冒険記録日誌
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2021年09月05日(日) デッドライン(北 鏡太/JICC出版局)

 探偵ものハードボイルドゲームブックって感じの作品。
 原作は日本未発売のパソコンゲームだったそうですが、海外での評判はなかなか良かったようです。ただ、当時のパソコンのスペックからすると、グラフィック(挿絵)とか、処理速度(ページをめくる)などの点から考えるに、実はゲームブック版も原作とハード的にも張り合える内容だったのではと思うのですが、どうなんでしょう。
 ロスアンゼルス警察で勤める、スレたような性格の41歳の独身警部補のケニー(年食ってそうだけど、もう自分より年下なんだよな)が、大富豪が殺された事件を捜査するというのがストーリー。
 娼婦とか普通に登場するし、双葉文庫あたりの探偵ものゲームブックでは、絶対にない大人の雰囲気で進行します。
 大富豪を殺害する動機のある人間は多いものの、普通に捜査していれば、自然と情報が集まって容疑者が特定されてくるので、推理ものとしては、さほど悩まなくてよいかも。戦闘ルールなどという無粋なものはなく、証拠品などのフラグチェックをしていくだけ、しかも全体的な進行は、ほぼ一本道なので、プレイは簡単な方でしょう。
 ただし、途中で間違った選択肢を選ぶと、警察を首になるか、自分や仲間が殺されてしまうバッドエンドが発生するか、相手を追い詰めるのに必要な証拠を、一つ取りこぼすような感じでゲームは進行していきますので、そう安心とはいきません。
 他の刑事ものなどのゲームブックにはあまりない特徴としては、容疑者は特定できても相手はあくまでも否認を続けるので、日本の2時間サスペンスドラマのように犯人が自白して終わり、というわけではないこと。逮捕の後は裁判が始まり、陪審員を納得させなければ相手は有罪にならないのです。
 相手は敏腕弁護士を雇って検察に対抗してきます。証拠が揃っていても、証人を出す順番や、裁判官に意見を言うタイミングを間違えると、相手弁護士に揚げ足をとられて、たちまち無罪になる腹ただしさときたらもう。生粋の悪党を監獄に突き落とすため、逮捕後の裁判こそクライマックスと言うべきですよ。
 裁判が無事に終わると、捜査仲間の女性といい雰囲気になって、「さて、どこへ行こうか。急いで決める必要はなかった。夜はまだはじまったばかりなのだ。」で終わる渋いエンディングもいい。まるで海外警察ドラマの主人公気分に浸れる作品。ストーリー重視の方におすすめです。


山口プリン |HomePage

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