「隙 間」

2006年03月28日(火) 生涯の出逢い……

出逢ってしまったかもしれない……。
そんな気がしている。
いったい何に???
それは人ではなくて、人なのかもしれない。
あん? 何言ってるの?
つまりは……。
本。作家。
以前この日記の中でも紹介したけれど、「重松 清」という作家。
以前は「流星ワゴン」という作品を読んでいたく感動した。
今回、ぶらりと紀伊国屋に立ち寄ったはずみに、何気なく手にしてみた一冊の本。
短編集だったけれども、作家名は見ていなかった。
気がつくと一編読みきってしまっていた。
やばかった。
自分がしばし、現実の紀伊国屋の売り場ではなく、この本の世界の中にしか存在しなくなっていた……。
すぐさまレジに駆け寄る。店員に渡した時、初めて作家名が目に飛び込んだ……。
「重松 清」
「疾走」という作品が話題になっている。
もし、この作品を読んでしまったら、完全に打ちのめされてしまう気がしてならない……。
それほどの怖さすら感じる作品の書き手。同時にこの人の作品こそ、追いかけ続けるべきもの、のような気がする。

でも、ひょっとしたら単なる思い込み、かもしれないし、逆に強すぎて肌に合わなくなるのかもしれないけれど。
高級フランス料理よりも、下町のB級グルメの方が心地良いように……。
音楽に続いて、ついに作家の生涯の人が誕生するのか???



2006年03月23日(木) どうしても……

どうしても……。
無視ができない。
訴えるように、話し掛けるように、頭の中に浮かんでくる……。
これをどうにかしないと、他の事に手がつけられない。

……そんな経験、みんなにもあると思う。
「きっとしつこくなる」
「必ずしも、必要ではない」
そうやって、とある小説のエピソードを割愛した。
ところが、別のネタを描き留めているというのに、チラチラとその風景のはじっこに一緒になって流れてしまっている。
どうしようもない。
もし、頭でこねくり回して物語を考える方法で書いているのなら、こんなことはないのかもしれない。いや、もちろん、そうやってまったく頭の中がゼロの状態からプロットを起こして書いてゆく技術は必要だけれど。
ところがそうじゃないから、困った……。

誰かの記憶……。
自分の記憶ではないことは明らか。だからこそ、自分が否定する権利は無い。
……と思う。
「こいつ何言ってんの? 大丈夫?」
と、心配する事なかれ。いたって、大丈夫です。(苦笑)



2006年03月21日(火) 竹林に住まう者

唐突ではあるけれど、当HPのタイトルについて……。
由来は、皆さんよくご存知の
「竹林の七賢」
からとっています。老荘思想の「山林に世塵を避ける」ということ、つまりは俗世間から身を引き酒を片手に清談に興ずる、的なスタイルでいこうと思ったわけです。
喧騒な世俗を避けて「竹林」に隠棲し、決してその「豪華さ」や「きらびやかさ」で萎縮や見栄を思い出させることの無い「茅舎(粗末な家)」で清談では無くともそこではならでの事を語る。

……なんだか現実がそれに近くなっているような気がする。

但し、ノン・アルコールで(苦笑)

まあ、そんな立派なもんじゃないけれど、自分が過ごしてきた過去の現実……まがりなりにも周りと同じだったものが、今や別世界。
虎は竹林に潜むものだけれど……。



2006年03月18日(土) 「たられば」

渦中のWBC……。
様々な諸問題で苦戦を強いられ、それでもなんとか、
世界という舞台で白球に夢と誇りと未来を追いかけ続ける
永遠の野球少年達。

「世界最高峰の舞台で闘っている者でこの場に居ないとはけしからん」
「愛国心、自分の国に対する誇り、が足りない」

そんな無責任な発言が耳を突く。
正直、本当に、無責任。
ただし、その発言をしている人達が、だ。

勿論、いちファンとして彼ら全員が揃ったドリームチームの姿を見てみたい気持ちはある。そして「勝利至上主義」的な風潮がやはりあることも感じている。
じゃあ、参加辞退した彼らに非が、責任があるのか???

あるわけがない。

参加してい「たら」勝利の可能性は高くなっていたの「かも」しれない。
逆に、彼らの「肩書き」に目がくらみ、国内の有能な選手の可能性に気がつかないままだったの「かも」しれない。

イチロー選手は、決して公の場で辞退した彼らの事について触れようとはしない。
あくまで「自分が純粋に参加したい、すべきだと思ったから」と自分自身の判断という世界の中で、発言している。
辞退について触れない事が暗黙の批判、と考える人がいるかもしれない。
だが、お門違いだ。
国をあげて報奨金やらなんやらでモチベーションを高めないのがよくない、だあ?
ふざけるな。
そんな安メッキであげられたモチベーションなんか、風が吹きゃすぐに剥がれる。
きっかけにはなるかもしれないが、良識ある大人達が声を大にして言う事じゃあない。恥ずかしくないのだろうか……?
本当のモチベーションとは、まさに、イチロー選手の発言そのもののことだ。

「自分が参加したい。参加すべき、自分を参加させて欲しいと思った」

世界で初めての野球界における取り組み。
様々な問題点が浮き彫りになってきた事を踏まえ、次回、次々回へとの試金石になっていって欲しい。
今回の日本チームを本気で「たられば」で批評するならば、チームそのもの……参加選手の誰かを力不足と言及している事にもなっている事を忘れないで欲しい。



2006年03月17日(金) 坂の向こうに

そめいよしのの並木道……。
日が暮れて間もない谷中墓地を通り抜ける。
著名人達の墓石に供えられた花が風に千切れ、舞う。
駐在所の灯りがその光景をほんのり照らす。
犬の散歩やジョギングを楽しむ人と擦れ違い、
やがて並木を抜け、さんさき坂を下ってゆく。
乱歩の曲がり角で足を止め、ふと振り返る……。
下ってきた坂の頂上の、その先には、
鮮やかにほんのりと温かく輝く月の姿。
月から下ってくる坂道のよう。
居待月……。
しばし見上げ、ふと考える。
何を、待つのだろう……。
月明かりに温められた想いがジワジワと湧き上がってくる。
これを、待っていたんだ、きっと……。



2006年03月12日(日) 「ホテル・ルワンダ」

「ホテル・ルワンダ」という映画を観た。
およそ十年前の史実にもとづいた作品。
アフリカ「ルワンダ」での物語。

紛争。民族。歴史。虐殺。非情。
裏切り。駆引き。仲間。家族。情愛。

この世界的に有名な出来事がおきていた時、
私は普通に、何も知らずに、知らないまま、
ぬくぬくと堕落した学生生活を送っていた。

知ったからって、何かできるわけではない。
おそらく、ほとんどの無関係なニュースでこの事を知った人が、
何かをできたわけでもなく、
何かをしようとするわけでもなく、
過ごしていたに違いない……。

それでも、知らないままで居続けた私より、よっぽど立派だと思う。

荘子曰く
「知る必要のない事まで知ろうとして、心をすり減らす事はない」
「必要なものはおのずと、必要な時に自然に身についてゆくもの」

ただ、何事も一度はおのれの中を通してみて、初めて言えること。
通すどころか、見向きもしていなかった。
「知る」事と「理解する」事は、全くの別物。
「理解」はできなくとも「知る」事はできる。
「知る事」の大切さを身に染みて感じた……。



2006年03月07日(火) 届いていますか?

 映画、ドラマ、アニメ、漫画……
 いったい、どれだけの量の物語が世の中に溢れているんだろう?
 小説(書籍)や、WEB小説、そして自分のように趣味で小説を書いている人、プロを目指して出版を前提に書いている人。
 いったい、どれだけの量の風景が描かれているのだろう?
 いったい、その中の幾つが、どれだけの人の心に何かを与える事ができるのだろう?

 世の中に溢れている、沢山の歌……
 その曲の数だけ、物語が語られている。
 いったいどれだけの言葉を使って、どれだけのメッセージをつむいでいるのだろう?

 世の中に溢れている言葉……

 いったい、どれだけの言葉が、誰かにきちんと届いているのだろう……?



2006年03月05日(日) あるが、まま

何もかもを取り払って、
何ものをも取り込まないで、
はだかになる。

窓からのすきま風が、
淀みかけていた空気を、
つめたくさます。

露地の隙間の向こうに、
ぼんやりした視界の中で月が、
ほそくわらう。

空は低く、
温かい。



2006年03月03日(金) 苦悶の糸

天から一本の蜘蛛の糸が垂れ下がっていた。
私は必死でしがみつき、夢中でよじ登る。
半分まで辿り着くと、糸に気がついた連中達が
「我も、我も」
と奪い合い、しがみつき、よじ登ってくる。
不思議と糸はまだ力に富んでいるように思えた。
切れそうな素振りは見られない。
争いの狂気に飲み込まれないうちに登りきってしまわねば。
糸の下端の黒い狂気のかたまりは膨れつづけている。
黒い狂気の先端は順調に私の方へと登り続け、
その先端に近いほど狂気は薄れ、慎重になっている。
私の手の中の糸が、弾性の欠片も無くなってゆく。
不思議と切れてしまう心配はまだ感じなかった。
ここで「自分だけ助かろう」と思うと、糸は切れてしまうだろう。
だいいち、糸を切る道具など持ち合わせているわけが無かった。
しばらく無心で登る。
糸はどんどん細くなってゆく。
切れそうな気配は無かった。
ふと、脳裏に浮かんだ。
「自分が彼らを蹴落とすつもりはなくても、
 彼らの誰かが自分をそうしないとは言い切れない」
他人を蹴落としたいのでは決して無い。
ふところの隠しを手でまさぐってみる。
今までなかったはずの短刀が鞘袋に収まっていた。
袋の留め紐を糸にくくりつける。

私はそのまま、黙々と糸を登り続けた。
やがて、糸が不意に弾力性を取り戻した。
ぐいぐいと登りつめてゆく。

私の後を追う者の姿は、
無い……


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