冒険記録日誌
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2009年11月15日(日) 天界の迷宮(佐藤大輔/アニメージュ文庫)

 「天界の迷宮」というゲームブックを知らなくても、原作を知っている人は多いかと思います。有名も超有名なジブリアニメ「天空の城ラピュタ」ですから。
 今の時代からすれば珍品もいいところでしょうが、ゲームブックブーム当時は、映画や小説や漫画やアニメやゲーム、要するに人気の作品ならなんでもゲームブック化していましたから、こんな企画も成立したのでしょう。ゲームブックブーム万歳です。
 などと書いていたら、最近でも「名探偵コナン」と「ハヤテのごとく!」のゲームブックが出ていたことを思い出しました。現代も捨てたものじゃないです。その調子で「涼宮ハルヒの憂鬱」のゲームブックとかでたらいいのにな。

 話しがそれましたので本題に戻しましょう。
 この作品の主人公は予想がつくとは思いますが、原作と同じく少年パズーです。
 ジブリアニメ原作ということで割と単純なゲームブックを予想していたのですが、実際にやってみると能力値の管理が必要なうえ、戦闘システムもあり、サイコロを使うのに他のゲームブックのようにサイコロの目を印字しているわけでもない。というわけで電車で読むとかいった、手軽な遊び方は無理でした。
 ルールの解説をしますと、主人公パズーには機知ポイントと根性ポイントと体力ポイントの3つが与えられており、初期値はサイコロで決定します。
 さらに最初からパズーと同行してるシータにも「機知ポイント」と「体力ポイント」がありサイコロで設定します。シータは戦闘には参加しませんが、罠を回避するときにはパズーとは別に機知ポイントを使って回避行動の成否を判定しますし、2人で扉に体当たりすればシータも体力を失い、体力が0になったらゲームオーバーです。要するにパズーとシータ、2人分のキャラクターを管理するつもりで遊ばなければなりません。
 あと時間経過の概念があって、寄り道をしすぎたり、休憩(任意で時間を経過させる代わりに体力が回復させることができる)をやりすぎて、時間がたちすぎるとゲームオーバーです。

 ゲームを始めてみますと、ラピュタに不時着したパズーとシータのところへ、庭園を管理するロボットがやってきてパズーたちの乗ってきた凧を退けようとする原作の名シーンからスタートしていました。
 そのイベントが終わってからは、本書のタイトル通り迷宮のようなラピュタの内部をひたすらさ迷う展開になります。ほとんどこの迷宮シーンがゲームの中心。たまに国防軍の兵士との戦闘や、武器などのアイテムが入手できる部屋や、仲間の空中海賊と合流するイベントなどが発生し、宿敵ムスカのいる場所へ到着すればゴールという感じです。
 中にはただの行き止まりで時間だけ消耗する道や、扉を開けた先が崩れ落ちていて空中ダイブする羽目になってゲームオーバー、というひどい仕掛けもあって意地悪です。
 ただ、基本的に一方向に話しが展開するので、同じ所を延々と迷い続ける展開は少ないのが救い。マッピングしなくても私はクリアできました。とはいえ双方向的な箇所もあるので、マッピングすればもっと楽にクリアできるかもしれません。
 難点をあげると、原作アニメを見ていない人には意味がわからないことが多いかも。ゲームスタート時点までのストーリーがごく簡単にしか説明されていないのもありますし、ゲーム中はずっとパズーの一人視点なので、シータがさらわれてムスカとやりとりしているシーンなどがカットされているので、ゲームブック版だけでは物語の全体像はつかめないと思います。クライマックスでも滅びの呪文が何の伏線もなく唐突に登場するように見えてしまいますし。なによりムスカの名セリフ「人がゴミのようだ」が見られないのが残念でした。
 良いところとしては、クリアのために必須の入手アイテムが存在しないので、クリアへ至る展開の幅は広く、自由な冒険が楽しめるのは結構いいです。先ほどのシータとムスカのやりとりにしても、ゲーム中にミスをしなければシータが最後までムスカに捕まらない展開もありえます。ムスカが生き残る形でのハッピーエンドまで用意されているので、原作ファンは一見の価値があると思いますよ。


山口プリン |HomePage

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