冒険記録日誌
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2011年06月12日(日) 宇宙植民地を救え!(影山貴市/朝日ソノラマ)

 タイトルにはフリガナが振ってあって、宇宙植民地は「スペース・コロニー」と読むそうです。タイトルでわかるとおりのSF作品で、まだジュブナイルと呼ばれていた頃の、児童書っぽいSFを連想させる内容です。

 ストーリーは怪物退治でも宝探しでもなく、ノームという人間を含めて3種族が住む惑星を舞台に、戦争を起こそうとしているモルゴス人に対して、主人公が人間代表の交渉団の一人として説得に向かうというもの。
 とはいえゲーム開始早々に、すぐに交渉団の宇宙船が謎の攻撃で破壊され、主人公は唯一生き残った調整官となってしまいます。脱出艇も荒野に不時着してしまい、危険な生物が徘徊する世界を、好戦的なモルゴス人や交渉を妨害しようとする人間の犯罪者達の攻撃を掻い潜りながら、交渉手段を探していくという、結局サバイバル冒険ものになってしまいました。
 現地案内人として宇宙船に同乗していた女の子アリサも運よく生き残っていて、一緒に旅してくれるのも、ゲームブックとしてはともかく小説としてはお約束。
 荒野で遭遇するモルゴス人は、まるで北斗の拳のモヒカン雑魚みたいに、暴れまわるだけで話しが通じません。しかも、主人公は兵士ではなく単なる調整官であり、戦闘力が皆無なのです。汚物扱いされて火炎放射器で消毒されないように、とにかく逃げるしかありません。
 一緒に旅するアリサにもよく馬鹿にされて主人公の立場が低い気が。いや、これは気の強いヒロインが好きな人には逆にいいのかもしれないけど。

 所持品や能力値の管理が必要なく、サイコロのような乱数も使用しません。基本的には分岐小説タイプのゲームブックですのでサクサク進みます。
選択ミスをすると即バッドエンドという展開も中にはありますが、理不尽なほどでもありません。なぜなら、主人公は未熟な予知能力が備わっているので、選択肢の先に対してヒントが与えられるようになっているからです。これにはサイコミンという錠剤を使う必要があり、体への悪影響なども考えて3錠しか携帯していないという設定になっています。つまり、ヒントを使う機会は3回まで。使えば一種の白昼夢を見ることで、選択肢の先をみる事ができます。
 しかし、あくまでも予知夢なので、中には漠然としすぎてヒントがわからないこともあるので過信は禁物。それにクライマックスで予知夢が必須な展開もあるので、無駄使いは厳禁です。この辺の兼ね合いは考えないといけないので、一見したところ単純分岐小説タイプのゲームブックながらゲーム的な面白さを残した良いシステムだと思います。

 一通りクリアしての雑感としていうと、このタイプの作品では良作の部類に入ると思います。
 さらに、もしこれからプレイしようと考えている人は次に書くことは、あまり見ない方がいいかもしれません。ゲームのおおまかなルートは3種類ありますが、普通の意味でのハッピーエンドにつながるルートは自分的には一つです。
 温厚なアムネシア人に頼りすぎると、任務こそ達成できてグットエンドにはなるけど、主人公自身の犠牲が大きすぎるのですよねぇ。
 もう一つのルートは、序盤のポカで任務失敗が確定したパターンで、うまく進めても生きて帰ることができるのが精一杯という内容だしな。

 最後にインパクトがあったので一言。ヒュドラ虫にやられたときのバッドエンドはゲームブック史上、一・二を争うえぐさです。このパラグラフのイラストがなくて本当によかった。


山口プリン |HomePage

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