冒険記録日誌
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2015年01月31日(土) レーリッヒ断章の考察(フーゴ・ハル/創土社)

 昨年末に地味に「狂気山脈の彼方」が創土社から発売されていました。クトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズ(クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)の最新作ですね。
 さて、今まで日記でこのシリーズをネタにするたびに、山口プリンはクトゥルー神話の知識がないことを強調してきましたが、狂気山脈といえばシュゴス。シュゴスの正体は、メイドのお姉さんということくらいは知っていますよ。清楚でほんわか、ちょっと天然な性格も入ったテケリさんは萌えます。嫁にしたい。
 冗談はともかく、そんな某ラノベを読んだのをきっかけに、元ネタとなるラヴクラフトの「狂気の山脈にて」も、以前本屋でざっと立ち読みしたことがあるので、今回は多少の予備知識を持って読むことができました。


 前フリが長くなりましたが、「レーリッヒ断章の考察」とはその「狂気山脈の彼方」に収録されている3作品のうちの1つです。
 フーゴ・ハル作ということもあり、当然ゲームブック目当てで購入しましたが、読んでみると「レーリッヒ断章の考察」はゲームブックではなかったです。(ゲームブックの定義は人それぞれですが、私のいうゲームブックとは読者が選択をして物語を変えることのできる小説や漫画です。)しかし、普通の小説でもありません。一言で言えばパズル小説かな。

 この小説は、昔あった大量殺人事件の犯人とされる男の残した手記を読んでいくスタイルです。
 手記は数枚の紙に書きつづられており、そこには男が謎の化け物に襲われて気絶した日以来、生きているネズミを生で齧ることを好むようになるなど、少しずつ正常な世界から離れていく男の恐怖の日常が描かれています。
 しかし、ひととおり読み終った後に、新たに男の手記の一部分が発見されたということで、さらに数枚の紙が加わります。全部で14枚となった紙を並び替えると、今までの解釈とはまったく違う真実の物語が浮かび上がった、というストーリーなのです。
 パズル的に説明すると、文章は14章に分かれていて、各章の文末は文脈に関係なくセリフの途中などでブツ切れになっており、隣の章とはまったく話しがつながっていません。一本の物語にするには各章を並び替える必要があり、小説版ジグゾーパズルとでもいえばいいような仕掛けです。

 内容は当然ながらホラーなうえ、人食などグロイ描写もありますが、なかなか小説としても読みごたえのある内容です。ただ、シリアスと思わせて、まじめくさったセリフの中に「〜ハプニングが起きる時に“14”とかある数字が必ず関わっていたり」なんて言葉がしれっと混ざっていたのには笑ってしまった。完全に不意をつかれた。
 フーゴ・ハルは以前にもこの方式のパズル作品(呪われた宝石をめぐる話しや5つ子の料理人の女の子が魔女の屋敷で冒険する話し)を、某夢時間な掲示板や某パズル雑誌に掲載しており、これらは並び替えるのにひっかけも多くて歯ごたえのある難易度でしたが、この「レーリッヒ断章の考察」は、ただ文脈が自然につながる次の章を探せばいいだけなのでパズルとしてはとても簡単でした。まあ、今までの1パラグラフあたり数行の物語と違って、今回は本格的な小説となっている分、辻褄合わせが大変だったはずですから難易度低下は仕方ないとは思いますが、ここは残念かな。
 本書収録の3作品の中では一番ページ数が少ないのですが、同じ文章で物語2回分が収録されているという密度の高さで、見かけ以上にボリューム感はあります。ゲームブックではなかったし、ホラーも苦手なのですが、満足できる一作でした。


山口プリン |HomePage

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