酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2004年04月15日(木) |
『三月は深き紅の淵を』 恩田陸 |
「待っている人々」 嫌な季節だ。早春の、落ち着かない、浮ついた不安定な季節。鮫島功一は、せっかくの連休を海老沢という上司命令で会長の“春のお茶会”参加(しかもお泊まりつき)に向っている。功一がお茶会に呼ばれた理由はたったひとつ。趣味が読書だったから。本だらけの大邸宅に迷い込んだ功一は、たった一冊の幻の本『三月は深き紅の淵を』を推理して探し出せというものだったが・・・。
生まれて初めて開いた絵本から順番に、自分が今まで読んできた本を全部見られたならなあ、って思うことありませんか?
「出雲夜想曲」 編集者の隆子は、同じく編集者の朱音を誘って旅に出た。有能で美しくパワフルな朱音は、夜汽車での酒盛り準備にもぬかりがない。ふたりが向ったのは出雲。隆子も朱音も『三月は深き紅の淵を』に囚われ(それぞれ事情も感性も違うが)、その作者を推理し、出雲にその人がいると・・・?
「すごいわね。化け物のような小説だわ。ただその存在だけで、どんどんベールをまとっていく。既に実体もなく、知る人もほとんどいないというのに、指一本動かさずに手の届かないところへ行ってしまう。でも、本当の物語って、そういうものかも。存在そのものに、たくさんの物語が加速して加わって、知らぬ間に成長していく。それが物語のあるべき姿なのかも」
「虹と雲と鳥と」 奈央子がかつて家庭教師をしていた少女・美紗緒が死んだ。祥子というやはり美少女とともに。ふたりは異母姉妹だった。公園の手すりが壊れて落ちていった。自殺か。他殺か。事故死なのか。美しいふたりの少女の間にいったいなにがあtったのだろうか。
かわりに、かいてね。
「回転木馬」 水野理瀬は松江に降り立った。列車から降りてトランクを忘れてきたことに気がついた。なぜだろう、なぜあたしはあんなに大事にしていたトランクを忘れてきたのだろう。そして二月の終わりに三月の王国へまよいこんでしまう・・・。
フィクションを求めることで、我々は他の動物たちと袂を分かったのだ。我々の向うところは分からないし、最終的に何を用意されているのかは分からないが、その日から我々は孤独で複雑で不安定な道のりを歩み始めたのだ。
この『三月は深き紅の淵を』は、タイトルと同じ『三月は深き紅の淵を』という幻の本を巡る4つの短篇集です。物語の時系列はキレイに流れていないし、内容もリンクしているようで微妙にずれている。これは陸ちゃんのほかの作品にも同様で流れを汲みつつ、それはまた別のお話であったり。こういうほんのわずかな歪みみたいなものが最高に私を惹きつけるのだと思う。 陸ちゃんの新刊・理瀬シリーズ(と言うより三月シリーズと言うべきか)の『黄昏の百合の骨』を読むために、久々に読み返した三月はやはり私をしっかり虜にし、わくわくどきどきさせてくれました。これは文庫になっているし、全ての本好きさんたちにぜひとも読んでいただきたい。 恩田陸という天才をこの世に送り出してくれた神様に心から感謝。
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