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みんみん



 雨の日のひこうき

堤防を走るといつも飛行機が飛ばないかと思う。特にお天気のよい日には。
当地は河川敷に空港がある。珍しい立地、パイロットのお方にはあまり評判はよろしくないらしい。そして南側には山(北アルプスとか)がある。そちら方面の友曰く、なんだかぶつかるような気がするという。山に。
いつかKと飛行機を見に行きたいと思っていて、でも結局見に行っていなかった。いつも思いつきだ。だから今日も思いつきで見に行くことにした。雨だけど。

100円を入れて展望デッキに入る。小さい空港ながら国際線も就航している(ついでに言うと東京便はドル箱路線)。しかも、曜日によるようだけれど、お昼はいそがしい。日によってダイヤは前後するのかも知れない。今日私たちがいる間に飛んで行って飛んで来て飛んで行った。その隙にはヘリコプターも。
飛んで来た飛行機はウラジオストク便だった。小さい。国内で定期的に発着する旅客機ではいちばん小さいらしい。ヤコブレフとかいうジェット機で定員は20名。乗ってみたい……いや恐いな。もうすぐ東京便が滑走路に出るよー、と眺めていたらいきなり視界に小さいのが入ってきて、滑走路に降り立った。誘導している係の人が「すごーく小さく」見えたりはせず、ただ「小さく」見えた。
停まったかと思ったらおもむろに人が飛行機に近づいていった。扉まで近いんだな、石垣空港みたいに直接滑走路に降りるのだったりして、と思ったらバスから人が降りるみたいに続いて人が降りてきた。乗客らしい。搭乗口というよりは乗降口と言いたい位の出口は後尾の方にあるらしく、乗り降りの様子は見えなかったが、石垣空港では一応つけられた長いタラップみたいなものは見えなかった。陰になったか、あってももっと短そうだった。

まだエンジンの音が小さいからかKは「(ひ)こうき」(「き」はkの子音が勝る)よりも階段とフェンスにかかったくさりと水たまりの方に関心が向いていて、とことこと滑走路と反対の方に向かって歩いて行く。フェンスの間から落ちることはあるまいと思っても、雨の日だし滑りそうだし私は傘をさしているし、なんだか私の足元の方ががくがくしてくる。

時間が来て、東京便のエンジン音が高まった。海に向かって飛ぶらしい。
Kを抱えてよく見える場所に行く。抱っこしたまま見る。Kは抱かれたままでいる。たぶんじっと見ている。私はあえて何も言わない。
飛行機はエンジンの音をいよいよ大きくさせ、速度を上げて、体を浮かせた。雲が厚い。飛行機は一瞬のうちに雲の中に入り、手品みたいにすぽっと消えた。
「(ひ)こうき」
いつも、飛ぶ飛行機を見つけ、聞くKが言った。

2008年03月10日(月)
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