冒険記録日誌
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| 2003年12月30日(火) |
ブラッドソード1 勝利の紋章を奪え!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その12 |
(ここから先はネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)
疲れと傷により、体力はそろそろ限界にきている。念のために治癒の巻物を使いきっておく。
「俺と手を組まないか」 勝利の丘を登る2人に向って、不意に男の声がかかる。振り返ると黒い鎧をつけた戦士が立っていた。 そいつは厳めしい顔つきで、礼儀ただしく話し掛けてきた。 「イコンのワーロックだ。神を恐れぬイコンと呼ぶ奴もいるが、まあ好きに呼んでくれ。それより、このままお互いが競っても共倒れだ。ここは共闘しようではないか。賞金は減るだろうが、それでもお互い十分な財産になるだろう」 どことなく、うさんくさい奴だ。誘いを断るとイコンの顔は怒りにゆがんだ。 「勝手にしろ!」 イコンがなにやら呪文を唱えると、その体が炎のようなエネルギーに包まれた。 そして剣を抜いてこちらを睨み据えた。 「その愚かしさが命取りになるぞ」 イコンの攻撃より先にバーガンが動いた。しかし彼に斬りつけた瞬間、痛みに顔をしかめた。イコンを取り巻くエネルギーに近づくと火傷を負うらしい。ひるんだスキにイコンの鋭い一撃を喰らってバーガンはうめく。 ───こりゃ、勝てそうにないな。 奴の勢いに圧されながらそう思ったが、ここまできて逃亡はできない。 バーガンは作戦を替え、イコンの攻撃をかわすことに神経を集中した。攻撃は出来ないが、守りに徹すればしばらく持ちこたえる事はできると踏んだのだ。 「逃げの一手か、臆病な。そのままでは俺を倒すことはできんぞ」 イコンが嘲った。そのとき、リー・チェンの放ったエネルギー波がイコンを貫いた。 「決闘に横やりとは卑怯者め」 イコンの苦々しげな声を無視して、リー・チェンがもう一度ソードスラストの魔法を準備する。 バーガンがイコンの攻撃をかわしながら言った。 「悪いが生き残ることの方が大事なんでな。それにどうせお前も、俺達が手を組んだら裏切るつもりだったのだろう」 再びリー・チェンの放ったエネルギー波が閃き、イコンは口から血を滴らせて地面にひざまずいた。しかし、驚くべきことにイコンは倒れなかった! 「魔法が俺の命を守ってくれる。だがくそっ、勝利の紋章を目前に撤退するとは。・・・このかたきは必ずとってやる。覚悟していろ」 イコンはそういい残すと、煙となって去っていった。 「消えた。なんなんだあいつは。吸血鬼か?」 「いや、東洋人のようだったな。やっかいそうな奴だ。また会うような気がするよ」 リーチェンはバーガンにそう答えると、そんなことがないようにと魔除けの印をきった。
丘を登りきって、勝利の紋章を手に入れると次の瞬間、2人はマグス達に囲まれたホールに転送されていた。 マグス達は、勝者へ祝福の拍手を送った。もっとも、良く観察すると苦い顔をしているマグスも多い。 勝負には敗者がつきものなのだ。彼らの送り込んだ戦士が戻ってくることはないのだろう。 マグス・バラザールは、もちろん最高の上機嫌だった。次の冒険を求める前に、彼の歓待を受けることにしよう。 そのときバーガンの視界の端に、こちらを睨み付ける黒っぽい人物が見えた気がした。目を凝らしたが、そこにはもう何もいなかった。
第一話完
******************************************* やっと1巻が終わりました。 このシリーズには、ファイティングファンタジーシリーズと同じく最善の選択肢、いわゆる「真の道」に該当するコースがあって、その選択肢をたどれば最小限の戦力でもクリアが可能になっています。 クリアした方はお分かりでしょうが、今回の冒険は最も大きなイベントを経験していなかったり、もっと効率の良い行動に気づかなかったりと、真の道から踏み外しているところが多いのですが、それでもなんとかクリアできました。 クリアの為の謎解きではなく読者の選択を重視して、どんな行動の後にも救いの手を用意している作りが、私がこのシリーズを気に入った一番大きな理由です。
2巻以降もまたそのうちに紹介しようかと思います。まだ未読で、ネタバレの警告にも関わらず日記を読んだ方は、それまでにこの本を探し出して是非とも挑戦しておきましょう。
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