冒険記録日誌
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| 2003年08月29日(金) |
誘拐犯はエイリアン?(さかさき・けん/ポプラ社文庫) |
まず本の装丁や字体などですが、ポプラ社文庫というあたりで全体的な雰囲気はわかってもらえるかもしれません。 (ポプラ社文庫はいまでも同タイプの小説本を出版していますので、もし知らなくても書店にいってチラリと目を通したらもうバッチリ) そして中身は吸血鬼の女の子を主人公にした小学生向けの冒険小説風ゲームブックだったりします。 ただし、吸血鬼といってもオカルトっぽい雰囲気はないです。人間社会に気づかれずに同化するために中学校にも通っているし、血のかわりにトマトジュースを飲んだり、生焼けのハンバーグを食べてガマンしているという庶民派の吸血鬼なのです。昼間は寝不足で学校では成績オールイチの駄目人間だけど、夜になると超人的な力を発揮できるのです。一方、同じく吸血鬼のお父さんがいますが、彼はその能力を生かしてオカルト専門の探偵家業をしているらしいです。 まぁつまるところ、主人公の性格とか細かい点は違うものの、やばいくらい赤川次郎の小説「吸血鬼はお年頃シリーズ」を連想してしまう設定のゲームブックです。
それで読んでみた感想ですが、ストーリーが誘拐犯は本当にエイリアンだったという、タイトル通りの実に直球な展開だったので「ああ、そうですか」としかいいようがありません。パラグラフ158の純粋な分岐小説だったこともあり、あっさりと読み終わってしまいました。 主人公が特殊能力を駆使して宇宙人に対抗する展開は結構好きなのですが、気に入ったシーンがあるルートの多くが、バットエンドにつながっているのがちょっと残念。ピンチになったら父親が助けに来てくれるかと期待したのに、中盤以降は登場すらしないので、存在意義がないじゃないか。この程度の出番なら父親の設定はカットした方が、版権的にも気にならなかったのに。 あと憧れの男の子役の真吾君がいけすかない奴(最初は成績の悪い主人公を馬鹿にしていたのに、本当の能力を知ると手のひらを返したように主人公に引っ付いてくる。しかも役立たず)だったあたりも、いやな感じです。 ただ、終盤の(ただしバットエンドの)パラグラフで主人公が言っていた「そりゃ、この世の中は美男美女が得なのは間違っていないわ。私だって美人だから(この主人公は、なにかと自分が美人だということを強調したがる)学校の成績がオールイチでも笑ってすませてもらっているけど、これでブスだったらそれこそ人間のクズ、ゴミ扱いされているところだもんね」というようなくだりが妙に印象に残りました。顔に自信のない小学生がここを読んだらショックかもね。まあ一つの真理ではありますけど。
さくさく読める点は悪くないし、いちいち読者に本音をぶっちゃける主人公のキャラは結構好きなので、この吸血鬼親子をシリーズ化すれば面白かったかな。 でもそうするといずれ赤川次郎側からクレームがきて、やっぱり駄目だったかも。そんな作品。
(おまけ) 著者の若桜木さんが運営しているサイトがあります。ファンは要チェック! 本作品へのコメント及び、そのもとになった未発表作品が読めます。 <霧島那智HOMEPAGE> http://members.jcom.home.ne.jp/wakasaki/index.htm
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