたの前でプロセウスが事情を説明する。
「実は私の唯一の跡継ぎである、年端もいかぬ娘がさらわれてしまったのです。略奪者は娘を、洞窟に住む恐るべき悪鬼の生け贄にするつもりです。残念ながら我々にはそれに対抗する力をもった勇者はいない」
「それで私たちに助け出してほしいと?それにしては少々強引な依頼の仕方ですね」
 あなたの顔が腫れ上がっているのはアリアンナのせいだが、村人たちはあなたとアリアンナを監禁してでも村に引きとどめようとしたのだ。
「非礼は謝ります。しかし、我々にはもう手段がないのです。無事に娘を救い出したおりにはお礼をします。このとおりお願いします。娘を…助けてください」
 あなたには大きな使命がある。こんなところで道草をとっている暇はない。
 そう思うのだが、言葉をつまらせてうずくまった村長を見て、このまま村を立ち去る気にもなれない。チラリとアリアンナを見る。
「ハッ、あたいは連中のことなんか知ったことじゃない。だけど、おまえのお人よしぶりは短い付き合いでも、十分わかったさ。好きにしな」
 まだ怒っているのか、ぶすっとした顔のまま横を向いた。


続く


2014年01月11日(土) もしもソーサリーがライトノベルだったら その4

 その夜は宿で一泊をしたあなたたちは、翌朝早くから旅を再開する。それから断っておくが、もちろん部屋は別々にした。
 ジャンとアリアンナが、ブラックロータスの花を避けるかどうかでもめた他には、平和な道中が続く。
 午後になり、道沿いに丘の斜面を登っていくと、またジャンとアリアンナが口論を始め、あなたはいらいらしてきた。
 やがて、ぽつんと一軒の小さな小屋が立っているのにさしかかった。小屋の周囲には、いろとりどりの花が植えられ、辺境とは思えない明るい雰囲気をただよわせていた。戸口の小さな階段にちょこんと、女の子が腰かけている。
 遠目に見ると、近づいているあなた達に向かって手招きしているようにみえる。ジャンがあなたを見上げて気遣わしげに言う。
「回り道のあとは寄り道するつもり?そんな調子じゃ、いつまでたっても目的地なんか到着しないからね。ここは無視して進もうよ」 
「さっきのは回り道なんかじゃねぇ。近道したけりゃ、てめぇ一人でブラックロータスに埋もれて死ぬまで寝てればよかったんだ!」
 アリアンナがジャンに怒鳴ったが、あなたにもビシッっと指をつきつける。
「だがな!寄り道するなってのだけは同意するぜ。こんな人里離れた場所に住む女がまともなわけがない。誘いにのったら、絶対酷い目にあうからな」
 そうだな。確かにそうかもな。ウッドゴーレムをけしかけられたりとかな。

「こんにちは〜。道中疲れたでしょう〜。少し休憩していってはどう〜?」
 家の前まで近づくと、妙に間延びした声で女の子は声をかけてきた。年は14・5歳に見えるだろうか。ずきんのようなものをかぶっているが、その下に見える顔は可愛く、少しぽっちゃりした健康的な娘だ。
 仲間に言われるまでもなく急ぐ旅ではあるので、丁重に断わって旅を続けようとすると、背後から電撃が襲ってきて目の前の地面が焦げたので、気が変わって招きに応じることにした。

 確かにまともじゃなかった。だいたい、ジャンがいるのになんで魔法が使えるんだ?

 小屋の中に入ると、娘は清潔なテーブルにいそいそとカップを並べ、お茶の支度をはじめた。こんな寂しい場所でなぜ暮らしているかなどいろいろ尋ねたが、娘は自分のことをガザムーンと名のったものの、他の質問は笑って答えようとしなかった。
「美味しく出来たわ。さあ、召し上がれ〜」
「怪しすぎるわい!」
 アリアンナが我慢も限界だという風に叫ぶと、ビシッと、ティーカップを指差した。
「この紅茶!毒が入っているんじゃないか?いや、間違いなく入ってるね。あたいだったら入れるところだからな。こっちのカップをもらうぜ」
 いうやいなや、ガザムーン本人の分のティーカップを奪い取ると、一気に飲み干す。たちまち顔が青ざめて、小屋の外に飛び出し吐き始めた。
 ガザムーンはくすくす笑いながら、ちょっと舌を出した。
「あらあら、かわいい人ですねぇ。そうくるかなぁと思って、わざと私の方ににがい薬を入れておいたのですよ〜。うふっ、お出しした方は大丈夫だから、そちらの色男さんは、安心して召し上がれ〜」
 安心できねぇよ!と、内心つっこみながらも、平静を取り繕ってお茶に口をつけると、なるほどこちらはちゃんとした紅茶だった。

 ガザムーンは本当にお茶会をしたかっただけらしく、それ以上は引き止めようとはしなかった。
 茶の礼を言って立ち去ろうとするあなたにガザムーンは、羊皮紙を丸めたものを差し出した。カーレに立ち寄ることがあるなら、ついでに配達をお願いできないかと言うのだ。
「ロータグというお爺ちゃん学者さんに渡してね。これを無事渡せたら、ちゃんとロータグさんからお礼がもらえるわよ〜」
「なんか怪しいなぁ」
「うふふっ。ミニマイトは私大嫌いなのよ〜」
 ガザムーンが笑うと、ジャンも慌てて外でふてれくされて待っているアリアンナのところまで飛んで行った。

続く


2014年01月03日(金) もしもソーサリーがライトノベルだったら その3

 「時間の無駄だよ、僕のそばで魔法使っても」

 小妖精がせわしなく羽音を響かせながら悪戯小僧のようにクスクスと笑った。旅を再開したあなたと遭遇した、この指一本くらいの大きさの生き物は何が気に入ったのか、いっこうに離れようとせず。自分のことをミニマイトのジャンと名乗り、先程からぶんぶんとあなたの周囲を飛び回っている。
 うるさいだけで実害はないと思っていたら、どうやらこいつは魔法を無効化するバリアなようなものを持っているらしい。とんだ疫病神だ。魔法を使って追い払おうとしたが当然のように効かない。

 「魔法が効かないなら、捕まえて捻りつぶすよ!」

 アリアンナもいらただしい気持ちらしく、先程から何度も首根っこを捕まえようと手を出すが、軽く避けられてばかりいるのだ。

 「いまいましい。あたいはお前みたいなチビ妖精を連れて行くと言った覚えは一度もないんだ!」

 それは君に対しても同じなのだが。と、あなたは思った。
 アリアンナの家を出ようとしたあなたに、アリアンナは旅の同行を申し出たのだ。いや、申し出たのではなく、有無を言わさずついてきたと言った方が正しい。
 この旅は遊びではない危険な任務だと説得したのだが、この森では刺激が少ないからと気にする様子もない。檻の中に閉じ込められたことは、彼女にとって刺激的な部類には入らないらしい。
 しかたなくこの奇妙な3人連れで旅を続けることになる。
 魔法が封印された状態ではかなりの危険が想定されたが、旅そのものは概ね順調だった。一度、全身黒づくめの暗殺者が襲ってきたが、ジャンの警告で不意打ちはまぬかれたし、アリアンナから借りた「剣術熟達の腕輪」のおかげもあり、剣術だけでねじ伏せることができた。暗殺者は殺さずに解放してやると、彼はフランカーと名乗り、感謝しながらまた闇に消えた。

 「ほんとにお前は、お人よしだな」
 「いいんだ。不必要な殺生はする理由がない」 

 いくつかめの村にたどりつき、疲労回復効果のあるという滝で小休止をとることにする。
 村人に金貨を払ってタオル代わりの布切れを受け取り、滝の轟音が響く広い滝つぼに入る。アリアンナは「覗くなよ。覗いたら殺す」などといって水しぶきの奥に姿を消した。
 あなたは手近な岩に腰掛けると身体を休める。慣れない旅で消耗した体力が戻ってくるのを実感できていい気分だ。
 しばらくするとアリアンナが、体に布を巻きつけた格好で戻ってきた。あなたを軽く睨みつける。

 「覗かなかったな。つまらない男だ」

 どうしろってんだ?
 思わずあなたはジャンと顔を合わせたが、あなたが妙な表情をしていたのか、ジャンは何も言わずニヤニヤ笑っているだけだった。


続く


2014年01月02日(木) もしもソーサリーがライトノベルだったら その2

 一夜を野宿したあなたは、人里はなれた谷を抜ける途中で一軒だけ建った民家を発見する。
 中に入ると、うら若い乙女が小さな檻に閉じ込められているではないか。エプロン姿からして、恐らく彼女がこの家の住民なのだろう。細身の体に、犬用の首輪と鎖とで檻につながれている姿が痛々しい。

 「私はアリアンナといいます。助けてください。いたずらな妖精が、私を檻に閉じ込めたのです」
 「それは大変。この程度の鍵など魔法ですぐに開けてみせますよ」

 あなたの短い詠唱で、たちまち首輪ははずれ、檻は開いた。アリアンナが檻から出てくる。しかし彼女は立ちあがって伸びをすると、高笑いをしてあなたを指差した。さっきまでとはまるで別人のような態度だ。

 「ありがとう、あたいを檻から救ってくれて。でもどうせお前も物取りの類だろ。お礼にこんなのはどうだい?」

 彼女が椅子を指差すと、椅子はたちまちウッドゴーレムに姿を変え襲いかかってきた。なんてこったい。
 急いで呪文を唱え、強烈な火の玉をゴーレムにぶち当てると、ゴーレムは枯れ木のように燃えさかってもがき始めた。ゴーレムから飛び火した火が家の家具に燃え移る。
 アリアンナが悲鳴をあげて消火しようとするが、なかなか消えない。思ったより火の広がる勢いが強く、このままなら家は全焼する勢いだ。
 ま、因果応報ってやつだな。
 このまま踵をかえして、恩知らずの家から立ち去ろうとしたのだが。

 「くそっ、手伝ってやるよ。水はどこだ」

 2人かかりの初期消火によって、調度品の一部が焼け焦げた以外には大きな被害もなく火は鎮火した。ゴーレムも焦げた椅子に戻っている。アリアンナは不思議なものでも見たような目つきであなたを見た。

 「どうしてあたいを助けたんだい。こっちはいたぶってやるつもりだったのに」
 「人里離れたところに一人暮らしの女性。用心深いのも仕方ないさ。見捨てるなんてできないよ」
 「ちぇ、調子くるうな。いいさ、2度も助けてもらった礼だ。飯くらい食っていけよ、お人よし」

 アリアンナは困ったような表情で、床をつま先でつつきながらつぶやくように言った。


続く


2014年01月01日(水) もしもソーサリーがライトノベルだったら その1

 カクハバードのマンパン砦に住む魔法少女によって、アナランドとその友好国らは危機を迎えていた。
 「ただの王冠には興味ありません。バードマン達!アナランドから“王たちの冠”をあたしのところに持って来なさい」
 といって彼女がアナランドから“王たちの冠”を盗み出したからだ。もし旧世界一とされる強力な秘宝の力を借りて、長らく無法地帯であったカクハバードが統一されれば、唯我独尊な彼女の手によって、すぐさま混沌の軍隊がこちらにへ侵攻してくるだろう。
 この事件のことはまだ周辺諸国には、秘密のまま伏せられている。軍隊を差し向けることは、それを公にすることでありできないことであった。唯一残された方法は、だれか一人の勇者が大胆にもマンパン砦に潜入して“王たちの冠”を取り戻すだけとなっていた。
 この任務を受けたあなたはマンパン砦を目指して旅立つことになった。国境の門までたどり着くと、くりくりした瞳が特徴的な少女が一人立っていた。千里眼の超能力をもつため門番として採用されているのだ。少女はじっとあなたを見据えていたが、あなたが門を通り過ぎようとすると見送りの言葉をかける。

 「あなたにかける」

 なにをだ?もう少し具体的に応援の言葉を言ってほしいね。

 「王たちの冠の所有者は、意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意志を絶対的な情報として環境に影響を及ぼす。マンパンの主も例外ではない。あなたが選ばれたのには必ず理由がある。あなたが全ての可能性を握っている」

 わけのわからないことを言ってやがるな。俺が選ばれたのだって、ただちょっと魔法が使えて捨て駒になるやつなら、誰でもよかったんだろ。理由なんてねーよ。
 少女にそう答えたが、無表情に一言「ある」と繰り返しただけだった。
 ま、いーか。せっかくの助言と励ましくらいは素直に胸におさるべきだろう。あなたはシャムタンティの丘へ旅の第一歩を踏み出した。


続く





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 あけましておめでとうございます。
 最近、ソーサリーの魔法レッスン以外には、ゲームブックの感想くらいしか書いてないなーと思ったので、今回は新春記念特集やってみます。やっぱりソーサリーネタなんですけどね。
 元々は昔mixiにノリで書いていたものです。途中で中断していたのですが、この機会に完結できるかなー。


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