冒険記録日誌
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2008年07月31日(木) ソーサリーの魔法レッスン その12

 ソーサリーを知らない人にはまったく意味不明の企画。ソーサリーの魔法レッスンコーナー。
 ソーサリーで呪文を使いこなせれば、いいこといっぱい。冒険の使命達成がやりやすくなった、危険を回避できた、宝くじが当たった、パチンコ競馬で大もうけ、身長が伸びた、彼女ができたなどなど大きな反響がおこっています。
 そんな羨ましい思いをしたいあなたの為に、魔法の練習をしてみましょう。
 下の例題を読んで適切な呪文を一つ選んでください。
 今回も魔法に必要な道具はすべて携えているものとします。

(例題)ソーサリー男 2005年

 君はちょっとオタク系のもてない男だ。もちろん彼女なんかいない。いた経験もない。そもそもこんな自分に彼女ができるなんてドラマがあるはずがない。そう思っていた。
 ある日君は秋葉原に行った帰りに電車に乗っていた。その車両には座席の端で座ってる君と爺さん以外は殆ど女性。 20代〜40代くらいだろうか。
 しばらくすると、その爺さんが周りの女性客達に絡み始めた。
 爺さんは君の座っている座席に来て、真ん中らへんに 座ってるおばさん数人に絡み始める。
「携帯使ったらただじゃおかねーぞ」
 みたいなこと言ってビビらせている。
 おばさん達は、「関わらない方が良い」という感じで困ったように、じっと下向いて 押し黙ってしまった。
 爺さんはまた訳の分からないことをわめきつつ
「女は黙って男に使われてりゃいいんだよ」
 みたいなことを言って、手をおばさんの顔に持っていって顎を掴んだ。
 そのとき、君はさすがにマズいと思った。勇気を振り絞らなくては。
 魔法よ、勇気を貸してくれ。君は自らに言い聞かせるように呪文を唱えた。
 呪文を一つ選べ。

NIF
DOZ
JIG
GAK
RAN

 選んだら下を読むこと。君の運命は?


























(NIF)
 君が術を唱えると、電車両内に悪臭がただよいはじめた。
 爺さんはおろか、鼻栓をしている君以外は乗客の全員があまりの臭さに転がって苦しんでいる。
 ほどなく非常ベルが鳴り、電車が緊急停車し、駅員と警察が乗り込んできた。
 今のご時世に電車で異臭騒ぎはあまり洒落にならない。君はテロの容疑で逮捕された。
 誤解はいずれ解けるだろうが、このことはニュースになり、ネットで身元を特定され、君は社会的に抹殺の危機を迎えるかもしれない。


(DOZ)
 君が術を唱えると、爺さんの動きが急に緩慢になった。
 「小僧〜。お前何をした〜」
 爺さんが吼えるが、君は思い切って爺さんを取り押さえた。
 そして、やってきた警察官に引き渡す。女性達は深々と頭を下げて 「ありがとうございました」 とお礼を言ってくれた。
「良かったら、お名前とご連絡先を教えてくれませんか?」
と、おばさんの一人が言った。
 俺はおばさんの持ってたメモ帳に名前と住所を書いておいた
「すいません…私もいいですか?」
 隣に座ってた女性にも書いておいた。
 後日、宅急便で隣に座っていた若い女性からお礼の品と手紙が届いた。
 品はテーィカップ。手紙の内容はお礼らしい。君はちょっと嬉しくなりながら趣味でやっているネットの仲間達に報告すべく、パソコンの電源を入れた…。


(JIG)
 術を唱え、君は竹笛を取り出して演奏をはじめる。
 すると、爺さんも含めて電車の中の乗客全員が急に踊りだしたではないか。
 こっけいな光景に微笑みながら、君は演奏を続ける。術がきれると、爺さんはさすがにバテたようだが、女性達もぜいぜいと息を切らしている。乗客の何人かが君を睨みつけた。
 君は恥ずかしさのあまり次の停車駅で電車を降りてしまう。まだ君には世間の風は冷たいようだった。


(GAK)
 勇気を振り絞り席から立ち上がって黒いお面を顔にかざす。術を唱えると、爺さんはたちまち恐怖に震え上がった。
 「す、すまんかった。勘弁してくれ!」
 爺さんは次の停車駅で逃げるように車両を飛び出した。
 電車内に平穏が戻り、女性達は深々と頭を下げて 「ありがとうございました」 とお礼を言ってくれた。
「良かったら、お名前とご連絡先を教えてくれませんか?」
と、おばさんの一人が言った。
 俺はおばさんの持ってたメモ帳に名前と住所を書いておいた
「すいません…私もいいですか?」
 隣に座ってた女性にも書いておいた。
 後日、宅急便で隣に座っていた若い女性からお礼の品と手紙が届いた。
 品はテーィカップ。手紙の内容はお礼らしい。君はちょっと嬉しくなりながら趣味でやっているネットの仲間達に報告すべく、パソコンの電源を入れた…。


(RAN)
 体力点を5減らす。こんな術は存在しない。
 君が体力点5を失って、急にぐったり崩れ落ちたので、電車内は大騒ぎになった。電車は緊急停止し、君は急患として病院に運ばれてしまう。


2008年07月30日(水) ソーサリーの魔法レッスン その11

 さあ、四半世紀の2割の時(5年)を得て唐突に復活したソーサリーの魔法レッスンコーナー。
 ソーサリーで呪文を憶えるのが面倒だと戦士しか遊んでいないそこのあなた。面白さの半分を捨ててますよ、もったいない。
 そんな、もったいないおばけが出そうなあなたの為に、魔法の練習をしてみましょう。
 下の例題を読んで適切な呪文を一つ選んでください。
 今回も魔法に必要な道具はすべて携えているものとします。

(例題)ソーサリーのそなた 2004年

 「もうすぐ。ヨン様。ヨン様にあえるわ」
 「ほんと、楽しみだわぁ」
 「ねーえ、アメ食べないー」
 「あーっはっはっ!」
 「ぎゃーっはっはっ!」
 韓国に到着した、妖怪じみた声をあげる無数の主婦たちを、君はホテルの大広間へと案内した。君は「冬のソナタ ロケ地をめぐって感動をありがとうツアー」のツアーコンダクターなのだ。
 このツアーの最大の目玉は、ホテルのディナー中にペ・ヨンジュン本人に会えるというもの。もっとも本人のスケジュールの都合、そしてギャラの問題で、ディナー中のほんのわずかな時間しか顔を出してはくれないのだが。
 昼のロケ地めぐりでは、騒がしく文句をいい好き勝手に行動していた主婦たちも、ホテルにさえ押し込んでペ・ヨンジュンに会わせてしまえば、夜の間は大人しくなって一安心。のはずだった。
 しかし、
 「大変です!」
 真っ青な顔をして、旅行スタッフの一人が君に駆け寄った。
 なんと予定していた通訳係が急な腹痛のため、トイレにこもったまま出てこないというのだ。
 なんということだ!ペ・ヨンジュンの登場はもう1分前だというのに!このままでは通訳係を待っている間に、彼はとっとと帰ってしまう!
 こうなったら自分がなんとかするしかない。君は覚悟を決め魔法を唱えた。
 呪文を一つ選べ。

FAR
RIS
LAW
SUS
RAP

 選んだら下を読むこと。君はこのツアーを成功させることができるか?


























(FAR)
 君は水晶球を取り出し、術を唱えた。
 水晶球は君の術に答え、未来を映し出した。そこには、君が術を唱えて未来を占っている間にペ・ヨンジュンが帰ってしまい、怒った主婦たちに口やかましく言い詰められている君の姿が見えた。
 どうやらこの呪文はここで使用するには、ふさわしくなかったようだ。君は覚悟を決めて水晶球をしまった。

(RIS)
 体力点を5減らす。こんな術は存在しない。
 君が体力点5を失って、気絶している間にペ・ヨンジュンは帰ってしまった。
 悪夢にうなされて目を覚ますと、カンカンになった大勢の主婦たちに、取り囲まれている自分に気がついた。
 本当の悪夢はこれから始まるのだ。

(LAW)
 もはや手段など構っていられない。程なくやってきたペ・ヨンジュンに向かって術を唱える。
 通訳係が戻ってこるまで、相手を意のままに動かせるこの術でペ・ヨンジュンが帰るのを足止めすればいいのだ。
 しかし残念ながら、この術は知能の低い生物にしか効果を発揮しないため、彼は術にかからないのであった。
 術をかけられそうになった彼は怒って帰ってしまい、君は主婦たちに袋叩きにあう。

(SUS)
 術を唱えると、自分の中でこの状況はまずいと警告する声が聞こえた。
 君は内なる声にしたがい、日本語の達者なホテルマンを呼び出して緊急の通訳を頼みこむ。
 このもくろみは成功。ペ・ヨンジュンとのディナーショーは無事終わることができ、君はホッと安堵の息を出した。

(RAP)
 君は緑色のかつらを取り出して頭にかぶり、術を唱えた。
 とたんに君は韓国語がスラスラと話せるようになり、通訳係の代役ができるようになる。
 こうしてペ・ヨンジュンとのディナーショーは、主婦たちの歓喜と盛況のうちに終わった。


2008年07月29日(火) ソーサリーの魔法レッスン その10

 名作ゲームブック、ソーサリーでは呪文を憶えなければ、魔法使いも単なる弱い戦士。
 まだまだ呪文をマスターできないという、あなたの為に魔法の練習をしてみましょう。
 下の例題を読んで適切な呪文を一つ選んでください。
 今回は魔法に必要な道具はすべて携えているものとします。

(例題)トラトラソーサリー 2003年

 「優勝!阪神優勝が決まりました!」
 アナウンサーの絶叫とともに無数のトラキチが道頓堀に押し寄せてきた。
 「星野監督万歳!ばんざーい!」
 「よーやった、赤星ー!」
 「井川、お前こそエースやー!」
 「金本兄貴サイコー!」
 ウオオオオオオォォォォ!!!
 次々に人々が橋から道頓堀の川底へダイブしていくなか、不幸にもその場に居合わせた君は人の波に押し流されていく。
 飛び込むなんて冗談じゃない。着替えも持っていないし、道頓堀には大腸菌がウヨウヨいるというじゃないか。と君は思った。
 しかし、
 「あ、危ない。落ちる!」
 そう感じた瞬間、君は人ごみにドンと突き飛ばされ、道頓堀に向かって真っさかさまに落ちていった。
 急いで呪文を一つ選べ。

FOF
ZIP
DIP
ZEN
DOC

 選んだら下を読むこと。君の運命が書いてある。


























(FOF)
 君は術を唱えて自分の周囲に魔法の力場を作り出した。
 力場は空気のポケットをつくりだして、道頓堀の水から君を守った。
 君は一瞬トラキチ達をうらめしそうに眺めたが歓喜に輝く彼らの顔を見て思い直す。今日くらいは大目にみることにしよう。

(ZIP)
 術を唱えると君は瞬間移動をした。
 しかし橋のうえは人でいっぱいだ。人ごみの真上に出現して君は数人を下敷きにしてしまう。
 君は酔っ払ってカンカンになった人たちに、再び橋のうえから突き落とされてしまった。

(DIP)
 体力点を5減らす。こんな術は存在しない。
 君はまわりの歓呼の声を聞きながら道頓堀につっこみ、ずぶ濡れになってしまった。
 はやく、サウナに入らなければならないだろう。

(ZEN)
 宝石をはめ込んだメダルを握り締めると、君は術を唱えた。
 すると君の体は空中に浮いたままとどまった。そのまま道路の方へ戻る事に成功する。

(DOC)
 この術は治療に使用するものだ。今の状況では役にたたない。
君はまわりの歓呼の声を聞きながら道頓堀につっこみ、ずぶ濡れになってしまった。
 汚水をたっぷり飲んで腹をこわしてから、再びこの呪文を唱えるといい。



(これはゲームブックのメルマガ、ゲーマニ亭に昔投稿したネタです。あれからもう5年もたったのだなぁ…)


2008年07月28日(月) エイリアン2(佐々木 隆/JICC出版局)

 有名なホラー映画「エイリアン2」のゲームブック化作品。
 私は映画のエイリアンシリーズは、1は見たけど2以降は見てないのですよ。ただ、あらすじだけは本書を読む前にネットで調べました。知らない人のために書くと、数十家族の開拓民が住み着く惑星から連絡が途絶えたため、様子を見るために屈強な戦士たちをのせた宇宙船が捜索に出向く。そのメンバーには前作で唯一の生き残り、リプリー(主人公)の姿もあった…という話しでした。もちろん、その惑星に待ち受けているのは凶悪なエイリアンたち。

 見ていない映画版と比較して云々と感想をいうことは出来ないのですが、遊んだ感じではゲームブック版も基本は映画のストーリーに沿ってゲームが進行しているように見られました。ストーリー的に大きな枝分かれをする分岐点はなく、いくつかの例外を除いて映画にあったストーリー上の伏線を壊すような選択肢を選ぶと、遅かれ早かれゲームオーバーになってしまうというゲーム性。アルファベットによるフラグチェックがある以外は、特にルールはないので気楽に遊べますが、この一本道ストーリーのために、何回か繰り返して読んでいるうちにすぐに飽きてしまいます。
 どちらかというと「エイリアン2」より、登場人物が少人数で舞台も宇宙船内に密閉されていた1の方がゲームブックの題材として向いていたかと思いますね。(もっと身も蓋もなくいうと1のストーリーの方が面白い)
 創元推理文庫の「惑星不時着」(2002年03月25日の冒険記録日誌で紹介)の序盤に登場した展開がまさに「エイリアン1」をゲームブック化したような感じでして、そこそこ行動の展開に幅もあって気にいっていました。それで同じような面白さを本書に期待して遊んでみたのですが、前述の理由からちょっとイマイチだったかなぁ。

 ちょっと目にとまったのは、本ストーリーではリプリーがエイリアンの危険性をいくら説いても他の船員たちは本気にしなかった為それが後々の惨事につながるのですが、序盤あたりの選択によっては、船の指揮官をうまく説得でき、エイリアンが住み着いていると思われる建物に宇宙船上から核攻撃をして、ほとんど死傷者がでないうちに地球に帰ることができるHAPPYENDが用意されていること。一番最初に遊んだときは、このパターンですぐにクリア出来てしまったのでちょっとびっくりしました。
 映画を見た人はたぶん、リプリーの説得に耳を貸さない船員たちのシーンでは、ヤキモキしていたのではないかと思います。自分だったら、なんとか説得できた、あるいは話しをちゃんと聞いてみな死なせずに住むのに、などと思った人も中にはいるんじゃないかと。そういう意味では、自分の意思によってこれから起こる危機を回避できる展開を用意してあるのは、なかなか心憎い演出じゃないでしょうか。このような本編のストーリーを壊す選択肢をもっと多く用意して欲しかったものです。


2008年07月27日(日) 青竜王の伝説(小野勝弘/朝日ソノラマ)

 この作品。プロローグが、今の宇宙が誕生する以前に、かつて別の宇宙が誕生していた、というデカイスケールから始まっています。なかなか面白いので要約して紹介します。
 その宇宙はビックバンもなく、太陽系ほどの大きさの空間に膨大なエネルギーに満ち溢れていました。やがてそのエネルギーは竜の形となり、さらに長い時間のうえに、竜は意識をもち一つの生命となったのです。
 そのときには、竜のウロコの一つ一つに人間が住みつき、いくつもの国が興っていました。竜は青竜王として、慈愛と正義を全ての世界に注ぎ、平和な時代が続きました。
 しかし、ある日突然、青竜王の魂が金色の月となって、その体を離れてしまったのです。幾多の国々で戦乱がおき、多くの国が滅びてしまいました。滅びた国はじわじわと大地から噴き出す瘴気の海に飲み込まれていきました。
 生き残ったわずかな国も、青竜王の使途と自称する妖しい魔道士たちに支配されていきました。その魔道士たちから自由を取り戻す戦いは、1万年も続き、人々が魔道士たちを追放したときには、青竜王の上にある国は、わずかに4つ。竜の胸の位置にあるグランクル、トラループ、ファ、それに竜の尾の方角にある大国イームだけとなったのです。
 今となっては、竜の胸の三国とイームの国の間には瘴気が満ちており簡単には行き来できません。わずかに竜の回廊と呼ばれる細い道が、三国とイームとつなぐ唯一の道として知られていますが、竜の回廊には妖魔が跋扈しており、さらには追放された魔道士が潜んで、旅人を捕まえては怪しげな魔術の実験台にしているとの噂まで流れ、今ではこの道を通る者もめったに見られなくなったのでした。

***

 テーブルトークRPGの世界設定になりそうな、なかなか壮大な舞台じゃないでしょうか。まあ、人間が普通に活動できる地域がわずか4つの国しかないのは、少々さみしい世界かもしれませんがね。
 さて、この冒険の主人公はファの国のバン・ジョーという王子です。どこからか突然現れて襲いかかってきた混沌の騎士と名乗る謎の軍隊によって、ファの国は危機に瀕していました。混沌の騎士はファの国を明け渡すか、「月の石」というものを渡すかしないと皆殺しにすると脅してきたのです。
 武力では到底かなわず、「月の石」もファにはありません。「月の石」は、謎の国イームの国宝になっているとも、竜の回廊に存在するともいわれる未知の存在なのです。
 こうして主人公は、「月の石」を探しに冒険に旅立つわけですが、なぜわざわざ王子自らがそんな危険な旅に旅立つのかの説明はなし。もっとも王子といっても、第三王子らしいので、ここで手柄を立てて一発逆転で王権をわが手にという野望があったのか…は定かではありません。
 ちなみに主人公には、技術ポイントと体力ポイントの2種類の設定がありますが、戦闘システムもなく、また能力値の数値によって分岐する機会もそれほど多くなかったので重要度はあまり高くないと思います。あとサイコロは使用しますが、運試しのような使い方しかしません。(序盤あたりの運試しで、3分の1の確率でクリアに必要なアイテムが入手できなくなる箇所があるのは問題ありと思いますが)
 とにかく王家の聖獣であり風より速いとされる麒麟にのって、主人公は旅立ちます。グランクルやトラループで情報収集したあと、竜の回廊にいどむわけですが、闇の瘴気に囲まれた場所という触れ込みどおり、オドロオドロしい感じです。しかし、こんなところでも謎の美少女が登場したりします。やはりこの手の冒険には、お約束だからなのでしょうか。
 冒険はそんなに難しいこともなく、エンディングまでたどりつけました。でも終盤はえらく唐突に終わってしまった印象です。
 謎の大国イームの描写も物足りないし(実はイームまで到着するパターンは、バットエンド確定ですが)、倒したとはいえ混沌の騎士の正体は謎のままだし、謎の美少女も世界を救う鍵となると予言されながらも、この冒険では全ての謎が明かにされず、消化不良な感が否めません。
 もっともこれらは、エンディングで主人公本人も気にしている描写はあります。これは続編を睨んだ伏線だったのか、単に締切かパラグラフ数が足りなくなって、尻切れトンボ状態になったのかは謎です。どちらにせよ、この作品は朝日ソノラマのゲームブックシリーズ、ハローチャレンジャーレーベルの15作目にして最終巻なので、この作品の続編は作られていません。
 雰囲気は嫌いじゃないけど、もっと作りこんでほしかった。そんな感じの作品でした。


2008年07月26日(土) 惑星連合の危機(高橋昌也/朝日ソノラマ)

 朝日ソノラマのゲームブックシリーズ、ハローチャレンジャーレーベルの第4作目です。
 このレーベルは、アイドルもの、ファンタジー、インディジョーンズ系といろんなテーマのゲームブックを発表していますが、この作品は宇宙戦争を主題にしたSFというかスペースオペラもどきです。
 作者の高橋昌也さんは、ウィキペディアなどで少し調べてみたところ、この作品を書いた同時期に「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」というガンダム漫画の原作を担当したことをはじめ、他にもいくつかのガンダム関連の著作を手がけた方らしく、このテーマに関してはベテランみたいですね。ちなみにこの作品には、モビルスーツはでてきませんのであしからず。

 さて、ストーリーですが、主人公は弱冠18歳にして、オンボロ船ながらもフリゲート艦「ネルソン」の艦長という設定です。
 この世界では、惑星連合と惑星連合の征服を企むグルマン星が、戦争を繰り広げています。そんななか、グルマン星が建造した「最終要塞」とよばれる巨大戦闘艦によって、惑星連合の精鋭は次々にやられていったのです。
 そこでついに最後に残った「ネルソン」に出撃命令がくだります。司令内容は、グルマン星のレジスタンス軍が製作した、対「最終要塞」用の武器と装備を回収すること。
 そんなわけで、主人公はイングラウス、ブランチ、ボリシュという3つの惑星を行き来して、各地に散らばった武器と装備を捜索していくことが冒険の中心となります。各惑星を探索するときは、フリゲート艦を宇宙空間に残したまま、3人が定員の小型着陸機で下船します。このとき主人公以外に、”交渉術”や”戦闘”など別々の得意分野をもつ4人の部下の中から2人を選んで着陸する必要があり、このあたりはスティーブジャクソンの作品「さまよえる宇宙船」を思い出させるルールです。もっともこの作品には、戦闘システムも能力値の管理も存在しないので、ゲームとしては簡単。メモを取らずに遊ぶことができます。
 余談ですが本書のあとがきによれば、電車の中でも遊べる作品作りを心がけたそう。でも、このゲームブックで使用している乱数処理の方法は、やたらパラグラフ移動が必要な代物で面倒くさくてかなわないです。あとがきでは、一般的なゲームブックによくある本の各ページにサイコロを印刷する方法に対して、「その箇所を覚えておいてから、一度本を閉じて、再びページを開き印刷されたサイコロを読む。そして、この操作を数回続ける。こういう中断が本としての流れを阻害しているかという点を考えてみてください」と書かれています。ゲームブックの歴史でも初期の作品だけに、まだページにサイコロを印刷してパラパラめくるという発明がまだなかったのですね。ゲームブック製作に試行錯誤している様子が伺えて興味深いです。

 話しを戻すと、主な舞台となる3つの惑星は、たぶん普通はイングラウス星から探索を始めるとは思いますが、実はどの星から探索してもよく、それぞれの惑星で武器と装備を回収する方法はいくつも用意されています。また全ての武器と装備が揃えることができなくても、最後の戦いにおいて乱数処理で高い目がでればエンディング到達は可能。おかげでゲームバランスが易しめに見えますが、かなり自由度の高い冒険ができる内容になってます。
 ただ後半になると自分の能力や部下を使うときの描写が、手抜き気味になってくるのが気になります。あと主人公がとにかく真面目な性格で、宇宙船での戦闘に負けて行き詰まると、とすぐに自爆スイッチを押してENDになってしまうパターンが多いのには、ちと苦笑。
 まあそうはいっても全体の感想としては、世界観もちゃんとしており場面描写もうまく読みやすいです。同じ作者が前に書いたゲームブック、「出発!スターへの道」(ハローチャレンジャーレーベルの第1作目。2002年10月の冒険記録日誌に紹介済)よりは格段に出来がいいと感じました。さすがに得意分野がテーマだと手馴れていますね。

 最後にバグの訂正を。
 パラグラフ203で「通常空間へ転位する。→103へ」は「→195へ」が正解です。これで全ての武器と装備が揃えることができるでしょう。


2008年07月25日(金) 「世界樹の迷宮II 〜諸王の聖杯〜」(DS)

 ゲームブック風味のRPGということで、ゲームブックファンサイトでたまに話題になる世界樹の迷宮シリーズ。
 どんなものかとやってみたのですが、ゲームブックというよりウィザードリィ風味といったほうが近い3Dダンションを彷徨う系のRPGですな。迷宮のところどころでイベントが発生し、そこで2択の選択肢があるのが、ゲームブックらしさということみたいですが、私的にはあまりゲームブック的な気持ちは感じなかったです。
 ウィザードリィは好きな方なので、このゲームもそこそこ遊べたのですが、第3層の最初あたりで飽きてしまいそのままです。
 理由は迷宮の構成が単調で(3層以降はわかりませんが、1・2層はほぼ一本道ルートの階が多かった)マッピングが楽しくなかったからです。
 戦闘も敵味方ともに攻撃力が高くて、とにかく先に攻撃したもの勝ちな大味さがちょっと駄目。あと、キャラクターのレベルがカンストすると引退を推奨するようなシステムが個人的に受け入れられなかったかな。
 マップに時々場違いに強い敵が存在するゲームバランスや、キャラクターのスキルシステムは結構好きだったのですがね。この時代にあえてマッピング重視というゲームコンセプトも意外にいいと思いましたし、なんというか非常に勿体ない。


2008年07月24日(木) 時をこえてオンリーユー(飛鳥めい/ポプラ社文庫)

 字体の大きめな児童書風ゲームブックで、パラグラフ数が100程度の短編作品。イラストが少女漫画風で、学校を舞台に中学生の女の子を主人公にした恋愛ものという内容から、小学生の女の子向け作品という感じです。
 このポプラ文庫からはゲームブックが全部で3作品出ていまして、本作品は2作目です。3作品の共通点は主人公が中学生の女の子で、普通の人間とは違う設定があることでしょうか。例えば1作目「超美少女転校生とねらわれた学園」(2008年7月13日の冒険記録日誌を参照)の主人公は超能力が使え、3作目「誘拐犯はエイリアン?」(2003年8月29日の冒険記録日誌を参照)の主人公の正体は吸血鬼のため夜になると超人的な力を発揮できるとかです。
 それで、本作の主人公にはどんな特殊設定があるかといいますと、なんと25世紀からタイムスリップでやってきた“未来人”なのです。
 なんでも25世紀では男の子が生まれなくなるという原因不明の社会問題を抱えていて、人類滅亡の危機を救うために考案されたのが、「タイムマシンを使って過去の世界から結婚相手を連れてこよう!」という内容。年頃になった女の子は過去の世界で一般人に化けてしばらく生活をし、恋仲になった男の子を未来へ連れてくるようになったのです。なんとなくアマゾネスの奴隷狩りを連想した私ですが、誰でも未来に連れて帰って良いわけではなく、以下のような条件があります。

1.未来に影響を受けることがないよう、未来に連れてこれる相手はそのままでは遠からず事故や病気などで死亡する予定の人に限る。
2.相手とは両思いの状態であり、尚且つ相手の承諾を得なければ、未来に連れて帰ることはできない。

 25世紀にすむ女性の権利として、希望の時代の世界で一週間生活をすることができる。このチャンスは一生に一度であり、この期間に相手を見つけること。この活動は国の支援事業であるため、費用の一切は税金で賄われる。という設定になっていて、うむむ、なにか凄い社会システムです。
 しかしこの設定によって、短編作品にありがちな急展開な恋愛模様を見せられても違和感がなくなります。
 なにせ結婚相手を見つけるチャンスが生涯でこの一週間しかないというのですから、奇麗事はいってられませんよね。男の子を見るたびに「運命の人かも…」と、がっつく主人公を誰が責められましょうか。
 ちなみに主人公の名前は「時野未来」という、かなりベタな名前です。読み方は「ときのみく」、みくるちゃんじゃありませんよ?某ライトノベルと違ってこの世界のタイムスリップには、禁則事項があまりないようで、みくちゃんは中盤であっさりこの時代の友達に自分の正体をバラしてますがいいのかな?さすがに大人にまで正体がばれると時間管理官が登場して未来へ強制送還のバットエンドにはなりますが。
 みくの相手となる男の子は3人。親しみやすく活発なスポーツマン、お人よしなほど優しくて控えめな性格のクラス委員長、クールで金持ちで謎なところのある上級生と見事にタイプが分かれています。それ以外で目立った登場人物は、スポーツマンタイプの男の子をターゲットにした場合に邪魔をしてくる謎の女の子くらいかな。
 基本的に男の子達は3人ともみくに好意的なので、よほどまずい選択肢を選ばない限りは、どの子を狙っても恋愛自体はうまく行きます。まさに女の子の夢……でしょうか。最後は無事獲物(w をつれて未来へ戻れるとは限りませんけどね。男の子ごとに結末が2・3種類ずつ用意されていて、意中の男の子と未来へ帰るエンディング以外に、主人公の行動が影響して未来が大きく変わってしまうとか、この時代の友達と再開の約束を果たすために将来は時間管理官になることを決意するとかいろいろあります。
 ゲームシステムは単純な分岐小説タイプ。ただし過去の行動によって展開が変わる場合や、これは一箇所ですがコイントスによる表裏で分岐する所もあり。
 あとゲーム性で大きいのはゲームの最初に、知恵のお守り、心のお守り、力のお守り(お守りといっても科学的に効力があるものらしい)の中から一つを選ぶシステムです。どのお守りがあるかで、まずい選択肢を選んでもバットエンドを回避できることがあったり、対象の男の子によっては到達するエンディングに大きく影響することがあるので、この選択は何気に重要です。
 まあ男性読者的には、多少背中がむず痒くなるような恋愛ストーリーではありますが、それが気にならなければ悪くないです。ポプラ社のゲームブック3作品の中では特殊設定が一番生かされているし、お守りの選択や狙う男の子を変えることで何度も繰り返して遊べる点など、本書の対象年齢層を考えればよく作られている作品だなと思いました。


2008年07月23日(水) 新・鬼ヶ島−暗黒の化身を討て!−(池田美佐・上原尚子/双葉文庫)

 原作となったファミコンゲームがどんなものかはまったくわからないのですが、桃太郎の物語を基本に、他のいろんな日本昔話の要素を混ぜたようなゲームブックです。サイコロなどのランダム要素はなく、体力点と知力点と所持金、それと持ち物の管理をするだけのシンプルなルールなので、気軽に遊ぶことができます。
 物語のはじめは8歳になったばかりの男の子と女の子、太郎とひかりが主人公(メインは太郎)で、お爺さんとお婆さんとの4人暮らしをしています。ゲームが始まってしばらくすると、鬼たちが村を襲い、お爺さんさんたちを含む村の人々の魂を抜き取ってしまったのです。残された2人は鬼たちから村人の魂を取り戻すことができるのか!という感じでお話しが進みます。最終目的は全ての元凶となる龍を退治することです。

 さきほど気楽に遊ぶことはできるとは書きましたが、実際に遊んでみたところ気楽にクリアはできませんでした。なぜなら、序盤の店での買い物や、一見何気ない選択肢などから、クリアに絶対必要なアイテムを取得したり、クリアに絶対必要なイベントを通過できるかが決まってしまうからです。即ゲームオーバーになるのはまだいい方で、それらのアイテムがなくても途中までは進めてしまい、終盤まで引っ張られてから結局ゲームオーバーというパターンにおちいったりすることもしばしば。じゃあ、面白くないかというとそうでもなく、文章は子供向けに読みやすく、何度か挑戦していれば正しい道筋が自然にわかってくるので、だんだんクリアが近づいてきます。
 難点をいえば、サイコロのようなランダム要素がなく、正しい道もある程度一本道に決まっているため、一度クリアしてしまうともう一度遊ぼうという気にならないところでしょうか。あと、主人公の太郎とひかりは、最初こそ一身同体という感じで物語は進んでいたのですが、途中からひかりと離れ離れになってしまい、エピローグでも太郎とひかりが別々になってしまったことがちょっと残念。あと、序盤で太郎とひかりを救ってくれたっきり、その後登場しなかった金太郎をはじめ、存在意義がよくわからない唐突なキャラが多い気がするかな。
 遊んでいるうち、「悪夢のマンダラ境」を始めとする鳥井加南子さんのゲームブックシリーズを思いだしました。あの作品ほど精錬された文章や作りこみには達してないですけど、ゲーム性がなんとなくね。
 まあ不満な点もありますが、ゲーム的に大きく破綻した所はないので、元々、小学生向けのゲームブックという意味ではちょうどいい感じの作品に仕上がっていると思います。


2008年07月22日(火) ウィザードリィ外伝1―女王の受難―(山崎和緒/双葉文庫)

 双葉ゲームブック版、ウィザードリィの第四作目です。原作はゲームボーイで発売されたウィザードリィシリーズ外伝ということですが、当時の携帯ゲーム機にもかかわらず、内容は正伝にも負けないほど作りこまれている名作です。私自身、かなりやりこんだゲームなので内容はよく覚えています。
 ストーリーは女王アイラスが即位して間もないリルガミンという王国が舞台です。女王のたった一人の肉親である姉が失踪。ほどなくして、宮廷魔術師だったタイロッサムが迷宮に立てこもり、魔物を次々と召喚をし始める謀反に及ぶ。冒険者は危険な迷宮に挑んでこの邪悪な魔術師を退治できるか!?という内容です。

 さて、ゲームブック版の話題に戻しますが、ウィザードリィの魅力といえば、自由なキャラクターメイキングに、豊富な魔法を交えた戦闘の駆け引き、マップを徐々につぶしていく迷宮の探索でしょう。さすがにゲームブックで全てを詰め込むのは難しかったと見えて、冒険をする6人パーティーのキャラクターの職業と種族は、戦士シアン(主人公で人間・男)・君主アンディ(エルフ・男)・盗賊ティル(ホビット・男)・僧侶ナディ(エルフ・女)・司教アマルダ(人間・女)・魔術師ギッシュ(エルフ・男)と固定です。(一応主人公のみ、中盤で侍へ転職するか選択する機会がある。あと、作者はどれだけエルフ好きなんだよとか思ったり)
 魔物との戦闘も剣で攻撃するか、MPを消耗して魔法で攻撃するかの2択がある以外はシンプルなシステムになっています。ただ迷宮内は自由に移動でき、迷宮でおこるイベントも原作のほぼ全てを再現しているので、迷宮内の探索は原作の雰囲気をうまく再現しています。鍵を手に入れてエレベーターを利用できるようになると移動が楽になるとか、HPやMPが減ってくると魔物との戦いが不利になるのでコマメに城下町に帰還して宿屋に泊ったほうがいいとか、魔物を倒すたびに逐一出現する宝箱を開けるときの描写(たまに罠に引っ掛かる)とか、そんなところがウィザードリィっぽくていいです。仲間のティルとギッシュがしょっちゅうおこす口喧嘩も面白く、単調な迷宮探索に色をそえてくれます。
 もっとも前半の地下6階までを制覇して、ストーリー的にも折り返した後の、強敵が待ち受けるはずの残りの6フロアが、迷宮と呼ぶにはあまりにも寂しいほど小さなマップでしかなかったです。魔物の出現数も少なく、後半はずいぶんあっさりと最後の敵まで進んでしまい、エンディングになってしまいました。パラグラフ数に限界があったのか、後半の迷宮部分はもともと原作でも謎解きが少なかったためか、いずれにしても物足りなくて残念。クリアには必要ないけど最後の敵よりも強い敵がわんさかいる、あのフロアまで再現しろとはいいませんが、後半部分ももっと作りこんで欲しかったなぁ。
 ところでゲームブック版のオリジナル設定である仲間のアマルダの正体が実は○○だったという内容は、いかにもな展開でしたねぇ。まあ、お約束でもそういうストーリーは嫌いじゃないので、まあいっか。


2008年07月21日(月) ヘラクレスの栄光−若き勇者の伝説−(井上尚美/双葉文庫)

 原作ゲームのことはよく知りませんが、まだ一介の羊飼いの少年だったヘラクレスが、ゼウスの神託をうけて、羊を売り、剣と盾をそろえ冒険に旅立つというRPGっぽい内容の作品。
各地にある神々の神殿に赴き、そこに居座っている冥界の神ハデスの配下の魔物を退治し、ハデスの元から各神殿にあったはずの神像を取り戻すというのが主人公の使命です。
 戦闘システム的なところと、各神殿で中ボス退治をしては、町に戻るを繰り返し、最後に大ボス(ハデスのところ)の元へ行くというストーリー展開が、少年魔術師インディ1(冒険記録日誌2002年6月ですでに紹介済み)に非常によく似ているところが特徴的です。作者も同じせいということもあるでしょう。
おもしろいアイデアとしては、巻末にインディでいう“魔術の書”にあたる、45章と最終章で成り立った”勇者の本”があって、これが主人公ヘラクレスの冒険の経過を神話調にまとめる役目を果たしています。また冒険が終わって経過していった章をまとめて読めば一つの吟遊詩人の歌うがごとくの物語が完成するという演出になっているのは綺麗で素敵なアイデアです。

 実際にやってみましたが、神殿の攻略順もある程度自由に選んでもクリアが可能で、割と好き勝手に冒険を遊ぶことができます。ただし、戦闘中でページをパラパラめくるチェックで、一度最悪の目がでると、即ゲームオーバーという場面が数箇所あって、順調にことを進めていてもそれが避けられないのが不満でした。実際、最終戦闘でパラパラチェック一発死のゲームオーバーが何度もあって泣けそうでした。あまりがちになる勇気点を消耗して、目を修正したり、やりなおしたりするシステムがほしかったですね。
 インディシリーズに比べれば、キャラクターや背景の魅力に、やや乏しさはありますが、これは原作つきだから多少はやもえないかもしれません。それでもインディシリーズを楽しめた人には、十分お勧めできる佳作だと思います。


2008年07月20日(日) 少年魔術師インディ3(井上尚美/双葉文庫)

 こんどのインディの冒険は、ハミ王国に嫁ぐフレイヤ姫のもとへ、師匠からの贈り物を届けるという、単なるお使い…のはずだったのですが、フレイヤ姫の嫁入りを妨害しようとする謎の勢力があらわれ、あれよあれよと、フレイヤ姫を無事にハミ王国に送り届けるボディガードになってしまうという、巻き込まれ型の展開となっています。
 もっとも、今回の冒険はなんとなくのんびりしている印象です。それは敵の登場シーンが少ないこともあるし、フレイヤ姫の天然お嬢様気質の明るいキャラの影響もあるでしょう。2人と猫のミュアの一匹とのぶらり旅な気分で、町によっては名物の岩塩をいくつ買おうだの、ラクダをいくらで売ろうだの、観光パンフレットを見てみようだの、そんなことをしているうちに、ラスト近くまでいってしまいます。

 最後こそはオドロオドロしい力と力の対決で、なかなか緊張感のあるシーンで物語をひき締めているのですが、作者自身があとがきで、今回は番外編と書いていただけあって、前2作と比べても気楽な気分で遊ぶことができる作品でした。しかし、最後の敵の娘が消息不明になっているところなんか、次回作へ向けての伏線のような匂いがプンプンします。作者も次回は、魔術師インディここが正念場!ってものにしたいと書いていましたし、続編を書く気はまんまんのようでした。
 ゲームブックブームの終息がわりと急だったからでしょうか。後書きで続編を予告してそれきりのゲームブックシリーズは、結構多いのですが、ちょっとさみしいですね。


2008年07月19日(土) 少年魔術師インディ2(井上尚美/双葉文庫)

 双葉文庫の中では評価が高く、一時はファミコンゲーム化まで企画されていた、人気シリーズ第二弾。タイトルのとおり、少年魔術師のインディ君が主人公のゲームブックです。(ちなみにシリーズ第一弾のことは、冒険記録日誌の2002年6月に掲載しています)
 インディ君は、他の魔法使い系のゲームブックに多い、剣の腕も達者な魔法戦士などとは一味違って、戦闘などはほとんど、風・水・土・火・光の5種類の精霊に頼る精霊使いという設定です。(一応、ブーメランというサブ武器もありますがね)
 今回はヨギの僧院の主、セミヤザから師匠宛の手紙を受け取ったインディ君。師匠が留守なのを良いことに、ノコノコと僧院へ出かけて封印された聖櫃を守るために5つの鍵を集めてほしいという、セミヤザの依頼を受けてしまいます。

 挑戦してみたところ、なぜか序盤で何度も死んでしまいました。おまけに序盤に比較的大きな選択肢が2つあって、これらで戦闘や謎解きなどのゲームの難易度が結構変わってしまいます。
 一つは井戸があるところで、魔力をUPさせるか、それともいつわりを見抜く力を得るかという選択。魔力をUPさせた方が全体的に冒険は楽になるのですが、依頼をしてきたセミザワという人物が、とても怪しい人物なので、いつわりを見抜く力の方が後で必要になるかもしれないと迷ってしまうのです。
 もう一つは、知恵の種を得るか、知恵の本を選ぶかという選択です。知恵の種というのは、必要なところで自動的にヒントを教えてもらえる力。なかなか便利ですが、回数制限があります。お勧めは知恵の書の方。こちらは巻末の袋綴じ部分があって知恵の書を選んだときに開封することができます。中身は冒険に関するさまざまなヒントが抽象的に書かれているので、常に頭を捻りつつ冒険を進めていく感じがたまりません。

 ちなみに序盤をくぐり抜けたあとは、思ったより冒険は楽に進みました。でも最後の最後で悔しい魔力不足で、最後の敵に負けてしまいました。すぐ再挑戦して、今度は楽にクリア。このゲームブックはページをパラパラめくって精霊の守護カードを決めるという、ランダム要素はありますが、一度進めてしまうと、大体正しい道がわかるので、その気さえあればクリアは難しくないと思います。
 ただし、最後の謎解きはある英単語を知っていないとクリアできないという、小学生読者を対象にした本書にしては少々意地悪いものになっています。当時、ここで迷って目を白黒させた子供たちは、100人はくだらないでしょうよ、きっとね。


2008年07月18日(金) 桃太郎電鉄―めざせ!大社長―(大出光貴・橋爪啓/双葉文庫)

 厳寒の北海道千歳空港。ヒュルルルル、風の吹きすさぶ中、踏みしめるようにタラップを降りる陣羽織姿の男がいた。
「ふっ、オイラにふさわしい旅立ちだぜい」
 男はポツリとつぶやいた。その前を群れからはぐれたカモメがよぎった、トドもよぎった、ゴマフアザラシが、ペンギンが……。
「でええい、いつまでよぎっとるんじゃあ、凍死してしまうじゃないかあ」

<冒頭シーン、パラグラフ1より抜粋>



 TVゲームでは最も有名なボードゲーム、桃太郎電鉄こと桃鉄が原作のゲームブック。知らない人は少ないかもしれませんが、一応説明しておくと桃太郎電鉄とは、プレイヤーが社長となり、スゴロクのような日本地図のうえを、目的地を目指しながら各地をまわり、数々の店を購入していき、最終年の決算の時点で一番資産が多いプレイヤーが勝ちというゲームです。(さらに補足すると、このゲームブックはファミコン版の第一作目が原作です。実は一作目は、現在おなじみの桃鉄のルールとは違う点が多かったりします。まず貧乏神が存在しない。路面電車も物件扱い。借金の概念がなく、赤字になっても「天下無敵の無一文」として所持金が0円より下がることはない。などなど……)
 それでゲームブック版ですが、まともに原作の要素を全て本に詰め込めば、ややこしい資産管理や収益の計算を手動でしなければならず、遊ぶのが非常に面倒くさい作品になっていたことでしょう。そのためなのか、ゲームブック版はほとんどオリジナルといっていい内容になっています。
 まず、設定ですが主人公は桃から生まれた桃太郎。原作の桃鉄にも、司会役などで登場するプクプクほっぺの三頭身の桃太郎です。その彼が、同じく桃から生まれたと主張する桃太郎ブラックXというライバルと、大企業「桃太郎電鉄」の次期社長の座を争って、全国をめぐって桃鉄勝負を繰り広げるというものです。
 原作のように自由自在に日本中を走り回るボードゲームタイプではなく、冒頭の抜粋文ように、桃太郎は北海道からゲームをスタートして、最終的には九州へと日本を南下していきながら、物件や資産を増やしていきます。
 それで最初の方こそ物件を購入したり、コンサートなどのイベントを企画して副収入を得たり、収益を出したあと桃太郎ブラックXと中間資産比べをしたり、ときにはスリの銀次に所持金を半分盗まれたりなど、いかにも桃鉄らしいイベントが続くのですが、そのうち桃太郎ブラックXの放つ刺客たちが、次々と旅を続ける桃太郎に襲いかかってくるようになっていきます。この刺客がただものではなく、なんと地元の名産品と合体した改造人間なのです。巻末に登場する怪人大百科の一部を抜粋すると、

怪奇ミカン男――静岡出身のフルーツ怪人。ジューシーに迫りくる。
べったら漬け仮面――仮面からの酒カスの臭いで相手を泥酔させる。
フッグタイガー――トラフグの怪人。フグの毒肝を敵に投げつける。
烏賊本英世(いかもとひでよ)――函館出身。スペイン帰りの天才科学料理人。塩辛男に変身できる。
ヤリイカン――烏賊本老人のイカの改造戦闘員。集団戦を得意とする。
ウニドン魔王――札幌の怪人。全身のトゲが武器。
もみじまんじゅう男――秘技もみじ嵐を使う。ジミモォと鳴く。
サヌキング――讃岐うどんの怪人。駅の立ち食いそばに出現。

 このように美味しそう…もとい、恐ろしい怪人たちを、仮面ライダーよろしく退治すると、店が手に入るようになるというパターンが増え、逆に普通の買い物で物件を入手するシーンが少なくなってきます。さらには桃太郎を敵とつけ狙う謎の美少女なんかも登場して、桃鉄とは何かが違うドラマが進んでいきます。
 それでだんだんだんだん、資産勝負のことはどうでもよくなっていって、最後にいたっては巨大ロボット同士で大戦闘を繰り広げるという、もはや特撮ドラマみたいというか、今までの桃鉄勝負はなんだったのって展開になってしまうのでした。
 しかし、ゲームとしては遊びやすく、全編にナンセンスギャグがこれでもかこれでもかと散りばめられており、これが山口プリンのツボに実にはまりました。アホらしいとは思いつつも、ついつい最後まで遊び続けてしまいます。まあ、原作の桃鉄自体がギャグティストですし、あえてゲーム性を忠実に移植することは捨てて、あのちょっととぼけた雰囲気を出すことを優先したのは正解じゃないでしょうか。

 ちなみに、この桃太郎の登場する双葉のゲームブックは、原作つきから完全オリジナルの作品も含めて、全6作まで書かれたロングシリーズとなっています。そのどの作品もがお笑いに満ちた楽しい作品なのですが、特に2作目であるこの作品と、3作目の「桃太郎電光石火」(2004年08月30日の冒険記録日誌に掲載)は、ギャグ漫画ならぬギャグゲームブックの一つの完成形といえる出来だと思います。


2008年07月16日(水) 戦えるけど勝てない敵

 戦闘ルールのあるゲームブックで遊んでいるとまれに、戦えるけどとても勝てないような強敵が登場することがあります。
 主人公が最強の能力をもっていてもそれを圧倒する戦闘力。特殊なアイテムや方法を使って、戦闘をせずに倒せたり互角に戦えるようになったりする仕掛けもまったく用意されていない難敵。
 それでも通常の戦闘ルールで戦えるうえ、なおかつ勝利したときのパラグラフまで用意(ここがミソ)されている。理論的に勝てる確率があるとはいえ、現実的に勝つことは困難もしくはまず不可能という、こういった奴らは非常に印象的です。
 今回はそんな敵ベスト5をあげてみました!

第5位 ドラゴンクエスト[上巻](双葉文庫)の強雑魚モンスター
 時々場違いなほど強い雑魚モンスターが出現する。上巻の最高装備(レベル5)の状態で、なおかつバトルポイント(A〜Jのアルファベットの表に0〜9の数字を割り振って、サイコロのかわりにするシステム)で9を当てないと勝てないという、前作のラスボス並みに厳しい勝利条件。ゲーム上の扱いは本当に単なる雑魚モンスターで、勝っても普通の雑魚よりやや多めのゴールドを落とすだけなので、出現地帯を避けて通るのが無難。マップの端の方にいくと出現しやすいことから、一種の「壁」の役割があると思われる。
 ちなみに下巻に登場する雑魚モンスターらも大半は奴らと同じかそれ以上に強い設定のはずだが、主人公側が3人パーティになりレベルも高くなっているためか、下巻でここまで苦戦させる雑魚はいない。

第4位 真獣王国の秘剣(二見書房)の巨人
 グレイルクエスト(ドラゴンファンタジー)シリーズそのものに無茶な敵が多いが、その中でもこの巨人は生命点499!という異様なHPが特徴。 「500点じゃなくてよかったと思って、自分をなぐさめろ」というコメントがなんとも泣かせる。いや笑えるのか?
 勝っても負けても(といっても勝てないだろうが)大した展開の違いはない。

第3位 イセンガルドの密偵(ボビージャパン)のサルーマン
 指輪物語原作のゲームブックで、つまり白の魔法使いサルマンのこと。主人公が彼の弟子で、簡易魔法を使える点を除けば能力値的には普通の人間ということもあって、能力差は歴然(ファイティングファンタジーシリーズの基準でいえば、技術点7・体力点14・運点7の戦士が下記のラザックと戦うようなもの)としている。
 戦闘を始めても、すぐにクリティカルヒットによる即死を食らうのがオチで、ようするにスパイ活動を見つかって彼と戦闘する羽目になった時点でバットエンド確定なのだ。
 ちなみに万一この戦闘に勝利すると、サルーマンは怒りながらも一時撤退をし、残された主人公は鷲の王(グワイヒアだっけ?)によって救出され、安全なエルフの森まで運んでもらえるグッドエンドになる。実は鷲の王が登場するのはこの展開のみだったりする。

第2位 蘇る妖術使い(社会思想社)のラザック
 技術点12、体力点20というのもありえない強さだが、さらに特殊能力として2回連続で妖術使いの攻撃が成功したら主人公即死というのが酷い。
 なによりこの戦闘を勝たないとゲームをクリアできないというのが無茶すぎる。ゲームバランスというのを一度でも考えたことがあるのか!?と作者のリビングストンに小一時間問い詰めたい。

第1位 ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(富士見書房)の神々の影
 明らかにプレイヤーを仰天させ脅かして逃げ出させることを目的に作られた強さ。勝てる可能性を残した戦闘では数多のゲームブックの中でもダントツの厳しさと思われる。
 勝てる可能性といっても、戦闘の際のサイコロの目は数百回続けて思い通りの目が出るくらいの天文学的な確率のサイコロ運が続かない限り無理なのだが、それでも勝った場合の先の展開も整然と続いているのが凄い。そして、勝った場合はフラグ処理のため“不正直”という記号を記入しなければならないのが、ちと笑える。
 余談だが同書には、展開によって海賊王ハンガックというキャラと戦闘をすることがあり、こちらも(神々の影に比べれば遥かにましとはいえ)到底勝てないような強さである。しかし、この戦闘に勝つと通常のプレイでは知ることのできない、海賊王ハンガックの豪快な性格や人間的な一面が見られる。


2008年07月15日(火) サムライの剣(J.トムソン・M.スミス/社会思想社)

 今回はファイティングファンタジーシリーズ(以下FFシリーズ)の一作品を紹介します。
 FFシリーズは有名ですし、冒険記録日誌をわざわざ閲覧するような人なら、「サムライの剣」も怪しい和風ファンタジーゲームブックとして知っている人は多いでしょう。我ながらですが、久しぶりにそこそこメジャーな作品の話題になりましたねぇ。

 内容は、八幡國を治める将軍が闇将軍イキルに国を統治する力のある「鍔鳴りの太刀」を奪われた。そこで将軍指南役である主人公に「鍔鳴りの太刀」を取り戻す勅命がおりたという、世界観を別とすれば割と王道もののストーリーです。
 またゲームが始まった直後に現れる街道の分かれ道の分岐から、終盤に登場するイキルの本拠地(鬼軽城)までは、まったく別々の道を通るようになっています。登場する敵や地形が違うだけでなく、鬼軽城で必要になるアイテムや情報もまったく別のもの。ようするに使命の内容と終盤を除けば本書には2つのシナリオが収録されているようなものでして、他のFFシリーズに比べるとそのぶん一つの冒険が短めですね。
 どちらのルートにせよ、他のFFシリーズ同様に難易度は高めです。

 この作品といえば、まずはゲーム性云々よりも日本の江戸時代を思わせる世界観でしょう。厳密にはこのゲームの舞台は、タイタンというファンタジー世界の中にある「八幡國」という国の出来事なので日本とは似て非なるものなのですが、河童や細身の姿をした東洋風の竜など、日本古来の妖怪が登場することや、冒険中は常に武士道を重んじた行動を主人公が求められる点で、日本を意識された世界とみて間違いないです。
 特にろくろ首の村のシーンなんか、小泉八雲の怪談そのもの。妖怪だけでなく、私的には浪人にして剣術の達人“銀斎“とか、命を助けられて改心し主人公の部下になる“茂市”なんかが結構好きな登場人物だな。
 時々、西洋っぽいキャラクターが混じっていたり、建築様式の一部や、悪大名や巫女さんの衣装が日本というより中国風なのですが、あくまでここは「八幡國」だし細かく気にしない方がいいかも。むしろ日本人読者にはこのギャップというか「外国人がなにか勘違いしている日本」的要素まで楽しめて、二重にお徳な作品です。

 ゲームルールは通常のFFシリーズの基本ルールに準じていますが、本作のみの特殊ルールとして、主人公はゲーム開始前に剣術以外の特技を、弓術・居合術・猿飛びの術・二刀流の四種類から一つだけ選ぶことができます。これらの特技は戦闘中の手助けになるものから、ある特定のシーンで役に立つものなど、効能はさまざまです。実際に遊んだ感想としては、ゲーム全体から見るとどの能力が特に有利になるというのは無く、バランスがとられているので、ここは趣味で選んでいいかな。
 また通常の技術点・体力点・運点の他に、名誉点という能力値が設定されていまして、この数値は主人公が武士道に対して忠実か否かの行動を取るたびに上下するようになっています。
 この名誉点は直接の戦闘能力には結びつかない能力ですが、数値が高いと冒険中に出会う一部の人物や妖怪から協力を得られるようになるなど、間接的に冒険が有利になるのです。そして逆に名誉点が下がり続けて0になってしまうと、パラグラフ99に飛び、そこでなんと主人公は今までの不名誉な行いを恥じ、切腹して果てるのでした。いやぁ、やっぱりいいルールですね。武士といえば腹切りという、南米人の曲解した日本像を具現化しているようで素敵です。
 ただ、この切腹ルールは「サムライの剣」の象徴として、読者の間ではつとに有名なのですが、実際にゲームをしていて名誉点が0になるという状態には滅多になりません。むしろ名誉点を常に減らすつもりでプレイしてもなかなか達成できません。何度も狙ってみてやっとパラグラフ99に到着したときは嬉しくなったくらいです。(笑)
 もし興味が湧いたら、切腹を目指してプレイしてみるのも一興ですよ。ヒントを一ついうと、2つのルートのうち片方のルートでは切腹することは完全に不可能でした。よかったら挑戦してみて下さい。


2008年07月14日(月) 戒厳令のトルネイド(富沢義彦/双葉文庫)

 ルパン三世のゲームブックシリーズ最終巻の作品です。ルパン三世のゲームブックシリーズはすでに全作品とも、以前の2004年7月の冒険記録日誌ですでに紹介しているのですが、この「戒厳令のトルネイド」は私の中で別格にお気に入りなのでもう一度取り上げてみます。
 まず、この作品はルールが簡単で、他のルパンシリーズ作品のように能力値の存在がなく、所持金やアイテムなどの管理もありません。(ただし、単純な分岐小説というわけではなく、選択肢だけでなく、フラグで分岐することがあるので、どこそこで何をしたということは覚えておく必要はあります)ストーリー重視の作品といえるでしょう。
 それで肝心なストーリーですが、あの銭型警部も所属するICPO(国際刑事警察機構)がルパン逮捕のため、かつてないほど大規模な捕獲作戦を展開する中を、ルパンたちが必死に逃げ切ろうとするもの。しかも、今回の事件の陰には旧ナチス勢力が一枚噛んでいるらしい。こうして次元を主人公にすえて、今までのシリーズはおろか、アニメや原作でもめったにないようなハードボイルドタッチの連続で物語が展開します。文章もイラストもシリーズ中でも最も渋格好いい出来で、気持ちよく世界に浸ることができます。
 物語は明確な区切りはないものの、大きく3部構成になっています。最初は消息不明のルパン三世と合流するべく情報を求めながらルパンを探す次元の単独行動のシーン(ルパンの居場所を知らないなんて相棒の名折れ?いやいや、次元曰く、“冗談じゃない。俺は奴のお守り役じゃない“だそうだ)、続いてルパンと合流してから決戦の地であるニューヨークまで移動するまでのシーン、そしてICPOによる厳戒態勢に陥った夜のニューヨークの街を、ルパンと車で駆け抜けながら、不二子が人質になっている自由の女神の元まで目指す、双方向システムのシーンです。
 この作品では次元が主人公というのが、最大のミソ。なぜならルパン三世の魅力はその神出鬼没っぷりや、奇想天外な技、たとえばTVなどでおなじみの、敵に囲まれていてもルパンの口から膨らんだチューインガムから秘密兵器が登場して、危機を脱出するシーンなどにあると思うのだが、ゲームブックの主人公がルパン自身だとどうしてもそれが味わえない。あえてルパンが脇役になることで、逆にルパンの魅力が発揮できるというわけです。もちろん主人公は次元ですから、タバコを切らしてあせる場面や、情報屋とカードゲームで運を試すシーン、不二子にメロメロのルパンに対して舌打ちするシーン、宿命の敵との一騎打ちの銃撃シーンなどなど次元自身の魅力や見せ場もたっぷり。それに次元はルパン一家の中では比較的常識人なので、次元視点だと読者が感情移入しやすいというメリットがあります。
 逆にこの作品の難点をあげれば、敵の正体に関する説明が少なく、事件の全容がわかりにくいうえ、敵役の影がやや薄いこと。それと五右衛門の登場シーンがわずか1パラグラフ(それも選択肢によっては登場しない)なので五右衛門ファンにはちょいと残念というところ。もっとも五右衛門が登場しないぶん、ルパンと次元のコンビっぷりがより強調されているとは思いますが。
 ところで、この作品は銭型警部が本来の設定どおりの切れ者として描かれています。ルパン三世のファンの中には、この銭型警部の扱いを作品の出来不出来の判断材料にする人がいるようですが、その点でも文句なしの出来です。銭型と次元の対決シーン(なんとすでに銃を抜いている次元に対して、投げ手錠で瞬時に手の自由を縛ってしまう。しかも”雑魚に用はねぇ”とそのまま立ち去ってしまう圧勝ぶり)や、共通の敵の裏を欠くために次元に言葉を使わず協力を求めるシーンなぞしびれます。
 まさにこうゆうルパン三世を見たかったー、という感じ。本気でこれを原作にアニメにしてほしいくらい好きな作品なのでした。


2008年07月13日(日) 超美少女転校生とねらわれた学園(馬里邑れい/ポプラ社)

 ひらがな多めで字の大きな文章。少女漫画風のイラスト。ルールなしの分岐小説タイプ。要するに児童書向けゲームブックです。パラグラフ数も93しかありません。
 ストーリーは、タイトル読んだだけでどんな粗筋かがわかってしまいますね。謎の美少女が主人公の中学校に転校生としてやってきた。実は彼女はこの学園を狙う謎の存在だったのだー!って、割と王道な話しです。さらに登場人物もベタな感じです。

<黒丸京子>
主人公。最近になって自分が超能力を使えることに気がついた。龍吾君という男の子に恋をしている。

<クリス・佐藤>
 謎の超美少女転校生。なぜか龍吾君に気があるようで、べったりくっついている。その正体は…。(一応ネタバレなので書きません)

<川崎龍吾>
 勉強もスポーツもできてルックスも性格もいい、優等生タイプ。こんな奴、現実にはいねーよ。主人公の片思いの相手でもあるが、実は!?。

<山形雅夫>
 主人公に好意をいだいている男の子。龍吾ほどじゃないけど、結構いい男で、主人公を度々助けようと頑張る。でも恋が報われることはない可哀そうなキャラ。

<花姫由紀>
 主人公の親友だが、とても影がうすい。

 主要人物はこんなところか。この冒険にはゲームオーバーがいくつか存在しますが、龍吾君が好き!という気持ちを基準に選択肢を選んでいけば、簡単にクリアできます。
 ……。
もう書くことがなくなった。(汗)
 えっと、主人公が超能力を使える設定がいまいち生かされてない気がするかな。物語の前半は普通の学園生活のシーンが続きますが、超能力はテストをカンニングするくらいにしか出番がない。もっといろいろ使えそうなものなのにね。後半は一転して超自然的な展開が続くのですが、今度は敵の力が圧倒的に強いので、超能力自体があまり役に立たなかったりします。このへんは残念。
 ……。
やっぱり書くことがない。(汗)
 えっと、とりあえず児童向けゲームブックなのです。ちょっと不条理な展開もありがちな登場人物や粗筋も、そうゆうのも全部ひっくるめてゲームブックになってしまう、当時のゲームブックブームの勢いを感じさせる一品です。以上。


2008年07月12日(土) 天才バカボンの華麗なる登校 その6

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

都の西北、ワセダのとなり
のさばる校舎は、我らが母校
我らのノーミソ、タリラリランよ
先生もドアホで、授業はパーでも
社会はまねくよ 我らが頭脳
バカ田、バカ田、バカ田、バカ田
バカ田、バカ田、バカ田ー

パパを追いかけてバカボンが到着したのは、パパの母校であるバカ田大学だった。
パパの姿を探して授業中の校舎を探しまわる。試しに、まつりの授業という教室を覗いてみると、
「授業だよ、全員集合!」
先生のかけ声に生徒たちが立ち上がって歌っている。
「エンヤーコラヤッと、ドッコイジャンジャンコラヤーっと、ハァー、アホウ見たさに」
「ハー、ドウシタ、ドウシタ」
「バカ大、こりゃ入ったらー」
「ソレカラドウシタ」
「今日もなー、今日も会えたよバカ、それさなー、バカ大のバカ男」
生徒たちは先生をのせた教壇をみこしのように担いでいる。
「遅刻するなよ、授業さぼるなよ」
「ハー、ビバビバビバ」
 駄目だこりゃ。
 バカボンは教室内を探すのをやめて、校庭に出てみた。
 そこには若いころのパパとママが2人で歩いている姿があった。
「わしは一番す、すきやきは冬に限るのだ」
「はい?」
「いや、あの、わしはプロポ……するのだ」
「プロポ!?」
「そうなのだ、わしはプロボクサーになるのだ」
 もしかして、そうか。パパはママにプロポースしようとしているのだ。
パパ!しっかりしろ!ママに好きと言え!
 そのとき、ハトがパパの頭にフンを落とした。パパは怒ってハトを追いかけていき、ママが一人残されたのであった。駄目じゃん、パパ。
 すると、なんとバカボンの姿が半透明になったのだ。
そうか。パパとママが結婚できなかったら、僕は存在しなくなるんだ。って、今度はバック・トゥザ・フューチャーネタかい!
 こうしちゃいられない。バカボンは、ママに近づいてパパがママのことを好きなことを説明。自分のことはパパの後輩だとごまかす。
 ママはにっこりした。もともとパパのことが好きだったんだな。ママは。
「いい人ね、あなた。あなたみたいな後輩をもって、あの人、幸福だわ」
「お願いです。先輩と結婚してください」
「本当ですか」
「本当よ」
「本当に本当ですよ。賛成の反対なのだ、じゃないですよ」
「すてきなエンゼルさん。あなたのお名前は?」
「バカボン、天才バカボンっていうんです」
「バカボンさん、また会えるといいわね」
「会えます!絶対に!」
 もとの時代にもどったらパパに感謝してもらわなきゃ。バカボンはタイムマシンのもとへ戻ると、イヤミと一緒に現代に帰った。
 到着した時間は8時25分。ギリギリの時間だ。イヤミがもう一度、タイムスリップしようと申し出たが、丁重に断った。今度タイムスリップしたら、どこに飛ばされるかわかったものじゃない。
 バカボンは必死で走った。学校に到着するまでには、まだまだ障害がたち塞がる。バナナの皮、英語で話しかけてくるウィッキーさん(懐かしい…)、アンケート調査員、道を横切るカルガモ一家etc。
 それら全てを振り切って、学校に飛び込んだ。飛び込んだところで、人にぶつかってお互い転倒してしまう。
 イタタタタ。相手を見ると、赤塚不二夫ワールドの永遠のアイドル、トトコちゃんだ。なんだか見た目が秘密のあっこちゃんに似ている。
「ト、トトコちゃん。大丈夫?」
「うん、私は大丈夫。バカボンこそ、早く教室へ。遅刻しちゃうわよ」
 そう、そうだった。教室まで走ろうとすると、飛び散った筆箱や教科書を拾い集めているトトコちゃんが目に入った。
「いいの、気にしないで!バカボンこそ遅刻しないって、決めたんでしょ。男の子なら守り抜きなさい」
 トトコちゃんはニッコリ笑って、床に落ちた文房具を拾いだした。
 でも、トトコちゃんを放ってはおけない。
「バカボン、遅刻しちゃうわよ」
「いいんだ。ぼくはぼくなんだ」
「えっ?」
「今まで、ぼくは自分の意思で行動していなかったような気がするんだ。誰か他人の意志で動いていたような」
 バカボンはそう言って、トトコちゃんと一緒にしゃがみこんだ。そうなんだ、読者がどっちを選ぼうと、ぼくは自分の意志で行動する。
「自分の意思で生きていこうって決めたんだ。たった今から。遅刻より大切なこと。ねぇ、手伝ってもいいでしょ」
 バカボンは照れくさそうに、コンパスや分度器を集め始めた。
 キンコーン、カンコーン。
 始業の鐘が鳴った。新しいバカボンを祝福するように。

HAPPY END


2008年07月11日(金) 天才バカボンの華麗なる登校 その5

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

 ド不思議の国の最後に待ち受けていたのは、このゲームブックの作者である喰始(たべはじめと読む)氏であった。この本のあとがきによると、喰始氏はさまざまなTV番組のギャグ演出家であり、あの紅白歌合戦の裸Tシャツ事件でも有名な劇団WAHAHA本舗の主宰でもあるという、実はすごい人らしい。あとがきも赤塚不二夫本人が書いているし、何気にこのゲームブックって豪華だ。
 彼のクイズを答えるとこのド不思議の国から脱出できるらしい。が、間違えると、ド不思議の国のどこか途中からやり直しとなる。が、真面目に答えると作者の機嫌を損ねて、これもやり直しになるのだ。が、あんまりふざけた答えを選ぶと、このゲームブックの趣旨が分かっている!と褒められたうえ、その趣旨にそってやっぱりやり直しになるという、まことにややこしい選択肢になっている。
 一度、やり直しになったものの、バカボンはなんとか次のチャンスでド不思議の国を脱出できたのであった。
 バカボンは必死で学校に向かって走った。
「はぁはぁ……。このぶんなら、間に合うかな」
「シェー!そうはいかないザンス!もう8時30分を過ぎているザンスよ」
 今度はイヤミがポンコツ車にのって登場した。
 もう遅刻してるだって!?あまりのことに、バカボンは道路にヘタリこんだ。そんな、ここまできて。しかし、イヤミは自信たっぷりに胸を叩いた。
「ミーにまかせなさいザンス!このタイムマシンで時間をさかのぼれば遅刻しないですむザンス」
 なんとイヤミの車はタイムマシンだったのだ。言われるがままタイムマシンに乗り込む。
「レバーを引くか押すかするザンス!どっちかが未来でどっちかが過去へいくザンスよー」
 うへっ、未来に行ったらまた話がややこしくなる。祈るように選択肢を選んでレバーを操作すると、車は青白い煙を吐き出してタイムスリップした。

 車が停車した。時計の針は8時前に戻っている。
 やったー!バカボンとイヤミは手を取り合って喜んだ。
「何を喜んでいるのだ。道の邪魔なのだ」
 そこにバカボンのパパがいたのだ。だが、パパの姿を見て絶句した。若い!今のパパはまだ大学生ではないか!
「シェー!大変ザンス!過去に戻りすぎたザンス!」
「シェー!」
 思わず、バカボンまでシェーをしてしまった。
「訳のわからないことを言っているのだ。もう相手にしないのだ」
 パパは時間を無駄にしたというように、スタスタと歩いていった。
「まってよー、パパー」
 選択肢もなく、バカボンは慌ててパパを追いかけていった。って、何でパパを追いかける必要があるのよ。

続く


2008年07月10日(木) 天才バカボンの華麗なる登校 その4

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

「遅れちゃうよー」
 突然の声にバカボンは目を覚ました。いけない、いつの間にか寝てしまったらしい。
 声の主は大きな目覚まし時計をかついだ、地獄耳ウサギだった。
「おーい、今何時か教えてくれよー」
 あせったバカボンが地獄耳ウサギを追いかけると、ウサギと一緒に木の根っこの穴に落ちていってしまった。ミクロの決死戦にエクソシストのあとは、不思議な国のアリスネタですかぁぁああ!!!
 バカボンは落下のショックで気を失い、続いて意識を取り戻すと、キセルをふかした猫が腹のうえに座ってアグラをかいていた。ニャロメだ。
「ここはどこなの」
「ここは、ナンセンス童話で有名なルイス・キャロルの不思議の国……にナンセンス漫画で有名な赤塚不二夫ワールドが混ざったド不思議の国だニャロメ!」
 うーむ。よくわかんないけど、大変な世界に来てしまったらしい。
 バカボンが立ち上がってみると、立て札があり、そこを起点に2本の道が延びていた。キノコの森とタマゴの里。キノコの森を選択して歩く。
 歩いているうちにお腹がすいてきた。おそ松くんの家でも結局朝食は食べそこねたので無理はない。しかし、森にはキノコが大量にはえていた。これは食べろってことですね。
「はー、ぽっくん、ぽっくん」
 バカボンの姿はたちまちタヌキの姿をした、ココロのボスに変身した。ひー、やっぱり罠だった。別のキノコを食べると、便器の形をした顔の東洋便器に変身した。
「やあ、みんなベンキしてる?」
 あー、もう嫌だぁぁああああ!!!!
(長くなるので中略)
 やっとの思いで元の姿にもどったバカボンの目の前を、一人の少女が明るく話しかけてきた。
「こんにちは。私、エメラルド・シティへ行きたいんだけど、道、知らない?」
「ごめん、ぼくの方が道を尋ねたいくらいだから。でも、エメラルド・シティって聞いたことあるなー。君の名前は?」
「私はオズの魔法使いに登場するドロシーよ。ほらここに仲間たちもいるもの」
 ドロシーの仲間って、ライオンとブリキマンとかかしだよなー。
 バカボンはドロシーと名乗った女の子の背後をそっと見た。
「ノーテンキー!」
「クスクス、クスノキ」
「特別出演してやってるだけニャわい」
ウメボシ仮面と、キノピオ(ピノキオではない)と、菊千代(赤塚不二夫の飼っている猫)じゃないか。
「どう、あなたも仲間にならない?」
「遠慮します」
 ドロシーが去っていったあと、バカボンはまた別の女の子に出会った。
「こんにちは、私はドロシー」
「えぇ!?さっき、ドロシーにはあったばかりだよ」
「さっきのは分家ドロシー。私が本家ドロシーよ。ほら、ちゃんとした仲間もいるし」
 本家ドロシーと名乗る女の子はニッコリと笑った。バカボンは女の子の背後をそっと見た。
鉄カブトのことしか話さない、たたえよ鉄カブト!こと熊田に、やたら難しいことしか話さない学者先生、それに赤塚不二夫の願望が具現化したマンガ家狼(漫画描きのアシスタントをしてくれる便利な獣なのだ)がそこにいた。
「どう、あなたも仲間にならない?」
「やっぱり遠慮します」
 本家ドロシーがさった後も、またもや楽しそうな歌声とともに新たなドロシーが現れた。元祖ドロシー、老舗ドロシー、五号店ドロシー、東中野店ドロシー……。
「つきあいきれないよー」
 バカボンがさらに先に進むと、筋肉ムキムキの男たちが並木になっているボディビルダーの並木道に、相撲とりたちが並んでいる並木道、それに人生の並木道の3本が延びていた。

疲れたのでまた中略して続く


2008年07月09日(水) 天才バカボンの華麗なる登校 その3

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

 おそ松くんの家の前を通り過ぎたとき、おいしそうな匂いが家の中からただよってきた。バカボンは急いで家を出たので朝食を食べていないのだ。
思わず、台所を覗いてみると、おそ松くんのママと目が合ってしまった。
「あら、バカボン、今日は早いのね。そんな所で覗いていないで、あがって朝食を食べていかない?」
 誘惑にあっさり首を縦にふって、家にお邪魔したバカボン。おそ松くんのパパや6つ子たちと話していると、なぜかとうふやラーメン、寿司、サンドイッチとさまざまな食べ物が一家とバカボンに襲いかかってきたのだ。
「オーメン」や「エクソシスト」の音楽がとどろく。こいつらは食べ物の悪霊なのだ。おそ松くんたちと大騒ぎをしていると、これまた唐突に悪魔祓いの神父が登場した。
「この聖なる塩をまくのだ!いや、聖なる砂糖だ!やはり塩だ!」
 どっちなんだよー。バカボンは文句を言いながらも、聖なる塩を選択した。
 効かない!続いて聖なる砂糖を選択したがこれも駄目!
「ならばこの聖なる醤油をまくのだ!いや、聖なるソースだ!」
 聖なる醤油を選択すると、今度は効果があった。
「グ、グエー!やめろー」
 巨大な納豆の塊みたいな物体が浮かびあがった。
「見ろ!この聖なる割りばしを!」
 神父は割りばしを交差させて、十字架の形を作り出してさらに追い詰めた。そのまま冷蔵庫を開ける。中には腐った牛乳があった。
「やめろー!」
 悪霊の絶叫にかまわず、腐った牛乳を台所の流しに捨てた。
「やめ・・・・・ろーーーーーーーー」
 悪霊は消え去り、おそ松家の脅威はさった。
「悪霊は去った。しかし、いつまた蘇るかもしれないのだ。だからくれぐれも食べ物を粗末にしないように、大切にするのだ」
 神父の言葉使いがおかしくなった。もしやと気づいたバカボンが神父の衣装をはぐと、なんとバカボンのパパが登場したのだ。
「ワシだって少しは活躍したいのだ。これでいいのだ。さ、バカボン、学校へ行くのだ」
 家の後片付けをしているおそ松くんたちに別れをつげて、バカボンは再び学校へ向かうのであった。が、次のパラグラフで早起きに疲れの出たバカボンは木陰で休憩をしているのであった。
 本当に遅刻は人のせいか?バカボンよ…。

続く


2008年07月08日(火) 天才バカボンの華麗なる登校 その2

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

「バカボン、起きなさい」
「お兄ちゃん、早く起きないと、また遅刻しちゃうよ」
「そんなことではてぬぐいなのだ。いや、てぬるいのだ。バカボーン!起きるのだ」
 家族の声でうわぁ、と目が覚めた。
「バカボンどうしたの?すごい汗ね」
「ううん、なんでもないよ。ママ」
 無理矢理笑顔を返したが、顔がどうしてもひきつってしまう。
 ふっ。人の海綿体の中で圧死する以上になさけない死に方は、きっとないよ。「華麗なる登校」のタイトルに、これほどかけはなれているものはない。
 とにかく、あれは悪い夢だったと思って、学校に行こう。

「ウギャー!痛えてよー」
 おでんを串ごと飲み込んでしまって、猛烈な腹痛に苦しむチビ太が登場した。もう汚物まみれになるのはうんざりなので、今度は医者を呼びに行く選択肢を選んでみた。
 ところが赤塚不二夫ワールドで医者といえば、手足をタコやニアワトリのものに移植してしまうようなマッドな奴しかいないのであった。そんな医者を連れてきたら、ますます話がややこしくなる。
 医者が頼りにならないなら、おまわりさんだ。バカボンはそう判断して交番に飛び込む。
「なんだ坊主。ジッパーにキンタマでもはさんだか」
 そこにいたのは下品なおまわりさん(というキャラ)だった。
「キンタマをはさんで、これが本当のキンタマげた!ギャハハハハハ」
 駄目だ。まったく頼りになりそうもない。帰ろうとすると、下品なおまわりさんはまた声をかけた。
「よう、他にもおまわりはいるぜ。会っていくかい?何か用があるんだろ?」
 うーん。時間の無駄になりそうだが、あえてここは会ってみるを選択する。すると登場したのは、あがり症のおまわりさん(というキャラ)だった。もじもじして、彼も全然頼りになりそうもない。
「坊ちゃん、こんなおまわりさんで、ごめ、ごめんなさい」
 つきあったバカボンが馬鹿だった。今度こそ交番を出ようとすると、下品なおまわりさん曰く、まだおまわりさんはいるという。何となく気になるので、また懲りずに会ってみるを選択すると、
「エー、毎度バカバカしい取り調べで、お時間を拝借いたします」
 登場したのはタイホ亭こん坊だった。噺家志望のおまわりさんで小話ばかりしゃべっている奴だ。これも駄目だ。
「バーロイ。まだまだいるぜー」
 続いてヒグチ長十郎、デカ顔のおまわりさん、婦人警官山本リン子とおまわりさんが次々と登場した。赤塚不二夫ワールドって、こんなにおまわりさんキャラがいるのか。
 さすがにげっそりとしてしまう。もうチビ太のことを半ば忘れかけて、いくらか茫然とつぶやく。
「やっと、終わったのかな」
「終わってなーい!!」
 銃声を次々とあげながら、目ん玉つながりのおまわりさんが飛び込んできた!出た!日本一拳銃を撃ちまくるといわれる目ん玉つながりのおまわりさんだ!
「おまわりさんの真打ち!この私が登場しないと、おまわりさんシリーズは終わらないのだ!」
 あー、つきあってられない。交番を飛び出すと、元気に走り回っているチビ太が目に入った。なんだ、こちらが時間をつぶしている間に治ったらしい。
 気を取り直して、学校に向かい始める。とにかく毎朝こんな調子だから、学校に遅刻するのだ。

続く


2008年07月07日(月) 天才バカボンの華麗なる登校 その1

(赤塚不二夫劇場のプレイレポートです。ネタバレ有りなので遊ぶ予定がある人は読まないことをお勧めします)

「バカボン、起きなさい」
 耳元でママの声がする。
「お兄ちゃん、早く起きないと、また遅刻しちゃうよ」
 続いて弟ハジメの声。
「そんなことではてぬぐいなのだ。いや、てぬるいのだ。バカボーン!起きるのだ」
 パパの声で完全に目が覚めた。
 そうなのだ、バカボンは今日こそ学校に遅刻せずに登校すると心に誓っていたのだ。なぜならバカボンはいつも妙な事件に巻き込まれて、今まで遅刻せずに学校に到着したことがないから。
「いってきまーす」
 まだ朝の6時だというのにバカボンは家を飛び出した。いくらなんでも早すぎると思うだろうが油断はできない。大抵何かがおこって、余計な時間がかかることを見越しての早出なのだ。

「ウギャー!痛えてよー」
 ゲームが始まって次のパラグラフでいきなりトラブル発生。バカボンの前におでんを串ごと飲み込んでしまって猛烈な腹痛に苦しむチビ太が登場した。朝っぱらからおでんなんか食いながら道を歩いているチビ太も何だかなーなのだが、人の良いバカボンはほっとけない。チビ太を介抱しているとそこへ、もーれつア太郎がやってきた。
「おうどうしたんでぇ、大丈夫かい」
 事情を話すと、もーれつア太郎はしばし考え込んだ。
「腹の中じゃ、手も足もでねぇな。いや待てよ」
 もーれつア太郎は幽霊である自分の父ちゃんを呼び出した。
 父ちゃんは事情を聞くと、青いキャンデーと赤いキャンデーを取り出した。
「赤いキャンデーをなめれば大人や年寄りになる。青いキャンデーをなめれば赤ちゃんや細胞になれる。これを使ってチビ太の体の中に入って、串を取り出すのじゃ」
 それって、赤塚不二夫漫画じゃなくて、手塚治虫漫画<メルモちゃん>の不思議なキャンデーでは…。
「ケッ、なんでもいいから早く助けてくれよ。イテテテテテ」
 チビ太が痛がるので、文句も言ってる場合でもない。青いキャンデーを選んで舐めると、もーれつア太郎と、バカボンはみるみるミクロ化されていった。
「よし、この中に入って体内に侵入するんだ」
 幽霊の父ちゃんが取り出したのは、座薬式カプセル。ええー、こうゆうシュチェーションの冒険は普通口の中から入らない?
しかし、2人は座薬カプセルの中に入ると、チビ太の尻から体内に侵入していった。

 大腸の中をうんこを踏みしめながら歩くもーれつア太郎とバカボン。途中で枝道があったので、そちらの道を選ぶと、小便の湖に落ちてしまった。どうやら枝道は尿道だったようだ。
 這い上がって先に進もうとすると、通路いっぱいに大岩がゴロゴロと転がりながら、こちらに向かって転がってくる。胆石が転がっているのだ。
必死にもと来た方向に逆走を始める二人、ふと気がついて壁のようになっている海綿体に体をねじ込んでみると、なんとか潜り込めた。そのそばを胆石が通り過ぎていく。
「ふぅ、助かった」
 そう思ったのもつかの間、海綿体が膨張を始めた。体をはさんだままの二人は身動きできない。海綿体が膨張するということは、つまりなんだ。ナニがおったっていくわけだ。
「チビ太のやつ。こんなときに何考えてるんだ」
 そのまま、二人は押しつぶされてしまった。

END


2008年07月06日(日) 赤塚不二夫劇場(喰 始/JICC出版局)

 あの有名な天才バカボンをはじめとする赤塚不二夫漫画の世界観を詰め込んだゲームブック。読者はあのバカボンになって学校にいくというお話しです。
 えっと、正直この作品は読む前はあんまり期待していなかったのですが、意外に面白かったです。
 ゲームの目的はただ、先ほど書いたとおり、遅刻せずに学校に行くだけという内容なのですが、次から次へバカバカしいほどのしょーもないトラブルがバカボンに襲いかかってなかなか学校にたどりつけません。
 おでんの串を飲み込んだチビ太を助けるために人体に潜り込んだり、学校に間に合わせるためにイヤミと一緒にタイムマシンに乗り込んで過去に戻ったりと、ただ学校に行くだけなのに波乱万丈なのです。ルールは特にない単純な分岐小説なのでクリアは割と簡単ですけどね。
 クリアよりナンセンスギャグを代表する赤塚不二夫漫画の世界に浸るのが目的といえるでしょう。個人的にはバカボンのパパが卒業したバカ田大学に潜入して、バカ田大学のキャンパス風景を見物することができるシーンは何気に貴重だと思います。
 このゲームブックを一番特徴づけているのは、次から次へと濃ゆい赤塚不二夫漫画のキャラクター達が登場し、そのいちいちに原作のイラストつきで、キャラクター解説がつけられていることです。そのおかげでファンはもちろん、そんなに原作を知らなくても赤塚不二夫ワールド入門書のように楽しめます。例えばゲーム開始前に紹介してあるバカボン一家を例にとると、

<バカボン>
 着物に運動靴という今どきめずらしい格好で、それも春夏秋冬、季節を問わず日常生活をしている。落語に出てくるバカの与太郎がモデルらしいのだが、バカボンのパパのほうが個性が強すぎて、あまり性格がはっきりしていない。自分の名前がタイトルになっておきながら、活躍するのももっぱらパパのほうが多い。しかし、今回は間違いなく主役である。

<ハジメちゃん>
 バカボンの弟で、バカボンとは逆に天才的な頭脳を持っている。顔立ちもバカボンと違ってかわいい。しかし、天才とはいつの時代も不遇なもので、ハジメちゃんも例外ではない。ほとんど活躍することなく、いつも、「パパ、がんばって」「お兄ちゃん、がんばって」と声援を送ることでお茶をにごしている。

<バカボンのママ>
 あくまでもやさしく、あくまでも家庭的な母親。不倫などという言葉はママの辞書にはない。夫に対しても母親のような接し方で、そういえば、パパとママの夫婦生活はどうなっているのだろうか。いらぬお世話である。

<バカボンのパパ>
 ダボシャツにハラマキ、ハチマキにセッタという、どうみてもお祭りで出店を開いてるテキ屋の格好である。バカボンと同じに、一年中をこの格好ですごしている。一応、職業は植木屋らしいのだが、仕事をしているそぶりはない。退屈が大嫌いの典型的なヤジ馬タイプで、他人の家庭でもすぐに顔をつっ込む。「賛成の反対」「国会で青島幸男が決めたのだ」が口グセ。

という調子なのです。おそ松くんに登場するイヤミやチビ太、バカボンに登場するレレレのおじさん、ウナギイヌのような有名キャラは当然のことながら、バカラシ記者や男ドドドブス水島牛次郎のような聞いたこともないマイナーキャラまで、総パラグラフ245の作品のくせに総勢50キャラは登場するでしょうか。
 とりあえず、見た目が汚なく、う●ことか、チ●ポコみたいな言葉がポンポン出るキャラクターが多くて、赤塚不二夫は下品キャラが大好きということはよくわかりました。(笑)


2008年07月05日(土) 傭兵剣士(新紀元社)

 その昔、社会思想社から発売されていたT&Tが出版社を変えて復活!
 そしてなんと、T&Tソロアドベンチャーの第一弾として名高い、「傭兵剣士」がでたぞー!って、もう二年近くも前の話しを書くのは、我ながら自分がいかにゲームブックとそのネット界から離れていたか、わかりますな。
 正直T&Tソロアドベンチャーシリーズは、あんまり自分は好きじゃなかったけど、それでも復活すると聞くと嬉しいです。

 余談ですが、私が現在やっているオンラインゲーム「リネージュ2」で、T&Tを知っている人には有名な名前、「無敵の万太郎」を名前にしてキャラクターを作ろうかと思いましたが、残念ながらその名前は、すでに使用されていてできませんでした。結局、そのゲーム中でその名前の人物に出会ったことは一度もなかったのですがねぇ。かわりに「ピップ」って名前の人は見かけましたが。ドラゴンファンタジーの話題を振るとちゃんと反応がありましたよ。w

 話しを戻しますと、この新紀元社の「傭兵剣士」は社会思想社版の焼き直しではなく、もう一作収録されていたソロアドベンチャーをカットして、そのかわり傭兵剣士を舞台にしたリプレイを収録しています。
 装丁がちょっと凝っていて、なんと表カバーが2重に重ねてあります。リプレイ部分(縦書き)を読むときは右開きで、わりと今風なイラストがカバーに描かれているのですが、一枚目のカバーをはがせば、そのカバーの裏は冒険記録用紙になっていて、新たに見える二枚目のカバーには以前のとおりの洋風ティストいっぱいのイラストもでっかく載っており、左開きでソロアドベンチャー(横書き)を始めるようになっているのです。
 ソロアドベンチャー部分はほとんど以前のままで(多少改定しているところもあるらしいですが)久しぶりにT&Tに触れた人はきっと懐かしい感じに浸れるでしょう。

 そして面白かったのはリプレイ部分。これはゲームマスターをたてたうえで、6人パーティの冒険者達が傭兵剣士をプレイするというもの。
 あのガチガチ理不尽洋風ゲームだった傭兵剣士が、こんなにも楽しくプレイできるのか、と驚くほど笑って読むことができます。とくにナックルという盗賊のキャラクターが、T&Tソロシナリオ特有の罠の犠牲になって、元のキャラクター原型がなくなっていくまで変わり果てるのには、爆笑ものでした。
 でもこれって、6人(+NPCで仲間になる岩悪魔)でやってちょうどいいくらいの難易度の冒険なんだなぁ。ソロだとしょっちゅう惨殺されるのも納得できますわい。(ーー;


2008年07月04日(金) 未来神話ジャーヴァス−闇の反逆者−(勁文社)

 私のお気に入りの双葉文庫から出ている同名ゲームブック(サブタイトルは違いますが)のことではありません。勁文社から発売されていたコミック版のゲームブックです。
 コミック版ということもあり、パラグラフ数は200程度で比較的短時間で終わる作品です。絵柄は基本シリアス系なのですが、戦闘の負けシーンなど一部で主人公がギャク顔になっていたりします。

 原作ゲームのことはよく知らないので、双葉文庫版とどちらが原作に近いのか、はたまたどちらもオリジナルストーリーなのかわかりませんが、双葉文庫版とはまったく別物のストーリーと設定となっています。
まず、双葉文庫版のストーリーが、大魔術師の若き弟子だった主人公ロイが、宇宙船のユニットであり意思をもつジャーヴァスに乗り込み、各地に散らばる宇宙船のパーツを集めて地球に衝突しようと接近してくる凶星ネメシスを打ち砕く。というものに対して、勁文社版は主人公の名前こそがジャーヴァスです。彼は人類の移住先を求める光速宇宙探査船の最後の生き残りで、地球に帰り着いたとき、すでに地球の機械文明は崩壊しており、7つの世界でそれぞれ暴君が支配して、魔物が跋扈するすさんだ世界と化していたのです。彼は統一軍を組織して、暴君どもを退治し、世界で始めて世界を統一して平和に導いた。というのが本作品のプロローグです。その後、謎の反乱軍が登場するところから、冒険は始まります。
 2つのゲームブックをつなげるものは地名と、双葉文庫版のオープニングでふれていた「昔、星の国からきた人が世界を統一し、それは宇宙船の名前をとってジャーヴァスの神話と呼ばれている」という箇所でしょう。この星の国からきた人が勁文社版の主人公のようです。

 このように本書の主人公は、長い宇宙の旅から帰還し、世界統一を果たした英雄ですが、見た目はまだ10代の若者で、そんな偉業を達成したわりには、自ら徒歩で村へ聞き込みにいったり、剣一本で魔物と戦うなど下っ端のようなことをしています。一箇所でも必要なアイテムの入手に失敗するとそのまま進めても最終的にはクリア不能という、少々いじわるなつくりのうえ、単なる道の分岐などでもそれが決まってしまいます。パラグラフ数が少ないのでそんなに苦ではないですが、クリアへのルートは一本道に近く、何度も死んで覚えろ!的なゲーム性となっている感じです。
 本書ゲーム部分で独特のものとしては、主人公が単独で冒険をしている間も、反乱軍が各地に登場するので、鎮圧のため兵力のポイントを各地域に振り分ける指示を出せることです。冒険中の情報やカンなどで次に反乱軍が襲ってきそうな場所を予想してその地域に多めに兵力をさいておくと、勝利をおさめやすくなり、兵力のポイントが増大します。これらの大規模戦闘は主人公の冒険とは別におこっており、勝敗が今すぐ主人公の行動を左右することはありませんが、ポイントが低いと終盤の総力戦で反乱軍に負けてENDとなってしまうので注意が必要です。
 低年齢向けの作品ですが、同社のコミック版ゲームブックの中では、割としっかりした作りになっていると思います。


追記 
 ミクシィにこのことを書いた時、ファミコンのゲームの方を遊んだ方からコメントがもらえました。原作では7人の暴君を倒すのが目的だったようです。この話しを参考にすると、時系列としては、ファミコン版の冒険が終結したあとに、勁文社版の冒険、そしてさらに1000年が経過したあとに双葉文庫版の冒険と続くようです。

参考サイト
未来神話ジャーヴァス(JARVAS)
http://www.hatsune.cc/game/kusoge/javas/
未来神話ジャーヴァス攻略 〜説明〜
http://members.at.infoseek.co.jp/pandako/jarvas_setumei.htm


2008年07月03日(木) スカーレットのように(クリスティラッセル/集英社文庫)

 本書は集英社文庫から出版されており、その装丁は現在の少女小説レーベルとしては有名なコバルト文庫と同じものですが、発行が昭和60年、定価は280円となかなか時代を感じさせます。
 内容はスカーレットオハラにあこがれる16歳のタラという少女が、さまざまな恋の体験をする(といっても少女向けですからキス以上のことは起こりませんが…)というもの。
 わずかに11パラグラフしかなく、そのぶん選択一つで展開が大きく変わります。どの選択肢を選んでも、とくに大きな波乱もなく甘〜い恋のお話しになってしまうので、そういうのに興味のない人には、この作品はお勧めできません。
 楽しく読めるかは、いかに主人公のタラに感情移入できるかにかかっています。そうすれば本の好きなタラが「前からの希望だった本屋でのバイトを選ぶか?それとも運良くチャンスのまわってきた時給も良い人気のファミレスのウェイトレスとして働くか?」という、一見ささいで日常的な選択肢にもドキドキできるかもしれませんよ。


2008年07月02日(水) ブラスターケリー(社会思想社)

 ウォーロック34号に掲載されている、パラグラフ127のミニゲームブック作品です。
 この号のウォーロックはSF特集ということで、T&TのルールでSFをしようとか、FFシリーズにおけるSF作品の役割を書いた評論とかあるので、このゲームブックも当然のようにSF作品となっています。
 ただ、この作品の主人公は元役者です。昔は開拓地の火星を舞台に悪と戦う"ブラスターケリー”という役をこなしたビデオヒーローだったのですが、その栄光も過去のものとなり、少々疲れと老いを感じるようになった単なる本名のエドワードに過ぎなくなっていたのです。しかしかつて不思議な老人からもらった贈り物の箱を開けてみると、ブラスターケリーが使っていた型の、まるで本物のようなレーザー銃がはいっていました。
 こんな感じのオープニングです。銃と携えて火星にやってきた主人公は、小さな女の子と知り合い、やがて彼女をめぐる事件に巻き込まれていきます。

 パラグラフ数のわりにストーリー分岐も多く、主人公の設定もあいまって冒険がなかなか面白いです。ブラスターケリーのように行動するか、エドワードとして行動するかという選択肢が何度かでてきますが、正義として戦うだけならブラスターケリーの行動を迷わずとればいいけれども、現実世界でやたら銃を振り回したりもできず、常識的なエドワードとしての行動も時にはとる必要もあるのです。
 展開によってはたまに、現実から離れたというか、ブラスターケリーの世界の方が現実に見えてしまうような展開もありますが、そこがまたこの作品の特徴なのでしょう。

 ルールはケリーポイントとエドワードポイントの2つのポイントを管理し、どちらかでも0になったらゲームオーバー。どちらの終わり方も、おや?と思わせるような感じになっています。無事に終盤まで進められた場合も、普通のエンディング以外にいろいろな終わり方があるので、短いながら何度も挑戦してみるのが吉な作品と思います。


2008年07月01日(火) スペース・ハリアー −ホワイトドラゴンの勇者−(塩田信之/双葉文庫)

 人気3Dシューティングを原作としたゲームブックです。
 原作は僕は大好きでした。当時としては凄いあの擬似3Dの中を高速で次々に襲いかかってくるモアイやらドラゴンを見て、鳥肌ものの衝撃を受けたものです。スペース・ハリアーやりたいだけのためにセガサターン買ったくらいですから。
 ただし、ゲームブックとなると話は別です。PRGや探偵もののゲームと違い、シューティングゲームとゲームブックは相性が悪そうですからね。そのまま移植するわけにはいきません。創元推理文庫からシューティングゲームを原作とした名作ゲームブック、「ゼビウス」が出ていますが、これは原作ゲームの世界観を生かしたRPGになっていましたね。
 ところが、この「スペース・ハリアー −ホワイトドラゴンの勇者−」の作者は爽快感あるあのシューティング要素までなんとかゲームブックに移植したいと考えたようです。

 物語は、現実世界でスペース・ハリアーを遊んでいた少年が、ゲーム世界に吸い込まれてしまい、救世主として冒険をする羽目になるという、双葉ゲームブックにはよくあるパターンのものです。
 ゲームスタート前に体力、敏捷力、超能力、武器など5つの能力値を、32ポイントの中から自由に割り振って決めます。いわゆるRPG的な戦闘ルールはなく、ゲーム中は敏捷力+サイコロ2個で13以上か?などと尋ねられて分岐するようになっています。ポイントが足りなければ、敵の体当たりなどを受けて体力が減少したり、敵を破壊するのに失敗するなどといった仕組みです。おもしろいのはTVゲーム画面に見立てた9マスの中で主人公の立ち位置を決めるというシステムです。図にすると

「−−−
|ABC|
|DEF|
|GHI|
 −−−」

という感じになっていて、ゲーム中では、A→C→I→Gと回って弾幕を回避するか、Eの地点でひたすら避けるか?などといった選択肢に利用されています。少しでもスペースハリヤーらしさを出そうという考えなのでしょう。

 ゲームが始まると、敵の本拠地に向かうまでいくつかの味方のベースキャンプに立ち寄る以外は、ひたすら、敵をかわしたり、破壊したりのシーンが続きます。比較的、進路は自由に決めることができ、クリアまでかかる時間は同じ双葉ゲームブックの中では短めです。またマルチエンディングになっているので、途中で補強した武器や主人公の決断いかんで、終わり方が結構変わってしまいます。総じて何度も遊べる作品といえるでしょう。

 このドラゴンランドという独特の世界で、ヒロイン以外の登場人物が目立たないというのが、ちょいと個人的には残念ですが、シューティングゲームそのものをゲームブックに移植したという意味では、一番の作品ではないでしょうか。


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