冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2021年09月29日(水) 山のサバイバル(エドワードパッカード/講談社)

 今回も海外の低年齢層向けの単純な分岐小説タイプのゲームブックシリーズから紹介します。
 このシリーズは後半になるほど、内容が奇抜になって面白くなるというのは、前に何度も書いた事ですが、この山のサバイバルはシリーズ第1作目です。(原書でのシリーズ第1作目というわけではない)
 プロローグは飛行機事故で雪の降るカナディアン・ロッキーに不時着して遭難した2人。無線機は壊れ、経験豊かな相棒は足を怪我して動けない。こうなっては仕方ありません。2人が助かる道は、まだ少年の自分1人で近くの無線機のある避難所まで向かい、救助を求めるしかないのです。
 こんな状況で始まる冒険ですが、さすがにシリーズ最初だけあって、この巻はクセのないというか、良くも悪くも変な特徴はない、普通の児童向けゲームブックといえます。
 ゲームを始めてみると、山のサバイバルというだけはあり、「沢を登らなければ行けない。真ん中を登るべきか、淵を登るべきか」「熊がいるぞ。どうしよう」みたいなサバイバル知識を問うような選択肢がそこそこあります。もちろん間違った選択肢を選んで主人公が死んでしまった、自分は助かったが仲間の救助は間に合わなかった、というバッドエンドもありますが、二人とも助かる展開のバリエーションが多く、シリーズ全体でも難易度は低い方でした。
 それにしても、こんな極限状態なせいか、山小屋で温めた缶入りスープを飲み、カビくさいビスケットに蜂蜜を塗って食べて人心地つくシーンとか、他にもチョコレートだの干し葡萄入りのパンだの、たいした描写があるわけでもないのに、登場する食べ物が実にうまそうに思えます。
 展開によっては、ある避難所で主人公と同じ年くらいの子どもをつれた誘拐犯が立てこもっているのに遭遇するという、全然別のサバイバルな事態に出くわすこともありますが、このシリーズに多い他のトンデモ展開に比べれば、本書はまだ大人しい方でしょう。

 このように普通に遊ぶゲームブックとしては悪くないのですが、欠点をあげるとすれば、ゲームブック発売当時では、390円とはいえ一冊のゲームブックとしては、いささかボリューム不足(パラグラフ数115)は否めません。今なら気にならないですけどね。パラグラフ数400とか500のゲームブックが周囲にあるうえ、乏しいお小遣いでとか考え始めると、子どもが購入するには躊躇したことだろうと思います。
 しかも、装丁の表紙が、カナディアン・ロッキーの美しい写真という、まるで子ども向けとか、ゲームブックとかを連想しないデザインでして、ゲームブックブームの発売当時に自分が本屋で見かけたとしても、きっと気にもしなかったでしょう。まあ、ボリュームとか装丁とかの問題は、このシリーズ全体がそうなのですが。現在ではゲームブック収集家の間では高値で取引され、私がゲームブックの収集を始めた頃、古本屋でこのシリーズの本を見かけたのに、無視したことは今では後悔しています。(笑)
 話しを戻して発売当時の需要があるとすれば、一見教育的な内容に思えるし、親が安心して子どもに買い与えるには良い本という感じでしょうか。
 面白いことは面白いので、私もみーちゃんに読ませてみようかな。


山口プリン |HomePage

My追加