冒険記録日誌
DiaryINDEX|past|will
| 2013年06月13日(木) |
ゾンビーズ?ゾンビーズ!−テキサス・ゾンビーズ ゲームノベル−(友野詳・グループSNE/新紀元社) |
ネットをろくろくしない私よりも、もしかすると皆様の方がずっと詳しいかもしれませんが、最近ネオゲーム文庫というゲームブックレーベルが新たに誕生しているのは、ご存じでしょうか。 単発の企画作品として発売される新作ゲームブックなら、今までもたまにありましたが、ゲームブックブームも去って、20年もの時を経過したこのご時世に創土社以外からレーベルですよ。現時点で4作出ています。素晴らしい。 と私としては大歓迎すべき存在のレーベルなのですが、存在自体は去年から知っていて新刊の発売のたびに購入もしていたのですが、全然遊んでいませんでした。 このレーベルの作品は今までの一般的なゲームブックとは少し違う感覚があったのですよ。後書きを読んでいても、カードゲームから生み出されたとか、TVゲームになる脱出系アドベンチャーゲームをゲームブック化したものである、というような事を書かれているのも理由の一つです。 パラグラフ数が飛んでいたりとか(下1ケタの7〜9と0がないとか。例えば11,12,13,14,15,16,21,22,23,24,25,26,31,32,33……という感じ)、レーベルの4作のうち剣と魔法という王道系ファンタジーを舞台にしたのは1作だけ(この作品はトランプの使用を求められるので少々面倒くさい)、というのもとっつきにくさを感じた原因かもしれません。 しかし、このたび重い腰をあげてこれらの作品を遊んでみると、出来不出来の差はありますが、どれもなかなか面白いのです。 また従来のゲームブックとは違うという点も、「人狼村からの脱出」のようなほぼ内容がパズル本だったり、「ミスト・キャッスル」のようなプレイヤーのアドリブを求められるゲーム性に比べれば、はっきりと従来からあるパラグラフ分岐型のゲームブックといえます。 4作全部遊んでいますが、まずは一番気に入ったかつ、ゲーム的にも完成度の高いと思われる「ゾンビーズ?ゾンビーズ!−テキサス・ゾンビーズ ゲームノベル−」の紹介からいたします。
この作品は昨年の末頃に発売されたゲームブックです。作者の友野詳さんは雑誌ウォーロックでも名前をみたことがあるので、TRPGなどのアナログゲームの世界では、おそらくベテランの方でしょうね。 本書の元ネタはTRPG的な要素のあるカードゲームらしいですが、そのあたりはまったく気にせずに遊んで問題ありません。 世界観というかストーリーは、ゾンビだらけの現代の街に閉じ込められてしまった主人公が脱出を試みるというもの。簡単にいうと、B級ホラー的ゾンビ映画もしくはバイオハザード(BIOHAZARD)の主人公になるわけです。 助けた女性がゾンビ化するとか、コリコリ美味しそうにゾンビに食べられたりと、他にもえぐいシーンが多いのですが、文章がとても軽妙に書かれているので、重ぐるしい雰囲気はあまり感じません。むしろテンションが軽すぎて、逆に合わない人もいるかも。 主人公は一般人なので重火器も持っておらずそんなに強くないです。ただ、ゾンビ側も脳みそが腐っているのかスキが大きいので、なんとか逃げたり渡り合えるようになっています。
ゲームのルールは簡単で、能力値や所持品の管理は必要ありません。ランダム要素がないのでサイコロやトランプも必要なし。 ただ、部屋を捜索するとか、ストーリーの要所要所になると、そのシーンで使用できる6つの品物や情報が表示されるのが本書の特徴。ここで6つのうち2つを決め、使う順番を決めてパラグラフジャンプするのです。 例をあげると、ゾンビが襲ってきたとき、「1.大量のバスケットボール、2.古い鍵、3.殺虫剤、4.オルゴール、5.AED(自動体外式除細動器)、6.ゴムバンド」という表示があったとします。このとき、「バスケットボールをぶち当ててゾンビをけん制しつつ、古い鍵の合う扉を探そう」と思うえばパラグラフ12へ進めばいいのです。もし「オルゴールを流し、続いて大量のバスケットボールを床にまいて混乱させる」が正解と思えば、パラグラフ41です。直観で選ぶこともあれば、ヒントがどこかに隠されていることもあります。 もし進んだ先が無関係だったら不正解。シーンによっては何回か再チャレンジも可能ですが、それでも不正解の場合は指示されたパラグラフに進みます。安全に引き返せることもありますが、情報を入手しそびれることや、最悪ゾンビに食われたり大抵悪い結果になるでしょう。正解の場合も実は数パターン用意されていることもあり、その後の展開に優劣がでることもあります。 この6つのアイテムや情報から2つを選ぶというシステムは、ネオゲーム文庫4作品のうち、本書を含む3作品で採用されていますが、他作品は不正解の展開が用意されていないなどもあり、本書が最もゲーム的に練りこまれています。
次に主人公には4人の味方が登場しますが、序盤の選択肢の結果そのうち1人と出会い、その相棒と共に冒険をすることになります。 冒険の内容は仲間によってまったく違う内容でして、冒険の目的から、街がゾンビ化した原因までまるで違います。要するにゾンビの街をテーマにした4つの短編ゲームブックが収録されているようなものです。 仲間別に4つの冒険の感想を書いておきます。
<アイカの章> 仲間は金髪の女の子アイカ。主人公の幼馴染である彼女は、勝気な性格でよく主人公を罵倒してくれるが、一方で主人公に密かに惚れているという、ベタなツンデレキャラ。 主人公が死ぬバットエンディングでも、主人公の髑髏をそばに置いて暮らすその後の彼女が見られるほどで、一歩間違うとヤンデレになりかねない気も。 街を探索して情報を収集し、ゾンビ化現象を引き起こしたボスを倒すという、もっとも王道のゲームブックを感じさせる内容です。ゲーム的には一番やりごたえがありました。
<ジョージの章> 仲間はオタク青年ジョージ。緊張感にかける性格で、ゾンビ映画ならこうでしょう!とか、死亡フラグがどうのと、とにかくうざい発言が多い。主人公的にはゾンビよりこっちの方がつらいらしい。 この章では主人公は天才的方向音痴ということになっており、しぶしぶ彼を道案内につれて、遠くの街にいる主人公の彼女を心配して会いに行くという展開。 クライマックスでのジョージの決め台詞「ここはまかせて、早くいけ!」は、確かにオタクの憧れ的セリフかもですな。一番簡単にクリアできたけど、ベストエンディングはモヤッっとするね!
<リサの章> 仲間は主人公を心配して追ってきた恋人リサ。黒髪ストレートで、大人しく気立ては優しいが芯は強いという正統派ヒロインです。 ストーリーの方も定番ゾンビ映画そのもの。避難所の教会に逃げ込んだら、雪崩うって侵入して神父を襲って食うゾンビらとか。 他の章と比較するとシリアスな展開が多く、映画のようなホラーとラブロマンスを味わえます。ベストエンディングはこの章が一番好き。
<ラッシュの章> 体育会系の男ラッシュ。今回のゾンビ騒ぎに前々から準備していたそうで、戦闘から読唇術までなんでもこなす。主人公曰く「完璧過ぎて怖い」ほど頼もしい仲間。 街の住民がゾンビ化した原因が、4つの章でもっとも電波的意味不明さ。銀河ヒッチハイク・ガイドかよ!と一人つっこんでしまった超展開もあり。だが、そこがいい。 謎の機械のボタンを押したら、地球が消滅してしまうバットエンドは「悪夢の妖怪村」を遊んだことがある人なら「核のボタン」を思い出さずにはいられないだろう。
1回のプレイに時間はあまりかかりません。 ただ、ゾンビに食われるバッドエンドまで含む、全てのエンディングには最大15点までの点数がついていて、3回のプレイの得点総計によって3種類の真のエンディングに到達するという仕組みになっています。 このため一回だけ遊ぶのは簡単でも、真のベストエンドまで達するには、やりこまないと難しいでしょう。 食わず嫌いの人も多いかもしれないけど、とりあえずやってみてほしい作品。でもアクはあるので合わなければしょうがないという作品。 本屋で見かければ立ち読み確認が出来るんだけど、なかなかないでしょうね。注文するのも一種のギャンブルと考えて購入も検討してみてはいかがでしょうか?
|