冒険記録日誌
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2011年05月03日(火) ダービースタリオン(須田鷹雄/ファミ通ゲーム文庫)

 久しぶりのゲームブック感想です。今回、話題にする作品は、ダービースタリオン。
 原作は説明の必要がないかもしれないですが、いろんな機種に移植されている有名な競馬シュミレーションゲームです。このゲームブックはPS版をベースしているそうです。
 正直なところ、ファミ通ゲーム文庫のゲームブックは、低年齢向けの簡単な作品しかないと思っていたので、遊ぶ前はまったく期待していなかったのですが、予想を裏切ってよくできていました。
 冒険記録日誌を一時復帰して、感想を書いてしまいたくなったくらいです。隠れた名作と言っていいのではないでしょうか。

 主人公は牧場のオーナーとなり、競争馬の種付けや調教やレース出場を管理してG1制覇を目指すという点は、ゲームブック版も同じです。
 ゲームブックでシュミレーションゲームというと、ルールが煩雑で、馬のパラメータなどの数値管理が非常にめんどくさそうなイメージがあったのですが、この作品にはまったくそんなところはなし。
 なにせゲームルールでは、所持金の管理も含め、数値は一切使っていないからです。ゲーム進行上、記憶する必要があるのは、そのときに走っている馬が制覇したレース名と親馬の名前くらい。
 サイコロやバトルポイント表のような、乱数すら使用しておらず、びっくりするほど簡単です。

 そして牧場のオーナーという主人公を含め、このゲームには名前や個性のある登場人物はまったくいません。
 ただ選択をすれば、馬を○○のレースに出場したらこうなった。この調教をしたらこうなった。の表現で淡々とすすみます。
 シュミレーションに特化しているというか、社会思想社のゲームブックで「君ならどうする食料問題」という作品を読んだことがある人なら、それとよく似た感じと思ってもらっていいでしょう。
 あの作品と同じく、あまりゲームオーバーにはならないのですが、それでもこちらは失敗が続くと、牧場の経営が破たんしてバットエンドにはなります。
 ゲームの基本的な流れは次のとおり。

1.まず自分の牧場にいる手持ちの繁殖牝馬に、種牡馬を選んで種付け。
2.生まれた馬を調教しながらレース出場。(管理する馬は一度に一頭)
3.年齢や体調の都合などで馬が引退。
 その馬が活躍していたら→賞金でもっと高ランクの繁殖牝馬に乗り換えられる。
 ほどほどなら→そのまま違う種牡馬を選んでやり直し。
 調教失敗などで活躍できなかったのなら→損害で牧場の経営が傾いてしまい、今の繁殖牝馬を売って、ランクの低い繁殖牝馬から再出発。

 この1〜3の繰り返しとなっています。
 最初はランクの低いところから始まりますが、順調に進めば世代が交代するにつれ、徐々にG1を連勝し、いずれは海外遠征で世界のレースを制覇する馬を育てることが可能です。同じランクを繰り返していると、同じ展開を繰り返す可能性もあるのですが、654ものパラグラフ数を上手く使って幅広い展開が用意してあるのでそんなに気になりません。

 繁殖牝馬と種牡馬を選ぶシーンは、馬の名前が2・3体出て、その中から選択します。芝向きの中距離血統やダートの短距離血統とか書いてあることもありますが、多くの場合は各馬の特徴は書かれていません。
 生まれた馬には、3歳時に早熟タイプとか、脚元弱いとか、コメントがつき、それを参考になるべくその馬にあった調教とレースの選択が求められます。
 どの馬が生まれてもクリアに支障はないのですが、交配が運任せになるのはこの作品唯一の不満かな。
 (ただ、ルール説明によると繁殖牝馬と種牡馬は、PS版ダビスタに登場する馬に準拠しているそうなので、PS版をやりこんだ人や馬データを掲載しているゲーム攻略本を持っている人なら戦略的に選べるのかも?)

 あと、たまに間違った選択肢でなくても予測もつかないトラブルで損をする展開、例えば馬に休息をとらせようと放牧に出したら、柵にぶつかって骨折してしまうとか、がありますが、現実の競馬でもセオリーさえ守れば必ずうまくいくものでもないと割り切りましょう。
 逆に自分の馬が輸送中に逃げ出して、高速道路を爆走。そのことがニュースになって人気馬となる、なんてギャグみたいなボーナス展開でうまく行くことも。

 エンティングはマルチで13種類。凱旋門賞を制覇して競走馬の頂点に立つという正統派な内容から、馬術競技に転向してオリンピックでメダルをとる変わり種、破たんして借金を返済すべく日雇い労働をする日々なんてしょっぱい終わり方まで、内容は多彩です。ランダム要素がないわりに飽きがこないので、繰り返しプレイにも耐えられます。
 ちなみに自分は何度やっても、「心筋梗塞で現役を続けられずに息子に夢を託し牧場経営を引退」というバットエンド気味の内容になってしまいました。
 上位のグッドエンドを目指すなら、終盤で特別な血統による交配が必要なようなのですが、ここはまだよく解明できていないので引き続きプレイ中です。

 我ながら面白さをうまく伝えられてないと思うのですが、この作品はゲームとしての完成度が非常に高いのです。
 もちろんコンピューターで大量のデータを計算処理できる本家のダビスタに、シュミレーションの奥深さでかなうはずもありません。
 しかし、手軽にできるゲームブックという形態を生かして、これまた手軽なルールでテンポ良く遊ばせる点で、劣化ダビスタとは言わせない魅力を引き出していると思います。
 入手ができるなら、みなさんもぜひお試しあれ。 


山口プリン |HomePage

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