酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2004年10月23日(土) |
『マスカット・エレジー』 山崎洋子 |
有吉葡萄はノンフィクションを書きたいと思いつつ、日銭を稼ぐためなんでも書いている毎日。30半ば過ぎて独身そして埴輪顔。この埴輪顔と失礼な表現をするのは同居人の鮎子さん。年齢不詳の色っぽい女性。今は亡き父が映画を見に行った帰りに「ついてきた」、そしてそのまま居着いてしまった。引っ込み思案で時代遅れの葡萄と年の割にはアクティブすぎる鮎子さんが遭遇するさまざまな事件たち。
文庫のカバーイラストが北見隆さんだったので、思わず手にとりました。北見さんのイラストで読まされた(笑)本ってものすごーく多い気がします。おそるべし、北見隆! この『マスカット・エレジー』は直訳すれば葡萄哀歌ってとこでしょうか。主人公の葡萄が哀しい現実に出会うから、合ってるタイトルかもしれません。鮎子さんが初老のおばぁちゃんなのに色艶はよいし、行動的。人というものは生き様や性格が滲み出るものなのだとつくづく思います。ちょっと困ったちゃんですが、鮎子さんは魅力的だもの。 私が一番面白かったエピソードは「ネット潜入」でした。近親相姦のサイトに入り込んでいた人物になりすましてオフ会に潜入しレポを書くという仕事を葡萄が引き受けてしまうのですが、葡萄の署名入り記事が世に出てしまい大騒ぎ。しかも、そのレポは葡萄が書いたものとは全く違い、近親相姦オフを面白可笑しく煽情的に書いているシロモノ。ネットにさえ疎い葡萄の危機を救ったのが、自力でパソコンを身につけた鮎子さんだった?という流れ。意欲があれば年齢は関係なく、パソコンだってなんだってできちゃうものですね。 葡萄と鮎子さんの本当の関係も最後まで謎として残りますが、まぁそれはそれでいいかな。通勤のお供にちょうどいい文庫なのでした。
気にしちゃ、駄目よ、こんなバカの言うこと、と言うように、ちらりと微笑を送ってくれる。厭味な男一万人より、気の利いた女一人のほうが、どれほど世のため人のためになることかー。
『マスカット・エレジー』 2004.2.20. 山崎洋子 光文社文庫
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