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みんみん



 沖縄行き:第4日目(クジラに会いに)

結論からいうと、私は会えたような、会えなかったような。
でもぴょんちゃんはすぐそばで会っているはず。



早起きをした。今度こそ座間味へ行くのだ。
沖縄自動車道経由で泊港へ。ホテルから港までは、富山から金沢までと同じくらいの距離感かと見当をつけていた。土曜日の朝で道が空いていたのか、1時間くらいで到着してしまった。思っていたより早かった。
港へは木曜日にいちど下見に行っておいたから楽な気持だ。

座間味行き高速フェリーのチケットは既に手配してあった。切符売り場の窓口が開くのを待って、この手配済みのチケット(しかも既にいちど乗船日時変更済み)を今日の分に振り替えてもらう。
ツアー主催者から、お昼ごはんをあらかじめ用意しておいてください、との指示があったので購入する。ジューシー(炊き込みごはん)のおにぎりなど。ぴょんちゃんはスパムミートと卵の入った四角い押し寿司のような形のおにぎりも買っていた。なぜかバナナも買ってしまう自分。
高速フェリーはたいそう立派で、テレビなどもついている。韓国の地下鉄火災のニュースを見る。

およそ50分ほどかかって座間味港へ到着。座間味(ざまみ)島は、渡嘉敷(とかしき)島と並ぶ、慶良間(けらま)諸島におけるホエールウォッチングの拠点のひとつである。
座間味でホエールウォッチングをするには、地元のホエールウォッチング協会へ申し込むか、あるいは島内の各マリンショップへ直接申し込むか、そのどちらかになる。協会を通して申し込んだツアー客は、適宜それぞれのマリンショップへ自動的に振り分けられていく。協会を通す方法がおそらく最も一般的だと思われるが、ショップによってクジラとの遭遇率はさまざまでもあるらしい(そりゃそうだろう)。いろいろ調べているうちにそんなことを知り、じゃあショップを検討して直接申し込むほうが納得がいくかも、と思った。そんなわけで今回はあるショップに直接申し込んであった。
今日は土曜日、しかも欠航続きの後とあってか、ツアー客の数もそれなりあった。しかしながら今日も若干波が高くなってきていて、一度に大人数が乗船することは難しいそうだ。それで、どうしても2回乗りたいという希望者を除いて、それぞれが午前・午後の部に分かれて乗船することになった。
私たちは午後の部に振り分けられた。出発まで3時間ほどあった。せっかくだから島の中を散策してみることにした。

街を歩いて行く。小さな島なのですぐに街なかでなくなる。時間もたっぷりあるし、展望台まで行ってみよう、ということで、徒歩30分ほどかかって高月山に上る。車も通れる道で、足元の心配はない。マイクロバスで一気に上っていく観光客一団もあり、しかし私たちはよいしょよいしょと上っていった。
歩いたら距離も高さもいっそう実感できる。晴れていることもあり、うっすら汗をかく。



−−−高月山展望台より、島の東側を望む。
   真珠の養殖も行われているおだやかで美しい湾には、
   ターコイズブルーと青色の二つの色がある。
   ターコイズの部分はサンゴ礁。



−−−南西の方向、座間味市街を見る。港もこの方角。
   海を隔ててさほど遠くない場所に
   いくつかの島が見える。

座間味周辺の無人島への定期航路はないが、頼めば2人以上で渡してくれるらしい。しかも料金は、島にもよるけれど、往復千円くらいから。
山のてっぺんから眺めていたら、行ってみたい島を見つけてしまった。

再び街へと降りていく。

沖縄ではよろず屋的な商店を多くみかけるが、座間味のような小さな島では、その役割もいっそう大きい。食料品を扱うのはもちろんのこと、本屋さんでもありDIYショップでもありドラッグストアでもある。まさに島のデパート。
例えばこんなもの。



−−−黒い線香と黄色いお金。

いずれもご先祖様にお供えする品である。黄色いお金は先回石垣島でりー氏が発見しゲット済み。よろず屋の行く先々でこの2品はまず必ず見かけた。本土の商店にロウソクやお線香が置いてあるのと同じだろう。
島のデパートの品揃えを見ることで、そこに住む人たちの生活の様子も窺うことができる。その土地の人たちにとって何が生活必需品であるかがわかる。

店内をぐるりと廻るとこちらにもお仕事中の方が。
冷蔵庫の前にしっぽ1。



−−−三毛さん。




−−−よっ、つかまえた。

両前足の先には小さいイモリ。


お店を出て港へと近づいて行く。港の近くは、いわば、駅前商店街みたいなものか。

働く猫シリーズ。



−−−看板娘(あるいは看板息子)。

外に出ている猫にはめずらしく、長毛種だった。首の後ろのあたりが皮膚病にかかっていて、気の毒。



−−−げんきでね。

要は、どこへ行っても、猫は気になるんだということ。

港を眺めながら少し早いお昼ごはん。2錠めの酔い止めをのむ(1錠めは泊港を出る時にのんだ)。



さて、いよいよホエールウォッチングである。
白いクルーザーは島を離れた。沖に近づいたころ、順番に2階のデッキに乗せてもらう。前方の海面から霧が上がった。潮吹き。その下にクジラがいる。ほんの一瞬、黒い背中が小さく見えた。
最初のポイントに到着する。クジラと遭遇出来る場所はもちろんその日によって異なる。当日のいろいろの情報と、それから経験とカンで、それぞれの船がポイントを見定めて行くのだ。このポイントには他の船も何艘かいた。



−−−沖へと進む船。2階デッキより。

写真を撮らなかったわけではないのだけれど、観るか、撮るか、どちらかで精一杯だった。撮るにも、デジカメはシャッターが切れるまで若干のタイムラグがあって難しい。それなりの大きさにして見ると確かに潮が上がっている部分もあるようだ、という程度の写真しか撮れず。

それより問題は、最初のポイントの後、次のポイントに移動するまでの間に私がひどく船に酔ってしまったことだ。いやー。

船は方向を変えて走りだした。波の高さと船の揺れとスピードがすべて比例してはげしくなった。
後ろのデッキにいた私たちも当然高い波をかぶり、私はレインコートを着ていたにもかかわらずずぶずぶになってしまった。ぴょんちゃんは靴までずぶぬれだった(後で黒いビルケンシュトックの革靴は潮が吹いていた)。もちろん髪は海水でボサボサ。久しぶりに塩水をなめた。
酔いは、波のせいもあるけれど、クルーザーの後ろから出る排気にやられたのが直接の原因かも知れない。

わー!! という歓声がしたので、よろよろと立ち上がって、背びれというのか、黒い背中の一部分を見た。ここまで見たのち私はダウン。
あとでぴょんちゃんに聞いたところでは、クジラの親子を見たそうだ。黒い部分だけでなく白い部分も見えたそう。

むりやりまとめ。
クジラとは遭遇できた(一応)し、かろうじて潮を吹いている場面を撮影することもできなかったわけではないが(歯切れ悪い)、私は見るべき場面の半分以下しか見ていない。りー氏曰く「ぴょんちゃんかわいそうにー」。私も本当にそうだと思う。ぴょんちゃんすまん。。。しかしもしりー氏と2人で乗っていたら、2人して大変なことになっていたに違いない。
最近は車を運転するようになったこともあって、体調がよくない時とかお天気がよくない時を除いては、酔うということをかなり忘れていたと思う(私は車に酔う子供だったのだ)。そういえば私って酔うんだったと思い出した。そして今回はかなりひどかった。
クルーザーに乗るまえ、「もし世界一周をするとしたら、船旅と飛行機と、どっちがいいと思う?」と、ぴょんちゃんに能天気な質問をしていた。ちなみに船酔いしなかった(でもあとちょっとであぶなかったかも、と)ぴょんちゃんは、飛行機旅がよいと言った。船は途中で降りられないから。
私はと言えば、沖縄に来る直前に阿川弘之の船旅紀行を読んできたこともあり、ひそかに船旅に憧れてもいたのだが、これはいったん棚上げだな、さすがに。

ホエールウォッチングについて、乗り物酔いの経験が人より多い人は、ある程度船に慣れてからの方がいいかも、と思う。あるいは経験者に、船に乗るorホエールウォッチングのコツをよく聞いて行くことを勧める。出来れば余裕ある日程で、島に泊まるなどして、なるべく波のおだやかな日を選んで行くとなおよいのではなかろうかとも思う。私もまた乗ることがあれば気をつけてみたい。そうしたら今回ほどひどいことにはならないかも知れない。今もし乗るとしたら、強力な酔い止めの力を借りなくてはならないだろうけれど。

船内で涙を流しながら寝て(むりやり眠って)いるうちに、いつしか再び座間味港へ到着。
帰りの高速フェリーの時間まで若干あったので、ひたすら休息。酔い止めをもう1錠のむ。

いつかダイビングに挑戦してみたいと思っているのだけれど、絶好のダイビングスポットに到達する前に船酔いでボロボロ、なんてこともあるのかなー、などとあれこれ考えた。こんな顛末であったとしても、自然の一面を体感させてもらったことに間違いはない。
でも泊港に着いた時、とても嬉しかったことも事実。

私たちの乗ったフェリーは急病人を運搬していたらしく、泊港には救急車が横づけされていた。座間味にも診療所はあったようだが、処置にも限界があるだろう。大事でなければいいと思った。



帰りはR58をゆるゆる走って、再び名護のホテルに戻る。
毎晩お酒は飲んでいたけれど、さすがに今日は一滴も飲まず。普通の疲労とは違った身体の感覚。まだ揺れているようで、ふぬけのようになっていた。ぽわーん。



後日談。
ある日、これら↑の海の写真を並べつついろいろと思い出していたら、夜、夢を見た。ダイビングに挑戦する夢。
りー氏は全くダイビングに興味がないというので、もし挑戦としたら、私はりー氏抜きでレッスンに参加するなり海に潜るなりしなくてはならない。
私には「あまり(比較的)興味はない」ということはあっても、「全く興味がない」ことはあまりない。「ちっともわからない」ことにも感動を覚える(これは尊敬の念に近い)。もし可能なら何だってやってみたいさ。

海中展望塔の中から海底を眺めていた時、やっぱり海の底って山の中の谷みたいだと思った。「やっぱり」というのは、石垣島でグラスボートに乗った時もそう思ったからだ。身を沈めていく、と思ったらこわいけど、底にたどりついたらそこにも地形がある、と思ったら、こわくないんじゃないかと思えた。海をなめてかかってはいけないのは当然だとしても。

2003年02月22日(土)
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