冒険記録日誌
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2002年04月30日(火) 火吹山の魔法使い(社会思想社)

4月中にずっと書いていたFFシリーズ感想記。
まだとりあげたい作品もあるのですが、ひとまず最後にします。
そこで今日のネタは、どうしてもはずせない「火吹山の魔法使い」です。

ストーリーは単純。
魔法使いの住んでいる火吹山の地下城塞に、主人公が単身乗り込んで財宝探しをするお話しです。
この作品はまだタイタンの世界も構想されていない、どこかのファンタジー世界でした。
イラスト、文章も含めて乾いた印象。
押し付けがましくない坦々とした描写が続いて、読みやすい。
いろんなワナや怪物が配置される迷路を進んで行く。

噂を聞く限り、魔法使いは世捨て人のような生活をしているようなので、不法進入をする主人公に正義があるのか微妙な気はします。村人が恐れていると言っても、彼らにとって怪しい人間は全て悪人ですからね。
でも、今回はイジワルな突っ込みは止めときましょう。
「火吹山の魔法使い」は素晴らしい作品です。なぜって、全てのゲームブックの第一作目ですから。これがなかったら他のどんなゲームブック作品にも会えなかったかもしれないですから。
初期のウィザードリィとか家庭用ならドラゴンクエストなんか今でもリメイク版が売れてますね。新作として出したら一昔前の作品と一蹴される内容ですが、それなりに人気がある。それはこれらが、新しい遊びを発見した記念碑的作品だったからと思います。
ゲームブックでは「火吹山の魔法使い」がそれなんです。

素晴らしいのはルール。後のFFシリーズの基本となる主人公の能力値、技術点・体力点・運点はここで誕生しました。
技術点:戦闘したり、説得したり、鍵をはずしたり、冒険中に必要な技能は全て技ここで決定。TRPGなどで、6つも8つも必要な能力値をこれ一本にまとめる発想がすごい。
体力点:生命力などを測定する。0になると死亡。ここの能力値の上下がゲーム的な緊張感を生み出す。
運点:不確定要素などをカバー。技術点だけだと単純になるキャラクター作りに深みをもたせている。またサイコロまかせな戦闘に“運試し”と言う、戦略要素をつけたのもポイント高い。
このようにシンプルで無駄がないのです。
能力の意味が曖昧で応用が利くので、その後のどのFFシリーズ作品にも合わせる事ができました。
特別ルールを1つ2つ加える事で、各作品の個性も出す事ができます。
むしろ作品毎に一からルールを作っていたら、例えば「モンスター誕生」の戦闘ルールで、主人公が即死攻撃ができたり、攻撃を食らっても体力点が1しか減らない事にその“主人公の強さ”に対する感銘をうけなかったでしょう。

最後に“火吹山の魔法使い”であるザゴール氏ですが、和訳されていない後期のFFシリーズでは彼が復活したと言う話しがあるとか。
正直なところFFシリーズは、巻数が進むにつれだんだん難易度が高くなった為、ついて行けなくなっていたのですが、それでも未訳の作品達には興味があります。
いつか全FFシリーズが読める日を願いながら、4月特集は終了です。


山口プリン |HomePage

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