singersong professor KMの日記

2005年10月31日(月) 学会発表を終えて

 土日は,証券経済学会であった。今回は急逝された佐合先生の代役も務めたので忙しかった。初日11時からウェブサイト委員会,12時からは役員会だった。午後は自由論題の報告を聞いたり,総会に参加したり,そして夜は懇親会。ま,2次会は楽しんだ。飲み始めると,ついつい,ハイになってしまうようだ。慚愧慚愧。

 2日目はこれが大変。午前中のセッションで報告したので,ばっちりおつきあい。昼休みに共通論題打ち合わせの後,1時から共通論題の司会。自分の報告が終わってほっとしていて,打ち合わせに遅れてしまった。呼びに来られてやっと駆けつけた次第。終わったのが16時10分。何ともはやせわしなかった。でも共通論題で神戸大学名誉教授の河本一郎先生のお話を聞けたのは幸いだった。法学者が何を考えているのか聞くことができた。常に現実(ないし係争)に対する解を求められている法律の現場感覚は興味深かった。われわれ経営学者も現場感覚を失ってはならない。改めてそれを思った。

 今日月曜は,大学に着いたらメールチェック,それと関連した仕事の片づけ。また,留守電も入っていた。それを片づけるのに時間を取られた。今で2時間はたったのに,まだ片づかない。礼状もまだ2通くらい作る必要がある。これからそれに取りかかる必要がある。自分の抱えている仕事になかなか取りかかれない。なかなかつらいものがある。

 閑話休題。

 昨日出張から戻ったら,『花咲き乱れる山へ−花谷薫追想集−』が送られてきていた。花谷さんにはピッツバーグでお世話になった。それが57歳でお亡くなりになった。その3回忌に出されたもので,私も一文を寄せた(というかお手紙を差し上げたらそれを掲載しても良いかというので結構ですと言っただけだが)。民法学者で熊本学園大学教授だったわけで,昨日の学会でその学長の坂本先生とはお会いしたばかりだった。花谷さん,坂本学長,それに関学の平松学長とが並んで写っている写真も掲載されていて,これらの人たちが一緒に話されているのをみて,花谷さんが別の意味でも私の近くの人であったことを,今頃になって知った次第だ。それにしても善人は早死にするのだろうか。合掌。



2005年10月27日(木) いろいろ

 ようやく科学研究費補助金申請書類の提出を終えた。やれやれというところだ。最近はどこの大学でも申請を競っている。なんとなれば,大学の研究意欲の格付けにこれが利用されるからだ。だから,どこの大学も補助金申請に力を入れているわけだ。それ自身は良いことである。ただ例年この時期にその作業に追われるのはつらい。今年はまだ良いが。

 昨夜は阪神乾杯?いや完敗。N君と,ちょっとした作業をしながら,ネット「観戦」。N君はどこかでテレビを見たかったようだが,どうも負け戦を見るに忍びないので,ネット「観戦」で我慢した。正確に言えば,日刊スポーツやヤフーなどのサイトで途中経過が逐一アップされるので,それをフォローするという「観戦」だ。昨年に引き続きパ・リーグ勝率1位チーム,セ・リーグ優勝チームが負けた。待たされて勝負勘の鈍ったチームが不利になるのは否めないようだ。程度の差はあるだろうが,結果がそれを実証している。来年の優勝決定方式は変わるのだろうか。

 先月末に伊藤製作所伊藤社長へのインタビューに行ったのだが,そのテープ起こし原稿を整理したのを,さらに短くしてくれという「注文」に応えて,短縮するという作業をN君とともにした。だいぶ短くしたつもりだが,カットするのに忍びないところがあって,苦労したが,エイヤッとばかりに思い切ってカットした。もうこれでOKを出してもらいたいところだ。



2005年10月26日(水) 科学研究費

 科学研究費補助金申請のシーズンだ。書類の作成に結構時間を要する。しかし最近は大学でも申請を奨励しているので,これに応えようと言うわけで,作成にいそしむ。これが結構時間食いなのである。学内締め切りを過ぎてもまだ完成していないという有様だ。単独の研究ならさほど困難ではないが,共同研究の場合,結構大変だ。各人の業績や研究者番号などを知らせてもらう必要があるからだ。しかも今年から電子申請が導入され,手間もかかる。何にための電子化かといえば,作成者の手間を省くためではなく,受付側の手間を省くために行われるわけだ。電子化が利用者に以前以上の負担を強いているように思う。

 コンピュータの時代になって便利になったかというと,必ずしもそうならない。というのは,顧客のためにコンピュータを活用しようと言う設計思想なのか,受付側の事務の手数を省こうという設計思想なのかで,全く異なるからだ。わかりやすいのは,JRのチケット販売などは利用者に便利な仕組みだと言える。もちろん販売側でも合理化されている。役所が絡むと事態は全く逆転する。良い例が,電子申告だ。納税申告が電子化されたと言うが,これなど納税者に負担をかけているだけで,少しも便利になっていない。確かに受付側の手間はだいぶ省けているのだろう。

 銀行のATMなどは,時間外利用などは預金者にも便利だが,コストを負担させられている。銀行側は窓口業務に人をあまり貼り付けずに済むようになったから合理化は相当進んだはずだ。これなどは利用者側の利便向上2,3割,銀行側の合理化が7,8割(あるいはそれ以上)というところではなかろうか。こういうように考えていくと,コンピュータ化のねらいがどこにあるか,よくわかるように思う。一度誰かにまとめてもらいたいものだ。そしてそれを分析すれば,コンピュータはいかに活用すべきかが明らかになるはずだ。



2005年10月24日(月) 戦略不在

 土日は,東京での学会出張。収穫はあったと思う。お酒も飲んだけれど。で,3日ぶりのメールチェック。スパムメールなどがいっぱいで,その整理だけでも時間がかかる。もちろん大切なメールもあった。コンサルタントの岸本氏からのレポートが送られてきた。そこでは,少子高齢化への対応が先送りされていること,高齢者のあいだでの所得格差が拡大していること,などが指摘されていた。

 主として少子高齢化に対して,私は次のような感想を書き送った。すなわち,「少子高齢化が切実な問題になって生きているのに,先送り。なんと言っても,女性を取り巻く環境の改善が必要だと思っております。

 一つは,労働力人口減少に備えて,女性を戦力化すること,第二は,女性が働きやすい環境を整えること,これによって出産,子育てを支援できるので,少子化を少しは防げる。こういう対策はすぐにでも出来るはずです。問題はやる気があるかどうかだと思います。官民一体となって取り組むべき課題です。官があまり当てにならないので,民による公負担を一般化できないか,そのように思います。女性支援は,「公益的」問題だと思います。

 日本での市場原理主義は私益優先で,だらしないわがままな振る舞いを許していると思います。「規制緩和」の名の下にそれを「公認」していると思います。そのくせ,官は自らの権益を守ろうとする,全くちぐはぐだらけです。」

 岸本氏も言われるように,日本には戦略がない。国家戦略がない。前からこの点は私も指摘し続けてきているが,一向に変化がない。何とも不思議なほどである。危機感が感じられない。政治家は目先の選挙のことばかり考えている。立脚点がそこにしかない。官僚は政治家に振り回されるのに嫌気がさしているのか,かつての「想い」を失いつつあるかに見える。野中郁次郎ほか「戦略の本質」日本経済新聞社,という本が最近出版されたが,これは日本に戦略がないから,警告の意味で出されたのだろう。その書物の帯に「戦後60年の戦略不在に終止符を打つ!」と書かれているところからも,それが感じられる。



2005年10月21日(金) こんどはUSEN

 M&A騒動のさなか,こんどはUSENが「横浜ベイスターズ」買収の意向を表明し,楽天・三木谷氏を援護射撃する格好になった。何とも騒がしいことだ。考えてみれば,放送業界が規制に守られて高収益・高月給で既得権益集団であることは間違いないが,プロ野球球団も保守的で既得権益集団と化していたのかもしれない。正確には球団と言うよりその親会社に既得権益集団が多かったと言うことだ。新興グループがその間隙をついているように見える。去年の近鉄・ライブドア騒動も結局そういう構図だったと思う。

 村上ファンド,楽天,ライブドア,USENなどという新興企業グループが既得権益集団を揺さぶっている。規制や規約に守られて既得権益をふるっていただけで,経営力があったわけではないのが,ここでのポイントだと思う。放送業界やプロ野球球団に経営力があったら,こういう事にはならなかったはずだ。別に新興グループに味方するわけでもないが,既得権益グループのだらしなさが歯がゆい。

 阪神の場合で言えば,ファンの気持ちを代弁すれば,村上ファンドはそんなに好きでもない,むしろ嫌いだが,親会社の阪神電鉄に対しても,いい加減にしてよ,という気持ちではなかろうか。ただし,楽天などは実業をしているといえるば,村上ファンドは所詮は虚業,あまり表舞台に出て欲しくないという気持ちもある。



2005年10月20日(木) 村上ファンドなどの動き

 1台のパソコンが重篤。で,片肺飛行が続いている。N君にお願いして,アウトルックなどについては,何とかデータ移植と立ち上げは健康なパソコンの側でできるようになった。この重篤なパソコンをどうするか。臓器移植か,あきらめて新人登用か,迷うところだ。

 ところで,今朝「テレビ東京株、一時ストップ高…村上ファンドら取得で」などというニュースが報じられていた。要するに,規制産業の最たるものである放送局で,保有資産の割には株主価値が高められていない,そういう判断から買われているのだろうか。そういう判断ができる素地がどこかにあるのだろう。従業員数は単体で657名,平均年齢38歳で,平均年収1135万円,と高給取りが多い。ゆとり度は満点だ。火のないところに煙は立たず,だ。

 ただし,TBSと違って安定株主の持株比率が高い。特定株比率は,TBS37.1%に対して,テレビ東京は60%で,筆頭株主はTBSが「日本マスター信託口」11.3%と,これ自体不安定であるのに対して,テレビ東京は「日本経済新聞社」33.3%と,高い。ここから村上ファンドなどの保有目的はTBSなどの場合とはだいぶ違うのではないかと思わせられる。

「ライブドアの堀江貴文社長の個人資産を運用するファンドや、村上世彰氏が率いるMACアセットマネジメント(村上ファンド)が、それぞれ1%前後のテレビ東京株を取得したことが明らかになり、「両ファンドがさらに買い進む可能性がある」(準大手証券)との思惑から、個人投資家を中心に買われていると見られる。」(「読売新聞」10月20日12時20分更新)

 こういう記事からわかるように,TBSで雰囲気作りが済んでいるので,短期のキャピタル・ゲインねらいであると判断できるのではないか。この場合,「ババつかみ」をするのが個人投資家であるように思える。「両ファンドがさらに買い進む可能性がある」(準大手証券)というコメントは,値をつり上げる目的で言われているのではないかと疑ってかかってもよいのではないか。

 市場ではいろんな動きがあるということを承知しておかないと危ないと思う。とにかくTBSの時とはだいぶ条件が違うことは事実だ。



2005年10月19日(水) パソコンが,そして悩み

 研究室に2台あるパソコンのうち,古い方のパソコンが,急にかたかた言い出したと思ったら,ハードエラー。終了できず,強制終了して,立ち上げ直したらとりあえず立ち上がったので,ファイルの避難をして,それで再び終了。はてさて,次の方策は?ま,買い換えずばなるまい。

 閑話休題。

 若い研究者の悩みを聞いて,私も実はこんなに悩んでいるのだということを書いた。お恥ずかしい限りだが,こちらでも書いておこう。

 私は,自分の能力のなさをいつも自分で嘆いています。よくあるやつで,ひとりで「あー」とか叫んでしまう。叫びたい。そういう衝動に常に苛まれています。でも,仕方なしに,自分のできることから始めている次第です。学会発表を引き受ける,などというのは自分を無理矢理動機づける方法です。でも,しょっちゅう,先送りしてしまいます。

 あえて言えば,やさしくて面白そうな本を読んで,何かわかった気になる。それで精神衛生をよくする。そういうことの繰り返しです。

 私の場合,自分の要求水準を下げることで平衡感覚を保っているわけで,これでよいのかとは,常々思っていますが,ついつい,エクスキューズを探してしまいます。講義準備などもエクスキューズのひとつになっていて,これでよいのかと思いながらも,時間が過ぎていくという状態です。病的ではないにしても,躁状態と鬱状態の繰り返しではないかと思います。

 



2005年10月18日(火) またまた東京出張

 先日,気がつけば毎週末出張などでスケジュールが詰まっていると書いた。今週末土日は東京出張だ。何せ東京は多い。11月26日の土曜日も学会で東京というか埼玉に出張することになっている。12月も9,10日と学生証券ゼミナール大会の指導講師で東京へ出かける予定だ。先月も東証・ブルームバーグ見学会で東京に出張したので,これで,4カ月連続で東京方面出張と言うことになる。ま,首都だからそういうことになる。

 産業集積も関東中心だ。製造業はまだしも,金融となると,全くの東京一極集中となっている。そうでなくても大都会に産業は集中している。ということは地方の大学へ行っていると,就職活動が大変だと言うことになる。交通費も馬鹿にならない。大阪へなら全国ネットの企業の求人活動もしている。それでも最終面接が東京になることもある。この場合は交通費くらいは出してくれるからよいが,地方の大学はそうはいかない。

 この問題の解決策はない。あえて言えば,やはりもっと産業立地も分権化すべきだと言うことになる。日本は許認可が多いから,東京に集中してしまう。規制緩和は地方立地を可能にするはずだ。はてさて,日本の官僚機構がそれを阻止するかどうかが問題だと思う。



2005年10月17日(月) 経営財務研究学会

 この土日は,経営財務研究学会が兵庫県立大学であった。旧神戸商科大学で,地下鉄学園都市駅から徒歩10分と言うところにある。第1日目午前の部で座長(司会)を務めた。その開始時刻が9時15分と言うことになっていた。学園都市駅は三宮から20分あまりの場所で,座長と言うこともあって,遅れてはいけないので,自宅近くの嵯峨野線「花園」駅,6時58分発という電車に乗って,新快速かで三宮へ行き,そこで地下鉄に乗り換えた。到着後も道に迷ったこともあって,何とか時間には間に合ったという具合だった。朝早くの2時間はつらい。

 だから,当日は三宮泊というスケジュールを組んだ。それにしても,午前中の座長,昼休みの評議員会,午後1番の若杉敬明報告への討論者ということで,ここまで「お務め」という感じだった。その後の3本の報告と記念講演も結構一生懸命聞いたし,質問票も提出しておいた。総会,懇親会を終えてから,若手諸君と三宮で飲んだ。ビールと日本酒,焼酎。最近は焼酎を飲む機会も増えている。ホテルが三宮でも結構遠かった。S君が道を探してくれたので,到着できた。で,到着予定時刻より送れたので,ちゃんと時間通りに着いてくださいと言われてしまった。

 2日目は統一論題,実務家版,午後がその討論だった。こちらにも質問票を出した。かなり気合いを入れて聞いたつもりだ。要するにこの機会に聞きたいことを聞いておこうという,全くの「自分の都合」だったわけだが,結果的に学会の討論を活発にすると言う「貢献」もしたわけだ。やはり,実務,実態に近い話には,最近私はとても関心をもっている。その意味では興味深かった。夜は帰ってから,おみやげに貰った「神戸ワイン」を飲んだ。ワインを貰うのはよいが,重い。2日目朝,三宮駅のコインロッカーに荷物の多くを入れておいたので,苦にはならなかったが,これは持ち歩けない。再来年,立命館大学でこの学会を開くことになったが,われわれはこんなおみやげを用意できないだろう。



2005年10月14日(金) 楽天対TBS

 村上ファンドによる阪神電鉄買い占め劇が終わらない内に,今度は楽天によるTBS買い占め,統合提案が出てきた。何とも賑やかなことだ。何かが変わりつつある証拠だろう。これは株式相互持合が崩れはじめたときから予想されていたことである。それがいやなら相互持合いのコストを払うべきなのだろう。そういうコスト負担に耐えられなくなっているのが今の日本企業だとすれば,これは個別に対応するより他あるまい。

 トップが自社をどの方向へもっていこうとするのか,戦略的思考をもっているべきだろうと思う。それを常々語っているべきだと思う。提携の提案に対して,そういった日頃の戦略的思考から判断するという主体的な取り組みが望まれる。追い込まれてから,慌てて考えるのでは遅すぎる。全上場企業の経営者には,そういう戦略的思考を磨き上げていって貰いたいと思う。

 これまでのところ狙われるのが規制産業であるところに問題があると思う。それは主体的判断をこれまでしてこなかったところだからだ。だから対応に遅れが出る。そこを外部の投資家などから狙われることになっていると思う。「深い感動と信頼される情報を、世代を超えて届ける。それがTBSブランドのメッセージ」だという。では,具体的な戦略はどうなのか。

 「当グループはブランディングを通じて、視聴者からの支持を増やし、事業価値を一層高めていきます。このため常に組織のありかた、活性化についても柔軟な考えで研究を続けています。」というが,どうも具体的にはよくわからない。「近い将来、日本ではテレビ付き携帯電話が急速に普及すると予測されており、当グループは新たなビジネスモデルの研究を進めています。」ともいう。

 とすれば,ショッピングとテレビと携帯とをつなぐ新しいビジネスモデルも考えられるだろう。楽天の提案にも意味があるだろう。問題は,TBSが主体的戦略的にそれをどう考えるかだろう。



2005年10月13日(木) 村上ファンド

 村上ファンド。阪神電鉄株式を買って,阪神球団の上場を提言していると思ったら,今度はTBS株式を買って,逆に横浜ベイスターズを手放すよう提案しているらしい。経済合理性に叶ってはいる。ただし,これがファン心理を逆なでしていることは間違いない。果たしてどう考えるべきか,今度の証券研究会OB会で話して欲しいと依頼された。面白い話題なので,少し考えてみようと思う。

 閑話休題。

 京都市の地下鉄が値上げになると言う。初乗り運賃を200円から210円に値上げするという。これで政令指定都市で初めて200円を上回ることになるという。その他も20円値上げするという。土木のツケを住民に回すのが,この国の役人の常套手段のようだ。

 1990年頃国力の低下していたアメリカで目にしたことは,橋梁などの都市インフラが補修されずに放置されている様だった。これだけ土木事業をすると,国力低下とともに,やがて,その維持が出来なくなるだろうと思う。瀬戸内海にかかっている3本の橋も,100年後にはいずれそのうちの1本を残して,放置されることになるだろうと思う。コスト・パフォーマンスから考えて維持補修して供用し続ける経済合理性がないからだ。1本あれば十分だからだ。あちこちでそういう問題が出てくると思う。果たして私のこの予測は当たるだろうか。その頃には私はもう生きていないだろうから,自分自身で検証する術はない。残念ながら。



2005年10月11日(火) 連休

 連休,野暮用で田舎に行っておりました。ほとんど何もしなかった。ある意味では休養です。野暮用はしましたが。後期サバティカル・内地留学ですが,4回生ゼミナールは続いています。でもその他は一応お休み。で,学会などもせっせと出ようとしたり,おつきあいも気楽に約束していて,はたと気がつくと,土日が毎週詰まっていることに気がつきました。で,家族サービスが出来なくなっていることに気付きました。慚愧,慚愧。



2005年10月08日(土) 卒業生からのメールに答えて

 もうだいぶ前の卒業生がBKCを見学して,衣笠時代とだいぶ違って,浦島太郎のようだったというメールを読みました。で,次のようなことを書きました。

 BKCは,衣笠と違って,ダダッ広いし,建物も大きいのはその通りです。そして中身も昔とはだいぶ違っています。

 ソフト部分はさらに高度です。講義でも昔と大違い。外部の現場のトップなどに依頼してその話も学生諸君には聞かせています。でも,所詮は20歳かそこらの若者ですから,どれほど有り難みを感じているのかは,わかりません。

 TAをしている大学院生などは学生たちは「恵まれている」けれど,有り難みをわかっていないのではないかと言っています。そうかも知れません。でも上位層の学生諸君は,その「有り難み」を十分活かしてくれているものと信じています。



2005年10月07日(金) 成長するのです

 女子学生Kさん曰く。

「1年生時お世話になった先輩からよく言われました。
「今どこどこで働こうと決めていたりこの職種でって決めていても,違う方面で就職決めてしまう人がほとんどだよ」
 じゃあどうすればいいんですか!!!と私は言いたくなりました。色々見てみろっていうことなのでしょうが,ちょっと困りました。」

 私はこう答えました。

「もちろん職種を決めることは大事だけれど,自分の特性を十分わかっていないこともあると思う。就職は「お見合い」と同じだとよく言います。会ってみて話してみると違う自分を発見し,また,相手についてこれまで知らなかったことを発見することが多いものです。だから,余り自己限定してはいけないわけです。

 人間は日々成長していくものです。会社に入ってからも成長するわけです。ということは,今の自分は成長前の,それもかなり成長していない自分です。また,ひょんなことから,別の道に進み,そこで成長していくこともあるから,わからないものです。ですから,よくその会社と「ご縁」があったので決めた,などといいます。これも「お見合い」と同じですね。」

 そうです。人間は成長するのです。時々学生諸君で,われわれ教師はもうすでに完成している人間だと思っている君がいる。違うのです。われわれもまだ成長し,日々変化しているのです。人間は成長し続けるものです。ということは,20歳やそこらの学生諸君が,その後の成長を考えるとき,いかに「未熟」かということです。その「未熟な」段階での意思決定も,あやふやなものだと言ってよいわけです。もちろんその段階では精一杯なのですが。

 だから,そこでの決定でぶれていても,その後の成長で,その決定があたかも一里塚のように思えてくるわけです。結婚式で,私はよく言うのですが,よく結婚はゴールインだという表現がされますが,ゴールインではないスタートだと。もちろんそれまでの人生を背負った上でのスタートです。就職などというのもゴールではない。人生のその段階では就職にせよ,結婚にせよ,ゴールに見えますが,実はスタートなのです。その後成長し,結婚であれば,結婚生活を「構築」していくわけで,就職であれば,ビジネス人生を「構築」していくわけです。

 つまり,就職してからの方がはるかに大事で,大きいわけです。結婚しかりですが。それまでの短い人生経験に基づいた決定は実にあやふやなものです。また事前にこの職種などというのも,自分の適性を正確に判断していたか。また,適性などと言うものはその後の人生の中で変わっても行くものです。ですから,「今どこどこで働こうと決めていたりこの職種でって決めていても,違う方面で就職決めてしまう人がほとんどだよ」という言葉も,実感があるわけです。

 どんな会社に入ろうと,どんな職種に就こうと,そこでどう生きていくかを考えるべきなのです。「転んでも只では起きない」。当面その選択は失敗だったと思えても,その失敗でも活かして,成功することもあるわけです。人間の人生などわからないものです。でも,どんな決定でも前向きに考えて,それを活かしていけるかどうかで,人生は決まるものなのです。

 ただし,女性を十分活かす術を日本の会社で知らないところが結構あります。下手です。それは女性を育てる気概がないからです。男子社員でも育てる気がなければ育ちません。地位が人を育てると言います。地位を与えて見守ることが必要なわけです。その意味では少子高齢化が言われている割に,女性を戦力として活用するというプランをもっていない会社は,今後危ういと思います。この問題についてはいずれ話そうと思います。

 いや長くなってしまいました。Kさんに話すつもりが,こんなに長くなってしまいました。



2005年10月06日(木) またまた阪神

 またまた阪神の話題。阪神電鉄は村上ファンドに株式を買い占められて,大慌てで買収防衛策を講ずるという。だが「38%超も掌握されてから買収防衛策を導入しても実効性があるか疑問だ」(大手証券)との指摘があるように,手遅れの感ありだ。

 すでに,9月27日に村上ファンドが阪神株を大量保有したと報道されている。その段階でもすでに27%であった。即時対抗策を講じるべきであった。しかも,10月に阪神電鉄は阪神百貨店を完全子会社化したが,これには昨秋からモルガン・スタンレーが阪神百貨店の第2位株主になっていることも完全子会社化に影響しているのではないかといわれていた。これが報道されたのは今年の6月である。

 子会社の買収防衛にかまけている間に本体の買収が仕掛けられたわけだ。だが,買収防衛策の重要性はすでにこの段階で気付いていたはずだ。それが今になって防衛策とはどういうわけだろう。フジテレビの時もそうであったが,買収防衛といっても資金が必要である。社長の決断がなければそれは不可能である。その金額の大きさゆえにサラリーマン社長の決断が鈍る。そこにつけ込まれるわけだ。

 しかもフジテレビの時も,子会社ニッポン放送株買収にすでに資金投下していたので手許資金量が減少していたはずだ。今回も同様に阪神百貨店子会社化のための資金が支出され,手許資金が減少していたはずだ。ここにつけ込まれたわけだ。それも別のファンドによって。フジの場合は,ニッポン放送株を村上ファンドが買い集めていた。フジは防戦して子会社化を図ろうとしていた。そこへライブドアが割り込んできたわけだ。阪神の場合はモルガンに対抗している内に,村上ファンドに割り込まれたわけだ。しかも今度は本体に対する買収であった。

 何となれば,「日経会社情報」2005年秋号によれば,フジテレビの時価総額が6852億円に対して,阪神電鉄の時価総額は1595億円でしかないからだ。フジの場合は子会社のニッポン放送(時価総額1601億円,「日経会社情報」2005年新春号による)が狙われたのも時価総額が手頃だったのだろう。買収防衛などで資金を「使い果たして」いて,手頃な時価総額の会社が狙われやすいということになる。

 ということは,村上ファンドの先回りをして株を取得しておけば,村上ファンドが仕掛けてきたら必ず株価は上がるのだから,儲かるということになる。わがゼミ生などがそれで儲けるかも知れない。



2005年10月05日(水) 阪神上場?

 村上ファンドが阪神電鉄の株式の38%を抑え,阪神タイガースの上場を求めたという。38%を抑える前にすでに大量保有が報道されていたにもかかわらず,阪神電鉄側は何の対応もしなかったのだろうか。疑問だ。それで阪神社長の西川氏のコメント「会社の危機であり今は何も話せない」とか阪神電鉄役員のコメント「村上側からは純投資と説明され,我々もそう信じてきたが話が違う」などというのは,全く解せない。脇が甘い。純投資と政策投資の境界などあるはずがない。純投資であろうと株主価値を増やすための政策提案をするのは常識だ。「話が違う」など,どうしていえるのか。規制産業の常で,厳しさが足りない。以前のフジテレビ・ニッポン放送の場合もそうだった。規制産業で脇が甘く,責め立てられてから慌てる。

 こうしたいという理念があれば,理念に基づいて投資者の行動を判断し,防戦するなら防戦する。協力するなら協力する。何らかの対応があってしかるべきだと思う。「話が違う」といって済ませられる問題ではない。これまで何がしたかったのか,それに照らして乗っ取り攻勢に対応しなければならなかったはずだ。一体どういう危機なのか。「会社の危機」とは何を指しているのか。経営者の裁量権が狭められるという意味だろう。それは会社の危機ではなく,経営者の権力の危機なのだろうと思ってしまう。別に村上ファンドを支持するわけではないけれど,経営者には毅然とした態度で政策選択をして貰いたい。この機会に,これを奇貨として経営を見直して,しっかりと経営して貰いたいと思う。

 結局は村上ファンドは儲けるだろうと思う。すでに,500円くらいであった株価が1000円を超えている。このままうまく売り抜けただけでも相当の儲けになるはずだ。転んでも只では起きないだろう。売らなくて,もし仮に阪神タイガースが上場されたら,親会社の阪神電鉄はキャッシュが手に入り株価が上昇して,村上ファンドは儲けるだろう。その場合,タイガース株を買った投資家の払込が村上ファンドを儲けさせることになるわけだ。うまく考えたものだ。

 なお,昨日少し話していたのだが,阪神百貨店(54.1%所有,それ以外の会社はほぼ100%所有)や,阪神不動産,阪神タイガース(これがどうやら甲子園球場(簿価800万円)を所有している),ホテル阪神などは,阪神電鉄の子会社である。阪神タイガースはだから,含み益もあるし甲子園球場を高校野球に貸したりしても儲けているわけで,これの上場は阪神電鉄にとって相当のキャッシュ流入となるはずだ。



2005年10月04日(火)

 何か久しぶりの雨のような気がする。で,結構蒸し暑い。地球温暖化の影響だろうか。これも伊藤製作所の伊藤澄夫社長の言葉だが,地球温暖化が進めば,太平洋ベルト地帯は工場建設に向かない。エアコンのコストが馬鹿にならなくなる。その点北海道はそのコストが安く住むので,これからは北海道に工場を立地すべきだという。なるほどと思う。企業トップの目の付け所は違うと思った。大変勉強になった。トップはそういうパースペクティブをもつべきなのだろう。



2005年10月03日(月) 名古屋出張

 一昨日書いたように,30日は四日市の伊藤製作所伊藤澄夫社長インタビュー,そして,10月1日は名古屋の国際会議場でカゴメ技術開発研究部長早川喜郎氏によるセミナー,終了後は懇親交流会であった。早川部長のお話は「野菜と健康」というテーマで興味深い内容であった。

 いつもこうしたセミナーをとりまとめるのが慣例で,「アクロス速報」としてHPにアップすることになっている。このまとめがすんなり行く場合と結構困る場合があるが,今回は少し困った。というのは内容がビジネスの話ではないので,話の整理が難しい。ビジネスのお話しの場合,適宜小見出しをつけて,よりストーリーっぽく仕上げるのだが,今回はそれが困難だった。ざっとはできあがったものの,自分では不満の残るものだった。専門外のことなので,底流に流れているストーリーが自分の中で整理できないからだ。やむを得ない。スピーカーに添削して貰うよりほかなさそうだ。

 閑話休題

 大和総研の「公務員人件費の国際比較」というレポートを頂いた。かねてより私は,日本の公務員の数は少ないが一人あたり給与は高いという感触をもっていたが,これが実証されていて大変興味深い。ここから人員減より給与減に取り組むべきだという主張は説得的で,私もそのように,思っていたところだ。省庁再編など形ばかりにこだわった「行政改革」が無意味なことがここからもよくわかる。

 行政サービスの低下は決して好ましいことではない。諸外国と比べて日本の公務員数は,極めて少ない。「人口1000 人当たりの公的部門職員数は,日本35.1 人,ドイツ58.4 人,英国73.0 人,米国80.6 人,フランス96.3 人とされている。」日本は最低ラインなのである。だから,その数を減らしたら,行政サービスが低下することは目に見えている。



2005年10月01日(土) 民度

 伊藤製作所社長,伊藤澄夫氏と話した。そこである種同感したのは「日本は民度が低い」ということだった。その通りなのだが,何か引っかかりが残った。その後大学院生のN君と話していて気づいた点がある,でも,アメリカも民度は決して高くないと思える。イギリスしかりである。

 では何が問題か,というと,その低い民度に乗じる政治家の問題だと,はたと気づいた。民度を高めようとするのが政治家のはずだ。ところが大多数の低い民度の国民を煽って支持を集めるのが流行のようだ。まさに小泉流。国民に迎合する,というより,もっとたちの悪い,煽り,で政権の浮揚を図る。これぞ小泉流。

 本来,政治家や官僚はエリートのはずだ。多くの民衆がそんなに高い知識水準を持ちようがない。いわゆる情報が偏っている。というか情報をもらっていない。まさに衆愚にされている。この衆愚を煽って政権を維持する。これはエリートのすることではない。権力亡者といわれても仕方ない。でもかなりの政治家が権力亡者のようだ。 

 先日亡くなった後藤田正晴氏など,まさに,ご意見番,そういう卑しい政治家ではなかった。一服の清涼剤ではあった。こういう真の保守政治家が,今の日本には必要だと思う。民主党にもそういう良い意味の保守政治家がいる。何とかそういう良識派が活躍できる政界であってほしいと思う。

 今日「民度が低い」という話をして,なおしっくりしなかった点を,大学院生N君と話していて,つまり自分のテンションが上がっていたから,そういう結論がひらめいた。何かわだかまっていた部分がスッキリした。常に問題意識を持っていると,ひらめく。瞬発力が働く。そういうのが大事だと思う。


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