酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年03月07日(日) 『残虐記』 桐野夏生

 生方景子が失踪した。ある原稿を残して。その原稿には景子が遭遇した25年前の監禁事件について赤裸々に綴られていた。10歳の時に男に誘拐され、監禁された少女のおぞましい戦いの記録だった。しかしラストで語られるもと少女の真実とは・・・。

 まったくもう桐野夏生という人はなんてモン書いてしまったんでしょう。本当にあの図太いまでの創造力には敬服する。たぶんこれは新潟で起きた少女誘拐監禁事件をベースに書かれたのだと思います。最近、桐野さんの小説を読むと自分の想像する力を試されている気がする。読みたくない人、ついてこれない人はそれでいいのよーって感じがパシパシと伝わってくる。空恐ろしいほど強い女性だ。そして私は誘蛾灯に引き寄せられた蛾のように桐野さんの紡ぎだす物語を読まずにはいられない。吸引力はすざまじい・・・。
 物語は、作家へのある男からのファンレターではじまります。無学な男の必死な想いをこめた手紙は背筋が寒くなります。こんな手紙を読まされたら、過去に引き戻されてもしかたない。作家が思い出す薄汚い部屋での男の奇妙な卑しいさまざまな行為。誰にも語らなかった真実を書きはじめたとき、作家の中でなにかが壊れてしまったのだろうか。
 ラストは本当にひどい桐野さんらしく、自分でお考えなさい方式です。ううう。だから私は妄想する。あの作家がどこへ行ったのか。なにをやろうとしているのか・・・。

 私も宮坂も、あの事件に何かを奪われたのだ。それは以前、宮坂が言ったように現実の姿というものだったのかもしれない。私たちは想像に魂を奪われたのだ。

『残虐記』 2004.2.25. 桐野夏生 新潮社



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