冒険記録日誌
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| 2004年08月06日(金) |
最初はブームだったゲームブックが、なぜ流行らなくなったのか考えてみた。 |
なぜゲームブックブームは終了したのか。 いろんな説がありますが、はっきりいってどれも証拠なんてないです。いくら議論しても、きっと結論はつかないと思います。 しかし答えのない問題でも、いろいろ想像してみるのは頭の体操にはいいので、各衰退論とそれに対する自分なりの考えを書いてみることにしました。
<粗製濫造説> 「ブームに安易に便乗した、双葉ゲームブックなどを始めとする質より量の粗悪な作品が大量に出回った結果、ユーザーが愛想をつかしたという説。TVゲームでいうアタリショックがそれに近い例としてあげられている。」
ゲームブックは立ち読みできるので、嫌なら買わなきゃいいという選択肢ができるのです。ちなみにこの説を唱える人が槍玉にあげるゲームブックは、私が好きな作品も多いのですよね。自分の好き嫌いの話しならいいですが、なにが粗悪かなんて自分の考えで決めつけないで欲しいと思います。面白くない(売れない)ゲームブックシリーズが何十冊も続く事はありません。 この説は現役のゲームブックファンが唱える事が多く、実際に「私は粗製濫造が原因でゲームブックを買わなくなった」という証言者は意外に見当たりません。実証するには証拠不足な気もします。(他の説だってそうですが) アタリショックの説についてですが、実はTVゲームを支えたファミコン・スーパーファミコンも、今から思えば意外とクソゲーの宝庫でもあったと思います。それでもみんな夢中になってやったんですよね。 私なんかあの「いっき」を買っていかに泣いたことか・・・・・・ということを某掲示板に書いたら、あれは面白かったですよ。というレスが返ってきました。私も「いっき」が絶対的な駄作と思ったのは一方的な決めつけだったみたい、と反省です。 もっとも粗製濫造と呼べるゲームブックが本当になかったかといえば、それは当然あったでしょう。粗製濫造と思えば、その人にとってはそうなのですから。 ただ先程のファミコンもそうですが、あのインスタントラーメンだって最初にチキンラーメンが出始めた頃は、人気にあやかって他業者から乾燥メンに醤油をつけただけとか粗悪な商品も出回っていたそうですし、ふた昔前のアメリカのSF小説ブームだって、似たような内容の作品ばかりが出回ってマンネリ化したという話しを読んだこともあります。これらは流行物には当たり前におきる現象で、そのジャンルが生き残るかどうかは、それから先の話しじゃないかなとも思っています。
<マニア化説> 「超大作の増えた創元ゲームブックや、難易度の高くなりすぎたファイティングファンタジーシリーズなどによって、新規ユーザーがつかず業界が先細りしていったという説。」
私は最初はこの考えが主だったのですが、最近入手したファイティングファンタジー後期の作品を遊んでみると、これはこれで楽しかったのも確かでした。ファイティングファンタジーの終盤は、難しくてゲームとして楽しめないものばかりという私の定義は、思い込みによる誤解で、全部の作品には当てはまらないようです。 さらに他のサイトでは「簡単=初心者向けではない。難しいからこそ、はまることもある」というもっともな意見が見受けられます。 ゲームブックの入門編を自称する(と、ウォーロックの取材に答えていた)双葉社も、ブーム末期まで比較的元気でしたから、ライトユーザーが遊ぶ作品がなかったとも思えません。 そのためこの説にも決定打に欠けるところがあります。 ただ創元ゲームブックの読者コーナー“アドベンチャラーズ・イン”でも「最近はクリアに時間のかかるゲームブックが多すぎる。軽めのゲームブックが懐かしい」という意見がチラホラ出ていたのも事実。 今思えば当時は出版できなかったものの、鈴木直人氏が難易度の低い“チョコレートナイト”という作品(現在は創土社から出版)を書き上げていたのは、本当は超大作ゲームブックに飽きてきたファンへの息抜き用サービスだったのかもしれません。
<TRPG移行説> 「ゲームブックはTRPGのソロゲームまたは入門編として生まれた経緯から、ユーザーはゲームブックを“卒業”してTRPGを遊ぶようになっていき、TRPGという文化が定着するにしたがって、ゲームブックは役割を終えていったという説。現に雑誌ウォーロックの後期は、ゲームブックよりTRPG記事ばかりになっていた。」
これについては、TRPGは日本では一定の定着はしたものの、やはり一部の人達の遊びでとどまったと思います。はっきりいって、ブームのときに書店にドーンと大きくコーナーがあったゲームブックほど、TRPGが流行っているのを実感した記憶がない。原因の一部ではあっても大勢の衰退原因にはならないと思いました。そもそも海外の方がTRPGは盛んだったのに、ゲームブック文化は日本より長く生き残っていたようです。 ウォーロックについては、ゲームブックブームが低下していく中で、生き残るためにTRPG路線へ進むしかなかったという印象があります。それがゲームブック離れを加速させた可能性はありますけどね。
<TVゲーム移行説> 「当時の子供達には高価だったTVゲームソフトの代用品としてゲームブックが発達してきたが、TVゲームの技術が発達するにしたがってゲームブックよりTVゲームの方がずっと面白いという認識が広まったためという説。」
これも私がそうではないかと思っていた説です。少なくとも日本では、TRPGよりTVゲームの方が圧倒的に人気があったわけですから、TRPGを起源とするゲームブックや小説主体のゲームブック以上に、TVゲームと小説を組み合わせたようなゲームブックも流行っていました。双葉や勁文社だけでなく、林友彦や鈴木直人作品もそうでしょう。 ト学会の「愛のトンデモ本」(扶桑社)にゲームブックの話題があるのですが、そこでは衰退の原因が、ペンでヒットポイントを書き換えて、サイコロを振って戦闘をするという、面倒くさい作業にあると書いていました。その面倒くさい作業を自動的にするコンピューターゲームに人気が写ったのは、当然の成り行きだというわけです。 またTVゲームそのものが年々面白くなっていったのも確かです。あるサイトでエニックスのドラゴンクエスト1を初めてプレイしたときの感想を書いていた文が印象に残っています。「ゲームブックは2つか3つの選択肢しかないのに、ドラゴンクエストでは地図のどこにいっても良いし、戦闘しても買い物しても、成長させても早いクリアを目指してもいい。ここにはゲームブックとは、比べ物にならないくらい自由がある!」 これらの話しは、現在はゲームブックファンではない方の感想なので、説得力があります。 もちろんコンピューターゲームにあまり興味のないゲームブックファンだって当時はいたわけで、ゲームブックブームが衰退する理由にはなっても、ジャンルそのものまで一時期消滅してしまった理由にはなりません。TRPG系の流れをくむゲームブックは細々とでも生き残ってもいいものです。 むしろTVゲームを原作としたゲームブックは、エニックス文庫などで最も長く生き残っていました。
そんなわけでゲームブック衰退の説は、どれも決定打に欠けるものばかりです。 しかし、私は次に述べるもうひとつの説が現在有力だと思っています。
<あきちゃった説> 現在のTVゲーム業界は苦戦しているとよく聞きます。今の人はゲームに熱中せずに携帯のメールなどをよくやっています。なんというか遊びの主流が変わってきたような気がします。 TVゲーム業界がピンチになったことは、別にこれが初めてではないと思うのですが、ここで粗製濫造説を取り上げることはできないと思います。現在ではゲームの評判は事前に、ネットや雑誌で調べることができ、ゲーム自体のクオリティもあがってきているからです。 今まではマリオ、RPG、対戦格闘、リズムゲー、収集ゲーム(ポケモン)などとコンスタントに新しいタイプのヒットゲームが出て、そのたびに人気を盛り上げてきました。特にゲームボーイは、一時期の低迷期にポケモンが発売されなかったら間違いなく消滅していたはずで、ソフトがハードを救ったという良い例でしょう。このような牽引役のゲームが最近はなくなったのが、原因だと思っています。みんなTVゲームに飽きちゃってきたのです。 これはゲームブックにもいえるのじゃないでしょうか。ゲームブックの新しい面白さの開発は、鈴木直人やブレナン作品あたりで打ち止めだったのかもしれません。 (例外として送り雛は、その評判から新しいゲームブックの方向性を打ち出した貴重な作品だと思っています) 最近のゲームブックの復刊は喜ばしいことです。新しいファンが増えてくれればいいと思います。しかし──
あなた、最近ゲームブックに熱中していますか? 買ったゲームブックで遊んでいますか?サイコロを振っていますか?
「さすがに今更サイコロを振ってゲームブックはしないが読み物として面白かった」とか、「積読だけのゲームブックが増えつづけるばかりだが」という調子の意見を聞くたびに、ゲームブックに対して何か客観的というか冷めた感じがしてくるのです。ゲームブックを遊ぶと言うより、単にコレンクションとして昔を懐かしむような。はたまた娯楽物というより研究対象として見ているような。(私がこんな文章を書いていること自体もそうかもしれませんけど) でも、それが悪いわけではありません。どんなに優れたものでも、いずれ飽きてくるのは当たり前だからです。 私の考えるゲームブック衰退の理由は、そういった読者達を再び熱くさせる新しいタイプのゲームブックを生みだし続けることができなかったからということです。
これを読んで私は違うよ。考えすぎだよ。私は今のゲームブックをもっと遊びたいんだ。と思う人が多かったら、今のままでもゲームブック業界は、ブームにはならずとも生き残っていくことでしょう。 そうでないなら新しいアプローチを考えない限り、先はないと思います。
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