冒険記録日誌
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2009年07月01日(水) ウォーロック 第36号 1989年12月

 ゲームブック唯一の専門雑誌、ウォーロックの感想です。すでに創刊号から35号までは以前に感想を書いているのでその続き。
 この号からウォーロックの編集長が多摩豊氏から近藤功司氏にバトンタッチされています。
 といっても、雑誌の内容がすぐさま劇的に変化するわけでもなく、強いていえば編集後記が巻末からなくなったくらいかな?

 この号の特集記事はファンタジー世界に登場する宿屋について。
ファンタジー小説などに登場する宿屋などを引き合いに出したりして、テーブルトークに使えるネタにしてもらおうという内容で、「黒竜亭の一夜」という宿屋を舞台にしたミニシナリオもついています。
この中で興味深いのが、実際の中世ヨーロッパの宿屋はどうだったのかという蘊蓄(うんちく)のくだり。
 当時の町の治安は相当悪く、人里で野宿をするのは自殺行為だったようですが、一般庶民の路銀で泊まれる普通の宿屋というのも、寝ワラのうえに大勢で雑魚寝が当たり前、盗難も日常茶飯事という劣悪な状態だったらしい。そのうえ当時の庶民が旅をする大半の理由は巡礼ということもあり、一般的な旅人は宿屋ではなく修道院に泊まっていたそうです。
 ゲームブックやファンタジー小説に登場する、個室に泊まったりするような宿屋は、裕福な商人でもなければ泊まれないような高級宿ということみたい。
 さらに不潔で汚いとか、盗難にあったというのはまだマシな方で、人間の指の欠片がスープから出てきたとか、旅人が入る人数より出発する人数が少ない宿屋なんてのもよくある話しで、お上から「宿泊客を食べてはならない」というお達しがわざわざ発令されたというから恐ろしい。タイタンでも指折りの治安の悪さを誇る、ポートブラックサンドとか城塞都市カーレみたいな町が中世ヨーロッパでは普通にあったわけで、ゲーム世界より現実の方が恐ろしいものなのですなぁ。

 他に摩由璃さんのコラム(この人今はどうしているのでしょうね?)では、中世の結婚式についての蘊蓄が書いてありまして、女性は13歳くらいが結婚適齢期というのはともかくとして、結婚式で立会人たちが殴りあいの喧嘩をする習慣とか(当時の庶民は文盲が多く、婚姻記録簿などに残すことができないため、代わりにいつまでも記憶していられるようにとの理由らしい)あったそうで、どうも中世時代のヨーロッパ人の感覚ってのは現代日本人にはなかなかわかりにくいです。

 それからこの号にはオリジナルゲームブック「さらば青龍」が収録されています。作者は「エクセア」や「フォボス内乱」などを書いてる宮原弥寿子さんで、パラグラフ200の単行本未収録作品です。
 東京で暮らしていた主人公が、いきなりファンタジー世界に飛び込んだという、オーソドックスなプロローグながら、いきなり血まみれの剣を握った状態で、わけもわからず衛兵達に囲まれているという、緊迫感あふれるスタート。遊んでいないので感想は書けませんが、短編ながらオリジナルルールを使って結構凝っている感じでした。


山口プリン |HomePage

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