冒険記録日誌
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2004年04月07日(水) ひ・と・で

 ゲームブック同人誌を作ろうというお話しが、サイロス館長の掲示板を中心に進行中です。
 私は本格的な同人誌を作ったことはありませんが、記憶をほじくりかえすと、学生時代の文化祭でコピー刷りの簡単な同人誌を一度だけ作ったことを思い出しました。人気漫画とかのパロディ作品を書くのは性に合わないので、オリジナルショートショート小説ばかり書いていましたけど。
 ちょっと懐かしくなったので、一話だけ以下に抜粋。今見ると、微笑ましくて少々恥ずかしいね。



<けんちゃんシリーズ その5>

ひ・と・で
                         たけたろう著

 ぽっかぽっか陽気の夏の日。けんちゃんは、お父さんとお母さんと海に行きました。
 けんちゃんは海が初めて。
うちよせる波にけんちゃんは、大はしゃぎをしながら浜辺を走り回っています。
 お父さんとお母さんは、けんちゃんに暖かい眼差しを向けながら、ビニールシートに座ってくつろいでいました。
「岩場の向こうに行ってくるねー」
 けんちゃんが遠くから大声をあげると、お父さんとお母さんは「危ないから気をつけるんだよ」と言い、すでに岩場に向かって走り始めたけんちゃんに手を振りました。

 しばらくの時が経ちました。
 空から眩しい太陽の光を浴びながら、そよ風を受けてくつろいでいるうちに、お父さんとお母さんはいつしか眠ってしまったようです。
「お父さん、お母さん!大変!人が死んでいるよ」
 いつの間にか戻ってきた、けんちゃんの声で目を覚ましたお父さんとお母さんは、ビックリして「一体なにを見たんだい」と聞き返しました。
「手!砂のうえに茶色い手があったの」
 それを聞くとお父さんは笑い出しました。お母さんも微笑んでいます。
「けんちゃん。それは海の生き物さ。ヒトデっていうんだよ」
「そうなの?ふーん。さっきは砂を掘っていたら出てきたからびっくりしたんだ」
「それはお昼寝していたのかもしれないわ。気になるなら元通りに砂に戻してあげたらいいわね」
 と、お母さんも優しく言いました。
「わかった、そうする!」
 けんちゃんは元気よく返事をすると、岩場の方へ駆け戻っていきます。
 その様子を見送りながら、お父さんとお母さんは顔を見合わせて、ぷっ、と思わず吹き出してしまいました。

「おこしちゃってごめんね。ヒトデさん。元通りにするから、ゆっくり寝てね」
 けんちゃんはヒトデさんに、砂をかけてあげました。
ついでにドロンとした目をした頭にも、砂をかけて埋めてあげました。


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