冒険記録日誌
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2009年08月27日(木) ルパン三世 星を盗む男(山口 宏、大出光貴/双葉文庫)

 引き続き小説版ルパンシリーズの紹介です。本書はシリーズ2作目で、2作品が収録されています。

・9ミリ弾の悪魔(山口 宏)
・星を盗む男(大出光貴)


 「9ミリ弾の悪魔」の作者の山口宏さんは、ルパンゲームブックシリーズでは「Pファイルを奪え」を上原尚子さんとの共書で書いています。それに他出版社でガンダム物のゲームブックも書いているかな。本職はアニメの脚本家らしいですが。
 さて、この作品はぞっとするような話しになっています。
 タイトルに登場する「9ミリ弾の悪魔」とは、拳銃の弾丸として使えるように設計された超小型“核”爆弾のことです。小型ながら弾丸の着弾地点の物や人の周辺は爆破の威力で瞬時に蒸発、さらに四方1キロに放射能汚染が広がるという世界で一番おっそろしい弾薬なのです。さらには拳銃の弾丸の飛距離なんて、せいぜい4・500mといったところで、撃った人間も被爆は免れないというから狂気そのものです。
 この話しが恐ろしいのは、社会を憎み多くの人間を道連れに殺して死んでやろうという自暴自棄で危険な考えにとりつかれた青年が、その弾丸を3発手に入れたということです。
 今回登場するのは、ルパンと次元。ひょんなことから、2人はこの青年の妹に出会ってしまい、(しかも彼女はアイドルで、次元はファンだったらしい。出会ったときの次元の興奮ぶりがちょっと可笑しい)この事件に巻き込まれてというか、自分から関係してしまうのですが、青年の手から悪魔の弾丸を奪うために奔走するわけです。シリアスで緊張感のあるテンポの小説で、キャラクターの存在がたっているので、一気に読ませてくれます。
 ただ明るい話ではないので好みはわかれそう。それにしても現実に最近多く発生している無差別殺傷事件などを考えると、今では洒落にならないかもですね。

 「星を盗む男」の方は、双葉ゲームブックの桃太郎シリーズなどでお馴染みの大出光貴氏の作品。もっとも桃太郎シリーズのようなギャクは一切なく、こちらもシリアスタッチです。ただ、宇宙人らしきものが登場するきわめてSF的な設定になっています。
 ちなみにタイトルにある“星”とは本物の星ではなく、特殊な隕石のことです。謎の女に依頼されてこの隕石を盗みに、研究所に忍び込んだルパンと次元が見たものは、全ての研究員が惨殺された生々しい殺害現場。そして、そこには人間離れした力をもつ2人の男達が待ち構えていた!というなかなかショッキングな出だしで物語が始まっています。
 こちらの作品は、宇宙人と思われる謎の存在がなにをしたかったのか、また隕石の正体はなんだったのか、ある程度説明はあるものの、そのあたりがあまり釈然としないまま終わってしまいます。
 謎が残るからこそ超自然な存在になるという一種のホラー的な演出を出す意味があるかもしれませんが、悪くいうと作者が話しを途中で投げ出したようにもみえますね。もともと殺伐とした展開は、個人的にあまり好きではないので、その点がマイナスに感じたせいもあるかもしれません。


山口プリン |HomePage

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