「隙 間」

2006年02月25日(土) 言葉の力

映画のコピーに、しばし胸を穿たれた……。

「一年を、何で数えますか――」
「何を数えて、一日を過ごしますか――」

ここ数年、気がつけば年の瀬で、気がつけば桜は散っていて、気がつけば半袖シャツを着ていて、気がつけばまたコートに身を包む季節になっていて……。
気がつけばそれが何年も繰り返されていて……。

思えば初めて転職する時に、
「時間や季節や、その時の自分に気が付けるように」
との意味も含めて、もの書きを始めたはずなのに、今の自分が何故テレビで見かけたそのひと言に言葉を失ってしまったのか……。

雨の滴が庭先の葉を叩く音を数えながら……。



2006年02月19日(日) 休み

今日は久し振りに「休んだ」。
たぶん会社いけば、仕事している相方達がいただろうけれど、夕方前に目が覚めたとあれば、休ませてもらって明日から「普通」に働けるように頑張る方が、いい。
久し振りに「観る」こともできたし、復調の兆し(?)かもしれない。
良い一週間の始まりを迎えられる事を祈って……。



2006年02月18日(土) 笑って、叩いて、くれるモノ

「この間は随分手厳しい事を言ってしまって、すみませんでした……」
 あなたが頭を下げないで下さい。
「飴と鞭……ですか? 弛みかけた気合いを入れ直してくれたんですから、気にしないで下さい」
 本音の笑顔に、いや申し訳ない、と苦渋を噛み締めるように息をつかないで下さい。
「……では、お疲れ様でした」
 うなだれるようにガックリと肩を落として、見送らないで下さい。

 嘘でもいいから「じゃ、また!」と笑って背中を叩いて、追い出して下さい。
 それこそが、なによりも力をくれるのだから……。



2006年02月16日(木) 顔を上げて、背を伸ばして

「下ばかりみていると……」
 背を丸め、うなだれたままのボク。
「おーい」
 覗きこむようにして声を掛けるキミ。
「どーした? 大丈夫?」
 優しい気持ちに、笑顔で答えるボク。
「頑張れっ」
 顔を上げて、小さくガッツを決めるボク。
「おうっ」
 少しだけ、背を伸ばしてみるボク。

 キミは、ボクに、気がつくと上を向かせてくれている……。



2006年02月12日(日) 過去と自分と境界線

 境界線。
 意識した事はありますか?
 自分と他人。社会と自分。
 そして……自分と自分。

 今の自分は間違いなく、昨日までの自分の延長上に存在している。そこに境目は無い。だけど、ものを書いていると、その時その時の自分は、明らかに今の自分と違う事に気が付く事がある。よく「日記を一日数行でも良いから」と言われて書いている人もいると思うけれど、そんな人にとってはごく当たり前の事なのかもしれない。
 リライト、と称して過去の作品を書き直すことはやっているけれど、それは既に「こう描こう」と言う形で一旦区切りがついているもの。だから、いわゆる流れや形のようなものは出来上がっているとも言える。ショートショートだから、という事が大きな要因だけれど、長編に手を出して、そしてそのまま仕事の忙しさにかまけて一時中断になっている作品達を改めて目にしてみて、気がついた。

 こんな流れだった?
 こんな表現方法だった?
 こんな言葉遣いだった?

 なまじ五十〜七十枚前後という量に差し掛かってくると、ショートショートの時のように、さらっと見返す機会が減ってゆく。いや、見返す事が怖かったりもする。読み返して「やっぱりここは違う」と気がついてすぐさま描き直し、そして先に進まなくなってゆく、と言う事態が目に見えるからだ。
 とにかく「どんな形、流れでもいいから一度描ききってしまう事」その後で校正して、全く違う形に描き直す事にしたって良いわけだし、と思っている。でも、その時描いていた自分の表現方法、最も根本的なところの「一人称」と「三人称」の選択が、実は変えた方が良いのでは、という事になっていた。

 何故その時の自分がその方法を選んだのか?

 明らかに「別人」。
 別人が描いたものであれば、自分がどう描き直そうが問題は無い……と、思う。などと過去の自分への言い訳をしながら、次に手を出せる時期がきたら一歩目から足を踏み出し直そうと目論んでみたりしている。
 でも、長編の締切りって今月末か来月末に集中しているんだよね。

 時間とのジレンマ……。

 やりたい事。やらねばならない事。
 そしてそれぞれに充てる事が出来るのは、限られた時間でしかない事。
 自分の限られた時間の中での、自分と過去の自分とのジレンマ。

 抱えるものは、山ほどある。
 抱えた山をなるべくこぼしてしまわないように……。



2006年02月11日(土) テンカウント

 ちらほらと、公募結果発表の時期が訪れた。
 もちろん、結果に「入選」なんてものは期待してはいなかったから、むしろ、このサイト上にアップできる時期を待っていた。
 読み返すと、まさに、締切りに間に合わせて無理矢理文字数やら何やらを押し込んだり、まともに校正出来ないままだったりするものだから、ひどいもんだ……。
 下読みされた担当者には、深く懺悔。
 ……と、言う事で。
 リライトして、近々ここにアップできるようにしよう。

 ……但し。
 そんな時間が確保できれば、のお話。
 正気の沙汰じゃないスケジュール。業務管理能力ってヤツの意味を深く、深く考えさせられるね。自他共に。
 ぶっちゃけ、パズルのようにパーツをはめ込んでゆくだけなら、どれだけ楽か。それだとしても、とても追いつけない分量。
 篠原美也子の「ひとり」をひとり社内にて聞きながら、ぼやいてみる。
 相方はダウン。自分も最近ダウン及び、ダウン気味の続く日々。
「無理するなよ」
 上司の優しい(?)声に、笑顔で応える。
「はい。無理なんて出来ないですから……」
 無理しなきゃこなせないお仕事。無理しても、こなせるかどうか……。こなせなきゃ、どうなる?
 仕事に「こなせません」なんて言葉は、ない。やらなければ、仕方がない。
 仕事、なんだから。
 「422」にランダムに曲が変わった。
 ああ、そうなのよねえ……それが、大人ってものなのよねえ、哀しいけれど。
「STAND AND FIGHT」
 人生のボクサー。テンカウントはまだ、はるか頭上でこだましている。カウントエイトで立ち上がれば、大丈夫。それまではまだ、マットに手足を投げ出していたっていいんだ……。



2006年02月07日(火) 同じ様に

 例え、何があっても
 君が、そこにいる限り
 そこに、居続ける限り
 同じ様に、皆に、一様に
 明日は訪れる……
 いつもと変わらぬ、一日が……



2006年02月05日(日) 月下遁行

 久し振りに月を眺めた。
 霞がかかって、ぼんやりと彼は見下ろしていた。ぼやけた輪郭が少しだけ優しく見せる。
 何日振りだろう?
 夜空を見上げていなかったわけではない。むしろ、空の下に出る度に見上げてばかりいた。
 お伽噺のように、温かく優しくたたずんでいた。
 歩を緩める。
 吐く息が白く、体は冷たい風に逃げ出したいくらい小刻みに震えているのに、見上げている自分の心は、温かい。
 たとえ見えていなくても、そこに、いる。
 親指をそっと立ててみせる。
 爪に隠れてしまいそうなくらいの大きさにしか見えないのに、その姿を見ると、ほっとする。同じ顔の日は無い。
 でも、同じもの……。
 自分が自分のものではないように思えても、紛れもない自分。どんなに竹林に身を隠そうと、そこにいる事には変わりは無い。
 変わりは、ない……。



2006年02月03日(金) 仮想現実

 波がある……。
 時化(しけ)の海から陸(おか)に上がったばかりのように。地面は揺れては居ないはずなのに、体と言う器の中で、自分と言う液体が「チャプンチャプン」落ち着きどころない感覚。
 プールの水底で耳を澄まして水面上の音を聞いていると、みんなと同じ世界に居るけれど自分だけ別の世界から覗き見しているような、そんな感覚。僕はいつもフィルター越しに今居る世界と接している。この星の空気は僕には合わなくて、免疫をつける為の抗生物質の薬を欠かす事が出来ない。
 世を忍ぶ仮の姿。
 仮の姿の僕は、この社会に溶け込むために仕事にも就く。仕事は忙しい。でも、これが当たり前のようだ。そして、今日もまた当たり前のように朝の四時に家に帰る。今日の出社まであと四時間弱。今日だか昨日だかの昼飯から何も食べていないので腹が減っている。薬のおかげで食欲も多少抑えられているけれど、それでも腹ペコだ。朝食兼用の弁当を食べてシャワーを浴びて、二、三時間寝て、また会社へ行って……。
 現実味があるんだかないんだかわからないまま、また気がつくと仕事を終える頃は、深夜の二、三時になってて。ふつーの同年代のサラリーマンは、どうなんだろう? 「残業、残業で毎日この時間ですよ。忙しくてイヤですねえ」という会話を打合せ帰りの電車で耳にする。これから会社に帰って、またいつも通りに一時頃までお仕事。終電に関係の無いところに住むと、ギリギリまで眠れる代わりに、ギリギリまで仕事、というリスクも背負う事を痛感。
 そうか、仮の姿の自分なんだから、普通の自分のものと違うのは当たり前に決まっている。
 でも「ふつー」って、なんだろう……?


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