絵童飛鳥のエッセイ
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2002年06月14日(金) 真っ白な紙

真っ白な紙の上に、絵を描いた。
それは、可愛らしい絵だった。しかし、紙は汚れた。
真っ白い紙だったのに、絵を描いたことで、紙は汚れた。
紙の余白部分に、また絵を描いた。しかし
紙は、どんどん汚れていく。
消しゴムで消してみても、答えは同じ。
紙は汚れる。

しょうがないから、紙を燃やした。消えて無くなるように、
汚い紙は見苦しいから、紙を燃やした。
紙は、灰になって、風にのって飛んでった…。

もう僕は絵が描けない。紙がないから絵が描けない。
もう一度、僕が絵を描くなら、
また、最初から絵を描くなら、
紙を変えなくてはいけない。でも、その紙もいずれ汚れる。
汚れない紙は無いのだから。
僕は、絵を描くのを止めよう。
そう、汚さなくていいように。
そう、真っ白のままであるように…。


2002年06月06日(木) ポセイドン

漆黒の闇の中、僕は、手探りで道を探した。
でも、僕は、道を探し当てることも出来ないまま、
奈落の底へと落ちていった。
地面に足をついたとき、すでに僕は足の骨を折っていた。
しかし、歩かなければならない。生きているのだから、
時間には逆らえない。
僕は、また、手探りで道を探し、足の痛みに耐えながら、
一歩一歩、歩いていった。
しかし、そんな僕に不幸は突然訪れる。
道を探すために、前に出した手に激痛がはしる。
僕の右手は、無惨にも切り落とされた。
切り裂かれたところからは、夥しい真紅の血が流れ落ちた。
しかし、その状況も僕には、見えない。
そう、僕は、すでに視力を、眼球を潰されているのだから…。

僕は、歩く。朦朧とする意識の中で、只、歩く。
死が僕を迎えに来るまで…。


2002年06月01日(土) 携帯電話

夜になると、あの男は、僕の前に必ず現れる。
その男は、僕に必ず、こう言うのである。
「明日が欲しいか?」
僕は、いつも頷く。ただ、コックリと。

ある日、いつもの時間に男は、来なかった。
僕は、安堵の表情を浮かべながら、
いつも通りの生活をしている。

次の日、僕は、死ぬのに。それに気づかないまま。
いや、気づいていたのかもしれない。
その男は、神であったことに。
その男に生かされて、僕は、この世界に居ることに。

僕の見せた安堵の表情は、疲れ果てたこの世界との
別れを喜ぶかのように、ほのかに笑っていた…。


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