酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年01月12日(月) 『ふたり −鏡の中のもう一人の私』 根古環

 篤子は出版社で働くOL。おせっかいな叔母さんからまた見合い写真が持ち込まれた。仕方なく写真を見て驚く篤子。それは、初めて付き合った男だった。その男は篤子の友人と付き合っていたが、別れるから付き合ってくれと篤子を強引に自分のモノにする。しかし、それが美人でプライドの高い友人にばれてしまい、男は篤子から誘惑されたと嘘をついた。初めて付き合った男に躓いてしまった傷つきやすい女性の心の闇と苦悩。彼女は救われるのだろうか?

 作者の根古環さんは、子供の教育に携わる方だそうです。ある日、鏡を「安心感」のよりどころにしているらしい子供に出会ったことから、このフィクションが生まれたそうです。
 多重人格ものとはちょっと違うのですが、鏡の中の自分と対話する姿は類似している気もします。主人公の女性が、友人の男に誘惑されてあっさり陥落される。はっきり言って、そういうところに全ての問題が集約されていると私なんぞは思うのですが。それって人のものが欲しい症候群なのではないかしら。私が関わってきた人の中にも人のものばかり良く見えて欲しがる人がいました。そういうタイプの人とは付き合いませんけど。
 物語としては面白かったです。心の闇に飲み込まれてしまった主人公が、相手によって人格を変えてしまうところなんて映像化向きかもしれません。

 不安だらけの世の中に生きていると、結果として得られるほんの小さな「安心感」さえも、生きることにとってかけがえのないものになっていく。それを喪失したとき、また、自分がそれを持っていないことに気付かされたとき、人は危険な領域に足を踏み入れることがある。

『ふたり −鏡の中のもう一人の私』 2003.8.20. 根古環 きこ書房



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