冒険記録日誌
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2016年12月24日(土) 侮れないアドベンチャーブックス

 講談社から出ていた児童向けゲームブックのアドベンチャーブックスレーベルの一つ「UFO54−40地球攻撃す」のカール大公氏による面白すぎる記事が出ていたので紹介。

セントラル・ステーション分室
http://perry-r.hatenablog.com/entry/2016/12/12/172235

 冒険記録日誌でもアドベンチャーブックスは、「天才コンピュータAI32」「スペース・パトロール」「ドラキュラ特急」「謎のピラミッドパワー」「地底のブラックホール」「殺人犯はだれだ」と過去に6作品ほど感想を書いていますし、他にも感想を書いていないけど遊んだ作品はありますが、内容はどれも低年齢向けで、ゲーム性とかイラストとか結末とかいまいち食い足りない内容が多いシリーズです。
 しかし、シリーズ後半になると、話しは違ってきます。山でサバイバルとか、深海で宝さがしとか、よくある展開はすでに使ってネタ切れになったのか、妙な設定が多くなるのです。
 わかりやすく「ゲームブック倉庫番」のサイトからタイトルと粗筋を引用してみます。

ゲームブック倉庫番
https://www23.atwiki.jp/gamebooklist/pages/1.html


○ジンカ博士の異次元空間 アドベンチャーブックス14
 ぼくの家のとなりに,カール・ジンカという博士が越してきた。 数学の天才だといううわさだ。 ある日,博士の研究室に案内してもらった。 円形のへやのまん中には,バスケットボール大の球が設置された台があり, そのわきには赤と緑のレバーがついている。 完成したばかりの,ハイポレーザーという機械で,異次元空間へ旅すること ができるという。 「赤いレバーがそのスイッチだ。 」博士はそういって,いきなりレバーを引いた。 一瞬にして,博士はかげもかたちもなくなってしまった。 ぼくもレバーを引くべきだろうか……。

○幽霊殺人犯を追え アドベンチャーブックス15
 解説なし

○UFO54‐40地球攻撃す アドベンチャーブックス16
 ぼくはいま、ニューヨーク・パリ間をむすぶ超音速旅客機コンコルドに乗っている。 90分ほどでパリに着くというとき、とつぜん窓の外に、ぎらぎら光る白い円筒形 の物体を発見した。 ぼくにむかって、まっすぐに進んでくる。 あぶない!思わず目をつぶった…。 気がつくと、いつのまにか、ぼくはUFOの中にいた。 どこからともなく声のようなものが聞こえてきた。 「われわれはU―TY星の支配者だ。 きみは銀河系動物園の標本として選ばれた。 協力をこばめば、ソモに送る。 」ソモとはなんなのか、UFOのねらいはだれもしらない。 刻々と、地球に危機がせまってくる。 話題のゲームブック。

○バダーホフ城救出作戦 アドベンチャーブックス17
 時は1942年、第2次世界大戦のさなか。 ぼくはフランス・レジスタンスのメンバーだ。 ある晩、ぼくとシモーヌ、ラウールの3人は、大佐によばれ、新しい指令を受けた。 「ドイツ・アルプス山中、バーダーホフ城にとらわれている仲間を救出するのだ。 時間の余裕はない。 ゲシュタポの惨酷な取り調べで、レジスタンスの秘密を白状するおそれがある…。 」ぼくたち3人は、パラシュートで敵地にのりこんだ。 だが、とつぜん銃声が聞こえた。 なぜ、こんなに早く、ナチの山岳部隊に発見されたのだ!? 生死をかけた救出作戦のはじまりだ!話題のゲームブック。

○人間爆弾デミトリウス アドベンチャーブックス18
 ぼくはアメリカ合衆国の情報機関SSAの情報部員だ。
 リーン,リーン……。朝の3時,電話が鳴った。緊急事態発生だ! ワシントンにある特別地下司令室で,上司のTからつぎのような指令がくだされた。
「デミトリウスという男をさがすのだ。この男は,ソ連で透明人間をつくる実験のさいあやまって,人間爆弾になってしまった。爆発すれば,その威力は原子爆弾と同じ危険がある。ソ連もこまっている。悪いことに,この男はタイムトラベル能力がある。一刻も早くさがしだし,世界平和のために説得するのだ。」

○ナブーティの宝石殺人事件 アドベンチャーブックス19
 夏休みのある日、ぼくはボストンに住むいとこから電報をもらった。 ナブーティの宝石がぬすまれたので、すぐ来て、さがしてほしいというのだ。 ナブーティの宝石とは、2個のダイヤモンドと2個のルビーからなる4個の すばらしい宝石で、おじさんが数年前、モロッコで買ったものだ。 宝石は宝のありかを解く四つのかぎで、これを持つものは幸福と名声を得るが、 なくしたりぬすまれたりしたときは、苦しみや死をまねく力がある…という!? はやくとりもどさなければたいへんだ。 ぼくはすぐ、パリ経由でモロッコへ飛んだ。

○過去からきた狩人 アドベンチャーブックス20
 チャーリーおじさんは、ニュージーランドの大学教授で、考古学を研究している。 200年前に消えさったマオリ族の一支族とその工芸品をさがす探検旅行に、 ぼくは、参加するようにさそわれた。 ジャングルの奥深く、沼地をすすんでいたぼくは、なにかに足をとられた。 けものをとるわなだ。 ひっしにわなをはずそうとしているとき、とつぜん目の前に、マオリ族の 狩人があらわれた。 まぼろしの部族と遭遇だ。 顔にはいれずみをしている。 狩人はすばやく小さな刀をだして、わなを切ってくれた。 「ついてこい。」と、こわい顔をしていった。 敵か!?味方か!?

 どれも怪しさに満ちたものばかりです。「バダーホフ城救出作戦」など比較的まともそうな内容もあるのですが、低学年向けゲームブックとして考えると、ゲシュタポとか登場する作品は珍しいのではないでしょうか。
 ただでさえ、マイナーなシリーズなので、今となってはシリーズ後半の作品なんて入手する機会はほぼないでしょう。数年前にヤフオクでこれらシリーズ後半がセットで出品されていたときは、ゲームブックの出品物としては過去に見たことがない恐るべき高値で落札されていました。お金をかけずに読むなら、今は国会図書館くらいしか手段がありませんし、その国会図書館ですら一部所蔵がないくらいです。
 だからこれらの作品は、刺激された妄想だけが膨らむ状態となっていますので、カール大公氏のお気持ちはよくわかりました。
 しかし、「UFO54‐40地球攻撃す」で一番気になっていた、「ソモとはなんなのか?」に結論が出なかったのは残念です。いつか東京に行くことがあれば、国会図書館までソモの謎を解きに行くべきかもしれません。
 あと、「UFO54‐40地球攻撃す」のベストエンディングがズルなしでは到達不可能というのは、単なるバグなのかが気になるところ。もしも伝説の楽園惑星「ウルティマ」とやらが、あまりに常人の想像力から離れた世界と描写であれば、(ルールを守る良い)子どもはまだ見ちゃいけませんよ、という作者の配慮に基づいて考えられた発狂防止的な趣向という可能性もありますが、考えすぎか。
 
 ちなみに私も「ジンカ博士の異次元空間」と「人間爆弾デミトリウス」は、昔から気になって気になってしょうがなかったので、「人間爆弾デミトリウス」の詳細なレビューが載ったときは感激しましたね。

『文学部ゲームブック科』+道化の真実雑記帳
http://foolstruth.blog.shinobi.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E5%80%89%E5%BA%AB%E7%95%AA%E6%9B%B4%E6%96%B0%E6%83%85%E5%A0%B1/%E3%80%8E%E4%BA%BA%E9%96%93%E7%88%86%E5%BC%BE%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%80%8F

 冷静に考えると、作品のクオリティはシリーズが進んでも、あまり変わっていなさそうなので、実際に読んでみると出オチゲームブックだったなぁ、という感想で終わりそうな気もします。
 出会うまでが楽しいゲームブックシリーズなのかもです。



(追記)
 セントラル・ステーション分室で、「UFO54−40地球攻撃す」のソモやエンディングの謎について追記がありました。いい仕事してますねぇ。
 ベストエンディングに真っ当に進めないのが仕様とは斬新すぎる。PS版メタルギアソリッドで、「メリルの周波数はパッケージの裏」という仕掛けがあったのを思い出しました。
 反則といえば反則だけど、アドベンチャーブックスシリーズは全部同じ仕様という印象があったので、逆に安心したかも。私は平凡な作品に比べると、酷くても印象に残るくらいの作品の方が、好きだったりしますし。なんだか逆に読みたくなってきたぞ。


山口プリン |HomePage

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