冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2009年08月31日(月) ルパン三世 激走チャイナ!贋作の秘密(速水 彩/双葉文庫)

 双葉のルパン小説シリーズ第6作目にして最終巻。5巻と同じく、1話の長編が収録されています。
 私はゲームブック、小説に関わらず、本を読む時は後書きから読むことがよくあるのですが、今回はそれが裏目にでて、本編を読むときに妙な先入観が入った状態になっていまいました。どういうことかというと、後書きには「私が趣味でやっているモータースポーツを作品に取り入れてみました」とか「中国で開催された国際ラリーにナビ役で出場したことがあります」みたいなことを書いてあったのですね。
 それでこの小説の方を読んでみると、中国でルパン一味が高価な壷を狙っているところから話しが始まります。銭型警部の妨害があったとはいえ、盗みは案外あっさり成功。翌日、ホテルの中で国外への逃走経路を考えていると、ラリー仕様の車に乗って旅をしていた2人の美人姉妹が登場し、ルパン達はわたりに船とばかりに、この姉妹とともに国外まで脱出を目指すというストーリーなのです。
 ここで、なんでわざわざラリー仕様の車なんて目立つものと一緒に、逃走する必要があるのかまず疑問がわいてきます。
 中国製のいい加減な地図を頼るより国際ラリー大会で使用された地図を利用した方が信用できるとか、鉄道などは見張られているとか、ここ中国では簡単にまともな車が買えない(壷を盗んだシーンでは事前に逃走用の車を入手できずに、キャデラックと名前のついたボロ自転車で逃走するハメになった)とか、いろいろこの脱出方法のメリットが書いていましたけど、後書きを読んだあとでは、要するに作者がルパンの冒険に、国際ラリーカーを運転する要素を無理矢理でも入れたかっただけとしか、思えなくなったのですね。ルパンなら変装を駆使するなど、もっと別の楽な逃走方法が選べそうなものです。
 これならいっそ、TVスペシャルの「ナポレオンの辞書を奪え」みたいに、狙った獲物がレースの優勝賞品だったとかで、ルパンがレースに出場するストーリーの方が素直でよかったんじゃないかな。

 ちなみにこの姉妹は日本人のうえ国際ラリーの出場経験があるそうで、見方によってはこの姉妹は作者自身を投影したキャラといえるかもしれません。「カリオストロの城」の影響を受けているのか、今回のルパンはヒロインの姉妹に接するときは、やたら自分のことをおじさん扱い(例えば「そんな風に頼まれるとおじさん困っちゃうな〜」みたいな感じ)しています。
 文章はどっちかというと軽いノリで、のんきなルパンに対してつっこみを入れたり小突いたりする次元や五右衛門らとの軽妙な言葉の掛け合いが見られるのは、このルパンノベルシリーズの中ではアニメ版のルパンに一番近いかも。一転して終盤クライマックスのカーチェイスでは、銃で撃ち合うこともなく、熾烈な運転技術の勝負になります。ラリーに関する専門用語や解説も次々と飛び出して、激走中に出てくる薀蓄(うんちく)はイニシャルD並みです。
 ただ、ルパンを追いかける敵役がはっきりした存在ではなく、チャイニーズマフィアやら中国警察やら銭型警部とその部下達やらが混ぜこぜになって追いかけてくるだけで、ストーリー的には漫然と車でルパン達が逃げ回っているのみという、なにか気の抜けた作品に感じてしまいました。

 面白いところをあげるとすれば、作者の実体験を元にしたと思われるリアルな中国の描写。
 空港に到着したときからただよう中国独特の臭気や、科学調味料たっぷりのステーキ、ガラスカップに注がれたホットコーヒーとなぜか蒸してあるトーストの朝食に、次元が何度も辟易してしまうシーンなどがユーモラスに書かれています。また普通の観光客がお目にかかれない、中国内部の道路事情や、道路周辺の住民の生活ぶりは驚嘆ものです。
 粗末な服を着たまま、でも笑顔で遊ぶ子どもたちを見つつ、何が幸せかの判断はひとつではないと、ルパンがフォローらしきセリフを一応言っていますが、同時に中国は常識が通用しないとんでもない国というセリフも作中で何度も言っており、そっちの方がビシバシ伝わってくる内容でした。
 本書が発売されてもう20年にはなりますが、今はどの程度変わっているのでしょうか。あれからオリッピックも開催しているし、空港あたりはさすがに変わっていると思いますが、内陸部の方までは全然変わってないと思うに私は一票入れたいのですが。

 あと、この作品につっこみを入れさせてもらうと、冒頭でルパンが「ごぞんじ、名盗アルセーヌ・ルパンは俺のひいじいちゃん」とか自己紹介していますが、それじゃ君はルパン四世なのだね。


2009年08月30日(日) ルパン三世 フリーファントム作戦(集 新矢/双葉文庫)

 双葉のルパン小説シリーズ第5作目。2・3作品の中・短編を収録していた今までとは違って、今回は一冊まるまる1話の長編です。
 ちなみにこの話しは、ネタバレすると面白さが半滅するタイプのものなので、ちょっと粗筋はぼかして書きます。

 まずこの冒険は5章編成になっていて、第1章でいきなりルパン一味が1人ずつ惨殺されていくという、ショッキングな出だしになっています。第2章の冒頭でみなさん元気に復活していますけどね。
 ルパン達は表向き死んだことにされたまま、「R」という謎の人物の依頼を受けて、人類を作ったともされる謎の宇宙人の基地に潜入することになるのです。宇宙人の本拠地はなんと地球人になじみ深くあのでっかい月そのもの!という突拍子もないというか、奇抜というか、凄いストーリーです。この話しによると、MJ−12文書やUFOによる誘拐事件、全ての血液が吸い取られた動物の死体(ミューテレーション)など宇宙人からみとされるオカルト事件も、本当に宇宙人がやったこととして紹介されているのですねー。
 さらには宇宙人とアメリカの上層部の一部は結託しているそうで、基地には人間の兵士も登場。マッドサイエンテストみたいな医者まで登場して、誘拐した人間を実験台に、動物とかけあわせるショッカーみたいな実験などやってます。もっともおぞましい姿になった被害者達が生きたまま悶えているところに出くわしたり、誘拐された8歳の少女が爬虫類に改造されたりするシーンには嫌な気分になります。
 ルパン達も宇宙人が相手となると、情報不足のためか勝手が違うらしく、あっさり捕まったまま脱出もロクにできず、銃や刀などの武器も押収され、ただ敵にいいように扱われてばかり。辛うじて反撃できたのは、拳銃も通じない怪力男どもを、五右衛門が拳法で気絶させた場面くらい。(でも刀なしで戦う五右衛門ってのは新鮮でいい)
 終盤のドンデン返しのような真相の判明からは、やっとルパンらしい派手な反撃がはじまります。でも脱出したあと、不二子が体内に隠し持っていた小型核爆弾内蔵のライフル弾で基地を爆撃するというのはやりすぎではないだろうか。

 ネットを見てると、結構この作品について好評な意見が多かったのですが、私的にはこの作品の人体実験からみのエピソードや、最初のルパン一味皆殺しのオチについて、物語の演出効果よりは嫌悪感の方が先に感じてしまい、そのせいでどうもこの作品が好きになれなかったのでした。
 中盤でルパンが宇宙人が人類を創造したことに対して精神的なショックを受けるシーンも違和感感じたし。ルパンをしかりつける次元に対して「わかってあげて。キリスト圏の人間には私たちには想像もできないほどショックなことなのよ」みたいなことを不二子が言っていましたが、ルパンって敬虔なクリスチャンだったのかな?
 そもそも物語の設定に無理がありすぎます。アメリカが陰湿な面をもった国だという、作者の意見は別に否定しませんが、ハッタリにも限度があるだろうとね。読んだ方そう思いませんか?


2009年08月29日(土) ルパン三世 アムネジアの砂漠(吉本正彦、鎌田秀美/双葉文庫)

 本書は双葉のルパン小説本としては第四作目で、「アムネジアの砂漠」(吉本正彦作)と「イーヴル・シティへようこそ」(鎌田秀美)の二話を収録しています。

 「アムネジアの砂漠」は悪徳商人から特大ダイヤを盗んだルパンが、追っ手に攻撃されそのときのショックで記憶喪失になってしまうというストーリー。ゲームブックの方でも記憶喪失になった話しがあったし、前にあったTVスペシャルでも記憶喪失ネタがあったしで、ルパンは本当に記憶喪失になりやすい体質ですな。
 んで、ダイヤの所有者の部下に取調べられているルパンを、ダイヤの所有者の敷地内に、捜査協力を拒まれてこっそり忍び込んでいた銭型警部に発見され、なんだかんだあって二人で脱出するという展開で、そこに不二子が狙っている未発見のピラミッドの財宝をめぐる話しが絡んでという風に、盛りだくさんの内容になっています。
 もっとも盛りだくさんすぎて、記憶喪失の設定がルパンの能力を封印する以上の効果を出していないし、ピラミッド探索の様子も悪徳商人の雇った暗殺部隊の存在も、全部中途半端な扱いになっている感じ。読み終わったあと、全体に印象に残りません。TVスペシャルならまだしも、短編で扱うにはネタが多すぎましたね。

 むしろ本のタイトルにならなかった「イーヴル・シティへようこそ」の方がかなりインパクトのある話でした。世の中の大抵のお宝を盗んでしまい、もう目標がなくなったとかで、出だしからなんだか黄昏ているルパン。ルパンとは気づかすに、「逃げ出したリリアンという少女を探し出してくれ」と持ちかけてきた悪党の依頼を、何の気まぐれからか受けてしまいます。
 これがなかなかえぐい話しでして、リリアンという少女は非合法な児童ポルノビデオに出演する子なのでした。調査のためにルパンが入手したリリアンの出演するポルノビデオの中で、別の少女が麻薬漬けにされアソコに割れたビール瓶を突っ込まれたうえ、腹をナイフで裂かれて内臓を飛び散らせて殺されるというシーンが書かれています。昔、新聞の社会ルポで海外ではそんなことが実際にあると読んだことはありますが、今までのルパンに登場する悪党はいわゆる映画的なギャングばかりで、そんな生々しいことをする奴はいなかったですから、衝撃的でした。間違ってもアニメ化はできない題材でしょうね。
 そんな描写のせいもあるのか、全体的にシリアスかつ退廃的な雰囲気で物語は進行していきます。終盤までルパンは淡々と調査を続けていきますが、読んでいてなんともいえない重い気分になってきます。悲惨な展開も多く、最終的にはルパンが悪党たちに復讐を遂げて終わるものの、その痛快なはずのシーンはわずか1ページのオマケ程度にしか書かれておらず、フラストレーションが貯まってしまいました。
 また、ルパン以外のいつもの出演メンバーは登場せず、ルパンという名前すら、冒頭で自分がそう名乗っている他には一切登場しません。ルパン三世というより別のハードボイルド小説を読んでいる気分にさせる作品でした。


2009年08月28日(金) ルパン三世 エルドリア大脱出作戦(樋口明雄、沙藤いつき/双葉文庫)

 小説版ルパンシリーズ第3作目。本書も2作収録されていますが、本のタイトルにもなった「エルドリア大脱出作戦」が本全体の7割くらいを占め、中篇くらいの長さの作品になっています。
 樋口明雄さんは、1作目にも書いていますから2度目の登場ですね。ちなみに彼は、2005年にも同じ双葉社から「深き森は死の香り」というタイトルのルパン三世の小説を発表しています。 

・エルドリア大脱出作戦(樋口明雄)
・泥棒さんたちの華麗な休日(沙藤いつき)


 「エルドリア大脱出作戦」は、これはちょっと目新しく、銭型警部を主人公にした作品。
 プロローグで南米にあるエルドリア国でルパンをついに逮捕した銭型。しかし喜びもつかの間、エルドリア国の政情不安により飛行機も飛ばず、国から脱出できなくなったルパンと銭型。この国は、最新型戦車を従えた軍隊が街を焼き民衆を蹂躪し、旧式なライフルを担いだゲリラたちが、政府軍兵士をなぶり、街ごと軍を吹っ飛ばす。銭型も呆然とするほど、無意味な虐殺の応酬が続く最悪の国。果たして2人は無事この国を脱出できるのか。
 こんな感じのストーリーです。作者のあとがきによると、名前こそ変えているものの、エルドリア国は現実に存在する国であり、そこで実際に起こっていることを書いてみたそうです。(本文を詳細に読んで世界地図を見れば国も特定可能)
 銭型とルパンの移動中にも、兵士が市民をテロリスト容疑で射殺したり、後のシーンでは反対に命乞いをする兵士達が一人残らず射殺されたりと、悲惨な光景を見るシーンが続きます。本作はルパンの冒険というよりは、銭型の目を通して見たドキュメンタリー風の作品といってもいいかもしれません。
 もっとも、ルパン小説として面白くないかというとそうでもなく、銭型が助けたテロリストの女と銭型の淡いロマンスや、銭型とルパンの友情物語のような展開はなかなか魅せてくれます。
 特にルパンたちを逃がすために自ら囮になった銭型が、敵に捕まり銃殺刑が決まりながらも「俺は(あのとき)ルパンを逮捕できたんだ。悔いはない」と清清しく空を仰ぐシーンは泣けます。もちろん、刑の執行直前にルパンが、銭型を助けにきたことはいうまでもありませんが。
 テーマがテーマだけに雰囲気は重いのですが、こんなルパンもありかもしれません。


 もう一方の「泥棒さんたちの華麗な休日」はうって変わって軽い作風の短編小説です。「エルドリア大脱出作戦」が重かっただけに、本のバランスを取る意味でもいい感じだと思います。
 作者の沙藤いつきさんは、少女小説風ゲームブック、ペパーミントシリーズの「オリーブたちの危ない放課後」シリーズなどを書いています。もともと、このルパン小説シリーズを読もうと考えたのは、「オリーブたちの危ない放課後」が面白かったので、同じ作者のこの作品も読みたいと思ったことがきっかけなのでした。
 ストーリーの方はというと、ルパン、次元、五右衛門の3人は、優雅なバカンスを楽しんでいた。3人それぞれの好みにピッタリあった食事が提供され、魅力的なナースに毎日楽しく健康診断をしてもらい、プールに射撃場に人工スキー場完備のスーパーリゾート地。その正体はパラダイスと呼ばれる謎の刑務所だった…というもの。
 刑務所でバカンス。無茶な設定です。無茶苦茶ですが、面白いです。刑務所のくせにアホらしいほど、いたれりつくせりのサービスでもてなされるルパン一味。和服姿の美女ナースに裸にされて、慌てふためく五右衛門など、他の小説ルパンシリーズではあまりない、ルパン三世のコミカルな一面が中心に書かれています。
 ところでこの話しの結末では、ルパン一味は結構な財宝を盗み出すことができます。ルパンって、金にならない事件に巻き込まれるか、苦労して手に入れた古代の財宝が現代では無価値のものだったとか、財宝の正体は古代遺跡だった(ルパン曰く「おいらのポッケにゃ大きすぎらぁ」)みたいなオチが多い気がするんですよね。まともな財宝を盗むのに成功した今回の話しは、実は貴重なんじゃないでしょうか?


2009年08月27日(木) ルパン三世 星を盗む男(山口 宏、大出光貴/双葉文庫)

 引き続き小説版ルパンシリーズの紹介です。本書はシリーズ2作目で、2作品が収録されています。

・9ミリ弾の悪魔(山口 宏)
・星を盗む男(大出光貴)


 「9ミリ弾の悪魔」の作者の山口宏さんは、ルパンゲームブックシリーズでは「Pファイルを奪え」を上原尚子さんとの共書で書いています。それに他出版社でガンダム物のゲームブックも書いているかな。本職はアニメの脚本家らしいですが。
 さて、この作品はぞっとするような話しになっています。
 タイトルに登場する「9ミリ弾の悪魔」とは、拳銃の弾丸として使えるように設計された超小型“核”爆弾のことです。小型ながら弾丸の着弾地点の物や人の周辺は爆破の威力で瞬時に蒸発、さらに四方1キロに放射能汚染が広がるという世界で一番おっそろしい弾薬なのです。さらには拳銃の弾丸の飛距離なんて、せいぜい4・500mといったところで、撃った人間も被爆は免れないというから狂気そのものです。
 この話しが恐ろしいのは、社会を憎み多くの人間を道連れに殺して死んでやろうという自暴自棄で危険な考えにとりつかれた青年が、その弾丸を3発手に入れたということです。
 今回登場するのは、ルパンと次元。ひょんなことから、2人はこの青年の妹に出会ってしまい、(しかも彼女はアイドルで、次元はファンだったらしい。出会ったときの次元の興奮ぶりがちょっと可笑しい)この事件に巻き込まれてというか、自分から関係してしまうのですが、青年の手から悪魔の弾丸を奪うために奔走するわけです。シリアスで緊張感のあるテンポの小説で、キャラクターの存在がたっているので、一気に読ませてくれます。
 ただ明るい話ではないので好みはわかれそう。それにしても現実に最近多く発生している無差別殺傷事件などを考えると、今では洒落にならないかもですね。

 「星を盗む男」の方は、双葉ゲームブックの桃太郎シリーズなどでお馴染みの大出光貴氏の作品。もっとも桃太郎シリーズのようなギャクは一切なく、こちらもシリアスタッチです。ただ、宇宙人らしきものが登場するきわめてSF的な設定になっています。
 ちなみにタイトルにある“星”とは本物の星ではなく、特殊な隕石のことです。謎の女に依頼されてこの隕石を盗みに、研究所に忍び込んだルパンと次元が見たものは、全ての研究員が惨殺された生々しい殺害現場。そして、そこには人間離れした力をもつ2人の男達が待ち構えていた!というなかなかショッキングな出だしで物語が始まっています。
 こちらの作品は、宇宙人と思われる謎の存在がなにをしたかったのか、また隕石の正体はなんだったのか、ある程度説明はあるものの、そのあたりがあまり釈然としないまま終わってしまいます。
 謎が残るからこそ超自然な存在になるという一種のホラー的な演出を出す意味があるかもしれませんが、悪くいうと作者が話しを途中で投げ出したようにもみえますね。もともと殺伐とした展開は、個人的にあまり好きではないので、その点がマイナスに感じたせいもあるかもしれません。


2009年08月26日(水) ルパン三世 戦場は、フリーウェイ (樋口明雄、塩田信之、吉岡平/双葉文庫)

 本書はゲームブックではありません。小説です。
 双葉文庫から発売されたルパンゲームブックシリーズは、2004年7月の冒険記録日誌などにも感想を書いていますし、この日記を読むような方なら、もうご存知の方も多いかと思います。しかし、ゲームブックシリーズ発売と平行して小説版ルパン三世も発売されていたのはご存知でしょうか?
 ゲームブック版と同じような装丁のうえ、こちらも毎巻別々の作者の手による作品です。この小説版は全6巻までシリーズ化されましたが、なかには双葉のゲームブックで馴染みのある作家が手がけている作品もあり、ルパンゲームブックシリーズとは兄弟のようなものといえるでしょう。
 そんなわけで前からこの小説版ルパンシリーズにも興味をもっていた私は、最近やっとこの全6巻を入手することができました。
 ひととおり読んで見ましたが、ハードボイルドタッチやシリアスな作品が多いです。特に「イーヴル・シティへようこそ」(4巻“ルパン三世 アムネジアの砂漠”に収録)は 、これが本当にルパン三世の世界かと思うほど悲惨な内容に、読み終わったあとズシリと気分が沈んでしまいました。名作という意見もネットで見かけましたが、アダルト向けの作品だと思います。
 私的には、ハードボイルドなルパンも大好きだけど、「泥棒さんたちの華麗な休日」(3巻“ルパン三世 エルドリア大脱出作戦”に収録)のような、すちゃらかな面のルパンを描いたノリの軽い作品がもっとあっても良かったと思うんですけどね。幅広い設定に対応でき、作風も製作者の数だけバリエーション豊かに作れるのがルパン三世の魅力と思っていますので。


 さて、本書の紹介ですが、本書は小説ルパンシリーズの第一作目で、以下の3作の短編が収録されています。

・戦場は、フリーウェイ (樋口明雄)
・泥棒さんと、殺し屋さんと、……ひとりの少女(塩田信之)
・五右衛門秘帳 −燃えよ斬鉄剣− (吉岡 平)

 まず、「戦場は、フリーウェイ」ですが、作者の樋口明雄さんは双葉ゲームブックでは定番の方でしょう。ルパンゲームブックでも「黄金のデッド・チェイス」、「黒い薔薇のノスフェラトゥ」を書かれています。
 次元の単独行動を中心にした作品で、他の仲間は終盤で少し登場する程度です。お宝を盗んだあと、ルパンと別行動をとっての逃走中に、わけありの少年を成り行きで助けてしまい、共に逃走を続けながら少年を狙う殺し屋と熾烈な戦いを繰り広げるというストーリーで、ハードボイルドの見本のような展開となっています。
 樋口明雄ゲームブックによくあるようなギャグは一切なく、殺し屋とカーチェイスをしながらの駆け引きするシーンの緊迫感はかなりの出来。もともと次元というキャラの人気が高いこともあって、ネットでの評価を見てもこの作品に対する評判は高いようです。そういえば以前、復刊ドットコムで本書の復刊が決まったはずですが、結局発売されたのでしょうか?音沙汰がないのですが…。

 「泥棒さんと、殺し屋さんと、……ひとりの少女」の作者、塩田信之さんも双葉定番のゲームブック作家ですね。ルパンゲームブックは「暗黒のピラミッド」、「謀略の九龍コネクション」、「九龍クライシス」となんと3冊も書かれています。ただ、ゲームブックの感想でも書きましたが、塩田ルパンは私の好みとは合わないんですよね。
 作品のストーリーは、慈善家だった小松原徹斎という男が死亡して、まだ高校生の養女、和美に莫大な財産がわたることになったというところから始まります。それを男の本当の息子であり悪徳政治家としても有名な小松原哲也が不服に思い、政界の影の大物に頼んで殺し屋を使って和美を始末しようと考える。そんな事情も知らず、ルパン一味は小松原家の財産を盗み出そうとしていた。盗みに入った先で事情を知ったルパン達は、当然のように和美の味方をするようになって…という感じで物語は展開していきます。塩田さんのHPによると、映画“カリオストロの城”を意識して書かれたとの事で、執筆当時はまだ高校生だったそうです。
 それと、この作品で登場する殺し屋は、人の良い性格でおよそ殺し屋家業に向いてないのに、気迫と執念で五右衛門と互角に渡り合えるほど腕はいいという、設定が破たんしてるだろと突っ込みたくなるキャラとなっています。彼のコードネームも“ラブリーエンジェル・ゴルゴ0013号”と小学生が考えたような変態チックな名前です。(雇い主がつけた名前で、殺し屋本人は気にいっていないらしい) 「戦場は、フリーウェイ」に登場したシリアスな殺し屋(コードネームはスパイダー)との落差があまりに激しいので思わず笑ってしまいました。
 あと読んでいると、妙に説明的な文章が多いのが気になりますが、まあ、その点を除けば、軽めの作風で最後は万事HAPPYENDという展開なので、そうゆうのが嫌いじゃなければ安心して読めるでしょう。

 最後に「五右衛門秘帳 −燃えよ斬鉄剣−」の作者は吉岡平さん。ゲームブック作品は、ルパンシリーズの「さらば愛しきハリウッド」しかありませんが、のちに著作の「宇宙一の無責任男シリーズ」(アニメでは「無責任艦長タイラー」)のアニメ化などで有名になった人です。
 こちらの作品は五右衛門を主人公に据えた剣豪小説といったところ。五右衛門が少年時代に入門していた道場で因縁のあった兄弟子が、五右衛門に文字通りの真剣勝負を申し出てくるお話です。この兄弟子は斬鉄剣の製法を知っており、作中には斬鉄剣の兄弟刀が何本も登場するのがちょっと面白いです。
 とにかく五右衛門がシリアスで格好良い役回りなので、最近のテレビスペシャルなどで、くだけて来たというか少しずつ三枚目的な方向に向かっている五右衛門が不満な人には、是非読んでもらいたい作品です。ラストも五右衛門らしく渋いし、天敵である女性も今回は不二子以外には登場しませんしね。他のルパンメンバーも登場しますが、完全に脇役に徹しています。
 気になったのは、少年のころの五右衛門の描写。女と間違えそうなほどの美少年剣士と書かれています。うーむ、なにか違和感あるなぁ…。


2009年08月25日(火) 名探偵コナン 「嗤う黒猫」殺人事件(齋藤高吉・冒険企画局/メディアファクトリー)

 ミクシィのゲームブックコミュで、名探偵コナンのゲームブックが出たと聞いて買ってきた本です。ところどころ解答をみてしまいましたが、なんとかクリアしました。
 著者は齋藤高吉(冒険企画局)とのことですが、冒険企画局といえば雑誌ウォーロックなどでもお馴染みの団体ですから、ゲームブックも本格的なものが期待できるなぁ。さらに人気アニメの企画ものだから注文せずに店頭で買えるだろうなぁ、とは思いながら本屋にいったのですが、漫画本コーナーで平積みされていたのでビックリ。
 創土社のゲームブックはもとより、ボビージャパンのゲームブックだってライトノベル系の本が充実している大型本屋でしか見られなかったのに、この本はどの本屋にいっても同じように平積みで置いています。いやはやすげぇ。さすがは大人気アニメですな!

 しかし、この作品自体の内容には不満です。自分的にはまったくダメダメでした。理由は一つで、ゲーム本編にコナン君がまったく登場しないからです。
 本書は米花町でおきた連続殺人事件を解くことが最終目的なのですが、その謎を解く鍵は15年前に書かれたゲームブック「嗤う黒猫」にあるという設定です。このゲームブックは、本書の8割以上のスペースを使って収録されており、読者はまずこのゲームブックを解くことから始める必要があります。というか、ボリューム的に考えてこれが本書のメインです。(余談ですが、イラストに描かれている「嗤う黒猫」の本の装丁が、社会思想社のゲームブックにそっくり)
 「嗤う黒猫」は、探偵を主人公に殺人事件を捜査する推理ゲームブックですが、これは世界観も登場人物も名探偵コナンとは無関係。名探偵コナンのゲームブックを謳っているのだから、コナンを主人公にするか、もしくは主人公を助ける立場としてコナンやその仲間達が登場するシナリオのゲームブックを、買った人は期待していたと思うのですが。普通にそうすればいいのに、なんでこんな捻くれた構造にしたのだろう?
 このゲームブックパートを解いて初めて本物の事件の項に進めるわけですが、コナン君はすでにこの事件を解決しているそうで、ここでもコナン関係のキャラは登場せず。それにもう解決している事件に挑戦しろという設定も、なにか気勢が削がれるなぁ。
 結局、コナンの登場は序盤のゲーム説明と袋とじになっている回答ページのみ。これじゃあ、コナンのゲームブックである必要は全然ないですよね。

 作中の「嗤う黒猫」を単体のゲームブック作品と捉えて感想をいうなら、普通のゲームブックにパズル問題をくっつけたような感じ。鈴木直人作品の「チョコレートナイト」なんかに近い感じがします。
 能力値などの設定はなく記号のチェックをするだけ。さらに3つの事件に分かれた3章仕立てのため、一編一編にかかる時間が短いところなんか手軽に遊べていいかな。
 欠点は、パズル部分がゲームブックのストーリーとあまり融合していないというか。捜査の最中に「ここで問題です」とでもいうように次々とパズルを出されるのには違和感を感じました。もっともゲームブックそのものは易しくて簡単な作りなので、このパズルがなければまるでやり応えがない作品になっていたことでしょう。

 あと、本書には携帯サイトを使ったサービス(新しいパズルの追加や、コナン君からのヒントメールなど)があるそうです。私も携帯サイトを見てみようかとも思いましたが、どうもうまく見れませんでした。自分の携帯の機種が古いのか、たんに自分が携帯を使いこなせないのか……。
 正直にいうと、この内容なら別に「嗤う黒猫」がゲームブックである必然性がなく、普通の推理小説に同じパズルをつけるだけで、十分な気がしました。米花町でおきた連続殺人事件に、鍵となる本が小説ではなくゲームブックであることを生かした謎解きなんかがあれば、ぐっと良くなっていたと思うのですがねぇ。


(追記)
 米花町でおきた連続殺人事件の犯人を当てるときに、ゲームブックならではの○○○パラグラフを使ったヒントがありました。解答ページを読み返すまですっかり忘れてましたよ。このヒントは少々強引な気もするとはいえ、なかなかやるな。


2009年08月24日(月) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 「マグナマンド・コンパニオン」

 マグナマンド・コンパニオンとは、ローンウルフシリーズの舞台であるマグナマンドを紹介するガイドブックです。かなりの大型書籍で本棚の場所をふさぐ困り者でもあります。(^^;
 ファイティングファンタジーシリーズの舞台を書いた「タイタン」などのように世界観を解説しているものですが、「タイタン」ほどの情報量はありません。そのかわり全ページがフルカラーでイラスト満載。模型を作ったり、ミニゲームがあったりと遊びの要素が強い本です。
 一番の注目は、パラグラフ数80の短編ゲームブックが収録されていること。そして主人公は本シリーズでは重要な脇役である魔法使い協会のバネドンなのです。
 内容はローンウルフ一巻と同じ時限軸で、ローンウルフとは逆に、バネドンが街からカイ修道院へ目指して、カイ戦士達に襲撃の危険を知らせるために走るのです。
 短いですが一巻を遊んでからこれを遊ぶと、二人の主人公の視点の違いを楽しむことができて面白さ倍増間違いなし。エンディングは、ローンウルフとバネドンの二人が出会ったあのシーンにつながっています。
 バネドンの使用できる魔法ルールは、カイ戦士のスキル関するものとほぼ同じシステムだったのがまた興味深い。この調子だとバネドンもローンウルフと同じく一巻毎に成長を続けているみたいです。


2009年08月23日(日) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 8巻「戦慄のジャングル」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 日本で発売された最後のローンウルフ。打ち切りというのはどのシリーズでも悲しいものですが、とりわけローンウルフは壮大なストーリーの流れが魅力だけに勿体ないです。
 ただこのシリーズは、嫌いとはいいませんが正直なところ、文体のそっけない感じと、作中のイラストは自分には合いませんでした。また昔の私はゲーム性を重視した作品の方が好みでしたから、ゲームブックブーム当時に私がローンウルフを知っていたとしても思い入れが沸く作品ではなかったと思います。
 もし違う出版社で発売されて、翻訳者が変わり、イラストも日本独自のものに差し替えられるなどすれば、また印象が違っていたかもしれませんね。あ、萌え化しろといってる意味じゃありませんよ?

 さて、この巻の目的は「オライドのロアストーン」を探し求めるというもの。
 沼地に残された見捨てられた寺院にそれはあるようですが、そこにたどり着くまでの旅が物語のメインなので、街や村や船を経由していく展開は6巻に近いです。違うのはこの巻には旅の相棒がいるということで、戦闘魔法を使えるペイドという貴族のおっさんが冒険の最初から同行してくれます。
 ネタバレ注意と前置きしているので、遠慮なくいいますが、ラストで彼は敵軍の手に落ちてしまうのです。カイ戦士の感では今後再会する予感があると語られていのですが、日本人作品なら美少女がやりそうな役どころですねw ペイドは重要人物になりそうなほどの、特徴的な性格や能力を持っているようには見えませんでしたが、続編が続いている海外の原書版の方ではいつどんな形で再登場しているのかが気になるところです。
 それから本書のプロローグとエンディングによると、5年も続いたダークロードの内乱は終わったそうで、再び一致団権したダークロード軍の侵攻に主人公側の国々は苦戦している様子。なんで内乱でお互いに潰しあっている間にダークロード軍を攻めなかったんでしょうねぇ。
 ゲーム中でもダークロード側の敵が久しぶりに登場しており、こいつらは精神攻撃をしてくるので、6・7巻ではあまり使われなかった“念バリア”が重要スキルに昇格しています。私はこのスキルを習得していなかったので、結構苦しい冒険でした。
 特に物語中盤に登場する「ナーグのヘルガスト」という敵が、ソマースウォードの力を持ってしてもなかなか勝てない強敵で、5巻ラスト以来の厳しい戦闘シーンでした。というより、今まで最低能力で遊んでいた私はここでどうしても進めなくなり、ここだけ戦闘に勝ったことにして進むというズルをしてしまいました。なんか悔しいなぁ。
 


2009年08月22日(土) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 7巻「死の城砦」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 この巻の冒険の目的は前巻とほぼ同じで、カイの教えを習得するために必要な秘宝「ヘルドスのロアストーン」を求めるというもの。
 ロアストーンは全部で7つあるそうで、当面の間は世界各地に散らばる「ロアストーン」を集める冒険が繰り返されるようです。鳥山明の漫画「ドラゴンボール」の初期の頃にあったドラゴンボール集めを連想させるような展開ですな。この調子だとロアストーン集めは12巻まで続く様子ですが、このシリーズの日本語版は8巻で打ち切られているので、最後までつきあえないのが残念です。

 今回も宿敵ダークロード軍は登場しません。この間に彼らはなにをしていたかというと、5巻でローンウルフに君主を滅ぼされて以来、ダークロードらの集まる首都では、次なる君主の座をめぐって内戦状態が続いているとのこと。この手のファンタジー世界での敵軍は、絶対的な存在が恐怖で配下を支配している図式のものが多いですが、ほとんど悪魔みたいなダークロード側も意外と人間くさいところがあるのかも。
 今回の目的である「ヘルドスのロアストーン」はザーダという邪悪な魔法使いが支配するという悪名高い要塞の島に存在しています。それにしてもこの島は、これ以上邪悪が広がらないようにと、善の組織による魔法のバリアで、丸ごと囲まれているという設定ですが、怪物はともかくこの島に住んでいる人間は、食料などの生活必需品をどうやって手に入れているのでしょうか?
 街から街への旅という屋外活動中心だった前巻の冒険とは対照的に、今回は最初から危険な要塞に忍び込むという展開のせいなのか、前作よりは厳しめの冒険になっています。考えなしに動いていると無用な戦闘を重ねてしまい、さしものローンウルフも最後には死んでしまいました。
 要塞の内部は廃墟のように薄汚れて人の気配が少なく、時々罠や怪物が配置されているという構造。よくあるダンジョン探索系の冒険に近い巻といえるかもしれません。


2009年08月21日(金) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 6巻「恐怖の王国」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 ローンウルフ第6巻。前回の冒険から3年経過した時点から物語は始まります。
 実をいうと、私が前述していた1〜5巻の冒険の記録は、Mixiの日記の方に昔書いていた内容なのです。そんなわけで今から書く6巻以降は、リアルタイムでも3年以上の期間が開いた冒険の再開となります。

 怠けていた私とは違って、ローンウルフはこの3年の間も、発見したマグナカイの書を元に、ひたすら修行を繰り返したそうで、カイマスターという称号にランクアップしています。そして新たに上位クラスの特殊技能(スキル)が10種類登場し、この巻では3つのスキルを習得することができます。もちろん過去に登場したスキルは全て習得済みです。
 しかし、上位クラスの特殊技能が登場したことで、ゲーム的には主人公がピンチに陥ることが逆に増えるという矛盾を感じてしまいました。なぜならこのシリーズによくある、「○○のスキルを持っているか?」という選択肢で、1〜5巻の冒険までなら10のスキル中、5〜9個を取得していたので「必要なスキルを持っている」という展開に進むことが多かったのに、6巻からは新たに登場した(この巻では3種類しか覚えられない)上位スキルの中から「○○のスキルを持っているか?」という選択肢になっているため、「必要なスキルを持っていない」という展開に進むことが多くなるからです。こんなことを考えるのは私だけだでしょうか?
 まあ、基本的にローンウルフシリーズは易しめのゲームバランスだから、問題ないといえばそれまです。ソマースウォードが相変わらず反則的に強いので、弓を使うなどの特殊な戦いや、過去の冒険でソマースウォードを紛失しているという状態でもない限り、戦闘ではほぼ無敵ですから。

 挑戦してみたところ、選択ミスにより一発で死んでしまうというゲームオーバーを3回ほど迎えたものの、クリアできました。
 この巻の冒険の目的は、カイの教えをより深くするために必要な秘宝「バレッタのロアストーン」を手に入れるというもの。いわば自分の力を高める為の旅であるため、今回は宿敵ダークロードの一派は登場しません。
 そのおかげか目立った強敵は存在せず、ストーリー的にも街から街へ移動するのが主です。利害関係のない傭兵たちと一時的に旅を共にするなど、ローンウルフにしては他の巻よりも気楽な雰囲気がただよい、実際に楽な冒険だったと思います。もちろん、逆恨みした貴族の待ち伏せや海賊の襲撃を、あっさりあしらえるローンウルフの強さがあるからこそ、そういえるのですが。


2009年08月20日(木) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 5巻「砂上の影」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 さて、ローンウルフは第5巻に突入。この巻でストーリ的には一区切りとなっています。
 この巻は表紙に「2部構成 ダブルアドベンチャー」と書いてあるので、さぞや凄そうにも見えたのだけと、中身を見ると単に200パラグラフのゲームブックが2編収録されているという意味でした。
 しかも2編のストーリーが続いているので、結局一本のゲームブックにしか見えない。これなら、「火吹山の魔法使い」だって「ティーンズパンタクル」だってダブルアドベンチャーだろ、と本に突っ込み。まあ、今までは350パラグラフの冒険だったのが、今回は計400パラグラフに増量している点では豪華になったともいえるけど。
 まあ、こんなことにケチをつけてもしょうがないので、このくらいにして、プレイ状況の報告をします。

 まずは王の命令により、平和条約の調印を行うためにバラキーシュという辺境の土地まで出席することになったローンウルフ。
 バラキーシュにたどりつくと、すでに平和条約を結ぶはずの領主が死んで新しい領主が誕生している状態になっていて状況は一変。ローンウルフは、衛兵達からひたすら逃げ回るというのが第一部。
 第一部終了後に読み返すと、むしろ衛兵達に捕まる展開の方が、簡単に牢を脱出して装備も取り返してあっさりクリアできたようなのですが、プレイ中は、命より大事なソマースウォードを没収されてはかなわんと、とにかく必死に逃げる選択肢を選びましたね。
 おかげで、下水道で変な病気には感染するわ、病気を治す薬草を探し回る羽目になるわで大変でした。下水道の衛生状態については、ソーサリーのカーレ(カレー)より酷い町です。

 それでもなんとか第一部は、一回目でクリアできました。ローンウルフは、特殊能力がとても役に立つし、基本的な戦闘能力も高い。
 またクリアに必須なアイテムというものが存在せず、重要なアイテムであっても、なければないでなんとかなってしまうところも、このシリーズを簡単にしています。最初は物足りなさも感じていましたが、この巻までくると、逆にそれがいいと思うようになってきました。
 映画や漫画の主人公はバッタバッタと敵をなぎ倒すのが普通なのに、他のゲームブックの主人公はいかに貧弱なことか。
 宝箱の鍵が開かないだけでさめざめと泣き出すような主人公より、アイテムや幸運に頼らずとも己の力だけで使命を果たせるローンウルフは格好よく、そして気持ちがいいのです。

 そして第二部突入。
 マグナカイの書とやらを探しにいくのが目的ですが、ソマースウォードが使えない状況に追い込まれるので、最後の敵が強い。あっさり撃沈です。
  第一部で回り道をしたおかげで、第二部の中盤にソマースウォードの代わりになる武器を手に入れていたものの、やり直してもなかなか勝てません。
 初期値の戦闘力が高ければソマースウォードがなくても問題なかったのでしょうが、たけたろうモード(最小能力値)で遊んでいた代償がここで一気に噴き出た感じです。
 数回目のチャレンジでなんとか勝利。もしかすると戦闘でダイズの代わりに使う乱数表に載っている数字の位置を、指が自然に覚えたせいかもしれませんが。(^^;)


2009年08月19日(水) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 4巻「運命の峡谷」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 今回初めて初回プレイにて見事にクリア。
 序盤は国王の命令により50名の兵士を部下として引き連れていく探索になっていて、ゲームブックでは珍しく隊長気分を味わえるという面白い冒険になっていました。
 不満点はどうやっても中盤までには、部下達が絶滅してしまうこと。最後まで部隊で行動して、最後まで生き残った部下の数で冒険の達成率とかを判定できるように作れば良かったのに、とか思ってしまう。
 ただ絶滅といっても、中には大半の兵士達を王の元へ帰らせて、10人だけ部下を連れて行く展開(つまり死んだのは連れて行った奴だけ)があったので少しホッとしました。50名の部下を全員死亡させてしまうのは嫌な気分だし、クリアできても、ローンウルフの指揮官としての手腕はどーなのかとも思うしねぇ。


2009年08月18日(火) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 3巻「カルトの洞窟」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 この巻は裏切り者のボタナーという魔法使いに相応の制裁を与えるべく、奴の逃亡先である氷雪に覆われたカルトの荒野まで追いかける、という冒険。
 割とさくさくと簡単にクリア。

 この巻までくると、カイ戦士の特殊スキル全10種のうち大半を取得できるおかげで、重大な選択肢があっても自動的に危険を察知して、正しい方向へ進めるので、冒険が非常に楽です。さらに前巻で取得したソマースウォードが強すぎる件もあり、楽すぎてゲームとしてはどうなのか、と少々物足りなさすら感じます。
 ただ展開によっては冒険中に全部のアイテムを(つまりソマースウォードも)紛失してしまい、そのまま戻ってこないということがよくありました。大抵はその後、発生した戦闘に勝てなくなってしまってゲームオーバーになります。
 一応ソマースウォードが無くなっても冒険は続くので、元々の戦闘能力が高ければクリアは可能みたいですが、その場合はソマースウォードは戻ってこないまま次の巻に進むようです。ソマースウォードをなくすくらいなら、そのままゲームオーバーになった方がましと思うほど、ゲームの難易度が違ってきますので、天国と地獄のコース分けといえます。

 ストーリー関係で気になったのは、冒険に同行してくれた3人のガイドさん。1人は死んだものの、残りの2人は途中で帰ってもらう展開だったけど、彼らは果たして無事に戻れたのだろうか。
 エンディングでは、亡くなったガイドをローンウルフが偲んでいたが、ここで全員死んだと解釈するべきなのか微妙なところです。


2009年08月17日(月) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 2巻「水上の炎」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 王様に報告をすませたローンウルフは、敵軍に対抗できる唯一の剣、ソマースウォードの探索に出発する。これがローンウルフシリーズ第二巻「水上の炎」の目的です。
 最初の冒険は、乗っていた船を沈められ、漁師達に身ぐるみはがされ宿代もなくなって、しかたなく馬小屋に寝ているところを、暗殺されて終わりという悲惨な展開でした。
 そのかわり二回目の挑戦では、危なげなくクリアできました。今度は350のパラグラフ数相当にはストーリーが長いので、第一巻で感じた手軽さは感じなくなりましたが、それでも面白いです。

 ちなみに私は戦闘力と体力を最低値に設定した「たけたろうモード」で遊んでいたのですが、このゲームの戦闘ルールでは戦闘力が劣っていても、一方的にダメージを負うわけではないので、体力さえ万全なら意外に戦えます。さらにこのゲームでは、ゲーム開始前に10の中から選択できるカイ戦士の特殊能力のうち一部を習得することが出来るのですが、戦闘時に役立つ特殊能力を捨てて、回復術と危険感知能力系に全て振り分ける作戦が的中したみたいで、多くの戦闘は避けることができました。

 今回の冒険中に一番悩んだのは、馬車の中にいた乗客の中から、スパイを見つけるシーン。
 ヒントらしいヒント(のパラグラフ)を見つけることができなかったのに、「君は犯人の正体がわかった。それは誰だ?」なんて、急に選択を迫られるのですから。
 もっともここは「一番、スパイと無縁そうな人物を選ぶ」という、ミステリーのお約束にしたがって選ぶと正解しました。(笑)

 またこの冒険で登場する宝であるソマースウォードは実に強力。たけたろうでもこの剣があれば無敵の戦士に変身してしまいます。その効果は戦闘点に8点のボーナスを加えたうえでダメージ2倍という、とんでもないものです。
 ファイティングファンタジーのゲームブックに換算するなら、戦闘時の技術点に+4の補正のうえ攻撃に成功すれば4点のダメージを負わせることができる、とでもいえばその強力さがわかるでしょうか?さらに敵の魔法を吸い込む能力なども備わっており、単純な戦闘以外のシーンでも役に立つのです。
 このソマースウォードは今後の冒険にも携えることができるようなので、ゲームバランスが悪くならないかと余計な心配をしてしまいます。


2009年08月16日(日) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン) 1巻「暗闇からの脱出」

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないで下さい)

 まずは第一巻「暗闇からの脱出」から。主人公の所属するカイ修道院が敵軍に奇襲されて、全滅したところからゲームが始まっています。
 焼け落ちた修道院を前にしばし呆然とする主人公でしたが、なんとか気力を振り絞ると、最後のカイ戦士として王様の元へこのことを報告に行こうと健気に決意します。
 道は二手に分かれていましたが、取得していた“第六感”スキルのおかげで、まだ周囲を敵が残党狩りを続けていることに気づき、森の中をひた走ります。
 途中で、敵のジャークどもに襲われている自分と同じぐらい若い魔法使いを発見すると、彼と手助けして敵を追い散らすのに成功しました。バネトンとかいうやつらしく、やつと友情を誓ってから別れます。
 森を抜けて近くの村にいくと、ここも敵の襲撃を受けたらしく、村人が死んでいます。槍を一本手に入れると、先に進もうとすると、カラスが一羽意味ありげに木の枝に止まっています。しかし動物語が離せないので、無視するとカラスは飛んで生きました。
 そのまま小道を歩いていくと、さっきのカラスを腕に止め、長いローブを着た謎の人物が立ちはだかっています。
 槍をかまえつつ、用心しながら近づいていくと、人間離れした甲高い声をあげながら襲ってきました。ダークロードの手先ボルダクです。同時にそばに隠れていたらしいジャークどもも大勢あらわれます。
 どうやらカラスは偵察要員だったようです。なすすべもなく、多勢に無勢で押し切られ、ボルダクに首を絞められて最初の冒険は終了。


 四回目の挑戦で無事に王様に会うことができ、クリアできました。
 パラグラフ数が350もある割りに、意外とストーリーが短く思ったよりあっさりした感じです。そのぶん分岐の幅が豊富なので、何度も遊べるのかもしれませんが。
 クリアしたときは、一回の戦闘も経験せずにクリア出来たのが驚き。これならたけたろうだって、クリアできそうです。
 私が長い間、このシリーズを遊ぶのをためらっていたのは、遊び始めると時間がかかりすぎるような気がしたからなのですが、これくらいのボリュームなら気楽に楽しめますね。


2009年08月15日(土) ローンウルフシリーズ(ジョー・デバー&ガリー・チョーク/ボビージャパン)

 海外ではあのファイティングファンタジーシリーズにも負けていないとされた人気シリーズ、ローンウルフの紹介です。紹介といっても、熱烈なファンによってすでに語られているサイトもあるシリーズですから、私は単純に遊んだ感想でも書く程度にするつもりです。

 まずこのシリーズがどんな内容かといいますとオリジナルのファンタジー世界が舞台で、主人公の所属するカイ修道院が敵軍に奇襲されて全滅。たった一人が生き残った主人公が最後のカイ戦士として巨大な敵と戦っていく、というのが大まかなストーリーです。冒険は各巻ごとに完結していますが連続性があり、全てをつなげると大作ファンタジー小説のようなものになる壮大な冒険となっています。
 主人公は魔法使いではありませんが、単純な戦士でもなく、カイ戦士のみに伝授される特殊な技術(例えば偽装の技術や動物との会話術、それに念力のようなもの)が使えます。カイ修道院は、忍者とか軍隊でいう特殊精鋭部隊の養成所のようなものだったのかも。ローンウルフシリーズというシリーズ名から、激渋いキャラを予想していたのですが、カイ修道院への襲撃から主人公が難を逃れた理由が、授業をまじめに受けていなかった罰として薪拾いに行かされていたから、というのが少々情けない。しかも遠くで修道院が襲撃される様子を目撃して、急いで駆けつけようと慌ててしまい、地面につまづいて木の枝に頭をぶつけて気絶。目が覚めたときは全てが終わっていたというのだから、意外にオッチョコチョイなところもある奴です。

 次にゲームシステムですが、カイ戦士の特殊な技術(スキル)は全部で10種類あり、そのうちから5つ選んで冒険を始めることができます。このシリーズではヘタな能力値より、その局面局面で役に立つスキルを持っているかどうかが、クリアの為にかなり重要な要素といえます。まあ、特定のスキルがないとクリア不能ということは遊んだ限りではなかったので、あまり難しく考える必要もないみたいですけど。
 また1巻の冒険を終えるたびに新たにスキルを1つ覚えることができるシステムで、全てのスキルを覚えるはずの6巻以降はどうなるかというと、また新たな上級技能が追加されて、その繰り返しのようです。
 戦闘に関するバランスはそれほど厳しくないかな。私は全ての能力を最低値にして遊んでいましたが、苦戦しつつも5巻まではクリアできてしまいましたから。立ち回りがよければ、戦闘そのものを極力さけることができたことと、シリーズ途中で入手できる剣、ソマースウォードが異様に強力だったことが大きいです。むしろ平均以上の能力で遊んだら主人公が強すぎて、物足りないかもしれません。ソマースウォードが使えない状況や無くす展開も多いので油断はできませんが。
 ゲームの仕掛けとしてはどの巻も凝った作りはなく、どちらかというとストーリー重視。そのうえに重厚な世界観という味付けもあるので、雰囲気が気に入れば楽しめるシリーズといったところかな。

 日本では知る人ぞ知る名作!といった評価でシリーズの知名度は今ひとつ。和訳されたのは8巻までとローンウルフの世界観を紹介した「マグナマンド・コンパニオン」というガイドブックだけですが、原作は28巻まで出ているようです。
 私もゲームブックブームのころは、まったく存在を知りませんでした。そういえば雑誌ウォーロックでも、ボビージャパンから出たゲームブックって、皆無とはいいませんがほとんど紹介されていなかったですね。
 この内容なら日本でも、新書サイズのこの本を文庫本サイズに変え、カバーイラストも日本人向けにするなど、売り込み方法を考えればもっと人気がでた気がします。今ではクイーンズブレイドとかラノベFFとか出しているボビージャパンも当時は必要以上に硬派だったんだなぁ。


2009年08月14日(金) 太陽神の宝玉(原案:安田均 文:下村家恵子/社会思想社)

 「太陽神の宝玉」とはウォーロック50号に掲載されているゲームブックです。文庫化はされておらず、360パラグラフの作品ですが、この雑誌に今まで収録されていたゲームブックは、200パラグラフかそれ以下の作品が大半だったことを考えると、ちょっとした大作にみえます。

 ストーリーは、タイタンのアランシアが舞台で、太陽神グランタンカを崇める一族の若者である主人公が、謎めいたローブの男のお告げを聞き、迷宮の奥深くに眠るという“竜の宝玉”を捜し求めるというもの。サムカビット公の治めるファングという街から冒険が始まっています。
 この作品の特徴は、TRPGのアドバンスト・ファイティング・ファンタジー(以下AFF)のルールを使用していること。同社からはT&Tのソロシナリオゲームブックが何冊が発売されていますが、それのAFF版みたいなものと考えたらいいでしょう。あ、和製ゲームブックだけあって、T&Tのソロシナリオみたいに滅茶苦茶な罠や展開はないですよ。
 通常のファイティングファンタジーゲームブックにある技術点、体力点、運点に加えて、各種スキルを覚えることができるので、結構個性的なキャラを作ることができます。TRPGのルールを使用しているだけあって、習得可能なスキルの数は半端なく多いのです。魔法スキルをとって魔法使いキャラにするのも、“素手戦闘”スキルを最大値までとって格闘家風のキャラにするのも自由で、まさにプレイヤーの思い通りのキャラが作れます。
 しかし、ここで問題が一つ。いくらパラグラフが多めとはいえ、ゲームブックという容量の限られた今回の冒険では、どうしても沢山あるスキルを生かしきることができないのです。“感知”や“回避”のような危険にとっさに対応するスキルはまだしも、今回の冒険では“海の知識”とか“礼儀作法”のようなまったく出番のないスキルも結構ありました。
 結果的にいつ必要になるかわからないスキルより、戦闘に直接役に立つスキル(武器を使いこなす能力とか、追加ダメージが増える“剛力”とか、相手の力を削ぐ“骨抜き”などの魔法スキルとか)を優先して覚えた方が、得になっているのが残念なところ。
 実際にやっても、雪山や森の迷路などでは“森の知識"などの非戦闘系のスキルを生かしつつ、知恵と機転で罠や敵との遭遇を回避しながら進む、という攻略を期待していたのですが、次々と戦闘を繰り返す展開になることが多かったです。
 ストーリー的にも終盤の展開を除いては、たんたんとした調子で旅と探索が続くだけ。そのうえ戦闘自体もダメージ量の判定とか、サイコロを振る数が少し多くて面倒なので、少々プレイがだるい感じでした。複数相手との戦闘方法を簡略化したり、魔法システムをマトリクス表を使って処理するなど、ルールに工夫はみられるとはいえ、ちょっと避けられない戦闘の数を減らしてほしかったな。
 ほかにこの冒険はNPCの仲間一人と一緒に冒険できる(序盤の分岐によって出会う仲間が違う。望むなら一人で冒険してもいい)ようになっています。仲間がいれば戦力的にパワーアップするだけでなく、戦闘で負けても運試しに成功すれば、仲間が残りの敵を退治してくれることすらあり非常に楽チン。このぶんだとサイコロの目が悪くて能力の低い冒険者であっても、仲間がいて戦闘スキルが充実していれば、クリアはできそうです。
 ただ、戦闘で死んでしまった場合でも、謎の存在によってすぐ生き返れたうえに、戦闘に勝ったものとしてそのまま冒険を続行できるシステムは、さすがにやりすぎな気が。あまり死にすぎるとクリア後に収得できる経験値が減るとはいえ、まじめにルールを守って遊ぶ気が萎えます。一本道シナリオで展開のバリエーションが少ないから、何度もプレイさせると苦痛になるだろうと思って、こうしたのでしょうか? (ただし戦闘で負ける以外のゲームオーバーは存在します。最初の冒険のときは、“ナンカ”という精霊にとりつかれて終わっちゃいました)

 このように感想を書くと不満点も多いのですが、ラストは壮大な冒険へのプロローグという感じで嫌いじゃなかったです。タイタンのしっかりした世界観がバックについているので、もしも第2章、第3章と続編が出ていれば、日本版ローンウルフみたいな一大キャンペーンゲームにできた可能性はある作品でした。そうすれば今回出番のなかったスキルも続編で役にたったかもしれないですし。
 もっとも、続編を予告するような記述がどこにもなかったので、もともと「続きはTRPGでやってください」という考えで、この作品は書かれたのかもしれませんね。


2009年08月13日(木) サムライ・ソード(???/ボビージャパン) その2

 まず、作者の表記について。リメイク版は、ジャクソンとリビグストンが作者という表記になっています。本当の作者は、Mark Smith と Jamie Thomsonです。社会思想社版でもJ・トムスンとM・スミスと表記されています。ジャクソンとリビグストンは監修者ですからこの嘘はいけませんなー。作者にも読者にも失礼な気がします。

 次に翻訳について。私はなぜか「サムライの剣」だけは原書をもっているのですが、意外にリメイク版の方が原書に忠実な箇所もあったりします。たとえば社会思想社版「銀斎」がリメイク版で「銀星」となっている件ですが、キャラが女性化してるのはともかく、原書ではGinsei。次に社会思想社版「鬼女」がリメイク版で「死股眼」原書ではShikome。こんな調子で名前はリメイク版の方が原書の読みに近かったりするものが多いです。
 大きいのは炭焼きの若者に弓を射るシーンで、どの矢を使うかという選択肢(パラグラフ207)です。社会思想社版では柳葉の矢(ダメージ2)か、かぶら矢(ダメージ1)の2択であるのに対し、リメイク版は柳葉の矢(ダメージ2)か、腸破りの矢(ダメージ3)の2択になっています。つまり社会思想社版は普通に攻撃するか脅かす程度にするかの選択肢であったのに対し、リメイク版は普通に攻撃するかはっきり殺傷を狙うかと、選択の意味合いが変わっています。これは原書ではWas it a willow‐leaf arrow or a Bowel‐raker?と表記されていますので、この箇所に関してはリメイク版の方が原作どおりです。
 また、銀星とのイベントの後にろくろ首の村へ向かう選択肢は、社会思想社版はこの箇所がバグか誤植じゃないかと思えるほど文章的にストーリーがぶつ切れになってみえるのですが、リメイク版は案内役の老人が追いすがってやってきて案内を申し出ることが、もう少しわかりやすく書かれているので文脈が自然につながっています。ここは結構嬉しいな。
 ただ、当て字のセンスがひどい。
 「八幡国」が「蜂漫国」、「長谷川喜平」が「馳皮奇兵」になってしまったのもなんだかなーですが、さっきのShikomeだって「死股眼」ではなく「醜女」が正しいと思うし、ちゃんとした固有名詞である河童を「喝破」って翻訳するのは無茶すぎでしょう。というわけで、翻訳全体については社会思想社版の方が圧倒的に好きですね。

 他のことでは前の2作もそうでしたが、プロローグとエンディングが原作より書き込まれているのはやはり良いです。私的に原作にいなかった忍者がプロローグで登場していたのがポイント高いです。
 それから「サムライソード」は技術点11・12くらいがあれば、ある程度は力押しなクリアも可能な作品です。それでも十分に難しいですが、「デストラップダンション」と「ハウスオブヘル」はどちらも正しいルートを外れるとバッドエンド確定という、本作をさらに上まわる高難易度ですから、リメイク版で初めてゲームブックに触れる人でクリアに自信がない場合は、こっちからやった方がいいかもしれません。



 ボビージャパンからはまだ3作しか出ておらず、今のところ次回作の噂も聞かないシリーズですが、この調子でいいですからリメイク版をどんどん出しちゃってください。当たり外れがあっても、それはそれで楽しめますから。ほんとお願いしますよ。


2009年08月12日(水) サムライ・ソード(???/ボビージャパン) その1

 「萌えともっともかけはなれたファイティングファンタジーシリーズをラノベ化しよう」という数年前なら冗談にしか思えない企画も、前2作がそれなりに売れたのか第3弾がでています。今度は「サムライの剣」のリメイクで「サムライ・ソード」です。
 さっそく、本書を開いてみると、巻頭のカラー口絵でいきなりメガネ少女が登場。「私はもう戻らねばなりません。四根さん、あなたにあえて私は…」としゃべってます。



誰だおまえ!?





 しかし、すごいですねぇ。前の2作は主人公を女の子にした点を除けば、思ったより大きな路線変更はなかったなと感じたのですが、今回はかなり大胆な変更ですな。
 あいかわらずゲーム性にかかわる部分はいじってないですが、キャラクターが180度変わってます。冒頭のメガネ少女は、熟年女魔法使いエリノアが、内気でどじっ子っぽいメガネっ娘のエレオノールに変わったものでした。粗暴そうな浪人サムライ「銀斎」はりりしい女剣士「銀星」になっているし、あまつさえ単なる動物だった剣士虎まで猫耳つきの野生児娘になってるのにはぶっとびました。
 イラストレーターは、まんがタイムきらら系の雑誌(萌え系四コマ誌。最近アニメ化で有名になった「けいおん!」の原作とかもあります)に漫画を描いている方だそうですが、なんともミスマッチ。絵が上手とか下手の問題ではなく、いくらなんでもこの作品とベクトルが真逆過ぎませんか。ギャグなの?わざとなの?
 まあ、「サムライの剣」のどこを萌え化するかと考えた場合、戦いの場で呼ぶ仲間がオール美女化させたのは、なかなかイイアイデアとは思います。狙いすぎて、萌えるとかいうよりギャグになっている気はしますが。ところで本書の背表紙に8人の仲間みたいなことを書いてますが、ここは7人の間違いですよね?もしかして茂市も数に入っているのかな?
 あとNPCキャラの多くを女性化&萌え化したためか、主人公は普通に男になっていますが、名前が「四根 今直」(しね いますぐ)というさすがにないんじゃない?いくら女性キャラに比べれば男なんてどうでもいいスタンスだったとしても、さすがに適当すぎる名前付けはやる気が削がれますね。
 ここまでいじられると茂市や大鬼のキャラが変わっていないのが逆に不思議に思えるほどです。

 しかし、こうゆうことはすでに他のゲームブックファンのサイトでも語られているようなので、次はラノベ化という視点を外したリメイク版の気づきを書きます。

続く


2009年08月11日(火) ハウスオブヘル(S.ジャクソン/ボビージャパン)

 現在ボビージャパンから発売されている、ラノベ化したファイティングファンタジーシリーズ作品の一つ。これの社会思想社版である「地獄の館」は、自分が始めて遊んだゲームブックなので思い入れがかなりある作品だけど、それを除けばむしろボビージャパン版の方が好きかも。

 現物をみるまでは、ゴスロリ衣装の幼女幽霊や、黒皮ボンテージに身を包んで鞭をふるうお姉さんとか登場するんじゃないかと予想していたのですが、この作品に限ってはそんな悪ノリは全然されておらず、大きな違いは主人公が女子高生になったくらいです。
 主人公が女性キャラになったことは、「デストラップダンジョン」では多少の無理矢理感を感じなくもなかったのですが、ホラーを題材にした作品では映画でも小説でも、女性が主人公というのがわりと定番の要素ですから、自然に思えます。必然的にイラストも、主人公の女子高生を中心に描いたものが多くなっていますが、これはこれで悪くないというか、逆にそうしないと嘘だろうという感じで、イラストの出来そのものにも満足。新たに書き起こされた文章も読みやすいし、変にくだけた内容にもなっていない調子なので不満はないです。
 あえて難点をあげれば、前にも書きましたが秘密の扉をあける言葉の謎かけのくだりが、翻訳によって意味がなくなっている(らしい)こと。これは社会思想社版も同じですし、原書に忠実である事にこだわる気は全然ないのですが、これのせいで秘密の扉を開ける場面では、消去法と勘のみで正解の合言葉を選択しないといけなくなっているのは確かで、ここはフォローしてほしかったかな。
 あとクライマックスでは、クリスナイフを使うことで原点を越えて技術点を増やしてもよいと明記されているので、ボス戦に絡む注釈が少しスマートになってます。(原書にはそのような表示はないらしく、社会思想社版ではルールを解説したページに翻訳者の意見として、「ここは原点を越えて技術点を増やしてもいいでしょう」と書かれている)

 というわけで私の中では評価の高いこの作品。もし私がゲームブックを知らない人に対して、現在入手可能な本の中からゲームブックを薦めるとすれば、まずはこの「ハウス・オブ・ヘル」ですね。
 余談ですがゲームブックを知らなかった若い人に新・旧版を一緒に見せたところ、ボビージャパン版の方が面白そうに見えるといっていました。社会思想社版は洋書の薫りが強すぎると感じたようです。ちなみに「サムライ・ソード」の新・旧版も見せたところ、イラストのあまりの違いっぷりに爆笑していました。(w


2009年08月10日(月) デストラップダンジョン(I・リビングストン/ボビージャパン) その3

6回目
 ついに正解のルートらしい道を発見した。
 しかし大群の穴小鬼どもに追いかけられ、川に飛び込んでこれを一旦はかわすも、次の扉を開く鍵をもっておらずモタモタしているうちに、穴小鬼にみつかってEND。
 鍵、鍵か。確か4回目の挑戦のときには入手した気がするのだが、どこで手に入れたのか覚えてないな…。

7回目
 6回目と同じルートでやり直したら、宝石と一緒に鍵をちゃんと取得していたことが判明。いやいや、うっかりミスだった。
 先に進んでいくと、ピットフィーンド(技術点12体力点15)の化け物が登場。こいつを戦わずにやりすごすには、ロープと鉤爪と猿のお守りと運試しで吉がでることが必要なのだが、鉤爪をもってない。泣く泣く戦闘を開始してギリギリで倒すことに成功。
 その後も数々の強敵を蹴散らし、すべての宝石をそろえて終盤まで到着。最後の謎解きだけは昔の記憶が残っていて、一発で成功させて無事クリア。残り体力点4のキツキツながらクリアできました。

 とりあえずボビージャパン版も、遊んでみる分には普通のゲームブックでした。
 あと旧来のFFシリーズはエンディングがそっけないのが不満だったけど、リメイク板はこのあたりが充実されていていいね。


2009年08月09日(日) デストラップダンジョン(I・リビングストン/ボビージャパン) その2

2回目
 パイプみたいなところを潜っていたら、パイプが垂直に曲がっていたらしく、滑り落ちて死亡。

3回目
 ドワーフの審査官のところで錯乱したスロムに叩きのめされる。
 その前の罰ゲームで薬を飲んだら、技術点を2点減らされてしまったのが痛かった。

4回目
 終盤までたどり着いたが、またもやダイヤモンドが手に入らず、ノームの審査官のところでEND。
 確か女忍者に会えるルートは、弟好きの女トロールやら技術点12のアホみたいに強いモンスターにも遭遇するはずだが、そいつらにすら会えてないなぁ。

5回目
 またダイヤモンドを取れないまま終盤まで進んでEND。
 女忍者はいったいどこなんだ……。


続く


2009年08月08日(土) デストラップダンジョン(I・リビングストン/ボビージャパン) その1

 「死の罠の地下迷宮」をラノベ風にリメイクしてボビージャパンから発売された「デストラップダンション」をやってみました。
 ボビージャパン版を知らない人に社会思想社版との違いを説明すると、パラグラフ構造とか、戦闘ルールと敵の強さなど、ゲーム性に関する部分はほぼ一緒。文章については完全新訳のうえ、主人公は女性冒険者になって名前もつき、プロローグなどの文量が割り増しされ、ライバルの挑戦者らと事前に会話するシーンもあるなど、キャラクター小説的な要素が増強されています。
 主人公だけでなく、挑戦者の忍者も女(くノ一)に変化。妖精めいた女の表記は、はっきり女エルフになっています。
 イラストも漫画タッチな絵柄に一新されていますが、絵柄の構図は社会思想社版のものに準じているものが多いです。社会思想社版で珍しくセクシーだった、蛇にからまれている女エルフのシーンのイラストも健在ですが、からまれているエルフが幼女にしか見えないのはご愛嬌。
 ちなみに今回の挑戦は、全て技術点10〜12のキャラでスタートしています。避けられない戦闘でも敵が強いので技術点9以下の子は始まる前からゲームオーバー確定だからね。これだからリビングストン作品はぶつぶつ…。


1回目

技術点12
体力点19
運点11

 初回プレイはなかなか強い子ができましたよ。
 持参する薬は体力を全快できる“力の薬”を選択しました。これは他に体力を回復できる有力な手段の“食料”が指示された時しか食べられないルールなのに、その指示のある箇所がほとんどないからです。事実上、食事ルールは機能してないみたい。というより「デストラップダンション」のルールって、間違って別のゲームブックのルールを載せてないか?「死の罠の地下迷宮」のルールでは、薬が1服分で戦闘中以外は自由に食事ができたはずで、薬が2服分で食事は自由にできないというのは「火吹山の魔法使い」の仕様です。
 誤植じゃなくて、ルールを変えるつもりだったのなら、ちゃんと冒険中まで変更フォローしてもらわないとな。
 それから主人公が挑戦する順番は、6人の挑戦者のうち「死の罠の地下迷宮」では5番目でしたが、「デストラップダンション」では6番目になっています。もしかして展開も変化してるのかと一瞬期待したのに、最初の分岐点では先に進んだ挑戦者達の足跡が従来と同じく4人分しかありませんでした。あと1人はどこへ行ったよ?

 と、なんとなくリメイクの中途半端さというか手抜きぶりに疑問も感じつつも、ゲームを進めましたが、クリアへの道順を忘れてしまっていました。
 強力なパワーにものをいわせて、なんとか終盤までいきましたが、クリアに必要な宝石を1個だけとり逃してしまいEND。惜しかったけど、ライバルの女忍者に会えなかったのが敗因だなぁ。序盤はともかく、後半は正解の道順なんてヒントはないからねぇ。


続く


2009年08月07日(金) 謎の花火大会(奥谷道草/白夜書房)

 クロスワールドランド8月号に掲載されているはみ出しゲーム(ミニゲームブック)の紹介。
 考えてみるとこの手の雑誌は、全部のパズルを解くつもりなら相当の時間がかかるわけで、暇つぶしには最高のコストパフォーパンスですよね。さらに答えを書いて懸賞に応募すれば何か当たるかもしれないわけだし。
 もっとも私の場合、収録されているこのはみ出しゲーム目当てで購入していて、本編のクロスワールド部分は入院中のとき以来やってないので、我ながらもったいないですね。
 それでもはみ出しゲームを解くだけでも小1時間はかかるわけで、420円のコストパフォーマンスは漫画本一冊購入するのと同じくらいかもしれません。
 
 などと何の伏線にもならない前フリでしたが、今回のはみ出しゲームは「謎の花火大会」。旅行先の浜辺を歩いていたら、妙な老人に捕まって花火大会の花火の点火役を仰せつかるというお話です。
 ゲームがはじまると浜辺に描かれたマス目にそって花火に点火していけばいいわけですが、正確に4パラグラフ移動毎に点火していかないといけないそうです。マス目は例によって迷路状になっており、その中をウロウロ歩きながらなるべく多くの花火を点火すればいいというパズルになっています。
 これ、最初のプレイのときは簡単にクリアしてしまって、今回はえらく単純だなぁと思っていたら、「4パラグラフ移動毎」という条件を「4パラグラフ移動以内に」と勘違いしてました。確かに簡単なはずだ。
 もちろんちゃんとやり直したわけですが、浜辺のマッピングさえしてしまえば苦労せずにクリアできました。カニとかタコの喧嘩とかの妨害はあるものの、ゲーム的にそんなに難しいヒネリはなかったので、完成したマップを見るだけで正解のルートがわかるんです。逆にマッピングしないと全ての花火を打ち上げることは無理かも。

 ところで、今回遊んでみて思ったのですが、最近のはみ出しゲームに多い「今だけ○○ページの地図を見ていいよ」という序盤の大ヒントは、この難易度なら不要かなぁ。
 マッピングがしづらい作品などではかなり助かるサービスなのですが、今回くらいの作品だと「答えわかっちゃったから実際に遊ばなくてもいいや」くらいになりかねない気がします。
 もちろん人によってこのあたりの感覚は違うだろうから、ここは選択肢をもうけたらどうでしょうか。「むこうの暗がりに地図らしき看板が見える。方向音痴の君はフラフラと○○へ。あくまで自分の力で解きたい意地っ張りはそのまま○○へ」とか、3度目の挑戦になったら老人が見かねて地図を見せてくれるとか。

 あと今回は数を集めるタイプのはみ出しにしては、めずらしくオチがついてましたねー。日本の夏っぽくていいです。
 なんだか11発全部集めるより、ホドホドでやめたくらいの結果の方が、主人公が徳をしている気がしますけどね。3発以下の成績だと何気にホラーですなぁ。


2009年08月06日(木) 創土社近況

 ドルアーガの塔第3巻がのびのびになっているうえ、発売延期などの告知もなかった創土社でしたが、本日ミクシィにある編集者の酒井さんの日記が久しぶりに更新されていました。

 まずゲームノベルシリーズの刊行が止まっていることについてのお詫びを書いている一方、長い出版不況で他の本を優先して出すしかない状況を説明されています。おそらくゲームブックの売り上げはトントンくらいで経営的にプラスまでいってないのでしょうねぇ。
 ここ3年くらいの出版社の倒産ラッシュの激しさは本当にすごいとのことで、創土社が倒産しては元も子もないですから、まずは経営努力優先でお願いしますとしか言えませんね。とりあえず、今取り掛かっている3冊(内容からして学術書っぽい)が出ると、ゲームブック関連の仕事に戻る余裕が出るそうです。
 ただ、既刊の「送り雛は瑠璃色の」「魔の罠の都」「暗黒城の魔術師」が在庫切れのままとなっており、新刊発売も急ぎたいもののこちらの増刷が優先とのこと。ドルアーガの塔第3巻「魔界の滅亡」の発売は当分先でしょうが、まったり待つしかなさそうです。
 もっとも、増刷が必要なくらいにはゲームブックが売れていると考えれば、これは悪い話じゃないですな。

 鈴木直人ファンといいつつ、実は創元推理文庫版の「魔界の滅亡」を未プレイな山口プリンなのですが、2巻「魔宮の勇者たち」をクリアした時のアドベンチャーシートは創土社版の発売まで引き続き保管しておきます。


2009年08月05日(水) 地層階級王国2 幻のドラゴン伝説(高野富士雄/双葉文庫)

 引き続き地層階級王国の続編に挑戦。
 第二巻は、前作の冒険で地上世界への道を開いた2人と一匹(主人公とヒロイン・チェルトと、雇われガイトだったのになぜかその後も一緒にいるねこまんまのポチ)が今度は地上世界で、復活した魔王サタンと再び戦うという話しです。
 今回はなにか物足りない感じ。前作にあった戦争とか新世界を目指すとか第二次世界大戦時代っぽいテクノロジーとか、そういう独特の世界観が薄くなっています。かわりにチェルトは魔法を使えるようになり、まるで主人公は戦士、ポチは遊び人?の3人パーティで、地上の各町を探検してときおり出没する怪物と戦っては宝石を集めて武器を鍛え、最後に魔王を倒すという、ありきたりなファンタジーRPG風なゲームブックになってしまったようにみえるのですね。
 ゲームとしては前作と同じく選択ミスか戦闘に負けることによる突然のバッドエンドを別にすれば、だいたい平穏に進む一本道ストーリーなので、特筆することはありません。このシリーズ独特のすごろくを使ったバトルシステムが面倒で、今回は戦闘は省略して遊んだので正確な難易度はわかりませんけど。
 作品そのものはそれになりに仕上がっているので、駄作とまでは思わないけど、前作の魅力だった世界観を潰しているのはマイナスだなぁ。他のサイトで地層階級王国シリーズのファンの感想を読んでも、前作の方が評価が高いコメントが多かったのもうなずけます。ねこまんまのポチのとぼけっぷりがあいかわらずなのと、この巻でストーリー的には完結しているので少年魔術師インディのような未完のシリーズにならなかったことが救いでしょうか。

 ちなみに本書の後書きによれば、テレホンアドベンチャーでも、地層階級王国の続編はあったようです。CDで聞いた前作のテレホンアドベンチャーはなかなかの出来だったので興味があるのですが、続編は商品CD化されてないと思われるので、聞くのは無理だろうな。今となっては幻のテレホンアドベンチャーです。


2009年08月04日(火) 地層階級王国1 まほろばの壁を越えて(高野富士雄/双葉文庫)

 まだ未読だった「地層階級王国1」を遊んでみました。
 作者の高野富士雄さんは、一時期は2ヶ月に1冊ペースでゲームブックを発表したという驚異的な多作作家です。
 正直彼のゲームブックは、キャラクター重視のゲーム性が二の次という感じで私好みじゃないのですが、双葉社のゲームブック作家陣の中でも人気がある方です。ネットでもこの作品は好意的に語られています。ただし、現役ゲームブックファンの感想というより、ゲームブックを昔遊んだことがある方が、当時気に入っていた作品を懐かしむような内容でしたね。

 んで、この作品。元々は漫画が原作で、それを双葉社が企画していたテレホンアドベンチャー(テレホンサービスを利用してゲームブックを遊ぼうというもので、今なら携帯アプリでゲームブックする企画に近いのかな)に移植され、さらにそれをゲームブックにしたという、メディアミックスしまくりの作品です。
 ファミコンゲームとのタイアップ作品も多いし、やっぱり双葉社のゲームブックってゲームブック業界の中では、今でいうライトノベル的な立場だよなぁ、と思ってしまいます。
 テレホンアドベンチャー版はCD化されており、私はそれも持っています。以前の冒険記録日誌(2005年02月01)でも感想を書きました。

 地層階級王国1がどんな話しかというと、飛行機とか平気で飛べる広い地下世界が舞台。そこでは地上の世界というものは伝説程度にしか考えられていません。地底世界では戦争が絶えまなく続いており、主人公は少年飛行艇乗りで戦争に参加していました。プロローグで主人公は敵国の上空で撃沈。不時着して意識を失っていたところを敵国の少女チェルトに助けられ、主人公はチェルトとともに彼女の信じる平和な地上世界を目指して旅をするというお話しです。CD版とゲームブック版は細かい設定やら登場人物やらストーリー展開やらがいろいろ変わっていますが、この目的だけは一緒です。
 CD版は週刊少年ジャンプにありそうなシリアスな冒険ものだったのですが、ゲームブック版は遊んでみるとちょっとまったり感がありますね。これはCDにいた3人目の仲間「ゼロ」が、ゲームブック版では「ねこまんまのポチ」というふざけた猫の着ぐるみみたいな生物に変わっているせいでしょうなぁ。ムードメーカーといえば聞こえはいいけど、いつも「お腹すいたニャー」と言ってるだけで本当にまるで役にたたないよ、こいつ。
 あと最初は、戦争だとか反政府軍だとか兵士の監視を抜けてとか、反戦的なメッセージ感の漂うムードが、後半からいつのまにか新世界の入り口を塞ぐ魔王との戦いというまったく別物の内容に変わって、ストーリーがぐだぐだな感じに。CD版はもうちょっとストーリーが締まっていたのになぁ…。
 まあ、ゲームブック版の雰囲気もこれはこれで悪くはないし、なによりヒロインのチェルトの可愛い描写がCD版より5割増なので許すか。

 あとゲーム性ですが、難易度はやや簡単。所持金の管理は割りとシビアかな。武器と乗り物を購入するだけでいっぱいいっぱいなのに、食料も買わないといけないのがきつい。おまけに、ねこまんまのポチはすぐに腹を減らしてHPが減るし。
 あと戦闘システムがちょっとメンドイ。ランダム要素があるのはいいけど、もっと簡単でいいと思う。
 高野富士雄作品の面白さはキャラクター小説的な面にあると思うので、なかなかクリア出来ないようならルールを適度に簡略化して、読み物として楽しむのもありかと思います。


2009年08月03日(月) ソーサリーの魔法レッスン その15

問題15:世界で一つだけのソーサリー

 しまった!
 我にかえり失敗に気がついたときはもう遅い。君は深夜の公園で一人で全裸になって踊っていた。まさに何も持ってない生まれたまま姿だ。
 酒の力は怖いものだ。気をつけていたつもりなのだ!最初の10杯くらいは!
 「ちょっと君。こちらへ来なさい!」
 周囲を見渡すと、数人の警官が遠巻きに取り囲んで君に向って手招きしている。
 君はまだ酔いでにぶい頭を無理やり回転させて、この場から逃れる呪文を必死に探そうとする。このままでは捕まって、この恥ずかしい姿が全国に報道されてしまうぞ!

YAZ
SIX
BIG
NIF
FOF
 一つ選択したら下で結果を確認しよう。


































*YAZ*
 体力ポイントを1減らす。なるほど、透明になれるこの呪文は、この状況ではピッタリだ。しかし、残念なことにこの呪文には真珠の指輪が必要である。全裸の君は当然持っていないので、呪文を唱えても何も起こらなかった。
 「裸になって何が悪い!」
 君はそう叫んで抵抗するが、警官たちによってスマキにされ連行されてしまう。

*SIX*
 体力ポイントを2減らす。あなたの姿が6つに増えると警官たちは仰天した。
 無理もない。丸出しの男がいきなり集団になったのだ。悪夢以外のなにものでもないだろう。
 混乱する警官らを尻目にあなたは公園から飛び出す。何人かの警官が止めようとしたが、手が幻の体をすり抜けてしまう。
 あなたはこうして危機を脱出した。

*BIG*
 体力ポイントを2減らす。呪文を唱えると君はたちまち2倍の大きさに膨れ上がる。巨体にものをいわせて警官らを押しのけて、逃げ出そうとする。
 しかし、巨大な全裸姿で暴れる君の姿は、多くの周辺の住民らの注意を引き、その目に焼きついたようだ。カメラのフラッシュが何度か瞬く。
 翌朝のスポーツ新聞には、一部モザイクつきの君の写真が一面に載ることとなった。

*NIF*
 体力ポイントを1減らす。呪文を唱えたとたん、周囲に強力な悪臭がただよいはじめ、警官たちはその場に転げまわって苦しみ始めた。
 もちろん鼻栓をもってない君もただではすまない。体力点を3減らすこと。
 君はよろめきながらも投げ出した服を回収すると、急いでその場から逃げることに成功した。

*FOF*
 体力ポイントを4減らす。君が呪文を唱えるとたちまち目の前に魔法の壁があらわれる。
 これは魔法の物体と通常の物体を遮断する強力な壁で、警官を寄せ付けない役にはたつ。しかし、膠着状態が続くにつれ、増えてきた野次馬の視線とマスコミのカメラからは守ってくれなかった。
 しばらく拘置所で魔法の勉強をするといい。


2009年08月02日(日) ソーサリーの魔法レッスン その14

問題14:ソーサリー兄弟

 ここはボクシング会場。今日は弟のタイトルマッチがあるのだ。
 あなたはセコンドについて見守っていたが、どうもこの試合は相手の方に分があるようだった。
 ラウンドを重ねるごとに、弟の動きは精彩を欠き、相手のパンチが徐々に当たりだした。弟の表情がかなり引きつっている。試合前まで大口を叩いていただけに、きっとプライドはズタズタだろう。
 しかしこれはまずい。短気な弟のことだ、このままでは暴走するかもしれない。
 君は、こっそりと呪文を唱える。(必要な道具はすべて持っています)

FAR
DUM
SAP
PEP
NEP
 一つ選択したら下で結果を確認しよう。

























*FAR*
 体力ポイントを1減らす。水晶玉を覗き込むとあなたはぎょっとした。
 あろうことか、すっかりキレた弟は、反則攻撃を始めている。周囲の大ブーイングの中、相手に頭突きや投げ技までかましているのだ。
 あなたは有無を言わさず、弟に向かってタオルを投げた。勝利は得られなかったが、傷が深くなる前に出直せるだけマシというものだ。

*DUM*
 体力ポイントを4減らす。この呪文を唱えると、相手は不器用になり、武器を落としてしまう。しかし、ボクシングでは武器を持つものだろうか?
 結局、試合には何の影響もない。そのうちに追い詰められた弟は、相手に投げ技までかます暴れっぷりで、大ブーイングの中、大敗をしてしまった。
 無様な試合に恐らくマスコミも手のひらを返したようにバッシング報道をするだろう。あなたは暗々たる気持ちで見守るしかない。

*SAP*
 体力ポイントを2減らす。相手のパンチに鋭さがなくなった。戦意をくじく効果が効いてきたのだ。
試合のペースを取り戻してきた弟も冷静さを取り戻す。
 最終的に僅差で判定負けとなる。勝利は得られなかったが、弟が恥をかかなかっただけでもよしとするべきだろう。

*PEP*
 体力ポイントを1減らす。あなたはラウンドが終わってコーナーに戻ってきた弟に火酒を飲ませ、呪文を唱えた。
 次のラウンドは怪力を手に入れた弟の独壇場だ!1分もしないうちに相手に強烈なパンチが決まり、KO勝ちを手にいれた。
 しかしその後、火酒を飲ませたことがドーピング検査で発覚してしまい、さらにそこからあなたの魔法の使用もバレてしまった。失格のうえ、あなた達兄弟はボクシング協会から除名となってしまう。

*NEP*
 体力ポイントを5減らす。こんな呪文は存在しない。
 体力を消耗して、燃え尽きたあしたのジョーのようにぐったりとしたあなたとは無関係に試合は進む。敗色濃厚になった弟はヤケクソになったのか、相手に投げ技までかます暴れっぷりで、大ブーイングの中、大敗をしてしまった。
 無様な試合に恐らくマスコミも手のひらを返したようにバッシング報道をするだろう。もしかすると魔法もボクシングも、あなたたち兄弟には荷が重いものかもしれない。


2009年08月01日(土) ソーサリーの魔法レッスン その13

(ソーサリーを知らない人には、意味不明です。ごめんなさい)

 冒険記録日誌名物ウルトラ不定期連載、ソーサリーの魔法レッスンの時間です。今回はスポーツ新聞の記事から出題。
 例題を読んで、その場にふさわしい適切な呪文を選択して下さい。


問題13:どすこいソーサリー

 腰の疲労骨折という名目で職場に休暇届けを出したあなたは、故郷のモンゴルに帰っていた。
 実際のところはたいして体調に問題があるわけでもなかったが、まあ、いいだろう。じっさいこの程度仕事をサボっている奴なんざ、世の中にいくらでもいる。横綱というだけでごちゃごちゃ言う方がどうかしているぜ。
 あなたはそう思いながら、誘われるままサッカーなんかに興じていた。
 そのとき、あなたはサッカー場の観客の中に、日本でも見たフリーのジャーナリストらを2人見つけた。パパラッチみたいな奴らである。彼らはなんとTVカメラを回していたが、あなたと目が合って慌てて逃げ出した。
 まずい!あいつら日本に帰ったら、今の映像をマスコミに売りつける気だ。 マスコミもまた面白おかしく俺について書き立てるに違いない!
 急いで捕まえるべく、あなたは呪文を唱える。だが気をつけろ。相手に魔法をかけるにはすでに距離が離れすぎているようだぞ。(必要な道具はすべて持っています)

GOB
MAG
LAW
NIP
ZIP
 一つ選択したら下で結果を確認しよう。



























*GOB*
 体力ポイントを1減らす。あなたがコブリンの歯を数個地面に叩きつけ、呪文を唱えるとたちまちコブリンが生まれた。あなたはパパラッチどもを捕まえるように命じた。
 しかし、悲しいかな。コブリンは人間より足の遅い生き物なのだ。当然のように彼らを取り逃がしてしまったコブリンたちは、申し訳なさそうにうつむくばかりだ。
 あなたは日本に帰ってからのことを考えると頭が痛くなってきた。

*MAG*
 体力ポイントを2減らす。あなたはあらゆる魔法の攻撃から身をまもる障壁に包まれた。しかし、この状況でそれが何の役に立つのだろうか?
 あなたがまごついている間に彼らはさっさと逃げきってしまう。
 おそらく日本に帰ったらマスコミの質問から身を守る呪文がきっと欲しくなるだろう。

*LAW*
 体力ポイントを1減らす。急いで呪文を唱え、あなたはパパラッチどもに止まるように命じた。
 あなたは例題をよく読んだのか?彼らはとっくに呪文の届く範囲より逃げているのだ。またもし呪文が届いたとしても、人間並みの知能がある相手にこの呪文は通用しない。
 日本に帰ったあなたはマスコミのバッシングにあって、ノイローゼになってしまう。

*NIP*
 体力ポイントを1減らす。黄色い粉を吸い込んだあなたは、ありえない俊足で彼らを追いかけ始める。
 彼らも必死の形相で逃げていたが貴方はあっさり追いつくと、飛びついてフライングスモウプレスで取り押さえる。
 こうして君はカメラのデータを消去させることに成功した。

*ZIP*
 体力ポイントを1減らす。緑の指輪をはめ、呪文を唱えた途端、あなたは彼らの逃げ出している先に瞬間移動していた!
 仰天している彼らを、張り手とうっちゃりで怪我をさせない程度に組みふせると、彼らは白旗をあげてカメラのデータを差し出した。


山口プリン |HomePage

My追加